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加藤隼戦闘隊

円谷英二の特撮、作品AS-2

1944年、東宝、白黒、スタンダード、109分

監督- 山本嘉次郎

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 空中戦でのワイヤーワーク、ミニチュア爆撃シーンで鑑賞に堪えられるミニチュア特撮を見せてくれる。ただし、「実戦と見間違える」という他の評価を目にするが、私には全てのシーン・カットにおいて本モノと見間違えることは無かった。夜間飛行シーンが魅力的で、月夜に照らされる隼戦闘機と雲の表現が秀逸である。

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↑多分、綿で工作された雲の間を、翼端灯を点けて旋回する隼。レンズやフィルムの描写力不足が幸いし、かえって本モノらしく見える。幻想的で美しい。

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↑円谷特撮でも、もっとも美しいカット。

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↑空中戦で墜落する敵戦闘機。撮影では↓のように燃えたミニチュアを吊り、右から左方向へと水平に移動させ、その映像を90度転回させ落下のように見せている。円谷テクニックのひとつ。

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 ↓この映画の特撮で注目すべき点はラングーンの敵飛行場爆撃パイロシーン。精巧なミニチュアと、極めて適切なハイスピード撮影(4倍と推測する。)により、迫力ある爆発パイロを見せてくれた。円谷はハイスピード撮影において、現場で即興的に回転速度を2倍か4倍に決めていたそうで、もし、このシーンを2倍で撮影していたら、ミニチュア然の失敗映像となっていただろう。

 尚、デレク・メディングスはハイスピード撮影の倍率を5倍から10倍で行っている。このカットのミニチュアサイズだと、やはり4倍から5倍が適当だと思う。

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↑逃げまとう兵士は、この映画で開発されたトラベリングマット合成による。

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↑格納庫内から捉えたパイロカット。迫力満点。

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↑砕け散るドック。この時期、円谷はガソリンなどによる火球炎上爆発の描写はしていない。そのアイデアが無かったか、あるいはスタジオ撮影だと防火上問題だった為かもしれないが、ちょっと物足りない。

追記:再見したところ、スタジオではなくオープンセット撮影だと思う。

↑2分20秒から爆撃シーンが始まる。連続するパイロカットは息を呑む。

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円谷英二の特撮」カテゴリの記事

コメント

雲が良い感じですね♪夜間飛行って、大丈夫なんでしょうか。2人乗りじゃないと危ないですよね。飛んでいる時は、まだいいとしても、着陸するときはヒヤヒヤしますよね。

投稿: マーちゃん | 2012年4月18日 (水) 23時58分

陸軍のパイロットは計器飛行が出来ず、線路や道路を目印にして飛行していたと聞いたことがあります。それだと夜間飛行も難しいでしょうね。
着陸は怖いですね。あの手の飛行機は失敗すると前にツンノメッて大破してしまいます、

投稿: アラン・墨 | 2012年4月19日 (木) 15時38分

こんばんは。

動画、拝見させて頂きましたけど、中々の迫力で爆破シーンを撮影していますね。ミニチュアもしっかり作り込んで迫真のオープンセットの効果を更に上げています。一部白く霞んで見えるシーンもあるものの、トラベリングマットによる合成の精度は当時としてはかなり高い部類に入るのではないでしょうか。同時期のハリウッドと比較しても遜色ないものとお見受けしましたが、実際は如何なんでしょうね。

建造物爆撃の際のリアリティを出すためのハイスピード撮影。こちらも素晴らしい出来栄えながら、少々忙しない印象も。仰られるメディングスの常套手段という5倍から10倍の速度で爆炎の吹き上げる過程を遅める演出がベストとも思えました。

夜間飛行のシーンも前回紹介された映画同様、非常に幻想的で美しいカットで纏められていますね。綿による雲海の表現、は「ガメラ大怪獣空中決戦」で茜色の上空を背景にガメラがギャオスを追うシーンでも使用されていましたよね。

次作以降はCGに置き換わっていたあたり(若しくは短い雲海を見せない)、流石にリアリティの追求に限界があった手法なのかもしれません。

勿論、リアル云々を越えて素晴らしいカットには確かに違いありませんけど^^

投稿: ワン | 2012年4月22日 (日) 00時05分

円谷特撮の中でも成功作品だと思います。当時のハリウッド作品に匹敵するのではないでしょうか。
ただ、昼間の戦闘機攻撃の操演で一部ミニチュア然としたカットがありますが、今回指摘しませんでした。
ハイスピード撮影はフィルムを浪費するので当時は4倍が限界だったかもしれませんね。ただし、2倍というのは「大魔神」クラスの大型ミニチュア用の倍率でしょう。極小サイズで回したのではミニチュアにしか見えません。
「ガメラ」でも綿雲が使用してありましたか。記憶させていただきます。

投稿: アラン・墨 | 2012年4月22日 (日) 10時32分

はじめまして、なんぶです。墨氏さんが円谷特撮と海外特撮の落差を指摘しておりましたので、何故、落差がでたのか考えてみたんですが、恐らく日本と海外の制作状況が違い過ぎるからだと思うんです。例えば、「サンダーバード」と「ウルトラマン」の場合だと、サンダーバードはウルトラマンより少ない予算でも高度な特撮を作れたのは、人形劇だったのが幸いだったからでしょう。衣装やセットも人形劇の物で比較的間に合うのに対し、ウルトラマンは実写ドラマなので、野外ロケや等身大のセット撮影が必要です。

特撮もサンダーバードは四畳半のミニチュアセットで撮影するので、それほど大きなミニチュアを使わずともカメラワーク等で巨大感を表現できますが、ウルトラマンはミニチュアは怪獣に破壊されるので、スタジオ一杯にセットしなくてはならず、更に怪獣のサイズに合わせて大きなミニチュアが必要とします。更に毎回怪獣の着ぐるみを大量に制作しなくてはならず、光学合成も必要不可欠です。サンダーバード等のアンダーソン作品は殆どレーザー光線等の合成が無く、ミサイルや機銃がメインです。(レーザーが出てくるのはUFOになってから)
それだけでも莫大な予算がぶっ飛びます。それに制作スケジュールが短い過ぎるのも原因です。欧米では仕事より休暇を重視するので、それほど残業やノルマを課したりしませんし、制作日数も安定。しかし日本は今も昔も仕事重視な文化なので徹夜、残業は当たり前で、制作日数も極端に少ない。pisces

投稿: なんば | 2012年10月24日 (水) 15時51分

続き...

円谷さんもサンダーバードの撮影現場を見学してますので、撮影状況やミニチュアのウェザリング(汚し)効果も知ったと思うんです。ですが上記の通り、制作日数に追われる中でイチイチミニチュアなんかに汚しをかける暇がないとスタッフに猛反対されたんじゃないかと思いますが、どうでしょう?いずれにしても、日本と海外では予算や日数等の制作状況の違いがこのような落差を生んだんだと思います。もし円谷さんがアンダーソンよりも早く人形劇に目をつけ、更に制作日数も安定していた状況ならどのような特撮人形劇になったか興味深いです。


余談ですが宇宙大戦争もアンダーソンに多大な影響を与えたのが解ります。特にキャプテン・スカーレットに。ミステロンなんかまんまナタール人のパクリですし、(ミステロンというネーミングもミステリアンから来てると思う)月面に基地を建設してるとこも同じです。スカーレット達が探検車でミステロン偵察車と攻防したり、ミステロン基地内部に潜入する場面がありますが、実は宇宙大戦争の絵コンテにも、月面車がナタール人の戦闘車両と激しい攻防戦を繰り広げたり、ナタールの基地に潜入してナタール兵と戦う場面が描かれていました。しかし、予算と日数の都合上、没になり非常に残念です。
やはり円谷さんは改めて偉大なんだと思いますね。

投稿: なんば | 2012年10月24日 (水) 16時45分

なんばさん。ようこそ。
2度にわたる長文コメントありがとうございます。
私の駄文にご意見いただくことに感謝・感激しております。

サンダーバードがウルトラマンより少ない予算で制作されたとご記述されていますが、間違いではないでしょうか。前者は1本あたり約2000万円、後者は750万円と資料・・・ウィキペディアから・・・で記入されてありました。

サンダーバードは「大人の鑑賞にも耐えられる人形特撮物」というコンセプトで前作「スティングレイ」を上回る予算が組まれ、それも前代未聞の1時間番組という当たるかどうか分からない大ばくちで制作されました。スタッフもアンダーソン夫妻も毎日定時で撮影所を後にする余裕はなかったと思います。・・・シリーズ後半制作中、映画も並行して制作されたので猶更定時で帰ったり長期休暇なんてことはなかったはずです。

ウルトラマンはどうでしょうか。大人の鑑賞に堪えられる作品でしょうか。私事ですが、特撮好きの私の親父はサンダーバードは毎回食い入るように観ていましたが、ウルトラマンは無視していました。親爺は特撮の違いを感じ取っていたわけです。また、子供だった私でもウルトラマンで特に印象に残る特撮はありません。・・ウルトラQは別です。
こういう私と私の親爺の一例も存在するということをご理解ください。

シルビア・アンダーソンは「子供でも大人向けの特撮を求めるものだ」という趣旨の発言をしていました。当時の私はまさにその子供でしたね。それが今だに続いています。

仰る、ウルトラマンの特撮はミニチュアが大きいから予算を食うという根拠は自分にはどうも理解できません。小さく精巧に、ウェザリングなどの時間のかかる美術処理を施し造られた物でも製作費が安く上がるのでしょうか。私の記憶ではウルトラマンはウルトラQより、もちろんサンダーバードよりミニチュアが雑な感じがしたものです。

光学合成も経費がかかるということは理解できますが、作品の質に影響するほど予算を食うのでしょうか。私には解りません。円谷氏が購入したオプチカルプリンターが数千万円したというエピソードは知っていますが。尚、日本特撮のレーザー砲、熱線光線処理が当時世界最高のレベルであることは同意見です。

「宇宙大戦争」がアンダーソン作品、20世紀foxなどのハリウッド作品に影響を与えていることも激しく同意いたします。

何かまだ言い忘れているような気がしますが、またなんばさんのご意見、資料のご提供歓迎いたします。

投稿: アラン・墨 | 2012年10月24日 (水) 23時15分

ご返事ありがとうございます。私の間違いの指摘に感謝します。何分素人ゆえに細かいとこまで考えつきませんです(汗) そうですか、実際は立場が逆だったんですね。でもサンダーバードはやはり条件が有利ですよ。一話につき2000万の予算を掛けたんですから。それに人形劇なのが一番大きいです。俳優を使ったり、前コメで書いた通り、大掛かりなセットを組んだり、野外ロケしたりする手間が省ける分ミニチュアに力を注げられるんですから。その点ウルトラマンは怪獣の着ぐるみを毎回作ったり(使い回しもありますが)、ステージ一杯のミニチュアを組んだり、光学合成したりで750万程度の予算などあっという間に使いきってしまいうとでしょう。作る側からしたらいちいちミニチュアにリアルさを追求する暇がなかったんでしょう。そういう事情が落差を生じたんだと思います。

それと自分の想像ですが、円谷さんには二つの人格があったんだと思います。一方は「特撮はリアリティーが命だ!」とする人格と、もう一方は「いやいや何でもリアルがいいわけではない、そんな硬っ苦しい特撮よりも子供の心に帰ってオモチャで遊んでるような感覚の特撮がいいさ」という幼児タイプの二つの人格が円谷さんに混在していたんだと思うんです。前者の人格はアンダーソン型で後者の人格はジョージ・パル型でしょうか?(ジョージ・パルと円谷さんはかなり親交が深いと聞いています)それらの人格が度々、円谷さんの中で互いに入れ替わったりしたので特撮にその兆候が現れたんだと。ウルトラマンは後者の人格が特に現れてると感じます。前に何かの特撮雑誌(宇宙船だったような)で円谷特撮のスタッフ(名前忘れた)のインタビューで「オヤジさんには時々振り回されました。ある時、「こんなんじゃダメだ!子供騙しもいいとこだ、やり直せ!」と怒鳴ったと思ったら、別の日には「オヤジさん、これは失敗カットですよミニチュアだとバレます」と私が指摘すると「いやそれでいいさ。子供が喜ぶよ」とそのままOKしたり...」といった感じのエピソードを思い出しました。そう考えるとやはり円谷さんは二重人格だったと思いますが、どうお考えでしょうか?

投稿: なんば | 2012年11月 7日 (水) 20時30分

なんばさん。こんばんは。
怪獣のキグルミも当時100万円近くの経費がかかったと聞いています。仰るようにスタジオも大きく使用料も予算を喰ったでしょうね。特撮は35ミリフィルムのカラーでしたからハイスピード撮影5倍回しなんてとても出来なかったと想像できます。

円谷監督の二面性については私も感じます。大人の鑑賞に堪えられる凝った特撮もある一方、ゴジラにシェーをさせたり・・・あれは俳優さんも反対したそうですね。・・・ミニチュアなのにハイスピード撮影しなかったりでスタッフも疑問を持ったと思います。「ああ、これはNGだな」という特撮カットがしばしば見られますよね。

前回の続きですが、日本特撮の光学合成の優れていることの証明は当時の「宇宙家族ロビンソン」での熱線銃の描写で良くわかります。向こうは光線を発すると画面バックが静止画になってしまうのです。同じ制作次期のウルトラシリーズ光線処理はダイナミックに動いているんですね。すごく手が込んでいます。

投稿: アラン・墨 | 2012年11月 7日 (水) 22時26分

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