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「1941」

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- 墨氏の愛した特撮、NO,5

ミニチュア特撮史上、究極のビル群演出と航空機の操演。

 スピルバーグの映画「1941」は1979年公開であるが、当時、映画館で観たとき、この映画のミニチュア撮影の出来のよさには腰を抜かしてしまったものだ。

 あの、夜の照明の中で霧に霞んで林立するロスのビル街は、ミニチュア特撮・ミニチュアの概念を超えるもので、もう芸術というありきたりな言葉でも表現しきれない、究極のスモールスケール・モデルと言っていいと思う。

 もし、航空機がそのビル街の中をロールしながら飛行するという、絶対実写では不可能なシーンが無ければ、観客は絶対、ホンモノと見て疑わないだろう。ロスのどこか古い町並みで撮影したものだと見てとるだろう。いや、ひょっとして、今だすべて実写だと認識している人も居るかもしれない。

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 ・・・・  ダグラス・トランブルの言葉、「ミニチュアに遠近感を与える為にはセットにスモークを焚かなければならない」・・・ というセオリーを忠実に守った撮影。

 ビルの一つ一つの窓は明るさに微妙な差をつけさせ、あたかもカーテンやブラインドを下ろしているような、生活感を出す工夫がされている。 これが日本の特撮だと、ミニチュアの窓はすべて同じスリガラスをはめ込み、モデルの中央にランプを置くだけという手抜き処理が成される。これでは箱を並べただけにしか見えない。つまり子供騙しである。

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 飛行機の背面飛行や360度回転のエルロンロールは、モデルに3本のワイヤーを通し、引っ張りながらセットの両端にある回転ドラムをシンクロさせ廻すことにより撮影する。タイミングが難しい。モデルの飛行シーンは目を凝らして何度観ても、ワイヤーを見つけることは出来ない。これらの操演はA.D.フラワーズが担当した。彼は20世紀フォックスでもL.B.アボットと組んで特撮をやって来たベテラン。

 電飾の下の道路で、車のドライバー目線になって進む映像はカメラに台車をつけて撮影したのだろう。あるいはシュノーケルカメラを使ったか。・・・(このカメラのリゾリューションは通常のカメラより劣るのではないだろうか) 

 私は初見の時、この映像は完全に実写だと思っていた。映像は実際に車に乗っているかように微妙に振動し、前方の交差点を横切る車もリアル。

 道路はわざと霧で濡れた状態にしてあり、その路面に反射する光線によりディテールと道路の遠近感を強調している。隅々まで芸が細かい。 尚、一部カット、道路上に小さな兵士たちがハメコミ合成されている。

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 遊園地のミニチュアの出来もパイロシーンも素晴らしい。台から離れても、何故か電飾も消えず転がっていく観覧車のシーンは、この映画で唯一、私が大爆笑したところだが、転がる車輪の下には、ちゃんと砕け飛び散る破片やホコリの描写がされていて、この細かさ、ホンモノに見せる気配りに脱帽。リアルに見えるからこそ爆笑してしまうシーン。 

 同じく、水面に滑落するカットでは、絶妙なタイミングの爆薬による水柱で吹き上がる水しぶきを演出。マイリマシタ。

 ミニチュア制作は「未知との遭遇」でマザーシップを制作したグレック・ジーン。彼はロスのミニチュア市街の制作に2年間を費やした。それをやらせる制作側も彼にも脱帽。(中央の東洋系の人)

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 私にとって、「1941」より以降の、東宝系・ゴジラ映画などで描写されるビル群のミニチュア特撮は、この映画によってすべて陳腐化したと言える。

 

 

 

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コメント

こんばんは。少し間を空けてしまいましたが、失礼します。

件の映画はタイトルは知ってはいたのですけど、未見の作品です。それにしてもそれほどミニチュア特撮の精度が高いとは想像もつきませんでしたね。巷では「スピルバーグの失敗作」として認識されているようで本人も言及を避けている曰くつきの内容と聞いています。

物語がしまらないとしても、光る点、白眉はあるもので、当作品に関しては正しく「ミニチュア」とその撮影表現が該当している訳ですね。特撮もの、SFXものは表現の温度差が観る者の評価を二分する傾向が少なくないようです。ゴジラを始めとする本邦の怪獣物、にしても「ストーリーは良いけどミニチュアの出来具合や撮影技術が問題がある」となる場合が残念ながら多々あります。

ストーリーを引き立てるためにミニチュア(を含む視覚効果)があるのか。又はミニチュアを引き立てるためにストーリーがあるのか。「卵が先か鶏が先か」の堂々巡りの議論はある意味では不毛でありつつも、永遠に興味をひくテーマでもありますね。

確かに、本編と特撮、夫々の密度の高い連携は「傑作」には必要不可欠な条件要素と言えそうです。それでも“1941”を駄作と片付けるには、余りにもミニチュア特撮の表現が優れている。ファンとしては微妙かつ複雑な心境ではあるでしょうね。

私の(そして墨さんの)信奉してやまない「2001年宇宙の旅」、それに「ブレードランナー」夫々の大傑作に視覚効果の陣頭指揮を取ったダグラス・トランブルはそういう意味では非常に運の良い
SFXマンだった、と言えるのかもしれません。

投稿: ワン | 2010年4月25日 (日) 00時00分

ワンさん。こんにちは。いつもコメントありがとうございます。
「1941」は、本編の出来が良くなく、参加した特撮スタッフにとってはモッタイナイ作品になりましたね。グレッグ・ジーンはどこから撮影しても完璧なロス市街のミニチュアを制作したのですが、採用されたのはほんの一部でしょう。あまりにも実写に見えるので、これも特撮と気づかれず、評価が忘れ去られたように感じます。これもモッタイナイ話です。「1941」はミニチュア特撮史上、重要な作品として挙げられるべきものです。
本編と特撮両方が完璧なものは、なかなか存在しないものですね。トランブルはミニチュア特撮よりも光学処理の特撮で才覚を表していますね。少し前はアトラクションの映像に携わっているようですが、今はどうしているのでしょうか。この人は、もともと万博用の映像からキュブリックに見いだされ「2001」に抜擢されたのですね。仰るとおり運と才能に恵まれていたようです。

投稿: アラン・墨 | 2010年4月25日 (日) 16時53分

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