特撮メモ、NO,29、DVDレンタル
1970年、東宝、シネスコサイズ、84分
監督- 本多猪四郎、 撮影- 完倉泰一、 音楽- 伊福部昭
特技監督- 有川貞昌
出演- 久保明、高橋厚子、土屋嘉男、佐原健二、中村哲、藤木悠、堺左千夫
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完全な子供向け怪獣映画。 尺が短いのは他の子供向けアニメなどと同時上映されるためだろう。
この頃になると怪獣映画もマンネリ化して低予算ものが渋々つくられるようになった。
まず、予算を抑えるため、怪獣が暴れる場所は都会ではなく孤島となる。ビルや橋などのミニチュアを作らなくてすむ。 しかも遠島なので自衛隊も出動しない。戦車や戦闘機なども必要ない。
いずれ怪獣たちはクタバッテもらわなければならないが、バトルさせても最後には一匹残るので、これも始末するとなると面倒だ。いっぺんに火山の噴火口に放り込んで片付ける。
南海の孤島には未開人が住んでいるのだが、なぜか日本語を話せる。
その孤島に向う日本人には必ず博士がいる。 開発の利権に絡んだ企業エージェントとジャーナリストの存在も必須。
怪獣は海の生物が大きくなったものだが、昔はその原因として原水爆による放射能の影響を引っ張ってきた。しかし、さすが使い古しの感がするので、宇宙生命体のしわざにする。
まあ、脚本はこんなものとなる。 私でもなんとか書けそうだ。
怪獣の名前。蟹と亀はそのままとして、イカはどうしようか、イカラでは変だ。イカの足はゲソだからゲゾラにしよう。 おい笑うな。・・・・・
この映画がクランクインする前に円谷英二氏が亡くなった。 したがって特技監督は円谷氏のもとで撮影を担当していた有川貞昌氏がメガホンを握っている。
私はこの人が特撮監督したものでは「北京原人の逆襲」を観ている。 香港のあの無秩序なビル群の描写は良かったが、空港でのペキンコングの格闘は相変わらずのスタジオ見学しているようなカメラアングルと、回転が遅いハイスピード撮影で観るに耐えなかったものだ。
しかし、この映画。私はゲゾラの撮影は結構気に入っている。撮影を確認するため2回観てしまった。イカが立って歩いているのは異様だが、なかなか様になっている。足の造形と動きがうまい。(中島春雄氏)。 それに珍しくカメラはローアングルで人間目線からの迫力を出していて成功している。 さらに何と言ってもハイスピード撮影が適切だ。チョコマカとしていない。
ところが、カニと亀のほうの撮影は、再びハイスピート撮影を不自然な回転に落とし、チョコマカと動かしている。 回すフィルムが乏しくなったからだろうか。 意図が不明。
伊福部氏の音楽は「キングコング対ゴジラ」のものをアレンジしている。あまりやる気を感じない。
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・ サターン型を模した大型ロケットの打ち上げシーン。 ミニチュア撮影にスモークが足らずスタジオ然としている。 ただし、点火燃焼ガスの描写は円谷特撮より良い。
・ 宇宙空間でのロケット噴射はハメコミ合成だが、火薬を使ったものより遥かに良い。過去の例のように花火然の弱々しい炎と、煙が上昇して見える仕掛けは止めて正解。
・ 旅客機DC-8の飛行ミニチュアは過去のフィルムからの流用だろう。巨大感なし。「キーン」という飛行音は昭和30年代から使用しているお馴染みの陳腐な音。
・ オープンでの火山噴火シーンの特撮は迫力がある。 この映画では最もすぐれた特撮。ただし過去の映画からの流用かもしれない。 噴火の爆発音は昭和30年代から使用しているお馴染みの陳腐な音。
・ 森の中から聴こえる「ケケー」という鳥の鳴き声は、昭和30年代から使用しているお馴染みの陳腐な音。
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