カテゴリー「特撮メモ」の記事

燃ゆる大空

過去の記事を再編集しました。

特撮メモ、NO,6

東宝 1939年 阿部 豊演出  特殊技術撮影 円谷、奥野文四郎

後援陸軍省、 2600年記念作品、  フイルムの状態は「ハワイ・マレー」より良い。

主演級の俳優は知らない。大佐?の口の横に深い傷跡あり。←大日方傳です。   

軍医として長谷川一夫(顔の傷は目ただないように撮影している)。

中隊長で高田 稔(つくづく制服の似合う人、メガネはかけていない)。

灰田勝彦は歌手として有名。「夕空晴れて」を歌った人。 

藤田進チョイ役で出演。

映画のオープニングからやたら点呼のシーン多い。

軍の手紙の検閲、貯金や出費まで干渉されている描写。 おぞましい。 兵隊などご免。

空中戦、練習、全部実写。  

赤とんぼ練習機、九七式戦闘機、他、双発爆撃機など。

機銃掃射訓練は貴重なフィルム。

ミニチュア特撮は1カットのみ。 九七式戦闘機の不時着。 実写に見える。かなり大きな物使用。おそらく二分の一くらいのモデル。ワイヤー見えぬ。 

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↑どうやってカメラの中央に落としたか不明。 謎のシーン。

これと同様に謎のシーンでは「トコリの橋」にある。  戦闘機が山の上から低空で飛んできて、カメラの前で不時着。実機ではないようだが、ミニチュアにも見えぬ。

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ウルトラホーク1号はVTOL機だった。

特撮メモ、NO,38

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 「ウルトラセブン」は1967年から1968年にかけて、日曜夜7時に放送されていた。

 実は、当時小学3年だった私は観ていない。 前にも記述したが、この時間帯は絶対君主である親爺にテレビを独占されていて、NHK・7時のニュースを観る時間と決まっていたからだ。つまり、ウルトラQから始ったシリーズはすべてリアルタイムに観ていないのだ。

 ということで、翌日、学校に行っても友達と昨夜のセブンの話題には参加できず、随分とさみしい思いをしたものだった。 諸星ダンがセブンに変身するときに、彼の鼻がブタ鼻になるという楽しそうな話を友達から聞かされても想像するしかなかった。

 ただ、プラモデルのコマーシャルで、登場メカがどういうものかは知っていて、その中でも三つに分離・合体するウルトラホーク1号は、一番のお気に入りだった。このデザインはサンダーバード・メカに十分対抗できるものだと、当時感じていた。

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 このホーク1号は合体しているときはダブルデルタ翼機として飛行する。

 垂直尾翼の上についている水平尾翼は、合体しているデルタ翼機のときは不要の装備だが、分離したα号のときは必要になるだろう。あの設計にはちゃんと理由性がある。ただし、主翼のないα号は、どう考えても大気中での水平飛行は不可能である。

 β号、γ号は無尾翼機と考えれば何とか飛行できるだろう。

 ホーク1号の通常の推進システムは、当然ジェットエンジンということになり、エアの吸入口がβ号に存在するので、吸い込んだエアはα号のエンジンまで導入されるのだろう。これもちゃんと考えてある。

 余談だが、「ウルトラマン」に登場するビートル機の機体前面には、ジェット推進に必要十分なエアの吸入口、さらにVTOLに必要な吸入口が存在していない。つまりあれは、ジェット推進の飛行体ではなく、ロケット機なのである。ジェットビートルとは正確な言い方ではない。

 α号(中心の細長い機体をαと仮定したが合っているだろうか)の推進部にはロケット推進用と思われるラッパ状のノズル・・・ラバールノズルという・・・があるので、宇宙空間も飛行できる設計である。これはすごい。

 と、想像するがまま勝手にメカのことを書いていまったが・・・・ 

 実の所、恥ずかしい話、なさけない話、今日、初めて「ウルトラセブン」をDVDで、まともにマジマジと観たのである。 ファンからは「今までなにしていたのだ」と怒られそうであるが。 ようやく45年来の夢を叶えたというべきか。

 第二話まで観たのだが、一つたいへん驚いたことがあった。

 憧れのウルトラホーク1号は、なんと垂直離着陸機であったということだ。それは第二話でのシーンで分かったのだが、ジェット機関でホバリング、そのまま垂直着陸・離陸をしてしまったのだ。

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↑砂塵を巻き上げ上昇するホーク1号。

 これにはちょっとショックだった。ウルトラホーク1号の機体のどこを見ても、VTOL用のジェット噴射ノズルやランディングギアなど見当たらないからだ。

 サンダーバードのVTOLメカにはちゃんとノズルがあって、ロケットを吹かしているではないか。 どこにエンジンが設置されているのだろうか。

 このいい加減さがショックだった。

 

 

 

 

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サンダーバード6号

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特撮メモ、NO,37、DVD

1968年、ユナイテッド・アーティスト、シネスコサイズ、89分

監督- デビット・レイン、 音楽- バリー・グレイ、 特撮- デレク・メディングス

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 イギリス風ジョークというのだろうか、内容とオチは粋なものだが、公開当時の子供たちには受けなかった。結局、サンダーバード6号とは「なーんだ」ということで。

 DVDへの日本語吹き替えは、恐らく2000年ごろに録音されたと推測するが、ペネロープ役の黒柳徹子さんは、舌のもつれた老いたその声で20歳代の令嬢役は完全にミスキャストだと感じた。ジェフ・トレーシー役の声優も40年前と同じで、まだお元気なのはうれしいが、明らかに老いた声で、これも痛々しい。 テレビ時代の頃のブレインズ役・大泉滉さんなど亡くなった方や引退した方もいるので、オリジナルの声にこだわることはないと思う。

追記: ジェフ・トレーシー役、小沢重雄さんは2008年に故人となられていた。

 グレイの音楽とメディングスのミニチュア特撮が相変わらず優れている。

 グレイのスカイシップのテーマには、リズムにタンバリンか鈴が使われていて、そのシャン・シャンという音はまるでクリスマスソングみたいで明るく楽しい。

 メディングスの特撮はこの時期のものがピークではないだろうか。この映画でも、特に優れているのはミサイル基地のパイロシーンで、私の選んだものではミニチュア特撮の中でも最高傑作と言ってもいい。

 また、実写シーンとミニチュア特撮の繋がりが自然で、映像が切り替わった違和感がほとんど感じられない。それはタイガーモス号が高速道路を疾走するシーンで顕著だ。

まずは実写カット。

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オープンミニチュアセットでラジコンを使った特撮カット。

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 ミニチュアのシーンでは、良く見ると道路にセットの繋ぎ目が確認され、ミニチュアと分かってしまうが、それは一瞬のことで、大概の観客は気づくことなく一連の実写シーンだとして観るだろう。

 道路をスレスレで飛んだり、タッチ・アンドゴーなどをするシーンは、すべて実写による航空スタントで撮影される予定だったが、特撮になったのは、タイガーモスのパイロットが警察との規定違反を犯して橋の下を浮いて飛行してしまい、以後撮影禁止になったことによる止む終えない手段だったのだ。

 それにしても、この映像の繋がりの良さといったらない。結果的に撮影禁止によって、スタッフの優れた特撮が披露されたわけで、怪我の功名ではなかろうか。

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首都消失

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特撮メモ、NO,36、DVDレンタル

1987年、大映、配給・東宝、120分

監督- 舛田利雄、音楽- モーリス・ジャール、

特技監督- 中野昭慶

出演- 渡瀬恒彦、名取裕子、山下真司、大滝秀治、夏八木勲、財津一郎、ぼんち・おさむ、石野陽子

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小松左京の原作は新聞に連載されている頃、読んだ記憶がある。原作の元は同じ小松氏の短編「物体O」で、これも読んだ記憶があるが、「日本沈没」のミニ版というものだろうか。

短編小説はハショリが多く、テンポが良くて読みやすいものだが、この映画もスピーディーに展開していて、ダレるところが無かった。ただ、国家の非常時に料亭で、ワインと鮎料理で舌鼓しているシーンがあり、そんな場合かと思った。

こういう映画や小説のプロットでは、物理学者やエンジニアの登場は仕方がないとして、視聴率獲得に血眼のテレビクルー出てきて、現場で中継をするというパターンが多くあり、20年前の映画とはいえども、使い古しの感がする。また、この映画の主な人物も、怪獣映画などでいつも登場する、配偶者に死に別れた子持ちか、離婚問題を抱えていて、これも「またか」というところ。

さすがに最近ではこういうことは無くなったが、円谷英二・特技監督時代から、この映画までも、特技監督の名をクレジットタイトルに大文字でデカデカと紹介している。裏方に徹するスタッフをスター扱いにするのは日本だけではないだろうか。

優れた映像を創作するハリウッド映画でも、特撮スタッフの名は、エンドクレジットで一番お終いの頃、小さく出るだけである。(私の記憶しているところ、特撮や美術スタッフが、大文字でクレジットタイトルに記名されているのは「2001年宇宙の旅」のみ。)

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・ 対潜哨戒機のミニチュア飛行シーンは中野特撮では上々のものだった。夜のシーンであるため、スタジオの照明はモデルに対して実写感を損なっていない。しかし、フラッシュなど強い光が機体の翼などに当たると、やはりモデルに見えてしまうカットがある。

・ 対潜哨戒機の飛行は、プロペラ機に見合った速度に演出してあり、大型モデルを使った雲の中の飛行シーンは円谷特撮より優れていた。

・ 乱気流に揉まれる片翼のアップでは、翼が根元から全体にねじれていて、構造的に変である。実際は翼の先端に向ってしだいに捻りが多くなる。

・ 「セントエルモの光」の青い炎に包まれて、雲の中に沈んでいく哨戒機のロングの映像が素晴らしい。そのハイスピード撮影の回転速度もいい。

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宇宙からのメッセージ

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特撮メモ-2回目、NO,35、DVDレンタル

1978年、東映、ビスタサイズ、105分

監督- 深作欣二、 音楽- 森岡賢一郎、特技監督- 矢島信男

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この映画のソフトが今まで手に入らなくて再確認ができなかったが、DMMでやっとで取り寄せ観ることができた。実に30年ぶりの再会である。

この映画は、公開時、東京、有楽町の映画館で観た。映画館の前の通りには宣伝用に、頭に角が生えた映画の中の戦士が3、4人いた。

「スターウォーズ」の公開前だったはずだが、少し前に観た東宝「惑星大戦争」の酷さに憤慨していたので、あれよりはマシだろうと、多少の期待をもって映画館に入ったものである。

この映画は現在見ると、お笑い映画に近いものがあり、もし友人たちと観れば、お互いに吹きだすシーンがいっぱいあって、酒など飲みながらおおいに場が盛り上がる作品であるが、そんな、まだ人物が出来ていない当時の私は、途中で激怒してしまったものだ。

お笑いのネタは、科学考証(宇宙遊泳のスタイルは酸素マスクだけというインチキ)、衣装、メーク、演技、人物設定(河内のオッサンがいる)、大道具、・・・ などであるが、ただし、特撮についてはあの当時の日本のミニチュア特撮のレベルであり、所詮、ハリウッドとは次元が違うので、良い悪いと言えないものがある。

特技監督は矢島信男氏であるが、私は、飛行体の操演とパイロシーンの撮影は、当時の東宝のレベルより良いと感じた。ただ、巨大ガバナス要塞・・・(「スターウォーズ」の三角形のスターデストロイヤーを、ただ四角形に変えたデザインのもの)・・・が画面手前に向って迫ってくる映像は、巨大なはずの機体が、微妙に揺れていて、いかにも吊りによる操演であることがミエミエであり、シラケタものである。

当時、まず、私が怒りだしたのは、丹波哲郎がロールスロイスに乗って現れるところで、時代感覚が完全に破壊され、イスから転げ落ちそうになった。

その私の頭のスクリーンが30パーセントのダメージを受けた状態で、さらに強烈な決定打を喰らったのは、志穂美悦子の白い衣装にセンタクバサミがくっ付いていたカットである。

これは今回観た、DVD画面でもはっきりと確認できた。始まって36分49秒、彼女の左肩あたりに、昔なつかしい金物屋で売っているアルミのセンタクバサミが「堂々」と写っている。

これで私の頭は破壊された。100パーセントのダメージを受けつつ、呆けた顔で、ダラダラとスクリーンを見続けたのだが、その後、どこかの造成工事現場で撮影されたシーンのバックに高圧電線と高圧鉄塔が見えた ・・・1時間03分20秒付近?・・・ ところで補助パワーも切れ、私は前の座席の後ろにつんのめってしまった。

この映画、当時の外国のフィルムバイヤーが言うには、「あらゆる部分でスターウォーズに似ているが、すべてのシーンで劣る」。

深作監督言うには、「スターウォーズに竹ヤリで挑んだ」。

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ゴジラ対ビオランテ

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特撮メモ、NO,34、DVDレンタル

1989年、東宝、ビスタサイズ、105分

監督- 大森一樹、撮影- 、音楽- すぎやまこういち、特技監督- 川北紘一

出演- 三田村邦彦、田中好子、小高恵美、峰岸戸徹、高嶋政伸

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自衛隊の特殊兵器、「スーパーX」というものが、ヒコーキファンにはチャンチャラおかしい。

この飛行体は前作から登場していて、後のゴジラシリーズにも出てくるのだが、毎回、こいつが画面に出現するとシラケテしまう。

まず、カブトガニを模したというスタイルが無様だ。垂直離着陸機なので、ホバリングが主体の航空機であり、高速飛行での空力性能は無視してあることは分かる。前作では飛行速度は時速200キロ程度であるとウィキには説明されていた。

ところが、この映画ではマッハ1が巡航速度だという。あんなカッコウでどうやってその速度を制御するのだろうか。補助翼が一つも無いというのに。

ま、映画のウソということで、それは一歩譲ろう。しかし、VTOLとしてのシカケはどうなっているのだろう。 機体の下部にはたしかにジェットを噴射しているエンジン口が6つ設置してあり、アフターバーナーの炎らしきものが見える。つまりリフト用ジェットエンジンが垂直に配置されている訳だ。

ところで、あの飛行体のサイズは垂直方向に11メートルくらいである。ということは6本のバーナーダクトが付いた長いジェットエンジンが機体の中央をほぼ占領していることになる。すると、ミサイル兵器や、有人機になったときの人員はどこの空間に配置されるのだろうか。燃料はどこに搭載されているのだろうか。ホバリングには大量の燃料を消費するのだが。

あるいは、あの噴射口はアフターバーナー燃焼部だけであり、前方部分にコンプレッサーと燃焼室・タービンが設置され、あそこまで高圧ガスを導いているのだろうか。

構造的にはこの二つの方法しかないのだが、いずれにしても可笑しなことは、空気取り入れ口が見当たらないことだ。重量150トンがあの飛行体の目方なのだが、するとリフトエンジンの推力は一基あたり27トンは必要であろう。それには巨大な空気穴が無ければならない。それはいったいどこにあるのだろうか。水平移動用のバーナー付きエンジンがさらに2つ、後部にあるというのに。

ま、空気口は機体の側面のどこかにあるのでしょう。それでどうやって大量のエアを導くのか不明であるが、これも映画のウソということで二歩譲ろう。

私が問いたいのは、メカの説明不足のほかにもう一つある。あのスーパーXの操演に対してである。

あの動かし方がナッテいないのだ。これは前作から感じていることだが、重量のある巨大物体が空中に居るという物理的感覚が一つも感じられないのだ。

例えば、ホバリングしている最中ならば、姿勢制御するために微妙に左右前後に動くだろう。ところが、このスーパーXは微動だにしない。スタジオの上からワイヤーで吊り、じっと停止させたままの撮影。これは単なる手抜きにほかならない。

さらにそのホバリングから横移動する場合に、機体の初期微動の傾き、停止する際の逆傾きが全く演出されていない。つまり、モデルを吊ったまま横にスライドさせているだけ。

この操演センスの無さ。物理感覚の無さはどうだろうか。もう少し航空工学、物理のしくみを取り入れてもらいたいものだ。

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俺は、君のためにこそ死ににいく

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特撮メモ、NO,33、DVDレンタル

2007年、東映、ビスタサイズ、140分

監督- 新城卓、撮影- 上田正治、北澤弘之、音楽- 佐藤直紀

VFX- 野口光一、特撮- 佛田洋、空撮CG- 栃林秀

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今まで観た日本映画の戦争物では、もっとも質の高いVFX映像とミニチュア特撮。

もう、CGを利用した映像も「ローレライ」のようなプレイステーション的レベルを脱した。

なぜ質が高いかというと、戦闘機の飛行姿、物理的動きが、極力正しく、センス良く、表現されているからだ。

当時のレシプロ戦闘機の速度は、巡航時は時速300キロほどである。またドックファイト時でも最大400キロから500キロというところであるが、過去の円谷英二などのミニチュア特撮映像を見ると、小さなミニチュアの飛行機は、まるでジェット戦闘機並みの速度でチョコマカ飛んでいて、やはりオモチャ感が否めなかったものである。

また、近年でも、キムタクや松村邦洋などが出演した映画では、VFXの敵レシプロ戦闘機が、考えられない高速度の低空飛行による機銃掃射をしていて、そのマンガチックな映像にあきれたものだった。

それが、この映画では、飛行姿は実写そのもの、物理的に合った飛行速度で、空気に乗って飛行している感覚と、優雅でリズム感のある映像で演出されていた。それに、隊列を組んだ戦闘機群や、離陸中の「隼」など、バックの実写風景と全く違和感無く溶け込んでいた。

また、被弾炎上し、降下するミニチュア戦闘機(CGのものもある)は、画面を横切る一瞬だけの映像ですませ、オモチャ感を出さないように工夫され成功している。ミニチュアはかなり大きいもので、これも実写感へ一役買っている。あるいは、これもすべてCGだとすれば、完全に脱帽。

もう一つ、特筆すべきは、飛行中や戦闘時、被弾時のカメラのブレがうまく演出されているということ。記録映画の手持ちカメラ撮影のような映像が、実写感を増している。こういうセンスが良い。

実物大レプリカの「隼」の出来も、過去の日本映画の戦闘機レプリカと比較すると、最高の出来だった。東宝の戦闘機レプリカは、プロペラスピナーが歪にブヨブヨと回転していて、ヒコーキファンとしては観るに耐えないシロモノだったが、この映画のレプリカは、スピナーもスムーズに回転し、また、使い込まれた機体のデコボコまで、実に精密に作られていた。

当時、米軍が撮影した記録フィルムも、曳航弾の発光などがCGで追加され利用されていたが、本編の映像と違和感のない処理がなされ、成功している。

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ゼロ・ファイター大空戦

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特撮メモ、NO,31、DVDレンタル

1966年、東宝、白黒、シネスコサイズ、92分

監督- 森谷司郎、撮影- 山田一夫、音楽- 佐藤勝、

特技監督- 円谷英二

出演- 加山雄三、佐藤允、土屋嘉男、千秋実、谷幹一、久保明、中丸忠雄、藤田進、東野英彦

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冒頭はモールス電鍵を叩くクローズアップ映像。 戦争映画ではこういうシーンが時たまあるが、たいてい、キーの接点の隙間がものすごく空いていて笑ってしまう。 実際のモールス・キーの接点はコンマ、ミリ単位と、極狭く調整してあり、遊園地のシーソーのように、電鍵をバタバタと動かさない

この映画もゼロ戦レプリカのプロペラ部分のアップ映像があり、やはりスピナーがブヨブヨと、いびつに回転していて、このカットは観るに耐えない。

おそらく、この飛べない実物大ゼロ戦は、過去の東宝映画「太平洋の嵐」などで作られたものを流用している。倉庫に分解して保管され、以後、組み立て、使用されているようだ。

円谷特撮については、良いシーンもあり、駄目なシーンもある。いつも思うのだが、特撮の出来にムラがある。NGとなるカットも本編に入れてしまう傾向にある。

本編のコクピットシーンでは、盛んに、マイクも使わず無線電話を使用しているが、のどに取り付けるマイクでしゃべっているのだろうか、当時の日本軍にそういう物があったかどうか資料がないが、あんなに簡単に会話できたのか疑わしい。 エース、坂井三郎氏の手記によると、無線は性能が悪くて使い物にならず、ほとんど手の合図で連絡をとった、とあるが。

音楽は佐藤勝氏であると、オープニングですぐ分かった。「天国と地獄」や「椿三十郎」に似たフレーズがあり、楽器にシロホンを使うなどの共通点がある。

自慢ではないが、私はオープニングの音楽で、作曲者が、團伊久磨、芥川也寸志、佐藤勝、伊福部昭、のだれであるか、ほぼ当てることが出来る。

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・ ゼロ戦ミニチュアの低空エルロンロールを見事に見せてくれた。これはスピルバーグ「1941」でも使われたテクニック。 ミニチュア特撮では、恐らく世界初ではないだろうか。拍手。

ただし、実際のエルロンロールは機体を中心にして廻るのではなく、ひらがなの「の」の字のように回転する。 それが特撮で出来れば文句なし。

・ 被弾したゼロ戦の翼がもげ、キリモミで墜落するカット。高速度のハイスピード撮影でなく、オモチャ同然の特撮映像。 フイルムの使用に制限があるのだろうか。

・ ハイスピード撮影でないのは、チョコマカとしてオモチャ然とさせてしまうが、特に飛行機映画では、プロペラ飛行機がジェット飛行機の速度になってしまい、実写感に欠ける。

・ アメリカ軍飛行場への機銃掃射映像もオモチャ然。空港ミニチュアが小さい。

・ 白黒撮影なので、特撮のアラが出にくいが、やはりミニチュアモデルに反射するスタジオ照明が、ミニチュアっぽくさせている。

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零戦燃ゆ

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特撮メモ、NO,30、DVDレンタル

1984年、東宝、ビスタサイズ、128分

原作- 柳田邦男

監督- 舛田利雄、 撮影- 西垣六郎、 音楽- 伊部晴美

特技監督- 川北紘一

出演- 丹波哲郎、加山雄三、あおい輝彦、目黒裕樹、堤大二郎、橋爪淳、早見優、南田洋子、北大路欣也

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ゼロ戦レプリカのスピナーの回転が我慢ならぬ。

センターのとれていない、凸凹だらけのプロペラスピナーが、ブヨブヨと回転しているのを見るのは、ヒコーキファンとして悲しい。

この映画は零式艦上戦闘機が主役の映画だ。あんなことが許されるだろうか。監督は何も感じないのか。撮影・美術監督は何も感じないのか。 酷すぎる。 観客をナメている。 零戦を侮辱している。

このスピナーのブヨブヨ回転は過去の東宝、戦記物映画の撮影でも見られる。

スピナーだけは精密に作っていただきたい。モーターへの取り付けもしっかりしていただきたい。

特技監督は川北氏、この人の演出は明らかに円谷英二氏を超えている部分がある。

ミニチュア撮影はカット数も多く、特にドッグファィトのシーンは大人が観るのに耐えられる。ただし、過去の円谷氏によるフィルムの流用シーンが随所あり、その場面はフィルムの質感が違うので違和感がある。

東宝のミニチュア特撮で特に気になるのは、ミニチュアモデルに反射するスタジオの照明が良くないことで、モデルプレーンのエッジで光るライトの反射光が、ことさらミニチュア然とさせてしまう。 できれば野外の太陽光で撮影したい。(ラジコンによる撮影は野外)

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・ ゼロ戦のミニチュア離陸シーンは土ボコリの描写が良い。サンダーバード的テクニック。

・ ゼロ戦のギアの閉じ方が間違っている。実際は片方ずつ閉じる。

・ 加山雄三がセリフで、世界初の引き込み足の戦闘機と説明しているが間違い。ゼロより前のソ連のI-16戦闘機は引き込み足である。また馬力も1000馬力と言ってるが初期型は940馬力だった。

・ ラジコンによる撮影はもう少しハイスピート撮影したい。まだ動きが速く、チョコマカすぎる。

・ ミニチュア飛行シーン、およびコクピットシーンではカメラに振動を与えるべき。実写感が増す。(例)「ライトスタッフ」。

・ ゼロ戦の7.7ミリ機銃と20ミリ機関砲の発射音を区別させるべき。同じ音では興ザメ。

・ B-29の爆弾投下がオモチャ然としている。 一番ひどい撮影。

・ ゼロ戦の現地飛行場に、日産の昭和40年代のサニートラックやダットサントラックが走っている。こういうインチキはやめていただきたい。

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ラストシーン。ゼロ戦の炎上は、私が監督だったら、プロペラの回転をしだいに落とし、停止させたい。 

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ゲゾラ・ガニメ・カメーバ、決戦!南海の大怪獣

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特撮メモ、NO,29、DVDレンタル

1970年、東宝、シネスコサイズ、84分

監督- 本多猪四郎、 撮影- 完倉泰一、 音楽- 伊福部昭

特技監督- 有川貞昌

出演- 久保明、高橋厚子、土屋嘉男、佐原健二、中村哲、藤木悠、堺左千夫

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完全な子供向け怪獣映画。 尺が短いのは他の子供向けアニメなどと同時上映されるためだろう。

この頃になると怪獣映画もマンネリ化して低予算ものが渋々つくられるようになった。 

まず、予算を抑えるため、怪獣が暴れる場所は都会ではなく孤島となる。ビルや橋などのミニチュアを作らなくてすむ。 しかも遠島なので自衛隊も出動しない。戦車や戦闘機なども必要ない。 

いずれ怪獣たちはクタバッテもらわなければならないが、バトルさせても最後には一匹残るので、これも始末するとなると面倒だ。いっぺんに火山の噴火口に放り込んで片付ける。

南海の孤島には未開人が住んでいるのだが、なぜか日本語を話せる。

その孤島に向う日本人には必ず博士がいる。 開発の利権に絡んだ企業エージェントとジャーナリストの存在も必須。

怪獣は海の生物が大きくなったものだが、昔はその原因として原水爆による放射能の影響を引っ張ってきた。しかし、さすが使い古しの感がするので、宇宙生命体のしわざにする。

まあ、脚本はこんなものとなる。 私でもなんとか書けそうだ。

怪獣の名前。蟹と亀はそのままとして、イカはどうしようか、イカラでは変だ。イカの足はゲソだからゲゾラにしよう。 おい笑うな。・・・・・

この映画がクランクインする前に円谷英二氏が亡くなった。 したがって特技監督は円谷氏のもとで撮影を担当していた有川貞昌氏がメガホンを握っている。

私はこの人が特撮監督したものでは「北京原人の逆襲」を観ている。 香港のあの無秩序なビル群の描写は良かったが、空港でのペキンコングの格闘は相変わらずのスタジオ見学しているようなカメラアングルと、回転が遅いハイスピード撮影で観るに耐えなかったものだ。

しかし、この映画。私はゲゾラの撮影は結構気に入っている。撮影を確認するため2回観てしまった。イカが立って歩いているのは異様だが、なかなか様になっている。足の造形と動きがうまい。(中島春雄氏)。 それに珍しくカメラはローアングルで人間目線からの迫力を出していて成功している。 さらに何と言ってもハイスピード撮影が適切だ。チョコマカとしていない。

ところが、カニと亀のほうの撮影は、再びハイスピート撮影を不自然な回転に落とし、チョコマカと動かしている。 回すフィルムが乏しくなったからだろうか。 意図が不明。

伊福部氏の音楽は「キングコング対ゴジラ」のものをアレンジしている。あまりやる気を感じない。

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・ サターン型を模した大型ロケットの打ち上げシーン。 ミニチュア撮影にスモークが足らずスタジオ然としている。 ただし、点火燃焼ガスの描写は円谷特撮より良い。

・ 宇宙空間でのロケット噴射はハメコミ合成だが、火薬を使ったものより遥かに良い。過去の例のように花火然の弱々しい炎と、煙が上昇して見える仕掛けは止めて正解。

・ 旅客機DC-8の飛行ミニチュアは過去のフィルムからの流用だろう。巨大感なし。「キーン」という飛行音は昭和30年代から使用しているお馴染みの陳腐な音。

・ オープンでの火山噴火シーンの特撮は迫力がある。 この映画では最もすぐれた特撮。ただし過去の映画からの流用かもしれない。 噴火の爆発音は昭和30年代から使用しているお馴染みの陳腐な音。

・ 森の中から聴こえる「ケケー」という鳥の鳴き声は、昭和30年代から使用しているお馴染みの陳腐な音。

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