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地下水道

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洋画メモ、NO,81、NHKBS

1956年、ポーランド、白黒、スタンダード、97分

監督- アンジェイ・ワイダ、 撮影- イェジー・リップマン、 音楽- ヤン・クレンズ

出演- テレサ・イゼウスカ、タデウシェ・ヤンチェル、ヴィンチェスワフ・グリンスキー

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 冒頭は蜂起の民間兵たちが丘から降りてくるロングショット。カメラはカットせず、手前にやって来た彼らを右にパンして、リーダーの一人をバストショット撮影。その後もカメラはカットせず、一人・一人登場者をナレーションで紹介し、レールによる横移動撮影で彼ら民間兵のキャラクターを説明する。

 この長廻しの撮影でこの映画への期待を持たせてくれる上手い導入部分だ。ただし、撮影はカメラのピントをピタリと人物に合わせるのが手間で、周到にリハーサルをしたと思う。

 民間兵の一人、音楽家はアンダーソン作品・「謎の円盤UFO」のドクター・ジャクソンに似ている俳優さんだなと感じたが、調べると同じ人であった。ポーランド人とは知らなかった。この映画がデビューらしいが、いろいろな映画にチョイチョイ出演している、目のギョロッとしたうまい俳優さんである。

 その音楽家がショバンの「革命のエチュード」と、バラード4番のフレーズをチョイ弾きした。ああポーランド映画だなと感ずる場面。 私はバラードのメロディーをちょっと耳にするだけでも涙腺が緩んでくる。 

 「革命のエチュード」は日本人にもおなじみだが、バラードの4番まで知っている人は少ないと思う。しかし、恐らくポーランド人全員はこの曲を知っているのではないか。 音楽家はその後、下降していく何かダブル・オクターブの曲も弾くのだが、私はこの曲は知らない。

 兵器メカファンには、この映画は注目されていて、それは「ゴリアテ」というリモコンで動くミニ戦車が登場するからだ。 よくこのオモチャみたいな実際にあった兵器を再現したものだ。あるいは、撮影時は戦後からまだ12年しか経っていないので、どこかに保存されていた可能性もある。因みに英語では「ゴライアス」と発音する。

 しかし、兵器の描写ではちょっと疑問なシーンもあった。バズーカ砲の発射では背後に人がいる。砲筒の後ろから爆風が飛び出るので後ろの兵士は吹っ飛んでしまうだろう。あんな場面はありえないのではないか。(それとも、あのような水平に構える迫撃砲が実在したのだろうか)

 まあ、それにしても彼らは、まともな武器というと少量の小銃と一丁の軽機関銃、バズーカ砲だけで、あとはサブ・マシンガンと拳銃でよく闘ったものだ。どうみても勝ち目はないと思うがこれは映画のとおりだったようだ。 

 夜の市街戦シーンでは、実弾の曳航弾が宙を飛んでいる。あの速い火の玉は合成処理には見えない。

 下水道内の描写は撮影監督の腕の見せ所で、恐らく撮影用に作ったセットだと思うが壁に反射する光の処理が秀逸。

 汚泥まみれの兵士の描写も悪臭が漂ってきそうだ。しかし、泥水からドライアイスのポコポコ煙が湧いているのは興ざめである。なんとかならなかったか。これさえなければ黒澤的リアリズムを感じる。

 ラストカットのマンホールから突き出す拳銃を構えた腕は、なんだか当時の東側のスローガンのポスターのように意味深に見え、多少ワザとらしく感じたが、ポーランド当局の検閲や要求を通すため、止む終えずあのようにした可能性もある。

 結局、みんな惨めな最期を迎える。冒頭のナレーションで「彼らの死に方を見せる」と解説しているので、けっして彼らを英雄視する映画でないことが分かる。あのナレーションもポーランド語のニュアンスが分からないが、「どうしようもなかった彼らを見て欲しい」と聴こえるような、なにか皮肉っぽい喋り方のように感じた。

 本多監督作品の東宝「美女と液体人間」の下水道シーンは、この映画の影響があるだろうか。

 

 

 

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コメント

こんばんは、「地下水道」中々渋い内容の作品であるようですね。もし機会があれば私も拝見したいです。

箱絵にもあるミニ戦車「ゴリアテ」。私は当初本物の(奇妙な表現ですが)ミニチュアの戦車、つまり動力つきの模型かと思い込んでいたのですが、「本物の兵器」なのですね?用途は狭い場所に爆弾を運送するのか、など色々考えてしまいました。

それにしても人間の「発想力」は本当にユニークというか予想外のユニークな代物を生み出しますよね。そもそも「特撮」も通常の映画撮影の「失敗」から着想を得た、という逸話もある程ですし。柔軟な思考が人間の面白い点だな、とつくづく思いましたね。

特撮のみならず、映像表現としておかしい、疑問に感じる場面は一般映画にもあるのですね。当然、と言えば当然かもしれませんけど、私なら如何あれ「本物」として何も矛盾や問題点を考えず見過ごしてしまうのでしょうね(苦笑)。

ショパンの「革命のエチュード」リヒテルの演奏で聞いてみましたが、勇壮ながら独特の憂いを含んだ演奏が印象的でした。・・・と分かったように書き込んでみましたが、アマチュアとプロの演奏技術、表現の“差”についてあまり理解はしていないみたいです。

youtubuでの同タイトルのリヒテルとアマチュアの女子の演奏を掲載してみますが、墨さんの「耳」にはやはり相当違って聞こえるのでしょうね。まだまだ自分には修行が足りません(笑い)。

アマチュアの女子演奏「革命のエチュード」
http://www.youtube.com/watch?v=R_QlBCPm2y8&feature=related

リヒテル演奏「革命のエチュード」
http://www.youtube.com/watch?v=8hOKcdZJJFU&feature=related

投稿: ワン | 2010年3月25日 (木) 23時52分

こんにちは。
コメントありがとうございました。

アラン・墨さんのレビュー、いま拝読しました。
特に、アラン・墨さんがお詳しい撮影に関することと、ショパンについては、ここでも勉強させて頂きました。

ドライアイスが昇華した煙が泥水から上がっていたのですか。
本多監督作品の「美女と液体人間」は観ましたが、残念ながら、あまり面白くなかったとの印象だけしか残っていません。

ショパンの「革命のエチュード」は知っていますが、バラードは残念ながら、「戦場のピアニスト」で、シュピルマンがナチ将校に聴かせた第1番しか知りません。機会があれば、第1番から第4番まで聴きたいです。

投稿: アスカパパ | 2010年3月26日 (金) 14時04分

ワンさん。こんばんは。
NHKBSは同じ映画をよく再放送しますので、いずれ半年くらいすればこの映画は鑑賞できると思います。ぜひご覧になってまた評をお聞かせください。
少女とリヒテルの演奏を拝聴いたしました。少女はまだ手や筋肉などが発達していないからでしょう、音の強弱が未完成に聴こえます。ダイナミックレンジが狭いのですね。初めからお終いまでmf・・・メゾフェルテで弾いているように聴こえます。リヒテルは楽譜どおりpからffまでの音の強弱を忠実に再現していて、しかもそのレベルが高いです。つまり少女の出すメゾフォルテはリヒテルのP・・ピアノの音でしょう。でも少女もすばらしい演奏だと思います。しかしなんといってもリヒテルのあのバカでかい手には日本人の成人でもかないません。
私はこの曲はホロヴィッツの演奏が気に入っています。彼の演奏は例えると、のたうち廻る大蛇を鉈でスッパ切っているような凄みがあります。
ゴリアテについて書き忘れました。あの兵器は弾薬が70キロほど詰めてあり、リモコンで自爆させるものです。でも動きはノロいし、電線を切断すれば停止しますので、あまり戦果なかったようです。映画でも電線をスコップでチョン切られて停止し、不発となります。

投稿: アラン・墨 | 2010年3月26日 (金) 21時59分

アスカパパさん。こんばんは。
私は今この映画を頭の中で反芻しております。一回だけでは観足らないですね。ワイダ監督もまだ若いので、多少、筋やキャラクターの描写に弱いところがありますが、重要な作品だと認識しました。
ドライアイスの煙の使用は映画では安直に感じます。特に風呂に入ってるシーンで、これを湯気の描写として使用すると、ポコポコと湧く白い煙がまるでコントに見えてしまいます。また寒そうにも見えるのですね。私は映画でドライアイスの使用は完全に否定します。
ショパンのバラードの4曲は私にとって青春そのもので、特別に思い入れがありますが、特に1番が好きですね。あれが弾けたらなといつも思うのですが、多分これからも弾きこなすことは出来ないでしょう。4番はショパンの曲の中では、音楽的にも技巧的にも超難曲で、ビアニストでもうまく弾きこなす人は数えるほどです。ロマンチックとドラマチックの極みです。私はアシュケナージの演奏が好きです。ぜひお聴きください。

投稿: アラン・墨 | 2010年3月26日 (金) 22時16分

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 東のロシアと西のドイツに挟まれたポーランドの歴史は悲しい。ピアノの詩人ショパンは「革命のエチュード」でこの宿命の祖国への愛を詠った。アンジェイ・ワイダ監督はこの悲劇の祖国へ"自由への願いと祈り"を捧げている。  『地下水道』は、なんともはや壮絶なドキュメンタリータツチの映画だ。カメラの写す先は殆ど地下。光は差し込まず、暗くて映像は影ばかり。ザドラ中隊はワルシャワの中心地に地下水道を通って出る作戦を立てる。汚水は悪臭を放ち、陰惨で、不気味で、出口のない地下道。出れば待っているドイツ軍の砲撃。コ... [続きを読む]

受信: 2010年3月26日 (金) 14時07分

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