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驟雨

[東宝1956年] 驟雨 [シュウウ]●原節子/佐野周二/香川京子/根岸明美 [東宝1956年] 驟雨 [シュウウ]●原節子/佐野周二/香川京子/根岸明美

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邦画メモ、NO,47、NHKBS

1956年、東宝、スタンダード、白黒、91分

監督- 成瀬巳喜男、原作- 岸田国士、脚本- 水木洋子

撮影- 玉井正夫、音楽- 斎藤一郎

出演- 佐野周二、原節子、香川京子、小林桂樹、根岸明美、加東大介、長岡輝子、堺左千夫、伊豆肇、中北千枝子、塩沢登代路、東郷晴子、村上冬樹、佐田豊、大村千吉、恩田清二郎

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驟雨とは、にわか雨のこと。

この映画制作の前年、成瀬は名作「浮雲」を公開している。あの映画、たいへんシリアスで暗く、ラストシーンは高峰秀子の臨終である。

それで、成瀬も肩の凝る映画を作ってしまったという反動だろうか、この「驟雨」はたいへんコミカルで軽い。

オープニングシーンは夫、佐野周二が妻の原節子にグチグチと小言を発し続ける。これは男性が聞いても嫌なもんだが、妻は言われっぱなしでなく、反論もするのは戦後の民主主義の影響だろう。ただし、ヒスを起こすわけでもなく、当時の女性はたいへん我慢強い。現代だったら夫は問答無用に「ウルセーテメー」とジャガー横田のように噛みつかれ、パンチを食らうかもしれない。

この小言を言い合うシーンは小津が演出していても似合ったかもしれない。例のローアングルで真正面のバストショットにより、短いセリフごとにカットの切り返しとなるだろう。この二人の役者さんも小津の常連である。 若い頃、成瀬監督は松竹に在籍していたが、所長は「松竹に小津は二人いらない」と語っていたそうだ。それが原因かどうかわからないが、後に成瀬は東宝に移った。

新婚ホヤホヤの香川京子が、はやくも夫のグチを叔母の原節子に訴えに来るのだが、彼女の苦言による夫の態度はデリカシーが無く、やはり同じ男性としてもケシカランものであり(こんな美人の妻を娶ったのにという意味で)、これも現代だったら成田離婚ものだろう。

佐野夫婦の隣に引っ越してきた小林桂樹、根岸明美の夫婦も軽い感じで、両家お互い、言いたいことも言うのだが、小林のキャラのせいか角が立たない。観ているこちらも安心する。

その根岸さんの体格のいいこと、ダンサー出身であることが庭の体操シーンで納得できる。

この二軒両隣は借家らいしいのだが、私の幼児のころ、昭和30年代にもそこかしこに存在していた木造平屋の形態であり、なんだか懐かしかった。水道は来ていないのか、家の中の台所に手動ポンプ式の井戸がある。もうこの頃テレビジョンは放送されていたはずだが、もちろんラジオしか置いていない。しかし後のシーンでは、デパート「白木屋」の屋上にテレビアンテナらしきものが見られる。

保育園で行う、町内会の常会シーンは、みんなバラバラの意見を言い合うだけで結論の出ないという傑作シーンで、今井監督「青い山脈」のラブレター事件会議を思い起こさせる。

佐野は化粧品会社に勤めている営業マンだが、ある日、社員全員とともに食堂で社長からリストラによる希望退職の説明を受ける。この社長のはなし方が横柄で、「あー、ええか、わかったか」という言い回しにはムカついた。この社長役の俳優さんが恩田清二郎だろうか。憎々しい。うまい。

結局、佐野家の諸問題も解決せず、佐野と原節子との紙風船の投げ合いで映画は終わる。もうちょっと展開してほしかった。上映時間も「浮雲」よりずっと短い、軽い、もの足らない。

音楽は始終ビアノの独奏演奏のみ、それも即興演奏といってよく、明るい曲調なのはいいのだが、ちょとレベルの低い即興だった。

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コメント

驟は難しい字ですね。読めませんでした~。
コミカルで軽い映画なのですか・・・観たいなぁ(芸術的な映画は苦手なんです・汗)
ジャガー横田さんは怖いですね。オール阪神・巨人の阪神さんの奥様も怖いそうですよ(笑)。
>香川京子が、はやくも夫のグチを叔母の原節子に訴えに来る
香川さんは今も活躍されていて、原節子さんは若くして引退しましたよね。原さんは若いままの姿で脳裏に焼き付いているけれど、香川さんは今の容姿を知っているから、ちょっと意外な感じがします。
根岸明美さんは亡くなりましたね。好きな女優さんでした。

投稿: マーちゃん | 2009年5月24日 (日) 23時45分

マーちゃん。こんばんは。
はい。驟という字は難しいです。馬ヘンなのはなぜでしょう。この映画は軽く、ユーモアもあります。成瀬監督の「めし」に似ていますが、だんなの浮気話はないですね。成瀬作品の男性は、ほとんど全員お金に困る話となりますが、この映画の佐野周二もリストラされそうで経済的に怪しくなります。香川さんは相変わらず容姿端麗です。でも最近は少しやせすぎですね。根岸さんは近年は映画より舞台で仕事をされていましたが、つい最近亡くなられたのは残念です。「どん底」の演技が好きです。

投稿: スタンリー | 2009年5月25日 (月) 20時08分

こんにちは。
コメントありがとうございます。
この作品は、成瀬作品の中では、中の下ぐらいだと思っていましたが、偶然4年ほど前に、成瀬監督ご自身が、この作品について語って居られる記事を見つけました。要旨は次の通りです。
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興行面の諸事情から間に合わせ的なものになってしまい、あまり成功していない。
私には岸田さんの原作が持っているようなスマートさが出せない。
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と、たいへん謙遜した言葉を発して居られました。
やはり、つけばつくほど美味しい餅になるように、つき方が足りないと、というところでしょうか。
でも私は、現代に薄れつつある(と自分勝手に思っている)恥じらいのようなものを描かれる成瀬作品は好きです。
なお、当時はまだ白黒テレビが高価な時代で、私の家にもありませんでした。

投稿: アスカパパ | 2009年5月26日 (火) 09時44分

アスカパパさん。こんばんは。
そうですか。成瀬監督自身が納得のいかない作品となったのですね。「浮雲」ですら、気に入っている作品ではないと監督は仰っていたそうですね。でも、鑑賞に値する作品ではあると思っています。アスカパパさんの仰る恥じらいというものも、妻をホステスにするバーの開店計画を、夫が断るところで感じました。私もあのシーンは同僚たちの計画に反発したものです。
テレビは当時20万円くらいの値段だったそうですね。この映画の退職奨励金が20万円でした。今だと高級車くらいの価値でしょうか。

投稿: スタンリー | 2009年5月26日 (火) 19時36分

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