カテゴリー「墨氏の愛した特撮」の記事

川北紘一さん逝く

 特撮監督の川北紘一さんが72歳で2014年12月5日に亡くなられた。合掌

 日本のミニチュア特撮の第一人者が一人欠けてしまった。

 私が川北氏の特撮を見て初めて、カッと目の瞳孔が開いた作品は「ガンヘッド」で、良く造りこまれ閉鎖された空間を進行する、これまた精巧なメカの出現に「アレ?、この映画はイギリスからデレク・メディングスを招待して制作したのか」と思ったほど。

 それまでの日本特撮にありがちな、プラモデルのような表面がツルツルのミニチュアモデルでは無く、緻密な造りで汚しこまれた稼働メカが、ラージスケールなのか、小さいモデルを使って撮影しているのかも見分けがつかず、その操演やパイロテクニック、撮影技法の良さに「やっと日本にも大人の鑑賞に耐えうる特撮を見せてくれる人物が現れた」と喜んだものだ。

 1993「ゴジラVSメカゴジラ」ではメカゴのドック展開で観客を「あ!」と驚かせてくれた。あのシーンは忘れられない。

 また、彼の特撮作品からミニチュア・ビル群の描写は日本特撮で見せられた、中がスカスカの、ただ箱を並べたようなソラゾラしいものから、破壊されても建築構造が納得できる描写へと変わった。この功績は大きい。そのシーンもスタジオ見学しているような神様目線のアングルが減って、人が大地に立った目線で、現実感もより増していた。

 彼は、怪獣同志が無意味なプロレスをするシーンを避けた。これも怪獣映画を子供向けでなく、大人だけでも映画館に行ける本格的SF怪獣特撮へと変えてくれた。

 「サンダ対ガイラ」のメーサー砲の光線描写は彼が担当したという。あのシーンは日本特撮の名シーンの一つに挙げられる。

 親爺さん。ちょっと円谷氏の元に行かれるにはまだ早すぎたのではないですか。

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ミニチュアの剛性を弱くする。

 ダイハード2、旅客機激突シーンのミニチュア特撮

 この映画は航空関係者や航空ファンには笑ってしまうシーンがいくつか登場するが、少なくともミニチュア特撮スタッフは航空機の構造をよく理解してミニチュアを制作している。

 航空機は重くなってはいけないのに、風圧や翼の揚力、過酷なGに耐えなければならない。そのため重からず、弱からずのギリギリの線で設計してある。つまり「柳に風」の理屈で部分的にはワザと柔な構造になっている。実際に旅客機に搭乗して窓から翼を観察すると、旋回や気流の乱れでは、翼のエンジンから先端にかけてグニャグニャと捻っているのを確認することができる。つまり、柔らかくして力を逃がす構造になっている。

 映像を観ると「ダイハード2」のミニチュアビルダーは、旅客機を実際の航空機のように、そのグニャグニャに剛性を弱くして柔に制作し、滑走路への激突では主翼や尾翼が上下にしなって実写感・実機感を出すことに成功している。特撮用航空機のミニチュアはプラモデルやラジコン機のように硬く造くるとオモチャ然に見えてしまう。彼らはそれを計算している。

 滑走路に激突した旅客機は、燃料の搭載されている翼付近から炎上し爆発、これも極めて実際の構造に従ったもので、実写感がある。

 その後の機体全体の大爆発は、恐らく20倍程度の超ハイスピード撮影で、実際とはトンデモなく、スローモーな映像であり、また爆発・炎上も誇張してあるが、これは迫力を増す演出なので問題ない。これを、もし3倍程度のハイスピード撮影にすれば、動きもオモチャ然になり、たとえミニチュアの出来が良くても台無しの特撮になるだろう。そういうミスは、今もって日本の特撮にありがちなことだ。

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特撮の妙技

墨氏の愛した特撮

 いや、素晴らしい映像を入手した。

 これぞ、まさに本当のミニチュア特撮。

 ローアングルと適切なハイスピード撮影、考えられた音響効果と上手な編集により、CGを使わなくともアナログなテクニックで観客を本物だと思わせてしまうという例。

 これは、同じ手法を取り入れ、迫力ある映像造りをしたデレク・メディングスも生きていたらビックリの映像ではなかろうか。

 ラリーカーがでんぐり返ってからはハイスピード撮影と効果音を止め、ラジコンの撮影であることを分からせるという粋な見せ方をしている。

思うに、このミニチュアのラリーカーも、ハイスピート撮影時の動きが極力実写に見えるよう、重量バランスとサスペンションの設定を工夫しているのかもしれない。

 ユーチューブではこの撮影シリーズが何篇かあるようなので、さらにチェックしたい。

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操演とは

墨氏の愛した特撮

 「エイリアン2」には惑星周回軌道で待機するマザーシップから分離して大気圏に突入し、空中を飛行、さらにホバリングと垂直離着陸できる「ドロップシップ」と呼ばれる飛行体が登場する。

 このドロップシップの撮影は明らかにワイヤーワークによるミニチュア特撮であるが、実に粋な演出がなされている。

 それは、垂直離陸時にヘリコプターの挙動態勢をとっていることだ。

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↑垂直離陸した後・・・

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↑機体の姿勢をヘリコプターの初動のように前方に傾けている。

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 つまり、このドロップシップはガスジェットを噴射して垂直離陸しているので、ヘリのようなメインローターを傾けて前方に進行する必要がないものを、あえて、傾きをかけて演出し、観客側に向ってくる進行方向をアピールしているわけである。

 こういうのが「操演」の「演」ということなのではないだろうか。

 これを凡庸な特撮マンが操演すると、モデルを垂直に持ち上げたあと、機体を傾けず水平に移動させるだけである。それは航空機の動作としてはダイナミックではない。映像としても面白くない。

 ↓尚、このドロップシップは、離陸反転でもダイナミックで曲線的な演出をされている。

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↑、この動きは見事だ。機体にひねりをかけて反転させている。

 ドロップシップはその後、機内に侵入したエイリアンによって女性パイロットがやられ、操縦不能となって岩に激突、大破炎上する。

 この一連のシーンは、スタジオでのフロントプロジェクション撮影による人物の逃げまとうカットとともに、パイロテクニックと音響効果で盛り上げられ、素晴らしいミニチュア特撮シーンとなった。

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↑プラント内に突入、爆発炎上するドロップシップ。画面中央の金属片の地面を引きずる効果音がちゃんと入れてある。

 すべてにおいて完璧なミニチュア特撮。

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「決死圏SOS宇宙船」の特撮、その4

「2001年宇宙の旅」と比較してしまう。

 が、それは今回忘れよう。 私が高校生の時、この映画をテレビで観たが、キューブリックのその映画は未見であった。 

 宇宙空間の描写は当時の特撮レベルとしては上々ではないだろうか。 ドッペルゲンガー号が大気圏を抜けて宇宙空間に到達し、地球周回軌道で慣性飛行するシーンでは、バックの星が動いていない。 これは極めて正確な描写であって、実際に星がスイスイと後ろに流れて見えたのではオカシイのだ。キュープリック的リアリズムと言ってもよい。↓

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 周回軌道上から見える、ゆっくり回転する地球の姿は球体の縁に大気の霞みも描写してあり、素晴らしい。決してカキワリの絵だけで済ましていない。この視覚効果は「謎の円盤UFO」の監視衛星シドの登場カットでも使われている。↓

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 ただ、残念なのはミニチュア宇宙船との合成がイマイチしっくり合っていないこと。 宇宙空間での滑らかな動きが見られず、宇宙船本体がバックと比較してブルブル震えてしまった。これは当時の合成技術としては限界だったかもしれない。

 宇宙空間でのコントラストのはっきりした光・影の演出は素晴らしい。↓

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 特撮スタッフのミニチュアビルダーの一人は「2001年宇宙の旅」に参加しているので、その現場経験がこの映画にも生かされている。

 その「2001・・・」には各企業が参加していて、映像にもパンナム、IBM、ベル電話会社、BBC、などの会社ロゴが見えているが、この映画にも1カット、企業名が写っていた。↓

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 それはオービターのドッキングポート内で発見したロールス・ロイスのマーク。 

これは「サンダーバード」のF.A.B・・・(ロールスロイス・ペネロープ号)からのお付き合いで、ということだろう。

 最後に、デレク・メディングスの素晴らしいミニチュア制作でのコダワリを感じるカットを紹介。↓

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 このユーロセク・ポルトガルのビルの造詣には驚く。窓の中の部屋の造り、室内照明の様子など、実写そのものと言ってよい。このカットの前には警備員が窓のシルエットとして動いていて、これもミニチュアである。本モノと疑わなかった人がほとんどではないだろうか。

 尚、このような素晴らしい出来のミニチュアビルは「劇場版サンダーバード」の冒頭でも観ることが出来る。

 如何に、彼らが手を抜かず、本モノらしく見せるかに心血を注いでいるかが分かる。

 ミニチュアのビル窓すべてに同じスリガラス状の板をはめ、中から一つのランプで照らすだけという、どこかの国のミニチュア特撮とは違うのだ。

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「決死圏SOS宇宙船」の特撮、その3

 航空機はVTOLでなければならない。

 アンダーソン作品に登場するヒコーキにはVTOL(垂直離着陸機)が多い。

 それは1961年作品の「スーパーカー」が元祖だろうか。あの飛行体は垂直に上昇し、その後、水平飛行。そして、なんと水中にも潜れたと記憶する。・・・ なんせ私の5歳ごろに放送された作品なので記憶が定かでない。 

 話はそれるが、その後、日本で制作放送されたアニメ「スーパージェッター」の流星号は、デザインも機能もこの「スーパーカー」をパクッていると私は断言したい。

 1964年作品の「サンダーバード」ではもうVTOLのオンパレードで、1号、2号はもとより、ゲストメカでも結構、垂直離着陸の航空機が登場する。

 これは思うに、当時イギリスで、ハリヤーの原型となるホーカーシドレー「ケストレル」が開発中であったことが要因かもしれない。アンダーソン夫妻とデレク・メディングス、そのスタッフが自国で頻繁に試験飛行を目にする、この映像的にも魅力的な三次元を駆使するメカを採用したのは納得のゆくことである。

 なぜVTOLが好んで採用されるかには別の理由も考えられる。それはマリオネーションではミニチュア・メカを上から吊れば簡単に宙に浮かせられるから。なにも長い滑走路を準備して走らせるカットは必要はないのだ。 

 「決死圏SOS宇宙船」では、冒頭からVTOL旅客機が登場する。

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 ↑前輪付近に垂直ジェット噴射ノズルがあり、ちゃんとエアの噴射が描写されている。しかし、機体後部にノズルは無く、推力バランスが不自然。その点にはこだわって欲しかった。

 この旅客機は旅客・カーゴ部分が離脱する。こういうことはアンダーソン作品メカの得意とするところ。

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 このVTOL機のコックピット部分のリフトアップやキャリアカーの発進・停止、コントロール室の上昇・下降などの動きとその加減速の操演が、実際にインバーターモーターか、油圧を使って制御しているかのように実にスムーズで、これはこの作品だけでなく、デレク・メディングスが携わる作品全般で感ずる、優れた物理的センスの一つである。もちろん、スタッフは手グスを引っ張って動かしているのにすぎない。

 これが、もし、ガクガクと途中で引っ掛かるようなギクシャクした動きとなったならば、ミニチュア然となってしまうだろう。これは日本特撮でよく見られる失敗例なのである。アンダーソン作品のスタッフはそれを熟知している。

 とはいえ、その失敗はこの作品でもあった。それは同じくVTOL発進リフティング・ボディ宇宙機の「ドッペルゲンガー」号の発進にあった。垂直上昇し、着陸ギアの格納でギクシャクした動きになってしまっている。惜しい。

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↑アフターバーナーを点火する「ドッペルゲンガー」号。このバーナーを点火する描写には恐らく、高圧の燃焼ガスをモデルの下からチューブで引き込み点火して撮影したのだろう。アンダーソン作品でよく使われるロケットパウダーとは別の初の試み。燃焼の陽炎も見え、推力も感じる実写感タップリのカット。

 この「ドッペルゲンガー」号はリフティング・ボディ機であるにもかかわらず、なんと、やっぱり垂直離陸し、大気圏を上昇して宇宙空間に到達。恐らく高度300キロ以上で待機するオービター宇宙船とドッキング(失敗)してしまう。これは航空宇宙工学としては絶対ありえない航空機・宇宙機である。・・・

 つまり、もし、これが可能ならロケットブースターというものが要らないことになる。これがこの映画の大きなミスである。

 

  

 

 

 

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「決死圏SOS宇宙船」の特撮、その2

 絶妙な爆破タイミング

 「サンダーバード」のTV版、映画版を観た当時から、アンダーソン作品に携わる特撮スタッフのパイロテクニックには舌を巻いていた。爆破映像は日本の特撮の足元にもおよばなかった。

 少年だった当時の私は、日本映画や怪獣物テレビ番組の特撮シーンの爆破よりずっと迫力のある映像にウットリしたものだ。

 デレク・メディング率いるスタッフの、爆発による煙・火炎・破片の迫力ある飛散の映像は、ハリウッド映画の特撮を先取りしている。しかも、それを小さなスタジオで、さらに四畳半ほどのテーブルの上(カメラをローアングルに設置するため)でやってしまっている。 

 ミニチュアモデルの爆破には主に、手でちぎって自由に大きさを選べる粘土状の電気信管式火薬が用いられ、さらに火炎の演出として薄いゴム風船に火薬と適量のガソリンなどを入れてセットされたものが追加される。それらのモデルへのセッティングは職人技が必要とする。その技が、彼らは当時の何処のスタッフよりウマイのだ。

 いかに迫力よく見せるかというその技には、モデルが壊れやすいよう細工をしたり、火薬の取り付け場所の選定・・・ モデルが完全に吹き飛んでしまったり、カメラのレンズを塞いでしまう方向に破片が飛ばないようにしたり、煙が出すぎて見えなくならないようにしたり、またはハイスピード撮影を、実際の物体の物理的大きさに合わせた回転数にしたり(日本特撮の一番ダメな部分)・・・というものが完璧にそろう必要がある。

 さらに、それらの技を総合的にまとめる最も重要なテクニックとして、爆破タイミングの設定がある。

 現場ではハイスピート撮影が行われるので、何発かの爆破では数秒の間に時間差をもって計算されて着火されるのだが、その着火のプログラムは現在では、ミニチュアであろうと原寸大セットであろうとコンピューターに組み込まれたシーケンスにより進行する。

 しかし当時では直接、スタッフが順番に着火ボタンを押した。

 その絶妙な人技による見事な爆破タイミングが「決死圏SOS宇宙船」で観られるのは巨大ロケットと発射台の爆破・崩壊シーン。

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・まず発射台塔屋、左が爆破、壁面が後ろ方向に崩壊。手前に崩れたのではロケット本体を隠してしまう。その後発射台下部より順次点火。↓

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・ロケット本体より火炎を伴った爆破が発生。鉄骨状の破片が手前に飛び散る効果音がちゃんと入れてある。こういうこだわりと気配りは当時の日本特撮にはない。↓

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・倒壊するロケット。地面への激突ではどうなるかを期待させるため、あえて途中で爆破させない。ハイスピード撮影は10倍速を超えると思われる。ロケット本体から誘爆した姿勢制御ロケットの噴射が演出してある。↓

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・ロケット倒壊後、大爆発。大小の破片飛散の演出が素晴らしい。↓

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・燃料への引火を想定する火炎の爆発。すさまじい迫力。↓

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 ハイスピード撮影と爆破タイミングがぴったりと決まった、

 「サンダーバード6号」のミサイル基地爆発シーンとならぶ名爆破シーン。

 この一連のシーンも撮影現場では5秒くらいで終わってしまう一発勝負の仕事。

何度観てもすばらしい。お見事でした。

 

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「決死圏SOS宇宙船」の特撮、その1

http://five-of-nine.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-4835.html

よりつづき・・

 究極のロケット発射描写

 デレク・メディングスは私と同じ、ロケット・ヲタだったらしい。

 それは「サンダーバード」の中のいくつかのエピソードから感じていた。

 彼は、凡庸な特撮監督だったら省いてしまうようなロケット発射準備・・・ ロケットへの燃料注入、作業スタッフの発射台からの退避、発射ガントリーの退避、秒読み、ロケットをつなぐコードの切断、打ち上げロックピンの解除、等々・・・ の描写を、この大人の鑑賞にも堪えられるテレビ番組のなかのいくつかのエピソードで、丁寧に時間とカットを割いて見せてくれたことでも分かる。

 彼にとって、ロケットの打ち上げとはミニチュア特撮の真髄を表現する究極のシチュエーションなのである。

 つまり、ロケット本体を「本モノ」らしく見せる。ロケット発射台を「本モノ」らしく見せる。打ち上げまでのシーケンスを「本モノ」らしく見せる。ロケット噴射と上昇を「本モノ」らしく見せる。それが彼の仕事であり、腕の見せ所であり、楽しみだった。・・・としか思えない。

 彼は、1968年当時、この映画で、まもなく月に到達するであろう、アポロを搭載したサターンロケットとその打ち上げシーケンスをNASAへのリスペクトと憧憬をもって完璧に再現した。

 これは彼の特撮人生の中で最高の仕事だったと言ってよいのではないか。

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↑・ロケット管理塔がゆっくり開くカット。 オープンセットの太陽光でのローアングル撮影とミニチュアの汚しが巨大建造物への圧倒的実写感を与えている。ロケット本体の大きさが2メートルくらいのものとは信じられない。

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↑・ガントリー・ミニチュアの造り込みのディテールがすごい。細かく入り組んだ、それらしく見えるケーブルやパイプが偏執的といってもいいほど再現してある。

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↑・燃料注入パイプの切断。止まってからガチャンと跳ね上がる演出もハイスピート撮影であり、実写感十分。ブースター本体から発する水蒸気の演出も効果満点。

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↑・秒読みゼロ・・・ロケット本体のロックピン解除。これもガチャンと反動で跳ね上げる実写感のある演出。ここまで見せるか・・・。

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↑・ロケット噴射のガス抜き口のカット。水の噴射まで再現されている。「アポロ13」でもこれに近い演出があったが、ただガスが噴出するだけだったと記憶する。ここまで見せるのは本当にヲタ的だ。

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↑・もう実写にしか見えない発射全景。ガス抜き口からの煙の演出の見事なこと。

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↑・第一段ロケット下部ではメインのロケット噴射の火炎とは別に、脇から不規則に噴出する煙が描写してあり、これもターボポンプから噴出するガスを再現したと思われる。この細かい気配りがすごい。

・こちらは本モノのサターン・ロケット打ち上げ

 

 

 

 

 

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「1941」

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- 墨氏の愛した特撮、NO,5

ミニチュア特撮史上、究極のビル群演出と航空機の操演。

 スピルバーグの映画「1941」は1979年公開であるが、当時、映画館で観たとき、この映画のミニチュア撮影の出来のよさには腰を抜かしてしまったものだ。

 あの、夜の照明の中で霧に霞んで林立するロスのビル街は、ミニチュア特撮・ミニチュアの概念を超えるもので、もう芸術というありきたりな言葉でも表現しきれない、究極のスモールスケール・モデルと言っていいと思う。

 もし、航空機がそのビル街の中をロールしながら飛行するという、絶対実写では不可能なシーンが無ければ、観客は絶対、ホンモノと見て疑わないだろう。ロスのどこか古い町並みで撮影したものだと見てとるだろう。いや、ひょっとして、今だすべて実写だと認識している人も居るかもしれない。

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 ・・・・  ダグラス・トランブルの言葉、「ミニチュアに遠近感を与える為にはセットにスモークを焚かなければならない」・・・ というセオリーを忠実に守った撮影。

 ビルの一つ一つの窓は明るさに微妙な差をつけさせ、あたかもカーテンやブラインドを下ろしているような、生活感を出す工夫がされている。 これが日本の特撮だと、ミニチュアの窓はすべて同じスリガラスをはめ込み、モデルの中央にランプを置くだけという手抜き処理が成される。これでは箱を並べただけにしか見えない。つまり子供騙しである。

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 飛行機の背面飛行や360度回転のエルロンロールは、モデルに3本のワイヤーを通し、引っ張りながらセットの両端にある回転ドラムをシンクロさせ廻すことにより撮影する。タイミングが難しい。モデルの飛行シーンは目を凝らして何度観ても、ワイヤーを見つけることは出来ない。これらの操演はA.D.フラワーズが担当した。彼は20世紀フォックスでもL.B.アボットと組んで特撮をやって来たベテラン。

 電飾の下の道路で、車のドライバー目線になって進む映像はカメラに台車をつけて撮影したのだろう。あるいはシュノーケルカメラを使ったか。・・・(このカメラのリゾリューションは通常のカメラより劣るのではないだろうか) 

 私は初見の時、この映像は完全に実写だと思っていた。映像は実際に車に乗っているかように微妙に振動し、前方の交差点を横切る車もリアル。

 道路はわざと霧で濡れた状態にしてあり、その路面に反射する光線によりディテールと道路の遠近感を強調している。隅々まで芸が細かい。 尚、一部カット、道路上に小さな兵士たちがハメコミ合成されている。

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 遊園地のミニチュアの出来もパイロシーンも素晴らしい。台から離れても、何故か電飾も消えず転がっていく観覧車のシーンは、この映画で唯一、私が大爆笑したところだが、転がる車輪の下には、ちゃんと砕け飛び散る破片やホコリの描写がされていて、この細かさ、ホンモノに見せる気配りに脱帽。リアルに見えるからこそ爆笑してしまうシーン。 

 同じく、水面に滑落するカットでは、絶妙なタイミングの爆薬による水柱で吹き上がる水しぶきを演出。マイリマシタ。

 ミニチュア制作は「未知との遭遇」でマザーシップを制作したグレック・ジーン。彼はロスのミニチュア市街の制作に2年間を費やした。それをやらせる制作側も彼にも脱帽。(中央の東洋系の人)

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 私にとって、「1941」より以降の、東宝系・ゴジラ映画などで描写されるビル群のミニチュア特撮は、この映画によってすべて陳腐化したと言える。

 

 

 

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「サンダーバード6号」のパイロシーン

- 墨氏の愛した特撮、NO,4

ミニチュア特撮史上、もっとも優れた爆発シーン。

 映画「サンダーバード6号」は既に5回は鑑賞しているが、いつも楽しみにしているのはスカイシップ-1が引っ掛かっていたタワーから墜落して、ミサイル基地が爆発・炎上するシーンである。

 このシーンの特撮はデレク・メディングスの最高傑作、いやミニチュアパイロシーン史上の最高傑作と私は断言したい。 照明、ミニチュアの精度(2段式のミサイルが倒れると2つに分裂するという細かさ)、モデル・道路の汚し、ハイスピート撮影(10倍以上と推測する)、燃料を含む爆薬のセットと点火タイミング、ファイヤーボールの迫力、退避する車両の発進・移動、どれをとっても完璧である。

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 退避する2台の車両は、停止状態からスムーズに発進加速、手前に向ってから右へカーブする動きは実写そのもの。バックのミサイルと発射台も本モノと見間違える。

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 私が見てきたミニチュア特撮・パイロシーンの中で、これだけ盛りだくさんの優れたパイロカットがある映像がちょっと思い当たらない。しかも、メディングスはスタジオの小さなセットでこれを実現させているのだ。

 完全に脱帽します。参りました。

 この映画のコメンタリーで、シルビア・アンダーソンと監督のデビット・レインがこのような内容の発言をしていた。

・・・ 「子供騙しの特撮をしてはいけない。子供騙しということを子供はすぐ気がつく。 5歳児に5歳向けの特撮を見せてもだめで、彼らは10歳向けの特撮を見たがるものだ。」 ・・・

追記: さらにコメンタリーによると、メデイングスがもっとも苦労したシーンは、引っ掛かったスカイシップ-1の下でよじれ砕ける鉄骨部分の描写だそうで、うまく撮るのに2週間かかったという。 このカットがそう。

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