楽器を弾けない人が大騒ぎ
チャイコフスキー/Piano Concerto.1: 上原彩子(P)de Burgos / Lso+pictures At An Exhibition
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全盲のピアノ学生、辻井伸行さんのことがメディアでは毎日、繰り返し話題になっているが、今まで、チャイコフスキーコンクール、ショパンコンクールなどの大舞台で入賞、優勝したピアニストたちが、これほど騒がれたことがあっただろうか、私にはその記憶が無い。
しかし、今回の辻井さんの優勝は、ピアノを弾ける人、楽器を弾ける人は案外冷めた目で視ているかもしれない。
たしかに全盲でコンクールに優勝するのは快挙であり、祝福すべきことだが、生まれつき目が不自由なことは、本人にとっては楽器を演奏することに、さほどハンディとは感じていないのではないだろうか。
例えば脳の一部を事故や銃弾を受けて損傷し、体の機能に不自由をきたしても、今まで使っていなかった脳を起動させ見事に回復させるという事例がある。
この場合、リハビリという訓練が必要だが、彼の場合その訓練は必要ない。もう生まれつきから、人並み以上に聴覚、触覚、空間能力がアシストしている。
つまり彼にとって、目の前の鍵盤が見えないということはハンディではない。仮にもし、いきなり目が見えるようになったら、恐らく彼はピアノを弾けなくなるのではないか。余計な情報が脳へ邪魔してしまうのだ。
私は、生まれつき全盲のピアニスト、演奏家の存在よりも、もし、糖尿病などで失明したピアニストが、訓練を重ね、見事リサイタルを開くという事例があれば、そちらのほうがはるかに驚異的だと感じる。
この大騒ぎしている新聞、テレビ、週刊誌の担当者諸君は、恐らく楽器が弾けないのではないだろうか。たぶん「ピアノを弾ける人は、どうして右手と左手と別々に指を動かせるのだろうか」という小学生クラスの疑問を永年持ち続けている人々なんだと思う。両手を使って弾くことすら凄いのに、全盲でそれをやるのはなんと凄いことだろうか。という訳である。
それに、日本人というのは、昔からハンディを負った人物が、努力して人並み外れた偉業を達成する話に弱い。ヘレン・ケラーや耳の聞こえないベートーベンが戦前・戦中に人気があったのは、そういう国民性による。さらにメディアがそれを煽る(特に女性週刊誌)。
だから日本の大騒ぎに一番驚いているのは彼自身だろう。
ピアノ演奏の場合、体から離れている場所の鍵盤は、ある程度横目で場所を確認するが、レガート奏法で指を動かしている場合、案外目をつむっていても弾けるものである。まして、バイオリンなどのアナログチックな楽器は、暗譜していれば演奏中は視覚など関係ない。
ある程度楽器を弾ける人、プロのミュージシャンが今回のことで関心しているのは、全盲で演奏していることよりも、彼の暗譜能力と読譜能力ではないだろうか。点字の楽譜もあるようだが、それでは時間がかかるので、耳で聞いて暗譜しているというのだ。しかも、コンクール用の課題曲まで短期間で暗譜しなければならない。これこそ、ほんとうに驚異的であるが、メディアはなぜか、そのことを詳しく取り上げていない。
ところで、ケチをつけるつもりはサラサラないが、コンクール名にピアニストの名前がついているものは、作曲家の名前がついたコンクールより、あまりレベルが高くない。こう言っては悪いが、こういうコンクールは、ピアノ留学生が生活費用にする賞金を得るために受けるという例もある。
そのことは彼自身がよく知っていることだと思う。
彼はまだ20歳なので、これから人生経験を積み上げて、さらに上の領域に達していくのが楽しみである。次はぜひ「ショパンコンクール」、「チャイコフスキーコンクール」にチャレンジしてください。
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コメント
私もスタンリーさんと全く同じことを思っていました。マスコミは連日連夜、彼のことを取り上げていますよね。どうして、あんなに大騒ぎするのか不思議です。ピアノを弾く時、鍵盤はほとんど見ませんよね。私は暗譜能力が低いので、楽譜を見ながらでしか演奏できませんでした。(鍵盤を見る余裕がない・笑)
音楽家としては耳が聴こえないことの方がハンディでしょうね。
辻井伸行さんのレパートリーは100曲ほどだそうですね。まだ20歳ですから、もっと増えるでしょうね。
ところで、彼の演奏はどうなんですか?正直なところを教えてください。
投稿: マーちゃん | 2009年6月16日 (火) 22時40分
マーちゃん。おばんです。
貴方もピアノが弾けますから、やはりそう感じますよね。今朝NHKのニュースで彼が長時間出演していて、これだけ日数が経ってまだやっているの・・・と感じ、メモしました。私の場合は辻井式で、全曲暗譜します。楽譜を見ながら演奏というは、超簡単な曲でしか出来ません。笑
マーちゃんは楽譜だけ見て弾けるのですね。スゴイ!。辻井さんのレパートリー100曲というのもスゴイですね。暗譜していますから。ホロヴィッツは17歳でプロになったのですが、たしか300曲くらいだったはずです。
彼の演奏はテレビではよく分かりません。やはりCDかDVDで再確認したほうがいいと思います。できればリサイタルに行くのがいいのですが、まだ学生ですからリサイタルはやらないでしょう。今後が楽しみです。
投稿: スタンリー | 2009年6月16日 (火) 23時15分