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「決死圏SOS宇宙船」の特撮、その3

 航空機はVTOLでなければならない。

 アンダーソン作品に登場するヒコーキにはVTOL(垂直離着陸機)が多い。

 それは1961年作品の「スーパーカー」が元祖だろうか。あの飛行体は垂直に上昇し、その後、水平飛行。そして、なんと水中にも潜れたと記憶する。・・・ なんせ私の5歳ごろに放送された作品なので記憶が定かでない。 

 話はそれるが、その後、日本で制作放送されたアニメ「スーパージェッター」の流星号は、デザインも機能もこの「スーパーカー」をパクッていると私は断言したい。

 1964年作品の「サンダーバード」ではもうVTOLのオンパレードで、1号、2号はもとより、ゲストメカでも結構、垂直離着陸の航空機が登場する。

 これは思うに、当時イギリスで、ハリヤーの原型となるホーカーシドレー「ケストレル」が開発中であったことが要因かもしれない。アンダーソン夫妻とデレク・メディングス、そのスタッフが自国で頻繁に試験飛行を目にする、この映像的にも魅力的な三次元を駆使するメカを採用したのは納得のゆくことである。

 なぜVTOLが好んで採用されるかには別の理由も考えられる。それはマリオネーションではミニチュア・メカを上から吊れば簡単に宙に浮かせられるから。なにも長い滑走路を準備して走らせるカットは必要はないのだ。 

 「決死圏SOS宇宙船」では、冒頭からVTOL旅客機が登場する。

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 ↑前輪付近に垂直ジェット噴射ノズルがあり、ちゃんとエアの噴射が描写されている。しかし、機体後部にノズルは無く、推力バランスが不自然。その点にはこだわって欲しかった。

 この旅客機は旅客・カーゴ部分が離脱する。こういうことはアンダーソン作品メカの得意とするところ。

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 このVTOL機のコックピット部分のリフトアップやキャリアカーの発進・停止、コントロール室の上昇・下降などの動きとその加減速の操演が、実際にインバーターモーターか、油圧を使って制御しているかのように実にスムーズで、これはこの作品だけでなく、デレク・メディングスが携わる作品全般で感ずる、優れた物理的センスの一つである。もちろん、スタッフは手グスを引っ張って動かしているのにすぎない。

 これが、もし、ガクガクと途中で引っ掛かるようなギクシャクした動きとなったならば、ミニチュア然となってしまうだろう。これは日本特撮でよく見られる失敗例なのである。アンダーソン作品のスタッフはそれを熟知している。

 とはいえ、その失敗はこの作品でもあった。それは同じくVTOL発進リフティング・ボディ宇宙機の「ドッペルゲンガー」号の発進にあった。垂直上昇し、着陸ギアの格納でギクシャクした動きになってしまっている。惜しい。

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↑アフターバーナーを点火する「ドッペルゲンガー」号。このバーナーを点火する描写には恐らく、高圧の燃焼ガスをモデルの下からチューブで引き込み点火して撮影したのだろう。アンダーソン作品でよく使われるロケットパウダーとは別の初の試み。燃焼の陽炎も見え、推力も感じる実写感タップリのカット。

 この「ドッペルゲンガー」号はリフティング・ボディ機であるにもかかわらず、なんと、やっぱり垂直離陸し、大気圏を上昇して宇宙空間に到達。恐らく高度300キロ以上で待機するオービター宇宙船とドッキング(失敗)してしまう。これは航空宇宙工学としては絶対ありえない航空機・宇宙機である。・・・

 つまり、もし、これが可能ならロケットブースターというものが要らないことになる。これがこの映画の大きなミスである。

 

  

 

 

 

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