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2016年4月

ベートーベン「英雄」第二楽章の柱時計

 ベートーベンの音楽は自分のタイプではなく、若いころからタイトルがついている有名な曲くらいしか聴かなかった。

 そのなかでも、ベートーベンの交響曲第三番「英雄」は、二、三度くらいしか聴いておらず、それも第一楽章の途中でプレーヤーの再生をストップするという有様だった。なにかナポレオンに関する音楽であるということに抵抗があったからだ。政治家や人物を音楽のテーマにするなんて嫌であった。

 ところが数年前から、七番交響曲の第二楽章が気に入ったのを機会に、ベートーベンの音楽に興味が湧いてきた。歳をとったためと、ベートーベンの死去した年齢を超えたというのもきっかけになったかもしれない。

 それで「英雄」もマジメに全楽章通して聴くようになって、なかなかどうして、巷でよく演奏されるとおり、名曲であると感じた。

 特に第二楽章の葬送行進曲の重厚さと意味深なストーリー性には感心した。これだけでも演奏時間20分近い大曲で第一楽章と続きで鑑賞すると約30分かかり、それでもうお腹一杯となるが、これはベートーベン自身も分かっていたようで、演奏会では全四楽章通して演奏するとお客がダレてしまうので、休憩や別のプログラムでインターミッションを入れたほうが良いと知人に語ったらしい。

 因みに、晩年のベートーベンは自作の交響曲全九曲のうち、この第三番が最も好きな曲だとも語ったという。(もちろん筆談で)

 さて、その第二楽章。自分にはちょっとホラー映像的に怖いと感じた展開がある。

 それは起承転結でいうと曲の終わりに向かわせる「結」の導入部分。↓

(リストのピアノアレンジ編)

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(↑演奏では14分43秒から)

 いきなり始まるこのフレーズを自分は「柱時計」と名付けたい。

 第二楽章は、墓地へ埋葬されようと担がれている棺桶の中の人物の、かつての栄光と没落に至った一生をストーリーテラーが第三者に語っているような展開で、なにか埋葬する墓地の控室・・・ (そんなものが西洋の墓地にあるのか不明だが) ・・・で、語っている最中、部屋の壁に掛かっている停まっていたはずの柱時計のフリコが、いきなりカチカチ動き出すように見えるのだ。

 それは、棺桶の人物が「おい、もう時間だよ、オレのくだらない生涯の話などもう止めて、とっとと土の中に埋めてくれ」と警告しているように感じる。

 これがチョット怖い。

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バッハの後妻、アンナ・マクダレーナの作曲

 最近観たNHKBSの海外ドキュメンタリーで、バッハの後妻で彼より16歳年下だったアンナ・マクダレーナは、バッハの作曲にも関与していたことを知った。

 バッハの作曲した楽譜の最終原稿は、大半がアンナによって清書されたことは既に知っていた。   

 その原版を見ると、実に丹精な筆跡で、オタマジャクシの丸い部分や音符をつなげる線、スラーのカーブなど見やすい上に芸術的で、演奏するための記録に用いるだけでなく、見るだけでも鑑賞できる立派な美術作品といってもいい。ベートーベンの書きなぐったような自筆楽譜といい対称である。(彼は原稿を清書せず、代書屋に書かせた)

彼女の清書、リュート組曲

Photo

↑羽ペンによるインクで清書するわけだけど、書き間違えたらどうするのかね。修正ホワイトも無い時代だというのに。

 アンナの代筆は、盲目となったバッハの晩年では、完全に彼女の仕事となったようで、原稿のほとんどは彼女の書いたものらしい。

 それら原稿を丹念に研究した結果によると、なんと有名なあの作品はアンナ自身が作曲したものらしいのだ。それは・・・

・平均律第一巻のプレリュード・ハ長調、

 ・・・・このピアノ愛好家、珠玉の1曲がアンナの作曲だったとは・・・何度も推敲されたらしい。対のフーガはバッハの作曲。

・無伴奏チェロ組曲・プレリュード、・・・CMでもおなじみですな。

・ゴールドベルグ変奏曲・アリア部分、・・・なるほど、いかにも女性による作品のような愛らしい曲。アンナがクラブザンで弾いているような感じ。

 ・・・いや、この事実には驚きました。

 アンナ・マクダレーナは11歳でバッハに弟子入りし、彼から音楽理論の素養を身に着け、また宮廷に雇われた声楽家としても優れていて、同僚の楽士の10倍近い給料を得ていたという。作曲の才能があってもおかしくない。

 バッハと死別し未亡人として59歳で生涯を閉じた彼女の墓石には「物乞いしていた女性」と記録してあるそうで、これはどういうことなんでしょうか。なにか小説や「アマデウス」のような映画のテーマになりえる波乱な人生だったようですな。

 アンナとは関係ないけれど、「タララー」のトッカータとフーガ・ニ短調はバッハの弟子による作品だという。これも知らなかったなー。ちょっとショック。

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