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少年の目から見た円谷特撮、その1

円谷英二の特撮、NO,1

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私が初めて円谷特撮を目にした映画は、「宇宙大戦争」だったと思う。この映画は昭和40年ごろから、だいたい毎年の正月番組としてテレビ放映されていた。SF好きの私の親爺は、必ずチャンネルを合わせてくれて、おかげで円谷特撮のすばらしさを知ることが出来た。

この映画の優れているところは、「地球防衛軍」に続く、怪獣の出てこない本格的なSFであることで、大の大人も、科学(月ロケットの反転着陸など)好きの子供もそろって楽しめる内容であることだ。特撮では宇宙人の円盤からの吸引光線による建物の破壊が一番の見もので、毎回、このシーンを楽しみにしていた。

また、その他、見所が盛りだくさんで、まず月までのロケットの行程。月世界でのナタール基地の探索(月面車のメカ)、ナタールとのバトル、月からの脱出。これだけでも少年には十分満足だったものだが、さらに地球に還ってからの大気圏外でのドッグファイト(光線の描写)、ナタールの地球施設への攻撃、大気圏内での攻防戦と、盛りだくさんの内容で、同じ東宝映画でもSF部門としてはまさに、「カツ丼の上にウナギの蒲焼とステーキを乗せてビーフカレーをかけた」と言われる黒澤明の「七人の侍」に匹敵する映画だと思う。

ただ、ナタールによる隕石魚雷の地球攻撃での、ニューヨークの摩天楼や、精巧に作られた金門橋などの破壊などは、撮影に大気感、空気感、遠近感がなく、スタジオ然となってしまったのが残念で、子供心にも、箱を並べたような高層ビル群が、爆風でコトンと傾いてしまったり、オモチャ然の小さな車が動いている吊橋は、「本モノを想像できないな」と感じたものだった。

Dscf0008_medium Dscf0009_medium この大気感、空気感がないということが、円谷特撮では、しばしば発生する難点で、せっかく作った精巧なミニチュアが、あたかも手を伸ばせば触れるように見えたり、あるいはスタジオで撮影見学でもしているように見えるミニチュア映像が、カットもされず流されてしまうのだった。

これは、少しスモークを焚いてミニチュアを霞ませ、遠近感を出すという、僅かな手間で済む基本中の基本を抜いてしまったことによる重大な誤りではないだろうか。

この誤りは、後の作品「世界大戦争」でも、ウエハースで造られたパリやモスクワの都市のミニチュアが、核ミサイルにより爆破されるシーンで、再びノースモークで撮影され、ミニチュア然とさせてしまうという同じ失敗で繰り返えされている。

ただし、円谷特撮では、すべてのミニチュアシーンがノースモークで撮影されているかというと、そうでもなく、効果的に使われているシーンもあり、私はこのムラのある演出が今でも不思議である。

このスモークによる、遠近感、ミニチュアの巨大感を演出する天才は、ダグラス・トランブルで、特に「ブレードランナー」における夜間の都市などの描写は、スモークによる「霞み」で驚異的な実写感を与えている。(ミニチュアも精巧で、照明や電飾も優れているのだが)

Dscf0013_medium この俯瞰による撮影のミニチュアビル群は、スタジオでは斜め水平に組みつけてあり、実はサンダーバード的、極小ミニチュアサイズで、画面に写っている範囲は約1メートル四方のものにずきない。この遠近感、高所感が素晴らしい。

中子真治氏は、著書「SFX映画の時代」で、こう記述している。

--- トランブルが好んで使うテクニックは、スモーク・ルームである。彼は「多くのSFXピープルが犯す間違いのひとつは、クリアーな場所でミニチュアを撮影することだ」、と指摘している、スモークなしでは、ミニチュアに大気が作り出す淡いパースペクティヴを与えることはできない。---

円谷氏が、どうしてしばしば、クリアーなマッサラな空間でミニチュア撮影したのか、私には少年のころから現在にいたるまで理解できずにいる。

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コメント

はじめまして。
手本も技術の蓄積も無い59年に作られた宇宙大戦争と、
技術が蓄積された82年に作られたブレードランナーを比較するのは、
ちょっと酷ではないかと思います。

そもそも特撮技術者が、スモークを炊くのに気づいたのは何時なのでしょうか?
もし59年以降であったら
「スモークを炊いてないのはけしからん」
と言うのは冤罪かもしれませんよ。

投稿: Byakhee | 2011年12月22日 (木) 02時51分

Byakheeさん。ようこそ。
年代にかかわらず特撮技術者はスモークによる効果を承知していると私は信じています。円谷作品でもこの映画よりかなり以前の「ハワイ・マレー・・」ではスモークで奥行き感、大気感を演出しているシーンがあったと記憶しています。
また1959年に円谷特撮は、すでに蓄積された技術は持っていたのではないでしょうか。それに、当時、ハリウッド映画からの手本もあったと確信しています。
私はなぜ、トランプルが実証したことを、その20年前の特撮マンが気が付かなかったのか、あるいは知っててやらなかったのか、と言いたいです。
時期は関係ありません。
スモークの効果が発揮されるのは夜のシーンでしょう。夜、霧で霞む摩天楼や金門橋のミニチュアは、恐らくもっと本モノらしく見えたでしょう。

投稿: アラン・墨 | 2011年12月22日 (木) 17時29分

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