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ショパンの怒り

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 純粋音楽の作曲に徹したショパンの曲には、彼の祖国・ポーランドがロシアに侵略された怒りと慟哭を楽譜に吐露した作品があり、エチュード・作品10の12番やスケルツォの1番などが主なものだが、それはショパンのこと、リストのようにワザとらしい表題をつけて発表していないのは潔い。

 そのショパンの怒りを私が最も感じるのは、エチュードよりもスケルツォよりもポロネーズよりも、「24の前奏曲」の第24番である。

 この最終曲24番は、曲集の中では、18番と共に楽譜に(fff)のフォルテシッシモが1箇所だけ記入してあるのだが、この大音を出す指示は、前奏曲だけでなく、ショパンの作曲した全曲を探しても、極めてめずらしいことで、ショパンが如何に立腹・憤慨して作曲したかが分かる。

 さてこの曲、聞いていると、前半は、一人のヒーローが民衆に決起を促し、それに民衆が答えて「そうだ、みんなで闘おう」と大いに盛りあがっていくようなシーンを想像する。しかし、そのクライマックスで、三度の和音の半音階下降があり、権力の銃弾によって彼らが叩き潰されたような、救いようのない絶望感へと導く。

 その後オクターブにより、再び立ち上がるのだが、撃たれ絶望し、下降して、最後は地獄へと叩き落とされてしまう。映像化するとそんなところだろうか。

 叩き落されたポーランド民衆への鎮魂の鐘、あるいは地獄から振り下ろされる彼らの怒りの鉄槌は、最後の3つのD音による強烈なフォルテシッシモのバス音。

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さて、この怒りのD音をどのように叩くかがピアニストの腕の見せ所。

  ショパンは左手の中指で叩くよう指示しているが、音を強くするため、あるいは演奏の見栄えを良くするため、左手の親指で引くべきだろう。

Dscf0026_medium  それとも、中指に人差し指を掛け、二本の指の合力で叩くという法もある。この時、ルービンシュタインがやるように腕を高々と上げてから降ろすというのが演奏としても見栄えが良い。

 私にこの曲は弾けないが、弾けるとしたらそのようにするかもしれない。

 ペタ゜ルはショパンの指示によると、5小節前から踏みっぱなしであるが、バスの単音になってからは、一音ごと踏み直すか、ソステヌートペタ゜ルを使って音が他音と濁らないようにしたほうがいいと思う。ポリーニの演奏はそのように聞こえる。

 この曲の録音で私が最も好きなのは、イーヴォ・ポゴレリチの演奏で、最後のピアノの弦が切れそうな三つのバス音の迫力には、いつも感嘆している。また、打ちひしがれたポーランド民衆の悲痛な叫び声が聞こえるようで、いつも感動を禁じえない。

 

 

 

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コメント

引き続きこちらに投稿します。

帝政ロシアの圧制(若しくは侵略)に触発され作曲された作品では私はまずシベリウスの「フィンランディア」を頭に浮かべてしまいます。美しく壮大で重厚な旋律にフィンランド人の尚失われない矜持と繊細な心意気を聴く度に強く感じます。

ロシア帝政にしても優れた作曲家は存在していて、その代表とも言える人物がチャイコフスキーでしょうか(民族主義、国民楽派の代表であるならロシア5人組が筆頭かもしれません)。彼の手掛けた6作の交響曲のうち第三番の標題が「ポーランド」であるのも皮肉な話です。尤も所謂芸術家は政治とは無縁であるべき姿勢こそ望ましく、「表現に国境はない」好例とも考えられますね(夫々の国民の思惑は脇に置いておくとして)。

ショパンでは今私はニキタ・マガロフの演奏を中心に良く聴いています。しっとりとした曲調にあしらい一音一音を印象付ける表現がショパンの作品の叙情性と少なくとも私には強く同調しています。ゆったりとしたテンポの合間の「響き」が恍惚と効果的なんです(勘違いかもしれませんけど)。

指揮者でもあるウラディミール・アシュケナージともまた違う雰囲気が弾き手の個性を際立たせて中々面白いですね。アシュケナージの場合はしっとりと言うよりさっぱり「さらり」とした後に引かない爽快感があってその辺が「現代風」の味付けを感じます。

ご存知とも思いますが、アシュケナージは少し前のNHKの大河ドラマ「功名が辻」のメインテーマを演奏するNHK交響楽団の指揮を担当した経緯があります。その曲調からは壮大でありながら「嫌味のない軽妙さ」をやはり当時の自分は感じていましたが、総括して氏の個性、なのでしょうか?

墨さんほど詳しくないので、好い加減極まりない意見でどうも申し訳ないですsweat01


youtubeから「功名が辻」

http://www.youtube.com/watch?v=zK_T59ttajQ

投稿: ワン | 2010年3月 5日 (金) 20時48分

何度も続けてすみません。訂正箇所があります。


ウラディミール→ウラディーミル

でしたsweat01

投稿: ワン | 2010年3月 5日 (金) 21時01分

ワンさん。引き続きコメントありがとうございます。
クラシック音楽にも広い知識がお有りで感服いたします。フィンランド民族もロシアの圧制に苦しんでいて(このことは小説「坂の上の雲」で知りました)シベリウスの作品からもその思いが伝わってくるでしょうか。申し訳ないのですが私の音楽ボキャブラは極めて狭く、「フィンランディア」は全曲通してまだ聞いていません。映画「ダイハード2」のラストで流れていましたね。チャイコフスキーにしてもあまり知らないのですが、特に「くるみ割り人形」での魅惑的なメロディーと和声にはいつも感嘆しています。ムソルグスキーなどはチャイコフスキーの繊細さは無く、不器用でドロくさいですが、また別の荒々しい魅力がありますね。
マガロフの演奏はまだ聴いていません。ぜひ味わってみたいですね。
アシュケナージの指揮したものは、なんとも評価する能力が私にはありませんが、ピアノ演奏ではいつも驚きの念をもって聴いています。あの体格でどうしてあのように弾けるのでしょうか。オモチャのピアノがありますね。私には彼はそれを弾いているように感じてしまいます。

投稿: アラン・墨 | 2010年3月 5日 (金) 21時42分

はじめまして、こんにちは♪
偶然こちらに辿り着きました。

私はショパンが大好きで、
今ノクターンの練習をしています。

「24の前奏曲」の第24番は聴いたことがないですが、
ぜひ聴いてみたいと思います^^


投稿: スピリチュアルヒーラーを目指すKANAです^^ | 2011年7月22日 (金) 19時54分

KANA様。ようこそ。
ノクターンを練習されているのですね。
何番でしょうか。完成が待ち遠しいですね。
私は自己流で2番、5番、9番、遺作・嬰ハ短調を以前弾いていました。今は弾けるかどうかsweat01

前奏曲の24番は「革命のエチュード」より純粋な怒りを感じます。音楽表現としては単純なのですが。
この曲は、私には左手の跳躍の伴奏も右手3度の和音の速い半音階下降も弾けません。
「24の前奏曲」はピアノの宝石箱です。

投稿: アラン・墨 | 2011年7月22日 (金) 22時21分

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