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ラザール・ベルマンの演奏

 ベルマンの語録をちょっと思い出すと・・・

・「私の演奏をホロヴィッツと比較するなんて、教会のキリスト像に唾をひっかけるようなものだ」。

 ・「学生のころはショパンの1分間のワルツ(子犬のワルツ)をどれだけ速く弾けるか友達と競い合い、ピアノ演奏をフットボールかなにかと勘違いしていた」。

 ・「私は19世紀のヴィルトオーソタイプのピアニストだ」。

 ・「ベル・カント奏法を目指した」。

・・・ピアノテクニックとしては安定感を感じた。どんな難曲でも汗ひとつかかず涼しい顔で弾いてるように見えた。ヒグマみたいな大きな背中と肩、太い腕はどんな速いパッセージのオクターブでも難なく受け止めて見える。リストのソナタやベートーベンの「熱情」の演奏は誰よりも速く弾いた。

 リストの「スペイン狂詩曲」。このはっきりいって音楽的には三流の曲も、彼の演奏にかかるとスポットライトを浴びた一流女優になった。特にキラキラ輝くようなこの部分の演奏はすばらしかった。

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ベルマン演奏、リスト・スペイン狂詩曲、↑の楽譜ページは10分20秒あたりです。

 ベル・カント・・・歌わせる演奏というと、ラフマニノフのモマン・ミュージコーでそれを感じた。しかし音がほの暗い。なにか地の底に沈殿していく感じ。

 プロコフィエフのソナタ8番、「どこに向かっていくのかわからない、ちょっと暗いですね」・・・・と吉田秀和さんもラジオで語っていたのを記憶している。

 もっもロマンチズムあふれる演奏だと感じたのはシューマン・ソナタ2番、第2楽章。ロベルトとクララが月灯りのバルコニーで語り合っているうちに眠りに落ちフェードアウトするような。

 2年前、彼の輸入盤CDを購入し、昨日、やっとリストの「巡礼の年、スイス、オーベルマンの谷」を聴いてみた。

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ホロヴィッツ演奏、リスト・オーベルマンの谷

 この曲、私と同じ年代でクラシックファンなら昔、NHKFM「大作曲家の時間」のオープニングテーマだったことをご記憶だと思う。

 リストは最初、左手部分をチェロのように弾けと楽譜で指示していているが、ベルマンのこの演奏がまたいい。多少速いテンポでレガートで下降する骨太のピアノの低音部はチェロの音色を思わせる。オーボヘのように弾けという次のフレーズもよく歌っている。この曲はホロヴィッツの演奏でなじんでいるが、それは峡谷の深い奈落の底を覗き込むような鋭さを感じたものだ。しかし、ベルマンの演奏だとそれは感じない。やはり、ほの暗くジワジワと谷底に落ちていく。

 フィニッシュではホロヴィッツは和音の連続打部分を強調し、まるでチェルニーの練習曲のようにしてしまっているが・・・・それはそれで迫力満点・・・・、ベルマンはそこは押さえて表現し、大曲感を出すのに成功している。

 晩年、ベルマンはイタリアの最新鋭ピアノ、ファツィオリを愛用していたが、自分は全くその録音演奏を聴いたことが無い。どんなものだろうか。

 自分は学生時代、東京でベルマンの演奏会に行った。「熱情」はレコード録音のように速いテンポでミスタッチ無くガッチリと安定していた。アンコールにベートーベンの「トルコ行進曲」・・・たぶんリスト編・・・を弾いた。なぜかこれが最も印象にある。

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コメント

造詣の深さに脱帽ですが。(笑)

演奏家により色々あるのは承知の上で、自分はピアノの高音域部分は NY スタインウエイが、
低音域はベーゼンドルファーが好きなんです。
(変態ですかね?)

日本の楽器メーカーが電子ピアノを開発するにあたり
P 社がスタインウエイを、R社がヤマハを
サンプリングしていたそうで、作り物とは言え
確かに音色の傾向は(多少ワザとらしかったですが)
それらしく作ってあって微笑ましかったのを思い出し
ました。

世界の名だたるピアノメーカーはそれぞれ紆余曲折
あったようですが、ヤマハに買収されたベーゼンドルファーの新作ピアノを聞いてみたい気がします。

投稿: 無無無。 | 2013年5月31日 (金) 22時47分

無無無さん。ピアノの拘りはスゴイ!
NYスタインの高音の良さは私もはげしく同意ですが、
ベーゼンの音は今だ良くわかりません。
どちらも触ったことはありませんが、ベーゼン・インペリアルの最低音をフォルテシモでぶっ叩いてみたいですね。
25年前、クラヴィノーバを手に入れましたが、最近の電子ピアノの性能は当時より安いのにはるかに進化しています。驚きですね。なるほどサンプリングしていましたか。
最近のベーゼンはどうでしょうか。興味ありますね。工場でのクラフトマン達にはヤマハもやりたいようにさせていると思います。

投稿: アラン・墨 | 2013年6月 1日 (土) 09時47分

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