新型ジムニー、インプレッション
2019年3月16日
納車から3週間たった新型ジムニーのアレコレ・インプ
こんな雪道なんざ屁でもねー、って、これくらいは2駆でもいけますけどね。だけど登りで停車した後の雪上坂道発進は、2駆ではデフロックが付いていないと雪面を1輪が掻きむしりながらズルズルと後退することが多い。だが新型ジムニーの4駆ならこんな場面でも戦車のごとく、グイグイと安定して進めた。
・エンジン
最初、アンダーパワーには戸惑ったが、思い出してみると、38年前、免許を取得してファーストカーとして乗り始めたダイハツ・ミラクオーレ550cc、約30馬力、トルク約4キロ、重量600キロ台の加速感、速度感に近く、そのうちに悟りを開いて気にならなくなった。思うにハイパワーは三日で飽きるけれど、ローパワーは三日で慣れるのである。スターレットではターボパワーにまかせて遅い車はバンバン追い越したが、ジムニーではその気にもならない。それだけ事故率が減り、自分の血圧も高くならず、安全と健康にもよろしい。
意外だったのは、2000回転以下でも結構トルクがあり、1速・2速でグイッと車体を押し出してくれること。この感覚は人生2台目の車、ダイハツ・シャレード・ディーゼルターボに近いトルクを感じた。その時のエンジン音も少しディーゼルっほく(3気筒のサウンド)、懐かしい。
走り出してさらにトルクのある美味しい回転数は3000から4000あたりで、そこをキープすれば1トンの重量を感じずグイグイ進められる。ただし、その間、エンジン音は軽トラのごとくガーガーとうるさく、瞬間燃費計はリッター・10キロ以下を表示する。信号の停止から流れに乗って加速するには、5000チョットまで引っ張ってシフトアップすれば、そのトルクバンドに納まるので加速が失速することはない。
4速・5速ギアで2500回転付近を使って時速50キロから60.70あたりで巡航すると、極端に静かなエンジン音となり、NHVの無いシッカリした車体・室内の相乗効果で快適な走行を楽しめ、燃費もリッター・20台から30台となる。このギャップが激しい。
なお、クラッチミートではアクセルオフでも回転数がすぐに下がらないエンジンなので(フライホイール効果?)一呼吸おいてからクラッチを繋げないと、ギクシャクすることとなる。ここは慌てず慣れるしかない。
前車、スターレットのようにギアのアップ・ダウンで素早くスパスパと繋がらないので自分としてはここは不満な点。シフト感覚は1速が少しガリるが、2速からは普通かちょっと良いというところ。ギアチェンジはワイヤー制御だったFF車・スターレットのシフト感覚のほうがジムニーより良かった。
4WDのレバーは最初、ゴリゴリした手応えで入ったかどうか不安だったが、これも慣れた。
・ブレーキ
重い車体と直径の大きなタイヤのせいで、普通車クラスの頼もしいブレーキが装備されていて安心感がある。この車で峠の下りやコーナーをガンガン攻めるようなことはないので、必要十分の性能。踏んだ時のフィーリングは「カックン」でもなく「フンニュー」でもなく自分の好みに合っていて100点。
・室内空間
この車を前から見ると、なんと可愛らしく小さいんだろうと、やっぱり軽自動車だなと感じてしまうが、車内に乗り込むと、なんて広いのだろうと呆れてしまう。前車、スターレットが狭すぎたのだ。自分の今の軽自動車に対する認識が狭すぎたのだ。テレビでやったが、ガタイのあるプロの格闘家でも乗れてしまうのだから、実際に自分が乗り込んでも納得した。シートに座ってみてポジションに違和感はないが、特に快適というものでもない。座り心地はまったく普通。60キロ・70キロで巡航するときはシートを少し倒してリラックスできる。
ペダルポジションはこれも自分には問題なく違和感は無かった。40年前の軽自動車というとタイヤハウスの容積が下回りを邪魔して、三つのペダルが少しオフセットしていたもので踏みづらかった。なお、MT車にはフットレストが無いが、これもまったく問題ない。左足はフロアーに落ち着いて置けた。シフトレバーもベストポジションで、スッと左手が握りに届く。
直線配置のインテリアはレトロ調で懐かしいが、プラスチッキーで安い車という感じはする。これはメカやフレーム方面に金を使った車なので、こういうところは犠牲になっていて仕方がない。パワーウィンドウのボタンがあんな所にあるのも、メーカーが言う、分厚い手袋をしたまま押せる大きさと移置にしたというのは言い訳で、実際はコストダウンの為だと思う。ドアトリムにあったほうが断然使いやすいはず。
メーターパネル類が六角ネジで締められているのは頼もしく、自分は好きだ。実際にパネルからビビリ音など一切せず、剛性感がある。
XGタイプの後席はベンチシートだが4人乗車は難しくなく、ペット専用ということはない。これもスターレットよりも足元は広い。
さて、ラゲッジスペース。後席を倒すと荷物を支えるものが無く、コーナーリング中、荷物はアッチ・コッチと動きまわる、オプションにあるかどうか知らないが、抑えるネットなどが欲しい。
前席のヘッドレストを外して前・後席を倒すとフラットとなるが、足を前席に向け寝そべるには、XGタイプだと頭の部分に凹みがあり、この部分を埋めるクッションが必要になる。ネットの話題ではXGタイプはフル・フラットとならないとあって、自分は車内泊出来ないと勘違いし、注文した後ショックを受けたものだが、実際は少し工夫すれば問題なく車内で寝られるのでホッとした。これはスズキのパンフレットで説明不足なのが原因でもある。
車中泊出来る・出来ないかは、レジャーよりも災害避難の時に体育館で寝かされるか、プライベート空間で気兼ねなく体を伸ばして寝られるかという重要性をはらんでいて、これは今後の自分にとっては極めて重要なファクターであった。ジムニーを選んだ理由はここにもある。
・乗り心地・静寂性
ジムニー女子という言葉まであるそうで、新型ジムニーのデザインとカワイさに惚れて女性にも人気が高いようだ。でもスタイルだけ気に入って購入を検討している方。試乗だけは絶対やったほうがよろしい。車とは地面の凸凹を抑えて新幹線のように揺れず、心地よく快適に走るものという固定概念は、独立サスペンションを備えた普通の乗用車、あるいは電子制御のエアサスやアクティブサスを備えた高級車に当てはまるもので、ジムニーには該当しない。その理由はジムニーが採用しているリジットサスペンションにあり、これは昔のトラックやボンネットバスに使われていたもので、道路の凸凹は、たとえ1輪だけでも素直に車体全体に影響を受け、ちょっとしたマンホール周りの膨らみや、傷んだアスファルトをタイヤが踏むと、小波に揺れ動くボートのように右へ左へと体や頭が振り回されることになる。独立サスの車に比べ、決して乗り心地の良いものでは無いのだ。
だから試乗せずにジムニーを購入し、普通の乗用車のつもりで初乗りした人は「こんなんじゃなかった」と後悔するハメに陥るだろう。リジットサスは悪路走行で車体の下周りのクリアランスにメリットがある方法で、頑丈さも取り柄であるが、乗り心地優先ではないので、これを知っていないと大袈裟な話、長い車生活に支障を受けることになる。リジットサスと独立サスとの違いはジムニーのパンフレットにイラスト付で説明されているが、当然ながらリジット型のメリットだけの解説である。
ついでに剛性感とやらについても。
1980年代から「間違いだらけのウンヌン」を長年出版し続けていた、ちょっと太めのモータージャーナリストが日本車の剛性の低さを欧州車と比較してしきりに指摘していたが、彼も存命なら新型ジムニーには文句をつけないだろう。乗車して走り出すと、まるでスチールの缶詰の中にいるようなシッカリ感があるし、車から降りてドアを閉める時も、「バムッ」という軽自動車とは思えない剛性感のある音を聴かせてくれる。走行中、ちょっとした地面の凹凸でも車体は上述したように揺さぶられるが、「ミシリ」とも歪みによる振動・ノイズが発生しない。
そのボディ剛性のおかげか、新型ジムニーは旧車から乗り換えたファンにも静寂性が高くなったと認められているようだ。まず、アイドリングが静かで、これは40年前の2気筒・3気筒の軽自動車を知っている人には、普通セダンの4気筒エンジン車と間違えるものだと思う。その時、ハンドルはまったく振動していない。4気筒のスターレットでさえブルブル震えていたものだが。そして走り出してどうかというと、エンジンがガーガーと高回転で回っていて燃費計がリッター10キロ以下を指すとき以外は、オーディオを楽しめる環境となり、これがリッター30キロ以上を指すトップギア巡航走行、リッター40キロ台・50キロを示す下り坂走行では、誰もが満足できる静寂性だと思う。
昭和ヒトケタ生まれで自ら「不躾」を宣言していたモータージャーナリストは、かつて「64デシベル以下の静かさであれば高級車といえる」と発言していたが、平たん路や緩い下り坂を、お巡りさんに捕まらない安全速度で流していれば、新型ジムニーはこれに匹敵するかもしれない。
尚、オプションとしてカーナビ・CDラジオ(カロッツェリア)を装着しているが、本体温度が上昇してくると、内蔵の冷却ファンが回りだして、これが結構、耳触りなシューシュー音を発し、静寂性をスポイルしている。
・ハンドリング
納車は冬期の2月ということでスタッドレスタイヤを装着して初乗りしたのだが、その状態だとハンドルは軽く、女性の細腕でも車庫入れ、ユーターンなどの取りまわしは楽だと思う。しかし、現在ノーマルタイヤに換えてみたところ、結構ハンドルが重いことに気づく。これも試乗で確認すべき。
ハンドルのメカはシャープな操作のラック・ピニオンではなく、旧車に多い、ダルな感じと言われているボール・ナット式であるのだが、自分はハンドル操作では前車スターレットとの差を感じなかった。ただし、道路のうねりや凸凹ではトレッドやホイールベースが短いせいか、細かいハンドルの修正が要る。こういうところはリジットサスによる車体の揺れとともに、運転の疲労を誘う因子になっているので、オフロードが得意の車の特徴であると考え、悟りを開くしかない。
なお、本屋で売っているドライブ入門の本を開くと、必ずFR車のコーナリングではオーバーステア・・・ウンヌンと解説してあるものだが、アンダーパワーの為か、ジムニーではコーナーで内側に車体が巻き込むような挙動は感じられない。
・燃費
64馬力で1トンの車体を引っ張るジムニーのガソリン喰いはファンも「仕方がないもの」と認めているようだが、自分の場合、(信号5つくらいの市街地)2割、(時速50-70キロの国道・県道)7割、(時々4駆の林道・低速走行)1割という走り方でリッター16キロ台をキープしている。(満タン法計測と平均燃費表示どちらも)これには満足していて、前車スターレットととほぼ同じ燃費なので正直ホッとした。購入する前は、MT車でも良くてリッター12キロくらいだと覚悟していたので、これはうれしい誤算であった。ただし、これはゴー・ストップの少ない田舎に住んでいる特典かもしれない。
なお、高速は全く走っていないが、このジムニーのフロントウィンドウは着陸する旅客機のグランドスポイラー、スピードブレーキが立ったようなスタイルなので、空気抵抗に逆らう分だけでもガソリンがかなり消費されるはず。高速は90キロくらいで走行するのが経済的にも安全にも無難だと思う。
・その他、コマケーことガタガタ言うと
4WD走行は路面が濡れていれば舗装路でもタイトコーナーブレーキング現象は起きない。・・・いや、確認出来ないような気がする。まだ、あまり四駆にしていないので判断しかねるところ。尚、私の姉は一つ前旧型のジムニーオーナーであるが、全くこの現象のことを知らずにドライの舗装路でも四駆走行してきたという。これだけでもジムニーがタフだと言える証拠であるが、メーカーサイドでは「故障の原因になるので絶対にやらないでください」というPRをしていて、自分は姉のマネはやらないつもり。恐らく、姉貴のジムニーの動力伝達系はジワジワと傷んできているのかもしれない。
車内空調ファンの強さは4段階であるが、1のときのファン音は静かなのに、2にすると極端に大きな音を発する。これも新型ジムニーの静寂性をスポイルしている。
キーの無線ボタンが敏感すぎてスボンのポケットの中の動きで勝手にロックがオン・オフになってしまう。
追記: このキーの幽霊現象は、ポケットの中以外でも自然に発生しているようで、システムエラーの可能性がある。
追記: 後に財布に入れていたスペアキーのボタンが、自分のポケットのケツの圧力でオン・オフしていたと判明。
坂道発進アシストが有難い。これが、クラッチ合わせでも行けるような、田舎の踏切前のちょっとした傾斜でも効かせてくれて、よく気が利く賢いやつ。
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