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真空地帯

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邦画メモ、NO,50、DVDレンタル

1952年、新星映画、スタンダード、白黒、129分

監督- 山本薩夫、撮影- 前田実、音楽- 團伊久磨

出演- 木村功、利根はる恵、神田隆、加藤嘉、下元勉、西村晃、佐野浅男、岡田英次、金子信雄

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戦後のGHQによる規制が無くなり、戦争物作品が制作できるようになって、それまで表現しようにも出来なかった軍隊への憤懣を、いっきに爆発させて出来たような映画。

戦争から7年しか経っていないので、ほとんどのスタッフ、役者は軍隊の内部状況を経験済みである。したがって描写はとことんリアルであり、すさまじい。

現在の若者が、ろくすっぽ取材・時代考証もしないで造る甘い戦争物映画など、この映画を観たら、ちゃんちゃら可笑しく観ていられない。

ジャニーズ系のジャリタレをひっぱり出してきて、長髪のまま、まともな敬礼も出来ない、軟弱な姿態の兵隊にしたてあげる映画製作者・スタッフはこの映画を観て猛省していただきたい。

陸軍内務班の実態をさらけ出した映画第一号ではないだろうか。後の映画「二等兵物語」、「陸軍残酷物語」、「兵隊やくざ」などは、確実にこの映画の影響にある。

旧日本陸軍、恒例のビンタシーンはすべて実際に殴っている。殴られ、よろけるのも演技ではない。一番多く殴っているのは初年兵係りの一等兵役、佐野浅夫ではないだろうか。主人公、木谷の木村功も、初年兵から3年兵まで20人ほど本気で殴っているシーンがある。この撮影現場の気合には圧倒される。

この本気ビンタ・シーンのある映画は数多あるが、恐らく、一番多いのはこの映画だろう。出演した西村晃のインタビューが特典映像にあるが、撮影現場では、監督・スタッフ、それに殴るほうも殴られるほうも、ものすごい緊張だったという。

陸軍内務班では、上等兵より、4年兵の一等兵がデカイ顔しているという実態はこの映画で分かる。初年兵はたとえ一流大学の出でもボロ雑巾のような扱いを受ける。この描写は後年の「兵隊やくざ」、テレビ「どてらいやつ」でも使われた。

インテリ3年兵の曽田一等兵が虐待を受けた初年兵に優しく諭す。「軍隊というところは人間性を奪うところです」。この言葉がこの映画のすべて。

木村功の演技歴のなかでも渾身の作品。いや出演者全員も、「くそ陸軍め、ザマーミヤガレ」という気迫を感じる。

軍隊の本モノのビンタも、実際は歯が折れるほど酷かったのではないだろうか。そこまでは映画ではやれない。

追記: 映画のミス

軍法会議での憲兵長の岡田英次が喋っているシーンで、背後の壁に、ブームに吊り下げた録音マイクの影がはっきり写っているカットがある。

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コメント

古参の兵が威張り散らしていたというのは聞いたことがあります。ストレスを発散してたのでしょうかねぇ。この映画は未見ですが、観たいです。そんなにリアルでしたか・・・。
>ジャニーズ系のジャリタレ・・・・
そうなんです!!近頃の戦争映画は悲惨というよりも、悲愁という感じのものが多いですね。面構えがなってないんですよ。優しげな顔して戦争映画に参加しないでほしいものです。

投稿: マーちゃん | 2009年9月 9日 (水) 11時42分

マーちゃん。こんばんは。
この映画は、20年も前から観たいと思っていたのですが、なかなかソフトが手にはいりませんでした。今回はDMMで予約し、10日ほど順番を待たされて、ようやく観れました。陸軍の描写のリアルさでは、この映画がベストですね。実際と寸分の違いもないでしょう。軍隊経験者がいないくなった現在。この映画は演出資料としても貴重ですね。
現在の戦争映画の兵隊は、ほんとうにツラがなっていないですね。これは時代劇のサムライの姿でも言えてると思います。撮影以外の場所でも、俳優には、黒澤流の慣らし訓練が必要ですね。

投稿: スタンリー | 2009年9月 9日 (水) 20時37分

コメントありがとうございました。
スタンリーさんのご感想、胸に沁みます。私が観た数ある山本監督作品の中でも、ベストワンに挙げてもいい作品だと思います。
ところで映画のミス、よく発見されましたね。相変わらずさすがですね。

投稿: ウスカパパ | 2009年9月10日 (木) 22時13分

アスカパパさん。おはようございます。
山本監督のものでは「戦争と人間」をテレビ放映で高校の時に観ておりますが、いくつかの印象あるシーンがあります。「人間の條件」もいつかは観るべき作品のひとつにしています。「真空地帯」は独立プロ制作なので、会社からのしがらみが無く、監督も思いのたけを尽くして制作したのでしょうね。ただ、止む終えないのですが、録音がよくなかったです。
最後の輸送船のシーンに学生時代の山田洋次監督がエキストラ出演していたそうですが、本人もどこに写っているのか分からないと、特典映像で語っていました。

投稿: スタンリー | 2009年9月11日 (金) 08時47分

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 国民学校(今の小学校)時代に暗記させられたのは、国史(日本歴史)では神武天皇から今上天皇(昭和天皇)までの歴代天皇の名前。修身では教育勅語だった。やがて軍人勅諭も加わった。この映画のプロローグとエピローグに出てくるそれだ。  その意味するもの。それは真空地帯。真空には空気がない。息が出来ない。「軍隊は人間性を奪うところやから、注意せなあかん」の台詞がピリリッと針で突くようだ。それでも手足をもがれた真空管のように、人間はさせられて仕舞うのだ。(この頃(1953年)ダルマ管という真空管を作っていた私... [続きを読む]

受信: 2009年9月11日 (金) 06時19分

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