カテゴリー「サンダーバードの特撮」の記事

サンダーバード2号を飛ばしたい

 サンダーバード2号はデザインしたデレク・メディングス本人も、サンダーバードメカのなかではもっとも気に入っている航空機だそうで、テーパー翼なども使ってあって素人が見ても、ほんとうに飛びそうなスタイルをしている。実際に主翼を少し大きくしたラジコンが飛行している映像もあるくらいだから、航空工学的にも理屈が合致しているのだろう。

 さて、模型でなく実物のサンダーバード2号を造るとしたら、どうすればいいか、自分なりに乏しい知識で想像してみた。

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 まずVTOL(垂直離着陸)をどうするか。

 2号の重量は約400トン。仮に装備として30トンのジェットモグラを搭載すると総重量は450トン近くになる。これを垂直に持上げなければならない。すると4つのエンジンひとつあたりの推力は120トンくらい必要となる。これをジェットエンジンで賄うには、現在最大パワーを誇るボーイング777に搭載されているGEのファンジェットエンジンの3倍近い推力のものが必要となる。ジェットエンジンのサイズ・推力はもう限界に達していて、これ以上のパワーアップは望まれない。また、ガスタービンを使った大型のリフトファンは大推力を発生するが、あの狭い場所には載せられないのである。つまりロケットエンジンを使うしかない。

 ロケットエンジンならば、小型なので傍を通るエア・インテークの空気流入を妨げない。エンジンは比推力の高い液酸・液水燃料のものがよく、三菱重工のLE-7A(推力110トン)が適当か。ただしメーカーに努力してもらい10トンほどパワーアップさせる。液酸・液水タンクは機体後部に重い原子炉がある構造上、バランス配分でコックピットの後ろにかなりの容積をもって置かざるをえない。尚、この燃料を消費するとまたバランスがくずれるので救助が終了して帰還するには、ジェットモグラのコンテナ設置位置を前方に寄せなければならない。

 ロケットはあっという間に燃料を消費するが、あの燃料タンク容量ではどれくらいロケットを噴射できるだろうか。これはあてずっぽうだけれど、四つもエンジンがあるので、合計60秒間程度だろう。これはVTOLを10秒で終わらせ直ちに水平飛行に移行するのなら4回は使用できることになる。つまり発進と着陸が2往復で終了。現場には1回着陸して基地まで帰るのがやっと。もちろんロケットエンジンで空中のホバリングなど自殺行為となる。

 40秒間ロケットを噴射してもまだ20秒分残っているが、これは水平飛行のラムジェット、スクラムジェットの燃料として使用する分となる。

 水平飛行をどうするか。

 まず亜音速で飛行させるには、原子力の熱を使うジェットエンジンを使う。原子炉を冷却した400度くらいの液体ナトリウムをエンジンの熱交換機まで導き、圧縮した空気を温め推力を発生させる。この原子力ジェットエンジンシステムはもう60年も前に考えられた間接サイクルという方法。熱交換機温度が低いので十分なパワーが発生するかが問題だが、そこはブレインズになんとかしてもらう。尚、緊急発進用に通常の化学燃料を使う燃焼室とアフターバーナーも装備させる。その燃料タンクは小さくてよい。

 マッハ3までの超音速飛行をどうするか。

 原子力ジェットエンジンの圧縮機とタービンはもう必要ないのでシャッターで閉じ、バイパスされたラムエアを熱交換器まで導き原子力ラムジェットエンジンにさせ推力を発生させる。これは超音速偵察機SR-71とほぼ同じ方法。

 マッハ6.7の極超音速飛行をどうするか。

まず、メインの原子力ジェットエンジンは空力加熱の問題が発生するので停止。

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↑モデルにあるインテークのシャッター状のものは必要ないが、停止した原子力ジェットエンジンの機体前部エア・インテークはシャッターで閉じられる。

 メインジェットエンジン・排気口ナセル外側の空間を純ラム・ジェットエンジンとして機能させマッハ4あたりまで利用、合わせて水平尾翼部にスクラムジェットエンジンを稼働させ極超音速時の推力を発生させる。

 尚、燃料は液体水素を使用。コックピット後部のタンクにある水素は空力加熱によって熱くなった機体先頭部と主翼・垂直尾翼を冷却した後、エンジンまで導かれる。

 サンダーバード2号は現場まで30分で到着するので、極超音速飛行は20分ていどの時間となり、水素燃料は往復分足りると思う。

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サンダーバード2号到着

 2年以上も定期購読で配達されてきたデアゴスなんとかのジェリー・アンダーソンDVDコレクションが2013年6月で終了した。もう半年ぐらいは続くだろうと勝手に思い込んでいたので、ジェリーも最近、老後施設で亡くなったことだし、配達されなくなるのも同時に寂しい気がする。

 定期購読者にはサンダーバード2号のモデルが特典でプレゼントされ、これが25日に到着した。これはダイキャスト製で、適度に重く、塗装なども良く出来ている。

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 大きさを比較するコインなどを置くべきだった。全長は19センチ。実物はこの400倍でジャンボジェット並みのサイズ。小学校2年生の時に買ったイマイのイージーキットの2号と同じくらいの大きさに見える。

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ジェットモグラがカワユス。

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↑よく見たらコックピットの中に赤いシートが3座ありました。けっこう凝ってますね。

 このモデルには伸縮する4本の脚がついていたけれど、造りが悪くてそのうちの1本が宙に浮いた状態となり、取り付けないまま飾っている。

 ところでこの2号。核融合エネルギーによるラムジェットで巡航し、最高速度は約マッハ6.7。さらにゼロ発進時はロケットエンジン、垂直離着陸はロケットとターボファン(普通の化学燃料)というハイブリットメカを使用の複雑な飛行システム。

 飛行メカファンには突っ込みどころ満載だけど、あえて私は指摘しません。

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第15話、「大ワニの襲撃」

サンダーバードの特撮、NO,5

原題- ATTACK OF THE ALLIGATORS!.

監督- デヴィット・レーン

登場メカ- 1号、2号、ホバースクーター

-------- シリーズ中、最も困難を極めた撮影? 

 実際に生きている小型ワニが使われているが、もちろん調教師が付いて来たという。このワニのサイズは、本モノがラストシーンでバスタブの中で泳いでいるので、だいたいの見当がつく。身長は50センチから1メーター位のようだ。

 実際の生き物をミニチュア特撮の中で巨大生物として動かした例としては、アーウィン・アレン作品でのトカゲや東宝「キングコング対ゴジラ」でのタコ(「ウルトラQ」でも流用)がある。

 私はこのやり方に特に批判するものでもない。本モノなので圧倒的リアル感がある。なまじっかゴム長靴のような出来の悪い着グルミや、ギクシャクしたフィギュアを動かした下手なストップモーション撮影よりよっぽど迫力がある。

 サンダーバードのこのエピソードは、生き物を使ったミニチュア特撮の中では最も成功したものの一つだと思う。

 ただし、撮影の困難さは想像してあまりある。一般の映画の撮影でも、動物と子供に関しては思い通りにいかず時間を食い、フィルムを浪費して泣かされるようだが、相手が爬虫類ときてはサンダーバードのスタッフにも当初絶望感が発生したのではないだろうか。 なぜなら、ワニというのは動物園で見るかぎり、剥製のようにジッとしていて、めったに動かないからだ。

 調教師がいるとしても、どうやってワニを動かしたのだろうか。電気ショックという手もあるが、外に知られたら虐待だのと騒がれる。

 特に驚いたのは、ワニ君の横移動撮影があるカットだ。

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 元気なワニ君が左に向って突進しているところをレールに乗せたカメラで横移動撮影。ワニの後ろからツッツイたのか、前方でエサをちらつかせたか不明だが、レールと平行に走らせたスタッフに脱帽。恐らく何テークもの撮影の中の1本。相当フィルムを使っただろう。

 さて、研究所の建物をワニが襲撃する場面はどうしただろうか。ワニの尻尾が壁や窓を破壊するカットは、ラバーかなにかで制作した尻尾だけのニセ物を、クローズアップしてスッタフがぶつけて撮影している。

 しかし、明らかに生きたワニ自体が暴れて建物を破壊しているシーンがあり、このカットを凝視すると、カメラに入らないワニの頭の後ろあたりに、人の指らしきものが写っているのが見えた。つまり、どうやら頭を手でつかんで押さえ込み、ワニの胴体を振り回して撮影していたらしいのだ。

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--- 画面、右端がスタッフの指(左手の人差し指)と思われる。

 これはちょっとした動物虐待であるが、事実、ジェリー・アンダーソンによると、このエピソードは動物愛護団体から問題視されたようである。たしかに麻酔?・・・でワニが腹を向けて引っ繰り返るシーンもかわいそうな気がしないでもない。

 さて、今回は2号の装備ではたいしたものが登場しないが、湿地帯を進むのにホバースクーターが活躍する。(第5話、「CITY OF FIRE」などでも登場)

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 このスクーターはアンダーソン作品では、「宇宙船XL-5」から同様の物が見られるが、これはマリオネットでは人の歩くシーンが不自然に見えるので、極力、移動はパペットが座っている姿にしたいための手段として用いられている。つまりパペットはスタコラ歩いてはいけないのだ。

 アンダーソン作品の他のスーパーマリオネーションでも、人は歩かず、ただ操作卓のイスにすわっているだけで自動的に移動したり、電動の車椅子に座って移動するシーンなどが多々見られる。これは操り人形での一つのテクニックなのだ。ゴマカシと言えばミもフタもないのだけれど。

 しかし、このスクーター。当然、強力なジェットを下向きに噴射しなけれは宙に浮かないはずだが、廻りの草木が風で揺れたり、ホコリが舞い上がるなどのジェット描写がいっさい無く、ただ、無重力状態のように浮いている。この演出には私は不満を持っている。

・・・ 追記: それとも「サンダーバード6号」のスカイシップ1のような反重力エンジンが搭載されているのだろうか。

 ワニの鳴き声はどの動物から採ったのだろうか、なかなか迫力のある声。またジャングルの鳥たちの鳴き声もステレオ録音で素晴らしくいい音。

 全作品の中でも、特にこのエピソードはデジタル・リマスターの画質・音が優れている。

そのため、撮影中のカメラとオペレーターの手が写りこんでしまったカットがあった。

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--- 左の窓ガラスに、ズーミングしていくカメラとオペレーターの動く手が反射して写っている。(実際の動いているDVD画面でないと確認できない)

 ナゾの夫人は、原語ではペネロープ役のシルヴィア・アンダーソンが吹き替えているようだ。

追記: 「サンダーバードを作った男」- 著・ジェリー・アンダーソン・・・に、このエピソードの裏話が載っていて、ワニを動かすには実際に12ボルトの電気ショックを使ったことがあると記載されていた。 又、サンダーバードの撮影とは知らず、うわさを聞いた動物愛護協会の査察官がスタジオに抜き打ち検査に来たが、たまたまサンダーバードの大ファンだったので、逆に協力を受けたということだ。

 

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第14話、「火星ロケットの危機」

サンダーバードの特撮、NO,4

原題- DAY OF DISASTER.

監督- DAVID ELLIOTT.

IRメカ- 4号、牽引クレーン(2号)、腕時計式テレビ電話、コンパクト式テレビ電話

ゲストメカ- 火星ロケット

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 火星ロケットをトレーラーで移送するシーンはいつもの事ながら堂々としていていい。

このシーンの音楽は前作「スティングレイ」で使われた名曲”オイスターマーチ”が流れる。巨大な物体がゆっくり動いている様に実にマッチした選曲。

-- 映像音楽・参照 http://www.youtube.com/watch?v=fahl6Lb0UCg

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 いつも感心するのはミニチュアの表面の「汚し」。サンダーバードのスタッフはモデルの出来立てを撮影に使うようなヤボなことはしない。丁寧に時間をかけて汚す。 この「汚し」-ウェザリングを省くとどういうことになるか。 プラモデルのように照明の光を表面で反射させてしまい、オモチャ然となってしまう。 吊橋の「汚し」も素晴らしい。

 ところでMSPとはなんだろうか。MARS. SURVEY. PROJECTだろうか。

 このエピソードでの特筆すべきは、実際の建築物の剛性をうまく表現していることで、小さいミニチュアで鉄骨構造のひねり、ゆがみ、耐久力を上手に再現し、トレーラーでゆっくり搬送している重量物体がどうなるか、また、それによって吊橋の運命がどうなるかと、ハラハラ・ドキドキさせてくれることだ。(吊橋のワイヤーが次ぎ次ぎに切れていくところでピークに達する)

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 冒頭の俯瞰カットで、強い風雨によりこの吊橋が前後左右にひねり、煽られている状況を見せる。ミニチュアを硬い材質で作成するのではなく、剛性を弱くして実物に近い動きを見せる細かい演出に驚く。 建築物のみならず飛行機、自動車などのミニチュアを柔に制作し、壊れやすくすると実物感が増すということを示している。

 ロケットと橋の崩落も、小さなミニチュアにもかかわらず、適正なハイスピード撮影とともに圧倒的な迫力を演出している。ここでも橋の鉄骨材料や、弱い橋げたの砕け落ちる状況が計算されている。

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第3話、「ロケット”太陽号”の危機」

サンダーバードの特撮、NO,3

原題- SUN PROBE..

監督- デビット・レーン

IRメカ- 、サンダーバード3号、2号、ブレインマン、セーフティビーム発射雪上車(XJ:157?)、サンダーバード1号は珍しくお休み。

ゲストメカ-、太陽号(SUN PROBE)、テレ・ラジオカメラ(画面には映らず)

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サンダーバード3号の初登場のエピソードであるが、その前の「太陽号」打ち上げシーケンスが素晴らしい。

大型ロケット、「太陽号」のデザインは、当時のNASAや、ソ連のロケットのいずれにも属さないユニークなものだが、若干、下のシェル部分は、当時開発中のサターン1B型に似ていないでもない。またリフト・オフ時は、3つのエンジンで上昇しているが、噴射穴は3つばかりでなく、同心円上に沢山並んでいて、ソ連が後で月ロケットとして開発したN1ロケットの第一段目の噴射穴にソックリである。サンダーバードが先取りしている。

まず、宇宙飛行士の乗り込み。とても小さいミニチュアを仰ぎで撮影し、巨大感を演出。乗り込んだエレベーターのミニチュアが小さいため、停止では、多少ギクシャクしているのが残念。

Dscf0062_medium 発射シーケンスでは、ロケットエンジンの点火がマイナス10分前くらいから開始され、多少、首をかしげる。点火は5秒前くらいが普通であるが、推力アップに長い時間のかかるエンジンということである。

発射台からの人員退避では、白いワゴン車が発射台の下から発進するのだが、このミニチュアのクルマが、とても上手に、スムーズに発進・加速していて、スタッフの操演感覚、物理感覚のセンスに拍手を送りたい。日本のミニチュア特撮では、大概、いきなりゴトッと動かしてオモチャ然とさせてしまうものだ。

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Dscf0064_medium 燃料注入チューブの退避と、この設備の描写もまた、スタッフがよくロケット施設の勉強をしていて感心してしまう。設備が地下に潜っていくのも納得のいくことで、わざわざその操作をさせる気配りに頭が下がる。このロケット燃料はTOXと描いてあるので毒性のようで、ビドラジン系なのだろうか。未来の話としてはチョット古いロケットエンジンである。

私が、最も驚くのは、リフトオフ直前で、アンビリカル・コード(発射までの制御や電源を供給するコード)の切り離しと、打ち上げロックピンの解除の描写がされていることで、特にアンビリカル・コードが外れ、それを支えるクレーンが倒れる動きは実写そのものと言っていい見事なものである。尚、現在の打ち上げでは、この倒れるクレーンは使われていないが、NASAの初期のロケットではよく見られた。

Dscf0065_medium コードがロケット本体から外れ、クレーンが倒れていく。コードがダラーンと揺れていく動きは実写そのもの。ハイスピード撮影が極めて適切。後退する発射台の精密なこと。

アンダーソン作品では映画「決死圏SOS宇宙船」のロケット発射台がこれより巨大かつ緻密で、ミニチュア特撮史上、最高の作品といってよい。

サンダーバード3号の初登場では、隊員がソファに座ったまま乗り込んでしまうメカが紹介され、少年のころ面白がったものだが・・・(替わりの空のソファが上昇して行くが、オフセットしているのに、どうやって元の位置にはまるのだろうか)、・・・ここでは3号の下部だけ精密に作られたミニチュアが出てくる。リフト・オフでは、一つのエンジンに推進火薬が3個点火しているように見えるが、1個では火炎が小さすぎる為だろう。そうするとエンジンが合計9個のクラスター型ロケットといえる。

Dscf0066_medium 同時に9個の火薬をうまく点火させるには、何度もテークを繰り返したかもしれない。堂々とした迫力のある上昇シーン。

Dscf0067_medium ゆっくり離れる地球をバックに、ロケット噴射のガスだけを見せるアイデアは素晴らしい。現在でも、実際の打ち上げでは、このシーンと同じ構図で噴射のようすをライブ中継することがあり、先見の明がある。尚、実際の宇宙空間では燃焼ガスは、ほとんどカメラに写らない。

このカットや、ブレンインマンの起動音、太陽のギラつく音などに電子音が使われているが、これはバリー・グレイのもので、以後のアンダーソン作品には頻繁に効果音として使われる類のものである。個人的には彼の作る効果音は私の好みではない。

尚、この回より、危機に遭遇したときなど、打楽器のボンゴを使ったエキサイティングな音楽が挿入されるようになった。以下参照。

http://www.youtube.com/watch?v=IjkRXierOQE&feature=PlayList&p=13BB57700166CBDA&playnext=1&playnext_from=PL&index=3

「太陽号」の先端には3人の宇宙飛行士が乗船しているが、太陽の破片を採取するために、本体より分離され、一緒に太陽の付近まで飛んでいってしまっている。あのキャビンの先端がさらに分離し、採取してくるという描写が省かれている。ちょっとしたミスである。

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第2話、「ジェットモグラ号の活躍」

サンダーバードの特撮、NO,2

原題- PIT OF PERIL.(穴の危機)

監督- デスモンド・サンダース

IRメカ- 磁力牽引車、モール(ジェットモグラ)、リモコンVTOLカメラ

ゲストメカ- サイドワインダー(ゴング)、ヘリジェット、タンデムローターヘリ

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アフリカの大地を4本足で進む、米陸軍の大型マシン「サイドワインダー」は重量500トン。

冒頭ではこのマシンの足だけを見せて期待感を煽る、うまい演出。巨大物体がゆっくり進行している時のバリー・グレイの音楽もいい。この音楽は後の作品に「クラプロッガー」の移動でも使用されていたと記憶する。

正体を現した四本足の機械が進む様は、亀虫のようで、多少コッケイでもあるが、4本の脚がテレスコピックに伸び縮みするメカの操演がちゃんと成されているので、納得いくものである。

この「サイドワインダー」が地割れから滑落するシーンは、例によって小さいミニチュアにもかかわらず、適切なハイスピード撮影と、臨場感ある効果音で、物理感と巨大感を損なわない優れた撮影となっている。

Dscf0076_medium 滑落した「サイドワインダー」周囲で燃える炎の大きさから、このミニチュアが40センチ四方程度の小さなものであることがうかがわれる。

ここで注目すべきは、滑落し、破壊されたた機体から噴出する黒煙のすばらしさ。この黒煙はゴムなどの燃焼ではなく、明らかに特殊な火薬を利用しているようだ。石油施設の火災などで見られるような実写感を与えている。東宝「東京湾炎上」のようなパイロシーンなどで、ただ炎だけの押し売りで済ます中野特撮に足らないのは、こういう「気配り」とアイデアである。

Dscf0074_mediumハイスピード撮影に伴って、見事な黒煙の巻き上がりを演出している。

このエピソードでは、アメリカ軍の航空機として、タンデムローターのヘリと、ジェットによるVTOL機、ヘリジェットが初めて登場する。これらの垂直離着陸では、地面に風圧による砂埃が手抜かり無く演出されているが、どうやっているのだろうか。

私が想像するに、ミニチュアの中にフロンガスなどの高圧ボンベがセットしてあり、無色のガスを噴出させているのだと思う。

これはサンダーバード全作品中に登場する、車両の下から噴出される砂埃も、同じ仕掛けではないだろうか。

その砂埃を巻き上げ、2号コンテナから出現する「モール」、ジェットモグラ。

Dscf0075_medium キャタピラの下から噴出する砂埃の良いこと。

ジェットモグラのウェザリング(汚し)の見事なこと。

このジェットモグラが地中に潜るシーンでは、ドリルを駆動するモーターの反トルクで、下部キャタピラメカが引っ繰り返ってしてしまうので、地面に固定されてあるはずである。

ドリルメカを進ませるには、糸で斜め下に引っ張っていけばよいが、カタパルトからドリル部分が離れると、胴体が逆回転してしまうので、その部分は撮影されていない。そして、あらかじめ付けてある穴の脇からは、エアガンなどで、土砂を吹き飛ばしている。

Dscf0077_medium 4つの車軸のキャタピラメカは、今回に登場する「磁力牽引車」や他のサンダーバード装備に共用されているもので、イギリスで販売されていたキットの流用だと記憶している。

このキャタピラ部分のアップ映像や、土砂を巻き込んで空回りしている映像は、昭和40年代当時のプラモデル好きの少年たちをワクワクさせた。

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「サンダーバード」の魅力

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特撮メモ、NO,32

サンダーバードの特撮、NO,1

1966年、4月10日、日曜日、NHKで午後5時40分から始まった「自然のアルバム」のエンディングテーマが終わり、午後6時となった瞬間を今でも覚えている。「サンダーバード」の日本初放映の時間であった。

8歳の少年には、なにもかもショックだった。私のミニチュア特撮の基礎概念は、この番組から確立された。

その魅力を、私のつたない文章力では、とうてい一批評としてまとめて書ききれない。そこで第一話「SOS原子力旅客機」を例に箇条書きでメモする。 この作品は「サンダーバード」のイントロデュースとしての役割を果たしている。全メンバーの紹介と国際救助隊のポリシーを謳っている重要な作品であり、かつ、全作品を代表する優れた作品となっている。

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・ 音楽のすばらしさ

  バリー・グレイ作曲・指揮するアコースティックなフル・オーケストラのマーチには今だ血湧き肉踊るものがある。また劇中の危機が迫った時の音楽、巨大な物体が移動しているときの音楽、解決したときのファンファーレ、それらすべてのシンフォニックなオーケストレーションが完璧で、長編映画音楽のような重厚感、満腹感がある。 

ただし、私は、後に日本の民放で、30分の前・後編番組にされてしまった際、第2テーマにつけて流された日本語歌詞の歌は、せっかくのオーケストラのオリジナルを潰して台無しにしてしまっていると断言したい。 私は子供のときから、このとってつけたような歌には耳をふさいでいた。 

・ ミニチュアの遠近感のすばらしさ。

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  これはミニチュア撮影の基本であろうが、狭いスタジオ内で実にうまくセットを組みつけている。番組の冒頭、「ビデカラー」および「スーパーマリオネーション」というタイトルバックの製油所らしきミニチュアセットは、手前右に立ててある鉄骨タワーと、はるか遠景に見える工場群は、恐らく1メートルも離れていない。それは、遠景の爆発火炎が瞬時に鉄骨タワーに飛火することで確認できる。箱庭のような小さなセットを、いかにうまく遠近法を利用して広大な場所に見せているかが分かる。

・ 地面スレスレの撮影。

Dscf0066_medium Dscf0068_medium ミニチュアセットはスタジオの床に組みつけてあるのではなく、台の上にある。それにより、カメラをセットの台上、ギリギリの高さにセットでき、レンズのマジックも利用して地上の物体や建築物の巨大感を引き出すことに成功している。つまり、ミニチュアに対して地面に立つ人の目の高さにカメラがある。

・ 巨大飛行機メカ、重機メカの動きが物理的に合っている。

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  意外と小さいミニチュアメカなのに、巨大感・重量感があるのは、始動・減速の際の加速度をうまく演出しているから。 サンダーバード2号の離着陸、コンテナギアの上げ下げなどが特にうまい。 これの悪い例としては「ウルトラマン」のビートル機の操演であり、離着陸では、いきなり「ドスン」と動かしてオモチャ感を出し、失敗している。 

・ 照明、ハイスピート撮影のすばらしさ。

  スタジオ内撮影なのに、実写の昼間のような臨場感ある映像になっている。どうやってライトを当てているのだろうか。日本のスタジオ特撮映像では絶対マネできない照明。ハイスピート撮影は恐らく5倍以上で回しているだろう。この撮影が、いかなるシーンでも安定していて、爆発やメカの動きに対して物理的な実写感を盛り上げている。これに対して日本の特撮では、不可思議なことだが、通常の回転で撮影することもあり、チョコマカとしたオモチャ的動きがよく見られる。(情けない話だが、使えるフィルムが乏しいという事情もあるようだ)

・ ウェザリング(汚し)のテクニックのすばらしさ。

  滑走路のタイヤ跡、メカの汚れ、ジェット排気の汚れ、ビル壁汚れなど、「サンダーバード」のスタッフの「汚し」の仕事は私が観てきたものでも最高といってよい。これは特撮監督、デレク・メディングスの指示による。

・ パイロテクニックのすばらしさ。

  爆発・炎上も、この特に小さいセットのミニチュア撮影としては、世界最高のものである。炎と飛び散る破片・土煙は、もはや芸術といってもよい。それは火薬・油の絶妙な調合と破片・土砂のセッティング、そして適切なハイスピード撮影と照明の賜物である。日本のテクニックの比ではない。

・ 音響・効果音のすばらしさ。

  ジェットのタービン音、爆発音、鉄骨材料の砕ける音、等々、すべて手抜きなしで入れてある。アカデミー音響効果賞ものといってもいいだろう。日本の映画、特に東宝映画の効果音の手抜きがひどいので特にそう感じるのかもしれない。

・ ミニチュアメカに見られる油圧的動作の細かい演出。

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  これは物理的動作としても言えるのだが、キャタピラメカなどの車輪の上下動や油圧アームなどのメカ動作がちゃんと演出してあるということ。この第一話では、コンテナから出動するエレベーターカーの車輪や上のステージを支える油圧サスペンションが、まるで実物のようにスムーズに動いており、日本の特撮ミニチュアのようにギクシャクした動きのオモチャに見えないこと。

  円谷英二・特技監督「世界大戦争」における1シーンで、同じように、輸送機格納ドアから搬出されるミサイルを載せたトレーラーのゴトゴトした動きと比較すれば、この違いが分かる。

・ 車輪からの土煙も演出してあること。 細かい演出。

・ 巨大なドアや扉もモーターのように滑らかにゆっくり動作し、実物感を演出していること。

  2号コンテナ格納扉の開き方、サンダーバード基地の2号格納庫、1号発進プールの開き方など、これらの動きも実際にギアードモーターなどを使用しているかのように、スムーズに作動し、巨大感を演出している。これは人の手で糸を引っ張り、動かすという方法がほとんどだが、実際にモーター駆動なのかもしれない。それに、こういうシーンでもハイスピード撮影しているのだろう。ギクシャクしていない。スタッフの操演センスもいい。

・ ロケット噴射の演出のすばらしさ。

  あのロケットの火炎・煙は実際の推力を感じさせる細長いスマートな噴射で、モデルの巨大感と飛行体の存在の演出に貢献している。 この火薬はイギリスの火薬会社に特注したもので、日本の特撮マンもマネができない。

  少年時代の私は、日本の特撮物ロケットの、屁みたいな火炎噴射の情けなさに憤慨し、どうして日本のスタッフはイギリスに行ってこの火薬の秘密を探ってこないのかと嘆いたものである。 尚、この火薬は映画「地球は壊滅する」の核ミサイル、映画「月ロケット・ワイン号」のミニチュアにも利用されている。

・ 飛行機メカのデザインのすばらしさ。

  登場する飛行体の制作にはプラモデルなどの部品を一部使用しているが、そのためか航空力学的にも、実際にありそうなデザインとなっている。サンダーバード2号などは、実際にラジコンにすると飛んでしまうのだ。 この第一話に登場するマッハ6で飛行する素敵なファィヤーフラッシュ号は、当時、アメリカで開発していたXB-70「バルキリー」のデザインの影響を明らかに受けている。

  特撮監督のデレク・メディングスはイギリス空軍でトラックの運転手だったそうだ。またジェリー・アンダーソンの兄も空軍にいたということで、基本的にヒコーキ好きがスタッフに多い。 

  ファンには怒られるかもしれないが、「サンダーバード」の影響を受けたこと大の「ウルトラセブン」に登場する飛行メカは、実際に空を飛べるように見えるだろうか。私にはそうは見えない。

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まだまだ書ききれない魅力がたくさんある。これからも随時メモしていきたい。

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