« スター・トレック | トップページ | 首都消失 »

少年の目から見た円谷特撮、その3

円谷英二の特撮、NO,3

「スタジオ然の照明」

Dscf0002_medium このカットは東宝、昭和43年の「連合艦隊司令長官、山本五十六」の一式陸上攻撃機、飛行シーンからだが、ミニチュアモデルの表面に、スタジオの照明の光が反射して、実写感をスポイルさせてしまっている。それに大気感、流れる空気を全く感じることができない。

この映画を観たのは、私が高校生のころであり、しかもテレビ放映のものであるが、現在のテレビより明らかに不鮮明な画面で観たのにもかかわらず、このスタジオ然としたミニチュアの映像には唖然としたのみならず、どうしてこういう撮影をしてしまうのかと、怒りを感じたものだった。

円谷特撮では、この映画以前から(つまり小学生の頃から)、飛行機やロケットのモデルの質感が、どうもプラモデルの材質のように表面がツヤツヤしていて、照明の反射光が目立ち、オモチャ然に見えると感じていたものだが、特に、この一式陸攻のモデルの撮影はひどいと感じた。

どうして、こうなるのだろうか、モデルの材質にもよるだろうが、ミニチュアの細かい操演をする場合、どうしてもスタジオの屋内で行うことになる。そうすると当然、ライトによる照明を使うことになるが、もっと太陽光的演出ができないものだろうか。

このようなマズイ照明の当て方は、円谷氏以降の特撮映画、「首都消失」のミニチュア飛行シーンなどでも頻繁に見られたもので、何ら改善・工夫が成されていなかった。

ミニチュアモデルを使った撮影は、太陽光下で行へば、圧倒的実写感が得られるもので、過去の円谷特撮の例では、「世界大戦争」での東側の爆撃機を下から仰ぎで撮影したオープンの撮影シーンは、実写と見間違える優れた映像だった。

できることなら、こういう撮影は自然な太陽光を使って撮影するべきである。

しかし、スタジオ内で、人工光の照明により圧倒的実写感を演出した映画がある。

「ライトスタッフ」がそうだ。

Dscf0004_medium Dscf0005_medium ロケット機、X-1がB-29から離脱するシーンは、小さなスタジオで人工照明により撮影された。この自然な光とモデルの実機的存在感はもうしぶんない。

この「ライトスタッフ」では、もう一つ、絶対に特撮とは気がつかない優れたカットがある。

Dscf0007_medium このカットがそうで、飛行中のB-29と落下するロケット機の存在感はもう完璧であり、私は完全に実写フィルムを使ったものと思っていたが、ミニチュア特撮である。この霞んだような大気感のすばらしさ。それにカメラを振動させ、あたかも別の撮影機からエアリアル撮影したかのような演出のセンスは見事である。

こういう優れた撮影センスは、日本ではミニチュア特撮よりも、最近のVFX映像でようやく観られるようになった。野口光一氏の映像などが該当する。

|

« スター・トレック | トップページ | 首都消失 »

円谷英二の特撮」カテゴリの記事

コメント

こんばんは。本当にお久しぶりです。前回に引き続きすっかりご無沙汰してどうもすみませんsweat01中々時間が取れずまたPCから遠ざかっていたのですが、改めまして今年(もう3月になっていますが・苦笑)もどうぞ宜しくお願いします。

さて墨さんの円谷英二の特撮に関する記事を一通り目を通しましたが、検証の為の夫々の画像の長所短所をこれ以上なく端的に表わした相変わらず素晴らしい文章だな、と私はおこがましくも感じました。今寄せている記事のテーマである航空状態のミニチュア撮影にしても、米国と本邦(或いは円谷)との間にはこれほどまでの差があるのか、と様々な意味で驚嘆し同時に落胆もしました。

一式陸上攻撃機のミニチュアの様子も如何にも「ミニチュア」然としていて、なるほど照明の工夫がいかに映像の完成度に深い影響を及ぼす理由が良く分かりますね。

屋内のミニチュアをそのまま撮影した身も蓋もない様子を子供ならいざ知らず、高校生の目千ともなれば興ざめする事間違いなしですね。しかも、多少の偏見を含め例えばジャンルが「怪獣映画」であれば、まだ言い訳も出来るかもしれません(ちょっと悲しい語弊を含みますが)。

ところが実際には史実を基にした「戦記もの」であって、寧ろ対象年齢は「成人」を想定している筈です。封切り当時鑑賞に臨んだ高校生以上の「成人」たちは果たして銀幕に展開される“特撮”場面(本当は実写との区別がつかないほど精緻な映像でなければならない)を目の当たりして一体何を感じていたのでしょうね。写実的な空気感が殆どない描写にある意味で独特の「空気感」を感じてしまう心理は些か皮肉、としか言いようがありません。

何でも「作家性」「個性」に言い替えて納得し、あまつさえ日本特撮全般の「文化」に(半ば無理やり)底上げする姿勢が「大人の嗜み」とは思いたくないものです。

現に「ライトスタッフ」や「ブレードランナー」などの作り手の作家性や個性を奪わず、寧ろ明確に際立たせるほど非常に優れた「リアル」な映像がある訳です。

前回の記事に掲載された「キングコング対ゴジラ」の素晴らしく密度の高いワンシーンを見ると、どこか円谷英二の葛藤、を感じてしまいます。完成した作品のラッシュを見ながら違和感を覚えていたのは他の誰でもない円谷英二本人だったのかもしれませんね。自らの本音を時間的経済的制約、そして周囲の“評価(円谷特撮の真骨頂たるミニチュア“らしく見せる”ワークの美学)”との板ばさみの末不本意に相殺していたのではないか。時々そんな気がします。

久々なのにまた長くなりどうも失礼しました^^;

投稿: ワン | 2010年3月 5日 (金) 19時46分

ワンさん。お久しぶりです。コメントありがとうございます。
円谷特撮では、映画や円谷プロが手がけたテレビ番組でのモデルの反射光(ビートル機など)が気になっていたのでその思いをぶちまけてみました。モデルの表面でツヤツヤ・テカテカと光っているのが、いかにもオモチャですよと言わんばかりで、どうしてこんな損なことをしてしまったのか理解できません。
この一式陸攻のサイズは両翼スパンが2メートルはあるほどの大型モデルなのですが、まったく実物らしく見えません。どうしたものでしょうか。
もし私が撮影監督だったら、止む終えずオープン撮影できなかったとしても、モデルのウェザリング汚しで反射を避け、記録映像でも見られるように表面を使い古したように凸凹だらけにしたいですね。この処理も大して手間のかかることでもないと思いますが、それをやらないんですね。
この撮影はワンさんが仰るとおり、円谷本人も失敗と認めたものかもしれません。私はこのカットは円谷氏本人が演出したものではなく、助手が手がけたものだと思っています。
この映画での円谷氏の作家性は、墜落した山本機の上空を見守りながら旋回する護衛のゼロ戦のロングショットに感じられますが、史実の話なので「トコリの橋」のようにすべてオープン撮影にしてリアルさにはこだわってもらいたかったですね。

投稿: アラン・墨 | 2010年3月 5日 (金) 21時07分

あなたは特撮映画が作られた時代背景を全く考慮せず、何でも「現代の目」で良い悪いを決め付けているのですね。

全く浅薄で無思慮な文章だと思いますよ。

投稿: ターボー | 2010年12月 9日 (木) 13時25分

40年前、30年前の少年が感じたことですので「現代の目」ではありません。興奮しないでください。
特撮映画が作られた時代背景とは何でしょうか。

ブログに初めて訪問するときには「はじめまして」を最初に書くのが最低のマナーです。

投稿: アラン・墨 | 2010年12月 9日 (木) 14時38分

はじめまして
こちらのブログのあなたの文章をざっと見させてもらいましたが、
「あちら様の特撮はなんて素晴らしい。それに比べてああこの国は」という真理が見え隠れして気持ち悪いです
もちろん知識自体は正確で納得のいくものなので、反論とかそういうものを行おうという気にさせるものではないのですが・・・
まるで叩くために頑張ってるようで、その精神性だけが惜しいです

投稿: ぶー | 2011年6月21日 (火) 16時29分

ぶーさん。コメントありがとうございます。
気分を害されたのであればお詫びします。
確かに仰るとおりの心理が私にはありますね。
批評で叩くということを精神性の問題と捉えることは日本人独特のお人好しさ、大人しさによるものだと思います。
諸外国では昔からビシビシやりますからね。
私の特撮に関する思いは、子供の頃から巷から聞こえてきた「日本の特撮は世界一だ」という伝説に対する反発があります。
なぜ日本の円谷特撮ばかりが日本では批評の舞台に上がり、しかもすべてイエスマンによるホメホメの解説ばかりなのが不思議で、日本人は諸外国のすばらしいミニチュア特撮を見て見ぬフリをしているのではないか、日本の特撮ファンは「井のなかの蛙、大海を知らず」ではないか・・・と子供心に思い、現在に至ってこのブログで気持ちを吐露しています。
私のブログ記事の中では日本のミニチュア特撮をすべて否定しておりません。円谷演出のものでも、いいものはいいと書いております。大映の黒田監督演出もハリウッドに誇れる素晴らしいものと感じています。

投稿: アラン・墨 | 2011年6月21日 (火) 17時16分

アラン、墨さま
初めまして、お邪魔させていただきます。
特撮マニア....というよりも特撮ファンレベルの知識量の私ですが
偶然にもこちらのブログを発見、溜飲が下がる思いで拝読させていただいました。

私がずっと思っていたこと。
そして引き合いにだす作品の対比の『例』など
自分が思っていたことを全て代弁してくれているようで
いささか興奮して読まさせていただきました。
※とくに「少年の目から見た円谷特撮」1〜3が。。。

素直に海外特撮に驚嘆し、そして国産特撮との
客観的な比較をきちんとされているアランさまの
サイトに巡りあえた事はとても喜ばしく思います。
ひとつひとつコメントを書きたいところですが
まずは、ご挨拶まで。ということで。

投稿: 特撮太郎 | 2012年4月 4日 (水) 10時27分

特撮太郎さん。ようこそ。
私の書き散らしたものを読んでいただき恐縮です。
しばらく特撮物の記事は休んでいましたが、そろそろ再開しようと思っていたところです。
統一性のない、読みにくい稚拙な記事ばかりですが、またご来店ください。

投稿: アラン・墨 | 2012年4月 4日 (水) 16時17分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/412224/32469466

この記事へのトラックバック一覧です: 少年の目から見た円谷特撮、その3:

« スター・トレック | トップページ | 首都消失 »