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「七人の侍」の制作エピソード

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販売元:東宝
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 黒澤作品「七人の侍」は何度も観ているが、オリジナルの脚本は読んだことがない。

 橋本忍氏の本やインタビューではこの映画の脚本作りの段階では、たしか、普通の映画で脚本の長さは80ページ位にするものが、この映画では460ページになってしまったという。

 この長さは映画にすると5、6時間くらいになる量だったそうだが、贅肉をそぎ落とした段階でもまだまだ長く、編集段階でだいぶカットされている部分がある。

 ただし、カットするのは時間調整ということだけでなく、映画のテンポをよくするためでも行われる。

 そのカットされた一つは、村人たちが野武士の退治を代官所に直訴するシーンがあったと聞いているが、私の推測するものではもう一つ、侍探しに出かけた村人4人が木賃宿に投宿する前、手助けを了承した侍が、村人たちが出したメシを喰うだけ喰って逃げてしまうシーンがあったはずだ。

 与平の台詞「おしいことをしたなー、あの米がありゃ饅頭四十も買えたによ」とつぶやいているのと、後の馬喰(多々良純)の「ケッ!またただ飯喰われてーのか」という台詞の存在で判る。

 このような「七人の侍」の制作エピソードは他にも事欠かないが、私の最も好きな話は久右衛門のバッチャマ出演の話。

 「オラ、早く死にてーダヨ・・・・」と、おわんに山盛りになった銀シャリを拝んでいるウメボシ婆ちゃんの話。

 あのお婆ちゃんは撮影所近くの老人ホームから借りてきた素人で、助監督(たぶんセカンドかサード助監督)が仕込んだ台詞をまったく憶えられなかったという。 

 しょうがないので、演技をつけるために彼女の人生で最もつらかったこと、悲しかったことをしゃべってごらんとアドバイスすると、息子が戦争で死んだことを話し出し、その雰囲気がよかったので助監督は「その調子で台詞を憶えてください」と一安心した。

 さて黒澤監督もやってきた本番撮影。ヨーイ・スタートでカメラが回ると彼女の喋りだした台詞は・・・「わしの息子がB29の爆弾でやられて死んでしまった」。

 監督は「だれだこんな台詞教えたのは!!」と例のごとくカミナリを落としたが、婆ちゃんを気の毒に思ったのだろう、「まあいいか、雰囲気もでているしこのままやろう」ということであのシーンがOKとなった。

 だから映画で流されているセリフは当然、別の役者さんによるアフレコであり、よく見ると口の動きと声が合っていない。これをダビングをしたのは黒澤作品の常連といってもいいベテラン怪優・女優の三好栄子さんで、彼女は珍しく今回は本編に出演していないし、クレジットもされていない。

 この老人ホームの婆ちゃんは、その後、助監督にデパートに連れて行ってもらい、出演料で着物を買ったという。映画封切後、彼女は亡くなる前に、人生で一番楽しかったのは映画に出たことだと語ったという。

 逆に嫌なエピソードは、チーフ助監督だった堀川弘通氏が語っていたことだが、馬に乗った野武士が、村を臨む急峻な丘(実際は傾斜角30度ほどの崖)を下り落ちるシーンの撮影では、堀川氏は危険すぎるアクションで、ひょっとしたら死人がでるかもしれないと黒澤監督に忠告すると、監督は「死人が出てもしょーがないかな」とつぶやいたそうで、堀川氏は戦慄したという。

 死人が出なかったのは天使のように大胆な黒澤に、繊細な悪魔が味方したのかもしれない。

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崖の上のポニョ

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あれ? これで終わりなの。

エンディングの「おしまい」の文字が画面に出たとき、そう思った。

もう少しアニメーションを見たかった。

絵本的なタッチが面白く、その中で、人物・・・ポニョやそう介たちのフルアニメーションの動きが良かった。

宮崎アニメでは人物の垂直に動くときの動画がとくに面白く、そう介が崖から降りてくるシーンはロトスコープなみの細かく滑らかな動きで目を見張る。

また、ポニョの母親の動きも超フルアニメで色っぽい。

海の波はディフォルメされていて、もはやアートである。

ポニョはトトロのメイのように愛くるしい。特に大波に乗って走って来るシーンは何回でも観たいものだ。これもフルアニメで一瞬たりとも目が離せない。

過去の作品からのつながりとしては、ポニョは「トトロ」のメイ。フジモトと老人たちは「ハウル」から。不気味なトンネルは「千と千尋」をイメージする。

この映画で、物語の説明や構成に対して、「なぜ」、「どうして」、「WHY」と求めるのは野暮な気がする。 単純に絵本の世界とアニメートを楽しめばいいのではないか。

宮崎監督も晩年の黒澤明のようになってきたのだろうか。理屈や観客の解釈を超えてきたような気がする。

夜空の星なども美しく幻想的で、色鉛筆調の背景も、おそらくDVD化すればもっと綺麗だろう。 私の観た映画館のプロジェクターは光源が暗くて色が冴えなかった。

そう介が母親と父親を友達のように名前を呼び捨てにしていたが、最近の子供はそういう習慣なのだろうか。アホな私は一瞬、歳の離れた兄弟かと思ってしまった。

音楽はチャイコフスキーとワーグナーをチョットバカシ感じた。でもフルオーケストラの音響はすばらしかった。

宮崎アニメとしては珍しくアマ無線の描写があった。リサの使っている無線局のコールサイン、JA4LLは検索したら存在しない局であった。たいへん古いコールサインなのだが、私は承諾を取って使ったのかと思った。 無線機はアイコム製のもので、使用した周波数は50.194メガヘルツだったと記憶する。 無線免許の無い?そう介がマイクに向ってしゃべっているが、バック音声を拾ったということで、法律的に拡大解釈できるだろう。

リサとそう介のライトを使ったモールス信号が実際の文字と合っていたかどうかはDVDで確認したい。どうでもいいことだが。

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風の谷のナウシカ

風の谷のナウシカ DVD 風の谷のナウシカ

販売元:ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
発売日:2003/11/19
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日本テレビは簡単に視聴率がとれるためだろうか、ジブリ作品を毎年繰り返し放映している。

しかも「さあ、お待ちかねの宮崎作品ですよ」という、まるで初めて放送するかのように、前宣伝では感じてしまうのだが、少なくとも新聞のテレビ欄には再放送の(再)をつけるべきだ。

いまさら、と言ったら失礼だが、ジブリ作品はわざわざテレビの前に集合して見るまでもなく、レンタル屋に何十巻と並んでいて、200円くらいの出費で好きな時にCM無しの、しかももっと鮮明な映像が観られる。

それにどの家庭でも、宮崎作品のアニメはとっくの昔に録画して保存してあるだろう。 民放の安直な番組編成に疑問を感じる。

さて、今回の「風の谷のナウシカ」の視聴率はどのくらいだったのだろうか。フライデーナイトに再びテレビの前に鎮座し、もう古典となったこのアニメを、コマーシャルを我慢しながら観た奇特な方は何人いたのだろうか。

実は私がそうだった。

特にこの作品は宮崎作品の中でも、好きなものではなかったのだが、テレビ画面にしては、あまりにもデジタルリマスターされた映像と色がすばらしかったので、つい終わりまで見てしまった。

この映画は「スターウォーズ」のように、長大なストーリーの一エピソードらしいのだが、私は詳しいことは知らない。個人的には、あの化け物のキョシンヘイが世界を破壊していた時代の話も知りたいものだ。

私の好きな魅力的なシーンはやはり、腐海の描写で、月並みな表現ではSFにおけるセンス・オブ・ワンダーと言える。 雲海の下での立体的な構造、しかももう一つ下界があるという二段構造。 そこを大型の昆虫が縦横に飛んだり、フワフワ浮いている描写は、宮崎演出の「落っこちそうな」感覚と相まって、いつもゾクゾクしてしまう。

その中でも、腐海に不時着した少年に、ワラジムシのでかいようなヤツの大群が飛びかかって襲うところ。 

その少年を、ナウシカがジェットグライダー(名前を忘れた)で救出し、巨大空飛ぶムカデに襲われるところがもっとも好きなシーンである。

ちなみに私はムカデが大嫌いで、空港にある、コンテナをたくさん牽引して走っている車両を見ただけで、ムカデを想像しゾッとするくらいだ。

まだまだ魅力的なシーンがある。戦車のメカ、そのキャタピラの動き。

ナウシカのジェットグライダーの排気口からの飛行機雲・・・排気口の少し後ろから湧き出して発生している。

「未来少年コナン」で登場したギガントに似た巨体飛行物体の描写と、その不時着シーン。夜間飛行時の光のシルエット・・・「未知との遭遇」のマザーシップを思わせる。

キョシンヘイの塊の描写、不完全で出現したドロドロの体形・・・あのドロドロのすばらしいアニメートは「もののけ姫」や「千と千尋」でもお馴染み。

声優の家弓氏が吹き替えている軍人参謀のなげやりな態度。

きりがない。まだいっぱいある。でもこのへんで終わり。

逆に恥ずかしいシーン。

それは宮崎アニメに登場する少女たちがよく行うアクション、両腕を水平に伸ばし、手を垂直に立てるしぐさで、旅客機の主翼の先端についているウィングレットのようなカッコウをするのが私にはハズカシイ。

・・・これはドクタースランプ・アラレちゃんのアクションでもあるが、アラレちゃんがやるにはカワイイのだが、可憐な少女が、あえて可憐なしぐさをするのは見ていてハズカシイ。

目しいのオババの演技・セリフもオーバーアクションぎみで、少しハズカシカッタ。

一つ気が付いたこと。

ユーチューブで観ることができる英語版では、ユパの声をTV「スタートレック・TNG」でピカード艦長を演じたパトリック・スチュアートが吹き替えている。

そのピカードの日本語吹き替えをしたのは声優の麦人氏だが、「風の谷のナウシカ」ではベジテ市長の声を担当している。 そのベジテ市長の英語版吹き替えは、「スターウォーズ」のルーク、マーク・ハミルが担当している。

英語版での「ナウシカ」の発音は「ナゥセェカ」と聞こえた。

最後に前々からズーッと気になっていたこと。

誰か教えてくださらぬか。ナウシカのワンピースの下は、何もはいていないのだろうか。

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ちょいと小津映画「早春」

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小津作品の中でも「早春」はそれほど評価されていないが、面白い作品で、ついつい何度も観てしまう。

何が面白いかというと、以前、竹中直人も指摘していたが、どこか「ヘン」なところが面白い。

竹中氏は国電蒲田のホームで電車が入ってくるシーンでは、電車を待っている大勢の人が一人残らず電車の方に顔を向けているのが「ヘン」だと言っていた。たしかにそうだ。

私が「ヘン」だと感じたのは他にもあり、例えば大の大人がピクニックにグループで行くことで、普通だったら行った先で酒盛りをするとか、焼肉パーティーを計画するところだが、子供じゃあるまいし、予算400円(今なら6000円くらいか)でただただ江ノ島まで遠足に行くことだ。 こんな無邪気な大人をわざわざ描写するのが「ヘン」だ。

またその中のメンバー、田中春男と須賀不二男がどう見ても年齢45.6歳であり、本来だったら部課長クラスのしっかりしたツラをしている人が、どうやら安アパート暮らしの独身のようなスタイルで平社員ヅラをしているのが「ヘン」である。

池部良の送別会を、その安アパートで開くのも何か「ヘン」であり、いくら安月給の仲間とて、居酒屋くらいでやるのが普通だ。

そして、その大の大人みんなで「蛍の光」の合唱。あの須賀さんも歌っている。この場面は「ヘン」を通り越して、ちょっと笑ってしまう。

ところで、小津作品での俳優のセリフ運びが独特なのは有名なことで、笠置衆さんなんかも、娘を嫁にやる役ばかり演っているが、その時はこんな調子の会話だ。

「しあわせになるんだよ」・・・・・「なるんだよ、しあわせに」、と主従逆転の文法で言葉を二度繰り返す。

この言葉の反復は、口下手でも娘の幸福を願う気持ちがよく表されていて、小説などの文学より実にうまい映像表現だと思う。

さて、小津映画の脚本は小津と野田高悟の共同執筆であるが、おそらく野田氏のアイデアによって採用された東京言葉(あるいは山の手言葉というのだろうか)が随所見られる。

そのひとつに「ちょいと」がある。この言葉は「ちょっと」より精神に余裕のある言葉であり、ヤボに感じない言い方である。セッカチな江戸っ子とは違う少しキドリがともなう言葉だと思う。

この「ちょいと」がこの「早春」にはたくさん使われているのだ。おそらく小津作品でも使用頻度はナンバーワンではないだろうか。

そこで、DVDでチェックして「ちょいと」が現れる回数を調べたら27回も登場していた。私もヒマなもんだ。

「ちょいと」だけでなく、高橋貞二のふてくされたときの言葉の語尾「~ンダ」もかなり頻繁に使われ、ちょいとウンザリしないでもない。

「早春」をあらためて観て気づいたことは浦辺粂子さんの芝居がうまいことで、おでん屋のカウンターに寄りかかって喋る演技は粋でオツなものだった。

もう一つ気がついたこと、ニッセイのオバチャン、中北千枝子さんの上半身の下着姿が見られるのはこの映画だけではないだろうか。

黒澤の「素晴らしき日曜日」で彼女は服を脱ごうとしたが、沼崎に止められて見られなかった。

私は映画の解釈はしない主義だが、この「早春」は人生のリセットを描いた作品だと思う。ただし、それは池部・淡島夫婦だけのものではない。

死んだ同僚の母親、淡島の友人の中北、池部の戦友、高橋貞二、キンギョ、笠置衆、ブルーマウンテンの山村聡、その客の東野英治郎・・・・みんな人生をリセットしようとしている人物か、あるいはそれがしたくても出来なかった人物である。

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どですかでん

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黒澤映画初のカラー作品でありながら、興行成績がふるわず、また評判のよくない作品であるが、私にとっては愛すべき作品であり、毎回観るたびに心を穏やかにさせてくれる。

初めて観たときには、たしかにこれが黒澤作品かと驚いた。どこに向って映画が進んでいくのか分からない。登場人物の誰にピントを合わせればいいのか分からない。

しかし、人物ひとりひとりは、みんな憎めない人ばかりで、松村達男ですら気の毒に思えてしまう。

ただ、金細工師の「たんばさん」がなんとなく、真ん中にいるように感じたが、それは見る人それぞれだと思う。

撮影は長回しが多く、即興的で、しかも俳優さんの個性が出ていて、その演技を観ているだけでも楽しい。

ところで、「たんばさん」の家に入った泥棒が逮捕され、家に実地検証に行き、終わって玄関から出るとき、はめられた手錠がピカリと閃光を放つ。

いったいこれはどういうことかと考えるが、幼稚な言い方をすれば、神さまからの視線ビームということだろうか。 それがどうした、と言われても解説できないが。

私には、カメラの視線・観客の目が神の視線のような気がする。

さらに私なりの解釈(映画に解釈はしない主義だが今回は特別)では、あの人たち、あの空間は実は「惑星ソラリス」の海の生命体が創造した人工島での人工物体ではないかということで、そうこじつければ映画に納得がいく。

つまり、生命体は地球の人間という生物をシュミレーションしていたという訳。

映画の最後に「どですかでん・どですかでん」と走っている六ちゃんをヘリコプターの空撮で捕らえ、次第にズームアウトすると、あのゴミの島がソラリスの海に浮かんでいたというエンディングを想像すれば、みなさん納得いたしませんか。

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デスノート・後編

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つまらなかった。

話を盛り込みすぎている。

展開や説明が、ライトとエルの頭脳のレベルになっており、頭の悪い私のような観客には、理解するのが追いつかない。

今回は女性アイドルと新死神だけの話に集中させて終わらせ、女性キャスターの話からライトの最終計画は、次回作として展開すべきだったと思う。

たぶん、金子監督もいやおう無く、後編に押し込めてしまったのかもしれない。

新しい死神は、どうも動きに精彩が無い。また彼は、どうして、ワタリだけ殺したのだろうか。

他にも説明不足がある。女性キャスターのもとにノートが渡るのに、死神の確かなる理由がわからない。

追記:再び観直して、カラクリがどうにか分かったが、条件が多いうえに、死神やエル、ライトの言葉だけの状況説明で終わり、分かりにくい。

終局で、ミサが再び手に入れたノートを、ワタリが部屋に忍び込み、すり替えたと、エルが言葉で説明するが、その映像カットを挿入すべきだ。観客の理解度が増す。

その本モノのノートを読めば、筆跡やミソラ発砲事件の記述で、ライトが犯人と分かるはずで、エルの命を掛けてまで実証する必要性はない。

ラストシーンも、たぶんエルは生きているだろう、ドンデン返しがあるのだろうという予測がミエミエで、サプライズはなかった。

ただ、エルのキャラクターに不思議な魅力がある。今回は和菓子を食べるシーンや、お面をつけたりで、笑いをさそった。

だから死なせたのは残念で、制作側もスピンオフで、ファンの要望に答えるみたいである。

セットがすばらしい。捜査スタッフルームのモニターや、装置の設置にウソくささがない。

事件から1年たった後のエンディングは、次回作を期待させるのが映画の定石だが、なにもなくて肩透かしだった。

追記:

  デスノートに自分の名前を書き、死亡条件をこうしたらどうだろうか。

「スタンリーメタボリック

   2070年 老衰により、眠るように、安らかに死ぬ。」

さらに追記:  死を操れるのは23日以内という条件があった。

    だけどノートに記入してからとは書いてなかったぜ リューク。

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デスノート

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面白かった。

フジテレビ系列のドラマや提携映画のようにオーバーで、チャラチャラした演技の映画ではないかという先入観があった。

また、週刊誌に載っていた批評では酷評されていたので、観るのをためらっていたのだが、週刊誌の記事を書くような評論家のレベルなど低いのであろう。あてにならないものだ。たしか女性評論家だったようだ。

平成ガメラの金子修介が監督ということも知らなかった。話の構成がしっかりしていそうだと予想し、テレビ録画した。

寓話的なストーリーで、ちょっと星新一のような始まりだが、しだいに犯罪人といえども私的に殺めてもいいのか、という葛藤を起こさせる。

社会的ダニのような凶悪犯罪人が死ぬのは、「必殺シリーズ」のような爽快感がある。しかし、それで終わるのでなく、罪の無い捜査官まで殺させ、観客を善悪の線引きの迷いに引っ張り込む。

キラとエルと、どっちを応援すればよいのか、自分の心理の動きが面白い。

エルのキャラクターが面白かった。およそ40歳以上の人間にとっては、コンビニにたむろしているような、イヤな存在で、始終、甘いものやスナックを食べ、ジベタリアンの姿勢ですわっている。

ところがIQ抜群のようで、身元も、なぜ、どこの組織に雇われているか(ICPO?)も不明であるが、我々は、捜査部長である、ライトの父親のように、最初呆れていたのに、しだいに彼に引かれていくことに気づく。

映画のエンディングは、次回作を観ざるをえない、巧妙な終わり方だ。

ただし、映画で気になったところがいくつかある。

ライトの家庭を、どうしてあんな富裕層にしたのだろうか。オヤジは警察の幹部のようだが、キャリアでなければ、年収は1500万位ではなかろうか。家がリッパすぎると思う。 

この映画はアジアでもヒットしたようだが、また日本人はみんな、あのような家に住んでいると誤解される。 

アルバイトで生活している苦学生の設定でも面白い脚本ができたのではないか。ただし、黒澤の「天国と地獄」に似てしまう恐れがあるが。原作はどうなっているか、私は知らない。

死神のVFXがまだまだお粗末だ。顔の表情に工夫がない。まばたきもしない。

例えば、パソコンの画面を覗くなど、近いところを観ると、目の眼球は違った動きとなり、またそれを動かす顔の筋肉に変化があるはずだが、まったく無かった。もう少し研究するべきだ。

キラは顔と名前が分かれば、殺人を犯すと知っていながら、警視庁は報道機関に容疑者を発表してしまう。 逃亡犯人以外は公表するのはおかしい。

ライトは家の監視カメラをのがれるため、ポテチの袋の中に携帯テレビを隠すが、カメラの向きによっては見えてしまう恐れがあり、どうしてあの方法が安全であると分かったのか。

追記: 監視7日目で、どうして夕食後の時間帯に、犯罪が起きると予想できたのだろうか。 あの方法では監視初日から、毎夕食後、ポテチを食べながら携帯テレビを見なければならないのではないか。

細かいことだが、女性の元FBI捜査官が、たしかコルトガバメント(またはベレッタM92)を使っていた。こんな大口径の拳銃を持っているだろうか。しかも日本で。 せいぜい38口径、あるいは25口径の小型ピストルにすべきである。 

その捜査官は頭を銃で打ち抜き自殺するが、倒れ方が不自然。 まだ意識が残っているかのようにゆっくり倒れるが、実際は即死であり、瞬時にぬれ雑巾のように、地べたに崩れるのがほんとうだ。

最近のアメリカのアクション映画や戦争映画でも、そのように描写するようになってきている。

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椿三十郎・リメーク

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退屈で早く終わってほしいと思った。

織田裕二という俳優さんは、うまいだろうか。私にはそうは見えないが。

どうも黒澤監督だったら一番いやがる芝居をしていると思う。

まったくオリジナルと同じシナリオなのだが、ことば運びのリズムを壊している。

たとえば、「さっきのは3匹でも猫だが、こんどのは1匹でもトラだぜ」というセリフがあったと思う。

これは丁度真ん中で、リズムの休符があり、二つに分けてしゃべるのが妥当ではないか。 

それを猫とトラでリズムを切り、動物のアクションをしてみせる。奇をてらう余計なサービスで三十郎のスマートさをスポイルしている。

そういうリズムバランスを壊したシーンはたくさんあり、あえて黒澤作品と違うようにやっている。 「マネじゃありませんよ」というわけである。

また、織田裕二と、特に旧作で田中邦衛が演じた若侍の俳優は、トレンディドラマのようなオーバーな演出やアクションで、鼻持ちならなかった。

これは映画であり、演劇の舞台ではないのだ。顔や体を大げさに変化させなくともよい。

撮影はよかった。オリジナルと変えた部分は、例えば、左から右へ行くシーンを逆にしていても、不自然さは感じなかった。

劇場に来ていた客は、オリジナル作品を知っている客層で、笑いを取るシーンは既に知っており、誰も笑わなかった。

R15指定をクリアするということで、血糊ブシューがない。子供に見せる必要なんかないから、遠慮なくやってほしかった。ガッカリした客は多いと思う。

エンドロール早々に席を立つ客が多かった。

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兵隊やくざシリーズ

勝新太郎/兵隊やくざ 勝新太郎/兵隊やくざ

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「♪遊女が客に惚れたという~」

勝新太郎の「兵隊やくざ」も面白かった。昭和40年ごろから制作されているから、「座頭市」、「悪名」より後となるが、勝は、同時期、ほぼ3本の映画を掛け持ちしていた。

兵隊の日常が描写されている映画を観るのが好きで、他にも「二等兵物語」、「与太郎戦記」など深夜放送の映画でよく観たものだ。

私は軍隊というものが大嫌いであり、「兵隊やくざ」の田村高廣演ずる有田上等兵の気持ちは、私の気持ちそのものだ。

田村高廣の有田上等兵が、映画の冒頭、ナレーションで言う。

「20年たった今でも、軍隊を思い出すとムナクソ悪くなる。」

だから、戦後の平和な時代に生を受け、あの時代に遭遇しなかった喜びと幸福を。 戦争で犠牲になった人への感謝を、軍隊映画を観ることによって、素直に感じてしまう。

勝新太郎の大宮は、元ヤクザで石頭、岩石顔。 軍隊お馴染みのビンタなど屁でもなく、殴った相手の手が逆に怪我をしてしまう。

軍隊では階級の星ひとつ多いだけで、神様であるが、そんなことはお構いなし、重営倉入り覚悟で大暴れする。

ただし、軍隊というところは、星の数よりメンコの数がものを言う。ということをこの映画で知った。メンコの数とは、何年軍隊でメシを食ってきたかということである。

二年兵の伍長より、三年兵の上等兵がデカイ顔できるのだ。

そんな大宮の暴走を知的にセーブするのが有田上等兵で、力と頭脳のバランスがとれたコンビは、権力に仕返しをし、悪徳上官の手足をへし折、あげくのはて脱走をする。 これがまた爽快だ。

また、脱走中は、P屋に化けたり、ニセ将校になって軍隊に舞い戻ってうまく立ち回っている。

ゲスト出演は、お馴染み大映の悪役俳優さんがいて、またかという感じだが、時々、勝新太郎のどこかユーモラスなキャラに合う人が共演している。

例えば、玉川良一などがそうで、元僧侶の兵隊役であった。 そのエピソードでは、死んだ兵隊(藤岡琢也)の仲間内でやる、ささやかな葬儀でお経をとなえている最中、「勝ってくるぞと勇ましく」の歌がお経の中入っていて、大爆笑したものだ。

ところで、大宮は女好きであり、休暇になるとさっそく札束携えてP屋(PROSTITUTE宿・・・海軍が使っていた隠語であるが)に直行する。

軍隊というところは、兵隊の衣食住は、今の自衛隊と同じでタダであり、もらった給料はそういうことに使える。

大宮はいくら位の給料をもらっていたかというと、一等兵の一ヶ月の棒給は5円50銭で、さらに外地手当てが同じくらいつくので、合計10円程度ということだ。

当時の工員の一日の賃金が1円から3円ということなので、3円を今の1万円くらいと換算すると、3万円くらいということになる。

なお、戦地では兵隊はみな一等兵以上であり、二等兵というのは内地で招集され、教育を受けているときだけの位である。意外と知らない人がいるのではないか。

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悪名シリーズ

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「わいは八尾の朝吉や」

自分を紹介するのに、苗字を言わないのが面白い。相手も苗字を訊かないのが面白い。本名が村上朝吉であることは、映画のずっと後で分かる。

河内弁と八尾を全国に知らしめたのはこの映画ではないだろうか。自分のことは「わい」。YOUのことは「ワレ」あるいは「オンドレ」という。誰かが何か企んで行動を起こしたことを「~さらしおった」という。怒っているわけではないのだが。

もっとも、1975年ごろ「河内のオッサンの唄」というのがヒットしたので、あの言葉はお馴染みであった。 ようするに怒っているような言葉だが、本人は親しみをこめて喋っているつもりなのだ。ちょっとシャイな気質だと思う。

映画のシリーズでは八尾駅のロケもある。昭和37年頃だと思うが、本モノの駅だとすれば、大変小さい駅だった。

朝吉のキャラクターは、弱く困っている人をほっておけない性分で、売られた喧嘩は買うがヤクザが大嫌い。一方警察も嫌い。自分の信念を押し通す。義理を守る。そのくせやっぱりシャイで、朝吉は「照れまんがな」というセリフをよく言う。河内人の気質をよく出しているのではないか。

ケンカは強く、負けたことがない。めちゃくちゃハンサムでもないが、女はコロットまいってしまう。

カレーライスが大好きで、酒が全く飲めない。横文字が苦手で嫌いなので、ルー大柴など張り倒されるかもしれない。

酒が飲めないのは残念で、勝の飲みっぷりが観たかった。

勝の食べるシーンが面白くて、毎回楽しみだ。ウドンは噛まずに丸飲みで、しかもセリフをタイミングよくはっきりと喋る、実にうまい。

特にカレーライスの食べっぷり(セリフを喋りながら)は絶品で、一皿を1分ほどで平らげる。NGを出したらもう一遍食わなければならない。「カレーは飲み物」と言っているマイウータレントがいるが、まさにそんな食い方だ。

朝吉の相棒は田宮二郎で、シリーズ最初の二作は「モートルの貞」(苗字不明)という。

モートルとは「日立モートル」などの電気モーターのことだろうか。以前、漫画週刊誌で、「悪名」のことがマンガの中で触れられていて、「ロートルの貞」と間違っていたので笑ったものだ。年寄りには見えないが・・・。

田宮二郎はこの映画で人気大爆発し、二作目で、殺されてしまうのだが、ファンの要望だろうか、三作目より、ソックリな弟役「清次」で復活する。

「梅にウグイス、松に鶴、牡丹に唐獅子、朝吉親分に清次兄いや」

と、兄貴のときよりパンチのあるキャラクターで画面を明るくしてくれた。この人の自分の腕や手をポンと叩きながらのマシンガントークは、まるで鉄火場のアニさんのようで、弾けるような芝居を見せてくれた。

また、朝吉に「ケタクソ悪い」と言われながら、英語まじりのセリフ運びは楽しかった。

清次は根本的にヤクザで、それを朝吉が咎めたり、愛想をつかして、つっぱねるシーンが良く出てくる。これは映画製作者の良心である。

ケンカのシーンは日活などより、リアリズムよりだと思う。ビールで頭を叩くという、実際だったら死んでしまうようなアクションはない。

追記: シリーズ後半編ではビールびん(キャンディグラス)で頭を叩くシーンがいくつかあった。

だが勝はかなり本気モードでやっていて、上田吉二郎、遠藤辰男、伊達三郎、佐藤慶などの悪役は、ゲンコツは当たっていないだろうが、あちこち振り回されボコボコにされている。

ところで、この映画シリーズ、全部で15作あるのだが、回を追って、話や状況が矛盾しているところがある。

特に二人の年齢設定が次第におかしくなっていく。

朝吉は太平洋戦争前に軍隊に徴兵されるが、そうすると大正生まれである。これはだいたい、二作目までは状況にあっている。戦後のドサクサでも30代前半である。しかし、昭和35年ごろの話では相変わらず30歳前後の格好で、変だと感じた。

また、清次はシリーズのあるエピソードで、昭和8年生まれであると分かっている。すると初登場する大阪闇市が舞台の三作目は、戦後すぐのごろと思われ、まだ中学生ではないか。

脚本は、ほとんど依田義賢氏であるが、シリーズを重ねるにしたがって、やむをえず、映画の公開している昭和30年代に、二人の設定を合わせていることが分かる。

ただし、清次の生年月日が分かるエピソード「悪名太鼓」は、藤本義一氏の脚本で、製作者ともども、ウッカリしていたのかもしれない。昭和元年生まれくらいにするべきであった。

追記:シリーズ最終作「悪名一番勝負」は朝吉、番外編で、原作・監督はマキノ雅弘がやっている。 この映画の朝吉は完全にヤクザで、ケンカでも刃物を使う。田宮二郎は出演していない。 私はヤクザがきらいで、堅気の朝吉を応援していたのだが、この映画では以前の悪名シリーズのように、完全に素手で、チンピラをコテンパンに叩きのめすという期待を裏切られる。 したがって途中で観るのを止めた。 私はヤクザ映画は観たくない。

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