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隣の八重ちゃん

 隣りの八重ちゃん 隣りの八重ちゃん
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邦画メモ、NO,57、DVD

1934年、松竹キネマ、スタンダード、白黒、79分

監督- 島津保次郎、 撮影- 桑原昂、 音楽- 早乙女光

出演-逢初夢子、大日方傳、磯野秋雄、岡田嘉子、飯田蝶子、高杉早苗

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 トーキー劇映画・日本初の「マダムと女房」から3年ほどしか経っていない作品だが、音がかなり明瞭で聴き取りやすく驚いた。ローカットされている音で、女性の声はもとより、男性の声もセリフの内容が分かりやすい。ただし、所々フィルムが劣化している所は聴き取りにくい。

 何度も引き合いに出すが、昭和20年代の東宝・黒澤作品より、昭和一桁の松竹作品のほうがセリフが聴き取りやすいというのはどういうことなのだろうか。 

 尚、この映画に出演している飯田蝶子さんの夫、茂原氏も松竹のトーキー技術者だったが、担当した小津作品の「一人息子」での茂原式トーキーは、かなり聴き取りにくいものだった。

当時の松竹では、録音技術者によってトーキーの方式が違うようで、この映画では土橋という人が録音を担当している。音はフィルムのコンディションにもよるので、どちらの方式(茂原式と土橋式)が優れているか比較できるものではないだろう。

 映画の録音方法の知識が無いが、磁気録音はまだ無かったと思うので、たぶん、撮影と同時に録音専用のフィルムを廻し、直接サウンドトラックだけを光学的に刻んだのではないだろうか。この方法なら撮影したマスターフィルムには音は記録されていないので、アフレコも可能だ。

 さて、内容は、隣り合った2軒の家庭の交流を描いたもので、平和なものだが、岡田嘉子さんなどの舞台女優さんを除いて、出演者は実に自然なセリフ運びと演技で、ホームビデオで家庭の会話を撮影したようにアットホームな感じを受けた。

 隣同士の息子・娘たちの会話はアドリブに近く、悪口の言い合いなどは面白い。特に八重子が惚れている隣の長男の弟に向って、「寺の息子みたいな顔してなによ」と言うのには自分もそう感じていたので爆笑してしまった。

 また、当時としては、女性のオッパイの大きさを比較しあうなどの、男性にはドキッとする会話もあり、よく検閲に通ったものだ。

 出戻り娘として出演している岡田嘉子さんが、ソ連から日本に帰国したことは私の中学生のころで、そのニュースをはっきりと記憶しているし、モスクワ放送での彼女の声も憶えているが、若かりし頃の彼女がこんなに色っぽい人とは知らなかった。原節子のように西洋の血が入っているという。Dscf0005_medium

 たぶん、蒲田近郊の実際の家でロケしたのだと思うが、当時の中流家庭の家のたたずまいが、また「となりのトトロ」のサツキとメイの家に近い和洋折衷構造になっていて、私の時代とはズレがあるが懐かしさを感じた。ああいうデザインは大正時代のアートが影響しているのだろう。

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 兄弟がキャッチボールをしている空き地のバックには、ガラス製のりっぱな温室ハウスが写っている。あれは現代のものと全く変わりが無い構造で、ちょっと驚いた。

 ラストシーンでは、八重ちゃんの明るい笑顔のシーンで閉じるのだが、その合間に雷雲と雷鳴(ゴロゴロという雷の低音が再生されず、カミナリの音に聴こえない)のカットが入り、不吉な予感を暗示させる。日中戦争が始まったころであり、カーキ色に染まりつつある時勢への不安を感じる。

追記:劇中、映画館の中で上映している映画が「ベティ・ブープ」。けっこう面白かった。

八重ちゃんが惚れている大日方傳を、彼女の友達(高杉早苗)がフレドリック・マーチに似ているというセリフがあった。

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コメント

こんにちは。
「一人息子」は観ていますが、茂原式トーキーということも、茂原氏が飯田蝶子さんの夫であられたということも知りませんでした。知識が増えました。ありがとうございます。
「マダムと女房」「隣の八重ちゃん」は、残念ながら観ていません。土橋式トーキーを一度聴きたいです。
高杉早苗さんは、溝口健二監督の「夜の女たち」(1948年)で、田中絹代さんの妹役を演じて居られたのが、今も印象深いです。

投稿: アスカパパ | 2010年2月13日 (土) 09時40分

アスカパパさん。おはようございます。
小津監督がトーキー映画をなかなか撮らなかったのは、茂原氏のトーキー技術の完成を待っていた為というエピソードを、たまたま何かで読んで知っていました。でも彼のトーキー初作品「一人息子」のシーン、日守新一さんが原っぱで座って喋っているところは何を言っているのかサッパリ解りませんね。
この映画はキャッチボールの音で始まりますが、そういう効果音もよく入っています。野球英語も普通どおり使っていますので古さを感じません。もう75年前の映画なのですが。
戦争の匂いは一切無く、良い映画でした。いつかご覧こださい。
高杉早苗さんは「夜の女たち」に出ておられますか。ぜひ観たいです。ちょっとキツイ顔の女優さんですが、ホームドラマに出演していたのを覚えています。いつも小言を言っていそうな顔ですが、この映画では十代の少女なのでそんなこともありません。

投稿: アラン・墨 | 2010年2月13日 (土) 10時26分

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