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東京五人男

邦画メモ、NO、79、NHKBS

1945年、東宝、スタンダード、白黒、84分

監督- 斎藤寅次郎、 撮影- 友成達雄、 音楽- 鈴木静一

出演- 古川緑波、横山エンタツ、花菱アチャコ、石田一松、柳谷権太楼、高勢実乗、

飯田ふき江、田中筆子、戸田春子

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 終戦からおよそ3ヶ月後に映画が完成しているので、当然GHQの検閲は受けているだろう。戦時中、日本の憲兵や特高が観たら卒倒しそうなシーンがいっぱい出てくる。

 終戦前は役所の上司に意見具申したり、まして体制へのデモンストレーションなどしようものならすぐに「アカ」とレッテルを張られ問答無用に引っ張られていかれたが、この映画ではそういうシーンはGHQから「どんどんやれやれ」と奨励されているように見える。制作側も承知でGHQにオベンチャラしたのかもしれない。いや、こうしないと映画が通らないか。

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 「あのねオッサン、わしゃかなわんよ」の高勢実乗というコメディアンの実映像を初めて見た。この人の存在は中学生の頃、遠藤周作の「ぐうたらシリーズ」の一文で知った。顔のメークはアメリカ・サイレントムービーのコメディアンそのものだけれど、アクションはニッポン人だなー。ノンビリしている。

 古川緑波の演技も初めて見た。食糧難の時代なのにたいへん肥えた体格の人でこのミスマッチが可笑しいが、この人の良さはこの映画一本だけ見ても分からない。息子とドラムカン風呂に入って「♪お風呂入るときゃ皆はだか」を歌うシーンは確かにホノボノとしたけれど、一緒に風呂に浸かっている子役がノーアクションなので、かえって笑ってしまった。

 わずかなカットだけれど、エンタツ・アチャコの掛け合い漫才が見られる。これも初めて見たなー。みんな私の親父の世代の人たち。昭和はどんどん遠くなっていく。

 感心したのは、終戦から3ヶ月というのに、もう戦時中の隠匿物資や配給品を横流し、私財にしている強欲人物が登場することで、映画中、その描写にかなりの尺を費やしている。当時、ほとんどの市民はそういうヤカラの存在をちゃんと蔭で知っていたことが分かる。

 映画中のギャグシーンは現在の感覚ではそれほど大爆笑するものではなく、斎藤寅次郎流のお笑いなのだろう。役者がけっこうセリフをトチッたり、間が伸びているカットがあるが、リテークするフィルムが無かったか。

 おそらく、円谷英二は戦後初めてのミニチュア特撮の仕事をこの映画で行ったのではないか。東宝から公職追放される前かもしれない。

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↑円谷英二、戦後第一号の特撮か?。列車のスピードが速すぎでちょっとミニチュアっぽい。

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↑緑波親子が大水で流れた小屋の中から、板っきれをオール替わりに漕ぐ特撮カット。

ギャグシーンなのに、小屋が高台から流れ落ちるカットからミニチュアの質・撮影ともにハイレベルで手を抜いていない映像なので、かえって笑いが倍増した。円谷は終戦早々いい仕事をしている。

 

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邦画メモ」カテゴリの記事

コメント

アランさん

なるほど、汽車のシーン、なぜアノ時代にわざわざ特撮で?という
疑問は「コメディ作品だから」ということでなんとなく納得?
もしくは富士山と松と汽車の絡みがほしかったから????

しかし後年に、わざわざ何故それをミニチュア特撮でやるのか?と
いうのをやられてる円谷監督なので、シリアスドラマでも
ミニチュアでやってたかも?と思えてなりません。

投稿: | 2012年8月18日 (土) 08時10分

すみません、記名わすれてました
ごめんなさい。

投稿: 特撮太郎 | 2012年8月18日 (土) 11時19分

特撮太郎さん。お暑うございます。
そうですね。SLのカットは当時ですから簡単にロケ撮影できるでしょうね。ただ、富士山を入れるとなると、ひょっとしてあの辺を走っているのは電車ばかりだったのかもしれません。メンドクセーからミニチュアでやっちまえーということで。

なんでそれをミニチュアでやるの・・というものでは「ゴジラ」で消防車が暴走してクラッシュする特撮ではお粗末なミニチュア・ストップモーションでやっていて、「こんなのNGでしょう」と思いました。

投稿: アラン・墨 | 2012年8月18日 (土) 17時08分

エンタツ・アチャコの掛け合いは、映画の中で漫才をやっているようでした。
古川緑波さんは、華族出身だけあって、品が良いですね。私もロッパさんの演技を初めて見ました。
こういう映画を見ると、喜劇の性質が時代とともに変化してきたように思います。

投稿: マーちゃん | 2012年8月19日 (日) 15時03分

ロッパさんはエエトコの子なんですね。
雰囲気が違いますね。大学教授という感じです。
アクションのエノケンとはまた違って面白いです。

「ハハ呑気ダネー」の石田一松という人は私は明治・大正に活躍した人だと勘違いしていました。coldsweats01

投稿: アラン・墨 | 2012年8月19日 (日) 22時40分

初めてお便りいたします。googleでミニチュア特撮と打ち込んでぶらぶらしているうちに、アランさんのブログにたどり着きました。
当方、74歳の男性ですが、映画を観出した頃からミニチュア特撮が大好きでして、クレジットでspecial effect by.....と出ると、あ、トリック(当時はこう呼んでました)シーンがある、とワクワクしていた変な子供でした。今までの人生でミニチュアの特撮が大好きという方に、あまり会ったことがありませんので、アランさんのことを知って、大変嬉しく思っております。よろしければ、このブログのお仲間のひとりに入れていただけませんか。
また、おいおいバック・ナンバーをゆっくり読ませていただいて、お話出来ればなあと思っておりますが、取りあえず、自己紹介がてら、私がミニチュア特撮にのめりこむきっかけになったいくつかの作品をお知らせしておきます。
最初はやはり海賊物というか、海戦映画だったと思います。「シー・ホーク」「海賊ブラッド」あたりですかね。ミニチュアの帆船が大砲を撃ちあって、ぶっ壊れていくのが快感でした。
それから列車の激突シーンも大好きですが、「サラトガ本線」の真正面からぶっつかるシーンで物凄いインパクトを受けました。今でもビデオで繰り返し観ていますが、ミニチュアでの列車激突シーンとしては、この映画が最高だと思っています。
自然の脅威では「大地は怒る」の地震シーンですね。山が崩れ、湖水の水が河にあふれ出して、木材運搬船を弾き飛ばすシーンが印象的でした。
私は戦争は嫌いですが、ミニチュア・ファンとしては、どうしても戦争映画になってしまいますね。まだ戦後間もない頃でしたので、どうしても対独戦ものが中心で、なかでも「北大西洋の闘い」でミニチュアの潜水艦や駆逐艦が走り回って、驚喜しました。対日戦ものも数多く製作されているのですが、やはりこちらでは、未公開です。10年ぐらい前から、直接アメリカから取り寄せて、まずミニチュア使用の対日戦映画はほとんど観ていると思います。なかでも最大の掘り出し物はホークスの「air force」でした。クライマックスは残念ながら、わか日本海軍がやられちまうのですが、これが呆れるばかりのスペクタクルで、最初輸入ビデオで観た時はのけぞってしまいました。映画製作時はまだ戦争中ということで、制作費のほとんどをこのミニチュア海戦につぎ込めたらしいです。出来がよかったので、このシーンは、2回ほど他の戦争映画で使いまわされています。ビデオを観た当初は日本でこの映画を観たものはそうそうおるまいと密かにニヤニヤしていたのですが、間もなくwowowで放映され、最近ではDVDまで出ちゃいました。アランさんはご覧になりましたか?
最初から長文になって、失礼しました。今後ともよろしくお願い申し上げます。

投稿: artkimiyuki | 2012年8月19日 (日) 23時29分

artkimiyukiさん。長文のコメント恐縮です。ありがとうございます。
相当過去のミニチュア特撮の情報ありがとうございます。残念ながらご記名の映画は未見ですが、観ていない特撮シーンが目に浮かぶようです。これから楽しみです。
私の世代ではテレビ放映された円谷作品がミニチュア特撮の開眼なのですが、同時にテレビ放映されたアメリカ・テレビ番組のL.B・アボット特撮に衝撃を覚えました。円谷特撮物では怪獣が出現すると子供騙し的映像になることもあり、子供心にガッカリしていた矢先のことでした。
以後、ハリウッドや洋画のミニチュア特撮には一目置いて観ています。
以前、私はこのブログに生意気な事を書いていますが、それは、ハリウッドなどの特撮は観客が特撮と気付かないように制作しているけれど、日本の特撮は「見ての通りミニチュアだけど本物と思って観てください」という姿勢で制作しているいうことです。この考えは現在でも変わりありません。
名も知れぬハリウッドの特撮マンが沢山の映画でいい仕事をしていますね。私も古い作品から珠玉の特撮を掘り起こしていきたいです。
これからも、いろいろ情報を伝授願います。

投稿: アラン・墨 | 2012年8月20日 (月) 17時58分

こちらこそ、よろしくお願いします。
ハリウッドと日本の特撮に関するアランさんのご意見に全く同感です。そのとうりだと思いますよ。「黒澤明対ハリウッド」という「トラ・トラ・トラ」製作に関する優れたノン・フィクション本があって、妙に黒澤監督を神格化して、おもねるような記述が多い日本で、非常にクールに分析しているので、私はとても高く評価しているのですが、その本でさえ、当時の東宝の特撮が世界最高と断定しているのですね。全くハリウッドの特撮のレベルを知りもしないで、決め付けているわけです。ノン・フィクション・ライターとしては恥ずかしいと思います。
アランさんがハリウッドは特撮と気付かれないように努力するが、日本、ま、円谷作品と言ってもいいですが、見てのとうりミニチュアだけど、ホンモノと思って観てねのコメントは笑ってしまいました。全く正しい分析です。
年だけは食っていますので、これまでの引き出しの中から、ちょこちょこと取り出して、情報をお知らせします。アランさんのご参考になればいいなと思います。
ちなみに、私がこれまで観た作品の中で、全ジャンルをつうじて、ベストを挙げれば、1950年のセシル・B・デミルの「サムソンとデリラ」でしょう。クライマックスの大寺院の崩壊シーンはミニチュア特撮シーンの白眉です。・・・こうして書いていると、ムズムズしてきて、一時中断して、YOU TUBEで観て来ました。もしチェックされたければ、samson and delilah/temple collapseで出ると思います。

投稿: artkimiyuki | 2012年8月20日 (月) 22時41分

コメントありがとうございました。
TBさせていただいた中で、コメントに応えさせて頂きました。

 さすが、撮影に詳しいアラン・墨さんのレビューですね。興味深く拝読しました。なるほど、列車のスピードが速すぎですか。
 CGを初めとするデジタル時代の平成ですが、特撮の昭和も味わい深いものを感じます。

 また、平成も酣のこの御代に、昭和前期のこの映画が陽の目を見るとは露思っていませんでした。多くのお若い方々に鑑賞されて、さぞかし、東京五人男も喜んでいるような気がします。

投稿: アスカパパ | 2012年8月21日 (火) 10時47分

artkimiyukiさん。こんばんは。
そうですか、「トラ・・」の解説本では日本の特撮への一方的な思い込みがあるのですね。
実際、あの映画の特撮は円谷が担当したと勘違いしている人も検索したネットのページにありました。東宝「ハワイ・マレー・・」と混同しているようです。

「サムソンとデリラ」は本屋の安いソフトでも販売していたと記憶していますので、さっそく鑑賞したいと思います、また「大地震」などもよさそうですね。「戦艦ビスマルク」も目につけていますが、ご推薦の「air force」も手に入れたいですね。・・・輸入盤は安いので助かります。
さっそくユーチューブでも「サムソン・・」を覗いてみます。情報ありがとうございます。

投稿: アラン・墨 | 2012年8月21日 (火) 22時44分

アスカパパさん。さっそくご訪問ありがとうございます。
オープニングの機関車カットでさっそく円谷特撮が観られたのでびっくりしました。撮影はどうやら24コマのようで、カメラのコマ送りを間違えたのかもしれません。時速120キロの猛スピードで走っていました。笑

ロケの撮影シーンは太陽光線カンカンでパッと明るいですね。もうこれ以上悪くならない。明日からはちょっとずつ良くなっていくさという、希望が感じられました。

闇物資の横流しや隠匿は当時の市民は承知の事実だったのですね。

投稿: アラン・墨 | 2012年8月21日 (火) 22時53分

今晩は。「大地震」私としては、今いちです。「ビスマルク」はイギリス映画お得意の海戦ものですので、さすがです。ことに着弾時の水柱がきめ細かく、素晴らしいです。おそらく水ではなく、パウダーを使用していると思います。最近では東映の「男たちの大和」で使った手ですね。
円谷作品では水柱と同時に、プールの底から大きな水泡が出てくるようなカットも使用して興ざめです。そういう意味でプールにもかかわらず、鮮やかな水柱の効果を出しているなと思うのは、J・フォードの「コレヒドール戦記」です。実弾のショットとほとんど見分けがつかないと思います。

投稿: artkimiyuki | 2012年8月21日 (火) 23時37分

artkimiyukiさん。こんばんは。
「大地震」はいまいちですか。「サムソン・・」のほうが崩壊シーンが凄そうですね。
特撮で水柱は難しいですが、特撮マンの腕の見せ所ですね。
ジョン・フォードの戦記ものは太平洋戦争のものが多いので、当然日本未公開が多く、すぐれた特撮が日本人には知られないで円谷特撮だけに目が集まったかもしれませんね。「井の中の蛙、大海を知らず」でしょうか。

投稿: アラン・墨 | 2012年8月22日 (水) 22時03分

お久しぶりです。
最初は特撮目当てで観ていたのですが、その風刺の効いたストーリーに夢中になってししまいました。
のどかな風景と列車が特撮で、焼け野原の東京が実写というのが当時の日本を皮肉っているようで喜劇的だと思いました。

投稿: ヘロ | 2012年9月17日 (月) 23時31分

ヘロさん。こんにちは。
あなたのような若い方に戦後の実写映像を見てもうことは大変意義のあることだと感じます。
なにしろ最近の若者には太平洋戦争の開戦日、終戦日を知らない人もいるそうですからね。これは忌々しきことです。

この映画を初見したときは円谷特撮があるとは夢にも思いませんでした。クレジットは本名の円谷英一でしたね。

投稿: アラン・墨 | 2012年9月18日 (火) 10時54分

確かにこの作品は今の世代こそ観てもらいたい作品だと思います。

ちなみに自分は中学時代、試験直前に歴史の勉強と言って「太平洋の嵐」や「トラトラトラ」を観ていたので開戦記念日 終戦記念日ともにバッチリです(笑)

投稿: ヘロ | 2012年9月19日 (水) 23時00分

ヘロさん。こんばんは。
さすがですね。happy01
自分は歴史には疎いのですが、昭和史は記憶にとどめようと努力しています。といっても直ぐ忘れてしまいますが。
映画は視覚と聴覚により脳細胞に残りやすいですね。
「トラ・・・」は私も中学2年の時に観ました。

投稿: アラン・墨 | 2012年9月20日 (木) 22時24分

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