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人情紙風船

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邦画メモ、NO,51、NHKBS

1937年、P.C.L、白黒、126分

監督- 山中貞雄、 撮影- 三村明、 音楽- 太田忠

出演- 川原崎長十郎、中村かん右衛門、山岸しづ江、霧立のぼる、

加東大介、同じ源七親分の子分として河野秋武が出演している。

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天才、山中監督の遺作であり、傑作のこの映画をとうとう観る。

まず、画質・音質は70年前の映画としてはマアマアで、昭和27.8年頃の映画のレベルに近いが、黒澤映画の昭和20年代の作品よりは遥かに見やすく聴きやすかった。フィルムの保存状態が良かったのだろう。

また、戦前・戦中の映画にありがちなフィルムの逸脱や検閲によるカットが無いようで、映画の展開はシーンの前後に説明不足のおかしな部分が無く、完璧だと言える。これはあの当時の映画を鑑賞するには、初めてといえるほど珍しいことだ。

長屋のたたずまいがいい。狭い長屋の通路や家の中など、大人や子供を入れた人物の配置が完璧だ。オープニングはまるで落語の世界で、観客を江戸時代へと引き込む。セリフは江戸弁のマキ舌でイキがいい。出演している俳優さんは前進座という劇団のプロで、山中監督も安心して演出したのかもしれない。

前進座というのは調べてみると、なかなか演技指導に厳しい集団のようだ。

御通夜では大酒飲んでドンチャン騒ぎが愉快だが、自分もあの仲間に加わりたいと思った。この気持ちは黒澤監督の「どん底」の馬鹿囃子を観ていても起こったものである。

黒澤監督は助監督時代、山中組の撮影を手伝いに行ったそうで、なるほど、後年の黒澤作品へ影響させた箇所を随所に感じた。

それは、「姿三四郎」、「どん底」、「赤ひげ」などであろうか。黒澤映画定番の土砂降りのシーンもそうだろう。

また、日本間のローアングルの撮影は小津作品を連想する。山中と小津は無二の親友だった。

そういえば、小津作品「長屋紳士録」でも、久しぶりにいい酒が手に入ったというので、長屋連中総出で、ドンチャン騒ぎをするシーンがある。

撮影はハリウッド帰りのハリー・三村だが、この人は決してパラマウント映画のような大クレーンやレールを使った派手な移動撮影はやらない。ほとんどフィックスの構図で、実に素直な画面作りをする。長屋通りのパンフォーカス撮影が粋。この人は「姿三四郎」でも活躍した。

長屋の隣通しの店子が、いつの間にか、ある事件でつながっているという脚本も素晴らしい。

この映画はもう二度・三度観なければ。

またこの天才の映画を「人情紙風船」しか観ていないというのもチト、寂しい。

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コメント

コメントありがとうございました。
アラン・墨さんもご覧になっておられたのですね。
そういえば小津さんの「長屋紳士録」でもドンチャン騒ぎがありましたね。
成瀬巳貴男作品「めし」でも長屋風景が頻繁に出た印象があります。
仰る通り、この映画の長屋の撮影は素晴らしかったですね。私も日を改めてまた観たいと思います。

投稿: アスカパパ | 2009年11月13日 (金) 21時16分

アスカパパさん。コメントありがとうございます。
またHNをスタンリーからアラン・墨に変え、いきなり訪問してしまい、失礼しました。
天才は夭折するのですね。ピアニストでいうとディヌ・リパッティがそうでしょうか。「めし」の長屋も印象にあります。また山田洋次監督のハナ肇が出演していた作品にも、江戸時代の長屋が舞台のものがあったと記憶しています、山田監督も山中作品を参考にしたと語っていました。

投稿: アラン・墨 | 2009年11月13日 (金) 21時39分

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 浪人が首を吊ったため大騒動の長屋風景から映画は始まる。「みんなで通夜を!」と、新三が大家を口説き、酒宴と相成る場面では、黒澤明の「どん底」を思い出して居た。 長屋にはもう一人の浪人が居た。専ら妻の内職に頼る又十郎だ。彼の亡父は生前に、毛利の立身に貢献した。そんな父の書状を持って、何度も毛利の屋敷を訪ねては、酷い仕打ちを受けて帰宅する又十郎だった。 豪雨のシーンが強い印象を残す。雨洩れを受ける桶。「子供の頃の私んちもそうだったなぁ」。子供といえば、大勢の子供達も登場させる山中貞雄の演出からは、優しい... [続きを読む]

受信: 2009年11月13日 (金) 21時01分

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