カテゴリー「邦画メモ」の記事

君の名は。

邦画メモ、NO,103、レンタルBD
東宝、107分
監督: 新海誠、 音楽: RADWIMPS
出演: 神木隆之介、上白石萌音、長澤まさみ、市川悦子
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 昨年大ヒットして、今だ話題の映画を1年遅れでようやく観られた。
自分にはあまり印象に残らない作品だったが、テレヴィジョンで放送されたらもう一度鑑賞したい。ジブリ作品もそうだけれど、何度か観ているうちに自分の見方が変わることがアニメ作品には多い。
 気が付いたのはアテレコは俳優さんがやっているためか、アニメ作品ではおなじみのアニメ声優による、下から上に突き上げるように母音を伸ばしたオーバーな抑揚のお喋りではなかったことで、ここはホッとした。アニメのあの喋り方、聴くのは苦手なのである。最近はテレビ番組のナレーションまでがあの喋り方をマネするようになってきた。勘弁してほしい。
 
 秋のシーン。紅葉や木漏れ日が美しかった。また、取材写真をトレースしたシーンもよろしい。新海監督のそういう演出が楽しめた。巫女の舞を再現したのも素晴らしい。
 
 笑ったのは、高校の部室に旧トリオの45年前の無線機TS-520があったことで、これが高校のアマチュア無線部がとっくに廃部したことを表現していて、いかにこの趣味が廃れてきたか、少年たちが興味をもたなくなったかが見て取れる。
Ts520

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怪談

邦画メモ、NO,105、NHKBS

1964年、東宝配給、183分、シネスコ、カラー

監督: 小林正樹、 撮影: 宮島義勇、 音楽: 武満徹

出演: 三國連太郎、新珠三千代、仲代達矢、岸恵子、中村嘉津雄、滝沢修、他著名俳優・名優

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↓画質がBS放送より良い。

 この映画は十数年前、NHKBS2で放送されたものをVHSで録画していたが、なにせ3時間の長編を画質の劣る3倍モードで鑑賞する気も起らず、ほったらかしにしていた。しかし、今回、高画質で観られて良かった。NHKBSの映画の半分以上は再放送をひたすら繰り返してるという感じでウンザリするが、たまにはこういう有難いことも発生する。

 映画のオープニングクレジットは水中に色インクを垂らすという映像。なにか70年大阪万博などで写されていたような懐かしさを感じる。

第一話、「黒髪」。 

 朽ち果てた廃屋の門が不気味に開いて観客は映画の中に導かれる。カメラは廃屋のセット内を進んでいくが、現在だったらカット割りされず、ステディカムで長回しの撮影となるところ。自分は門が開くところから、オーソン・ウェルズの「市民ケーン」やヒッチコックの映画テクニックのように長回しのまま1カットで門をくぐって廃屋の中に入るのを期待した。

 廃屋のセットが素晴らしい。カビ臭さが漂い、腐った床板が抜けそうで、観ているこちらまでヒヤヒヤ歩いている気分。時々、心に突き刺すような木片が裂けたような音が鳴る。これは音響監督・武満徹の演出で、ヒッチコック「サイコ」でバーナード・ハーマンがバイオリンを効果音として使った「キュン・キュン」音響の日本版ともいえる。後のエピソードでも琵琶がいきなり「ギャン!」と鳴る効果音があり、こういう音に日本人はショックに近い心理効果をもたらす。

 ハーンの原作は「和解」という意味深なタイトルの物語で、この映画とはラストが違い、妻への慈しみを覚えさせる終わり方のようだ。映画のエピソードは脚本・水木洋子と小林正樹のイメージによるもので、それはタイトルに従って女性の長い黒髪を恐怖の対象としたホラー調で終わる。変わり果てた妻の遺骸を見て、三國が当時の特殊メークでしだいに狂った恐ろしい形相に替わっていくのは見もの。尚、女性の長い黒髪は次の作品「雪女」へと引き継がれる。

第二話、「雪女」。

 雪女を演じるのは当時32歳の岸恵子。夫となる仲代も同い年だが、ストーリーで彼は18歳という設定なのにはちょっと無理がある。熟年・熟女の「雪女」。しかし艶っぽい雪女もまたよろし。前作の「黒髪」から観客はホリゾントのカキワリのシュールさに気が付いてしまうが、特にこの作品は空に目玉が描いてあって、異様な感じを受ける。ここで、映画と舞台演劇の中間のような作品と理解する。木下恵介「楢山節考」スタイルに近い。降りしきる雪もまた発砲スチロールを細かくしたものでウソくさくリアルさはないので、美しい舞台芸術を見ているようだ。セットがいかに巨大か、いかに制作費をかけたかがこのエピソードから分かる。ぜいたくな気分で見られる「雪女」映画。

第三話、「耳無芳一の話」。

 この映画の中で一番尺が長い作品。壇ノ浦の戦いシーンが少し長く感じるが、これもまた巨大なセットのプールを使っているのが分かる。海の合戦シーンの撮影というのは陸戦シーンより困難なのではないか。スタッフ、役者の努力に頭が下がる。芳一が琵琶で謡う幽霊の館もこれまた広いステージ調。広すぎて幽霊を演じている役者が芳一を館に案内する丹波哲郎を除いて誰だかよく分からない。飛び交うヒトダマが吊るワイヤーも見えず、いい雰囲気の操演をしている。映画で唯一、お笑いシーンがあり、田中邦衛と花沢徳衛さんが熊さん八さん調コメディーリリーフを演じている。なお、芳一を演じている中村嘉津雄は後年、テレビドラマ「それからの武蔵」でも盲目の琵琶法師を演じている。自分が聴いた記憶では映画もドラマも謡っているのは中村嘉津雄本人自身だと思う。「壇ノ浦」の謡いがどちらも同じ声なのである。それとも琵琶演奏担当者の謡いなのだろうか。

第四話、「茶碗の中」。

 一番尺の短い作品。小松左京の短編のようなちょっと軽い作品。明治時代初期と江戸時代を挟む面白い脚本で、今までの舞台調ではなく、四本の中でも最も映画っぽい。現代劇でも不気味な微笑みをたたえる俳優・仲谷昇さんが、茶碗の中でも無音で微笑むカットは、いっそう不気味に見える。それに応じる歌舞伎役者の中村かん右衛門が、ブスっした表情でこれまた無音でアクションするのも面白い。中村雁次郎と杉村春子というドエライ役者さんがチョイ役で出ているという、贅沢な作品。

 

 

 

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シン・ゴジラ

邦画メモ、NO,104、BD
2016年、東宝、119分
総監督: 庵野秀明、監督・特技監督: 樋口真嗣、 撮影: 山田康介、 音楽: 鷲津詩郎、伊福部昭
出演: 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ・・・
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Photo
 
 まず、初見の印象。
 政治家・官僚の出番シーンでは、その1.3倍速か、逆に0.8倍速で観ているようなアクションや言動がいちいち不快で「イラッ」とした。
 
 これは、多分に落ちこぼれである自分の劣等感がそうしているわけです。つまり、彼ら東大・法学部卒などのキャリア・エリート達は、日ごろ素晴らしい調度品に囲まれた快適なオフィスの、これまた豪勢なイスにふんぞり返って自分より年上の部下にアゴで指図し、ふてくされた顔をして未決の書類に日長ハンコを押しているだけ・・・というイメージしかないのに、それが責任上まっとうな仕事をテキパキ?とこなしているというのは自分にとっては全く意外の出来事で、なにか嫉妬心を感じてしまうんですな。いや、才能も無く、努力もしない自分のイヤラシイ心が原因です。
 また、政治家というは詐欺師の次に信用できない、というのが自分の信条で、その彼らがウジャウジャ画面に出てくると、また生理的にも嫌な気分を催す。
 というのも脚本・総監督の庵野氏の思うツボなのかもしれない。だいたい、官僚ではないゴジラ退治スタッフのオタク男女たちも何か「イラッ」とする人物として演出されている。ウマイですな。
 
 庵野氏の構想による、過去の怪獣物にありがちな、一家庭の事情描写や超能力をもった子供などの登場シーンをカットし、国家の怪獣対策に重点を置くという企画には、ウワサ話を聞いていたころから自分はもろ手を挙げて賛成していました。期待していた通り、観ていてかかわりたくないような、めんどくさいプライベートなゴタゴタシーンは一切削除され、エポックメイキングな作品となった。
 
 CG、VFXは標準的。でもスタッフには申し訳ないがハリウッドの技術にはまだまだ達していないと感じる。でもビルの崩壊シーンなどはお見事で、やっと物理的にもまっとうな動きのVFXが見られた。ミニチュア撮影のシーンもCGとのコラボで違和感はなく素晴らしい。さすが樋口監督。
 
 ビル群CG映像はピーカンの真昼間といえども遠景の霞描写、スモーク描写が不足していると感じる。
 
 戦車のVFXも過去にない実写感あふれる映像。ただし、並んだ複数の戦車の砲塔がいっせいにシンクロして一糸乱れず同時旋回するのにはCGっぽく見え違和感があった。その中の2.3台は回転の速度を遅らせたほうが実写感・現実感は増すと思うが。
 
 ゴジラの尻尾の旋回を地上目線の仰ぎで見せる映像もいい。「どうして日本の怪獣は巨大に見えないのだろう」という長年の特撮ファンのジレンマに対する決定的最終解決があのカット。そこでは道路上の大衆はただ驚きもせず佇んでいるだけ。これは現実ではなく、白日夢を見ているのかという演出。
 
 ラストのゴジラは凍結されても容姿を保ったまま。観客はガラガラとコナゴナに崩壊するのを期待していたと思うが、そうはならない。これは庵野氏や「シン・ゴジラ制作委員会」の思いがこめられた演出か。
---- 今後、再見にて加筆予定 ----

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大巨獣ガッパ

邦画メモ、NO,103、NHKBS
1967年、日活、シネスコ、カラー、84分
監督: 野口晴康、 撮影: 上田宗男、 音楽: 大森盛太郎 
特撮協力: (株)日本特撮映画
出演: 川地民夫、山本陽子、和田浩治、藤竜也
 
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 対象は小学校低学年までの怪獣映画。
 そして日活最初で最後?の特撮怪獣映画。
 
 特撮シーンはどこかで見た記憶、東宝特撮シーンからのデジャブ現象が起こる。東宝怪獣映画をギュットと圧縮している感じ。
 
 その東宝特撮の欠点も踏襲してしまっている。それはミニチュア撮影シーンにおいて、ハイスピード撮影を省いたり、2、3倍程度の低回転でカメラを回していること。特に火山の噴火と船舶、潜水艦シーンのプール撮影や、工場群の破壊場面ではそれが顕著で、まるでオモチャのCM撮影のようだ。全然実写感が無い。炎と水の現象を本物らしく見せるのが特撮技術の一つなのだが、あれではヒドイ。第一、せっかく時間をかけてスタッフが精魂こめて制作した工場群などのミニチュアセットをアッサリと撮ってしまうのもモッタイナイ話ではないか。
 
 一方、唯一のフル・ハイスピード撮影で目立ったのは、孤島の巨大石造が地震で倒壊するシーンで、石造本体や岩山の岩石か落下する崩壊は実写感があり、迫力があった。たぶんカメラを5倍で回していると思う。
 
 ハイスピード撮影は高価なフィルムを大量使用するので、当時は予算の問題で泣く泣くノン・ハイスピード撮影としている事情もあったかと思うが、制作側は「子供が観るんだから、あれでいいだろう」とナメていなかったか。もし観客を小学校3年生以上も対象としていたならば、これは間違っている。
 
 そのノン・ハイスピード撮影は、日本の子供向け特撮テレビ番組の定番方法で、1960年代から70年にかけての当時の自分も、テレビ「高速エスパー」、「仮面の忍者赤影」、「空中都市008」などの特撮のオモチャ然としたシーンに腹を立てたり、学校で友達とそのひどさを語って笑いあったものだ。
 高価なフィルムを使わずに済むデジタル撮影となり、CG合成、VFXとなった現在でも、特撮番組のミニチュア撮影は、昔の旧態依然としたノン・ハイスピード映像のようなチョコマカした動きの物理現象を無視した映像で済ますという方針だったら、何度も言うが子供をナメないでもらいたい。
 
 「子供というものは、大人向けの特撮映像を見たがるものだ」、「だから、子供向け作品だからといって手を抜いてはいけない」・・・・シルヴィア・アンダーソン。
 
 これは映画「サンダーバード6号」DVDでの彼女のオーディオ・コメンタリーの言葉だが、現在活躍中の特撮マンにも、この言葉を知ってもらいたいものだ。
 
 本編の方では、いつも思うのだが、日活のシネスコレンズのシャープさに感心する。画面の端っこ、隅々までボケ、ニジミが一切無い。日活だけ他社と違うレンズなのだろうか。
 
 川地民夫、山本陽子、藤竜也さんたちがピチピチとして若いこと。
 
 映画の冒頭、船の中でモールス符号が鳴っているが、その内容は「VVV JAKMNEJJSH5T」だった。VVVは試験信号発射の意味だが、残りは心得のあるスタッフが適当に打ったものだろう。

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社長学ABC、続・社長学ABC

邦画メモ、NO,102、BS民放
1970年、東宝、シネスコ、単品92分、放送4時間
監督: 松林宗恵、 撮影: 長谷川清、 音楽: 宅孝二
出演: 森繁久彌、小林桂樹、加東大介、藤岡琢也、小沢昭一、司葉子、内藤洋子、関口宏、草笛光子、英百合子
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↑違う映画だけど、まあ、だいたいこんなものですな。
 
 東宝・社長シリーズ最後の作品ということで、青円盤に焼いてしまったが、これといって劇的盛り上がりのない、ダラダラと観続ける内容。これがこのシリーズの持ち味なんですけどね。
 速撮りテクニシャンの和尚、松林監督のそつない演出とベテラン俳優のセリフ捌きが見もの。安心して寝っ転がって観てられる。
 
 この最後の作品で、宴会部長だった三木のり平が居ない。・・・追記: 1968年以降のシリーズから不在・・・ なぜ出演していないのか、そのへんの事情は知らないけれど、彼が生前、インタビューで社長シリーズの自分の芝居などたいしたものじゃない、というような発言をしていたのを記憶している。自ら出演を断ったのかもしれない。
 その三木のり平の代わりに藤岡琢也が「ぱーっといきましょう」を演じている。この人の関西弁なまりの芝居も自分は好きなので、これもオモロかった。
 社長シリースの面白さの一つは、モリシゲと取り巻きとのシャベクリで、セリフを少しトチッたりしても構わずアドリブでやってしまうのが楽しい。その絶妙なタイミングに感嘆してしまう。
 めでたく社長に昇任される小林桂樹。物を食いながらセリフを喋らせたら日本一の俳優だと言われるが、それはこの映画で証明できる。食品会社の社長だけあって、まあ、よく食うこと食うこと。
 小沢昭一が「王そうかい」という名の台湾人を演じていて、中国語ナマリの日本語が笑わせる。
 草笛光子さんが相変わらずバーのマダムで、その流し目にゾクゾクさせられる。こういうのやらせるとウマイねこの人。
 小林桂樹の母親を長年演じてきた戦前からのベテラン女優、英百合子が、この映画の公開後亡くなった。シリーズの幕が閉じるのを案じたごとく。
追記: 森繁、小林、藤岡のお座敷宴会芸が披露されるが、衣装替えのたびにカット割りされる即興で作ったようなツマラナイ芸。ただし唯一、小林桂樹の女装を拝見できるが、これが最初にして最後のものだろう。
 
 

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飛べ!ダコタ

邦画メモ、NO,101、地上波民放
2013年、アッシュジャパン、109分
監督: 油谷誠至、 撮影: 小松原茂、 音楽: 宇崎竜童、
出演: 比嘉愛未、窪田正孝、柄本明、洞口依子、中村久美
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 映画が制作されている当時から注目していた作品。レンタル店でもDVDが見つからず、かといって円盤を購入するほど急ぐこともなく、そろそろテレヴィジョンで放送されるだろうと待機していたので、このタイミングで地方の民放局(ギフチャン)が放映してくれたのは、渡りに船だった。
 岐阜放送テレビはテレ東の番組とテレビ神奈川の「クルマでいこう」くらいしか自分には観るものはなく、やたら仏壇屋のCMだけが目立つ、自分にとっては存在意義の低い放送局であったが、たまにこういう粋なことをやってくれる。感謝。
 
 戦後まもなく、佐渡の村の砂浜にイギリス人クルーのDC-3が不時着する話で、自分のようなヒコーキ少年は絶対みのがせなかった作品なのである。
 ただし、ヒコーキ好きとしては、DC-3の不時着するカットはなく、最後の離陸シーンも出来の良くないCGで残念であった。(離陸時の機体後部で吹き荒れるプロペラの猛烈な風圧と飛び散る砂塵が表現されていない)
 
 イーストウッド監督「硫黄島からの手紙」では双発の実機が海岸に着陸する実写映像があり、あの迫力とハリウッドの撮影力にはマイッタが、この映画の監督さんも予算とスケジュールが間に合えばああいうシーンを撮りたかったに違いない。ただし、それは日本での撮影は無理と思われ、おそらくフィリピンあたりでロケしなければならないだろう。邦画ではそれだけで予算が無くなる。
 
 実際にあった話の映画。この映画が話題になるまで、自分は内容の事実をまったく知らなかった。戦後間際の出来事は、ネガティブな面ばかりネタされるが、こういう平和的な話もたまにはいいもんだ。
 
 若手、男優・女優の熱演が良い。
 
柄本明が村長を演じているが、彼に関するエピソードを一つ。
 
 柄本明も出演している「シャル・ウイ・ダンス」が台湾で公開されたとき、彼がスクリーンに顔を出すと笑うシーンでもないのになぜか劇場内で笑いが起こったという。周防監督は「なぜ笑うのか分からない」とDVDのオーディオ・コメンタリーで語っていた。
 
 この理由は私が思うには、台湾では日本のTV番組がいくつか放送されていて、その中でも特にバラエティーの志村けんは絶大な人気をはくしているそうな。おそらく台湾でも放送されている彼の番組「だいじょうぶだぁ」には、たびたび柄本明がゲスト出演して独特のお笑いを提供してくれている。それで柄本明は台湾では役者というよりはコメディアンとして知られているのではないだろうか。その彼がシリアス物で、思いもよらずクソ真面目に演技しているという、そのギャップに可笑しさを感じたのだろう。
 
 そういう自分も柄本明がドラマで乃木希典を演じていたのには、本人には失礼だけれど「だいじょうぶだぁ」での彼の大年増芸者を思い出し、乃木大将の顔にかぶさって笑ってしまった。ヘンなプライドを持たない彼の多才・多芸には敬服させられる。自分も生まれ変わったら彼のような役者になりたい。

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座頭市血煙り街道

邦画メモ、NO,100、BS民法
1967年、大映、シネスコ、カラー、87分
監督: 三隅研次、 撮影: 牧浦地志、 音楽: 伊福部昭
出演: 勝新太郎、近衛十四郎、高田美和、朝丘雪路、坪内ミキ子、伊藤孝雄、中尾ミエ、小池朝雄、小沢栄太郎、なべおさみ
 
↑顔にあたる照明がすばらしい。
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 タイトルにある「血煙り」という表現がスゴイ。こういう言い方は過去にあったのだろうか。
当時の大映の時代劇には、おそらく東宝「用心棒」「椿三十郎」から始まった血糊ブシューのシーンは無く、殺陣では切っても血は吹き出ないので血煙りは見えないのだが。
 
 その血煙が見えたようなこの映画の名シーンが最近の海外のネットで話題になっていた。観れば外国人も納得の迫力シーンですな。編者後付けの音楽は余計だけれど。
 
 近衛十四郎の殺陣は、まったくもって素晴らしい。ネットで評判だった座頭市との雪の決闘もすごいが、映画の前半で見せる湖畔での峰打ち五人斬りも一瞬の刀さばきが光っていた。時代劇名殺陣シーンの一つとして数えられると思う。
 三船敏郎の殺陣は、叩きつけるような迫力とスピード感を持ったものだが、近衛十四郎はスピード感に華麗さを伴ったもので、この二人はまさに双璧だと思う。
 
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↑そのシーンでは一コマだけ本当に刀がライトセーバーのように光っていた。
 
 近衛十四郎は当時、テレビの時代劇でアル中の素浪人を演じていて、そこでは普段はあまり強そうに見えないコミカルな一面のある武士だったが、この映画ではテレビのキャラなど吹っ飛ばしてしまう、クールで強い武士を見せつけてくれる。「これが本当のオレだ」と言わんばかり。
 
 
 
 

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座頭市 地獄旅

邦画メモ、NO、99、BS民放

1965年、大映、87分、シネスコ、カラー

監督: 三隅研次、 撮影: 牧浦地志、 音楽: 伊福部昭

出演: 勝新太郎、成田三樹夫、岩崎加根子、山本学・・

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 まさか、勝新の大映作品「座頭市」が再びテレビジョンで観られるとは思ってもみなかった。自分がテレビで観たのは、かれこれ40年も前の高校時代で、それも深夜放送であったが。

 この放送禁止用語満載の映画が今日テレビで放送出来るわけがない。この固定観念が崩れた。

 現在の公共放送の規制では、例えば農業従事者を「百○」・・・これを差別用語だとは自分は思わないのだけれど・・・ というのも過去の作品のセリフにあると音声を消してしまうものだが、「座頭市」の映画に頻繁に登場するセリフ「メク○」・「カタ○」問題も、こういうテロップを入れればなんとか放送できてしまうのがNHKも含めて現在の放送界の流れになっている。 

 これは昔の映画・テレビドラマファンにとっては有難いこと。こうしないと「座頭市」シリーズは全滅である。

 「どメク○と三度言ってみな、命ゃねーよ」が「ど(無音)と三度言ってみな」では勝新の迫力もあったものではない。

 規制をはずした完全版「座頭市」を提供する放送企画者の英断に座頭市ファンとして感謝するしかない。

 BSの番組や映画放送というのは再放送を5回も6回も流して放送業務はサボリのイメージしかないが、今回の放送は「BSもなかなかヤルな」と感じた。

 BS映画放送で有難いのは、画質が青円盤なみに良く、DVDソフトよりずっと良い映像で観られるということだ。

 ただし、BS放送サンよ、残りの座頭市シリーズも順次放送してよ。この映画だけを5回も6回も放送するんじゃないよ。そんなことしたらオメーさんたちの命ゃねーよ。

 映画の冒頭、市が乗り込む渡廻船の船頭に「身体障碍者には船賃の割引は無いのかい」というようなセリフを発する。アレ?、座頭市シリーズもとうとうこの映画から三文字言葉を自主規制したのか、身体障碍者という呼び方が江戸時代にあったのかと、まずここで笑わしてくれる。

 勝新の相手、浪人の成田三樹夫さんがカッコいい。劇の中で将棋を指すが、実際に彼の将棋の腕はプロ級。かつて、彼がNHK教育「将棋の時間」にマジメな顔してゲスト出演していたのを憶えている。

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八つ墓村

邦画メモ、NO、98、民放BS

1977年、松竹、151分

監督: 野村芳太郎、 撮影: 川又昴、 音楽: 芥川也寸志

出演: 渥美清、萩原健一、小川眞由美、山崎勉、山本陽子、中野良子、加藤嘉、市原悦子、花沢徳衛、下條親子・・・その他私の好きな俳優さんばかり

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 冒頭、落武者たちが村に逃げ落ちるシーンから旅客機の着陸カットと空港のシーンへと飛ぶ。ここで、原作の昭和20年代初期の話を捨て、現代劇に換えたと分かり、ちょっとガッカリした。

 金田一さんが事件を推理する環境は、百合の花を逆さにした三つ笠の裸電球で照らされ、手回し式の電話が壁に掛かっている薄暗い廊下のある家の時代でなければならない。(映画に使われた屋敷にはこれに近い間取りもある)

 と、自分のように思われた方々もおられようが、映画的に面白いシーンが一杯あるので、これはこれで許してしまう。寅さんの下駄顔・金田一に違和感を感じるが、元々原作には金田一さんの出番が少ないと作者自らぼやいていて、この映画でも金田一が主役とは言い難いので、これでいいかと許してしまう。

 が、農村とはいえ、ニッサン・スカイラインも走っているこの現代の道路の往来に、「祟りじゃー」の日本昔話に出るようなあんな格好した山姥オババが飛び出してきたのにはズッコケた。

 自分は1970年代に流行った横溝小説の独特の文体・・・「おお、恐ろしい、なんと恐ろしいことが起こったのでしょう」・・・という雰囲気には当時ついていけず、推理物は松本清張にハマッタ。しかし最近、推理小説と探偵小説はジャンルが違うのではないかと思うようになったので、今、横溝小説を再読したら、どういう印象を持つか試してみたい。

 それでも、まあ、あれですわ。自分は実際には存在しそうもない私立探偵・金田一さんの話・・・・ 私立探偵と警察が合同に事件を捜査するということが実際にあるのだろうか ・・・・より、うちに帰ったらチャブ台で御茶漬け喰ってる安月給の県警・鳥飼刑事のほうが好きだな。

 例えば、ショーケンが小川眞由美の指の傷を発見するシーン。ここで、ショーケンが「お前が犯人だったのか」というアクションで興奮状態となるので、小川眞由美もバレてしまったと気付きお互い大乱闘・大追跡となる。これが、鳥飼刑事の登場する清張の小説・映画だとすると、傷に気が付いても黙っていて犯人を泳がし、後の証拠固めとし犯人追求シーンにつなげるだろう。

 こういう現実的展開のほうが後々面白くなるんじゃないのと観ていて考えてしまう。

 洞窟で男女が営むのも、鍾乳石や岩石をベット替わりにして、背中は傷だらけになるんじゃないの。と、観ていて考えてしまう。

 全国の横溝ファンの方々。リアリズム好きで、間違い探し好きヒネクレ者の戯言と思って許してください。

 落武者の八人の俳優は大物役者ぞろいだが、その中には私の好きな俳優・丹古母鬼馬二もいて、・・・最初、太った佐藤蛾次郎さんかと思った・・・・ 結構セリフもあるのだけれど、エンドクレジットではその他出演者扱いであった。ケシカラン。

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火垂るの墓

邦画メモ、NO,97、NHKBS

2008年、パル企画、100分

監督: 日向寺太郎、 撮影: 川上皓市、 音楽: Castle In The Air.

出演: 吉武怜朗、畠山彩奈、松田聖子、江藤潤、高橋克明、松坂慶子、長門裕之、原田芳雄

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 この実写版が野坂の原作とどう違うかは分からないけれど、高畑アニメ版とはかなり違う。

 やはり、アニメ版を意識して、脚本と構図は徹底して換えられている、これは監督の人情として致し方ないこと。私も監督だったら高畑作品のマネはできない。

 アニメ版との比較を楽しむのではなく、ひとつの映画作品として退屈せずお終いまで観られた。ただし、泣かせ所はアニメ版に軍配が上がり、描写は淡々としている。

 松坂慶子が意地悪オバ(遠縁?)さんを演じているが、アニメ版よりもっと徹底してワルである。アニメ版では彼女の言うことに一部理があったが、松坂のは大人が見ても嫌なヤツ。

 松坂慶子さんて、「蒲田行進曲」のころより芝居が上手くなったような気がする。ま、年の功ってやつですか。彼女の滑舌はNHKの渡邊あゆみアナのように滑らかではっきりして耳に残るもの。

 清太役の吉武怜朗という俳優を覚えた。やすき節上手いすね。

 亡くなった母を兄妹が偲ぶフラッシュバックのシーンの後には火垂るが舞っているカットが入る。

 音楽は前半、ホラー映画調のピアノの冷たい音色を用いた曲で、兄妹が意地悪オバの家から脱出して防空壕で生活するところから暖かいギターの音色を使ったものになる。

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