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山の音

山の音 [DVD] DVD 山の音 [DVD]

販売元:東宝
発売日:2005/08/26
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邦画メモ、NO,43、NHKBS

1954年、東宝、スタンダード、白黒、95分、画質普通

監督- 成瀬巳喜男、 原作- 川端康成、 撮影- 玉井正夫、

音楽- 斎藤一郎、 美術- 中古智

出演- 原節子、上原謙、山村聰、長岡輝子、中北千枝子、木暮実千代、

杉葉子、金子信男、

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義父が息子の浮気で悩む嫁を思いやるという、極めて松竹の小津映画的なものを東宝の成瀬がやるとこうなるという映画。

小津の登場人物もそうだが、家庭は極めて裕福で、晩飯のおかずに伊勢えびとサザエが出る。  どうやら原節子の義父・山村聰は銀行の頭取で、夫の上原謙はその銀行の幹部のようだ。 

家の造りはあの当時としては清楚でけっこうな邸宅、ヘルパーさんも時々来るようだ。この家の美術は成瀬監督のレギュラー、中古智だが、川端康成の実家に極めて近い造りだそうだ。

以前にも書いたが、原節子の、夫やその家族に対する言葉遣いが、今の感覚では極めて学習院的ハイソサエティー言葉で驚く。 「お義父さま、なにをご覧になっていらっしゃいますの」とくる。  土肥中の家庭で、朝飯に茶漬けと漬物を食ってすましていた私の子供の頃の生活言葉とは次元が違うので、多少癇に触る。

音楽の斎藤一郎はピアノを巧みに使い私は好きだ。ポロンポロンという音が物悲しい。 小津映画では「サセレシア」のズンタッ・ズンタッのリズムによるアコーデオンのメロディーも面白いが。

ラストシーンが極めて面白く、かつ意味深い。

菊子(原節子)と義父(山村聰)は広い公園で待ち合わせる。実は義父は菊子が息子と離婚する決意があることを悟っていて、こちらの家族に気を使わず、本人の自由にまかせるよう菊子に語りかける。 

この義父役の山村聰が実にいい芝居をしている。ほんとうに嫁への慈愛を感じ取れる名演技。 私もあんな親爺を持ちたかった。山村はこの映画で毎日映画コンクール主演男優賞を受賞している。因みに山村と上原は役柄では親子の関係だが、実際はほぼ同い年である。山村は当時44歳なので20歳以上のフケ役だ。

この公園(東京のどこだろうか)の並木道(「第三の男」に出てくるような)を二人で歩いた後、義父と、精神的に開放された菊子の会話が実に意味深い。

並木路を出た広場を義父が眺め廻す。

義父・「のびのびするね」

菊子・「ビスタの苦心がしてあって奥行きが深く見えるんですって」

義父・「ビスタ?」

菊子・「見通し線て言うんですって」

・・・・・ この部分が川端の原作にあるかどうか知らないが、ビジュアル的心理描写というか、新鮮な感覚のするラストシーンとなっている。

この映画もビスタビジョンで撮影すればよかったろうに。私はあの画面比率が一番好きだ。ただし、日本映画でビスタサイズの作品が当時あっただろうか。

追記: ラストシーンの並木のある公園は代々木公園と判明。

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コメント

原節子さんと山村聰さんは「東京物語」で共演していましたね。山村さんはお医者さん役でしたよね。彼は頭取や大将など、風格が必要な役をやらせれば、ピカ一の役者さんですよね~。
>私もあんな親爺を持ちたかった
スタンリーさんのお父様はどんなタイプの方なのですか?私の父は大変人でした(笑)。
話は変わりますが、今週火曜日に放送されたNHK「プロフェッショナル」はご覧になりましたか?航空管制官を取り上げていましたね。バードストライクが起こると、滑走路を封鎖しなければならないんですね。それでは、ごきげんよう。

投稿: マーちゃん | 2009年2月19日 (木) 11時12分

マーちゃん。おこんばんは。←トニー谷
山村聰さんは良いお父さんですね。「東京物語」の町医者から総理大臣、山本五十六と東大卒のキャリアにふさわしい人物が似合っています。でも小津の「宗方兄弟」では田中絹代の夫なんですが、これがまたどうしようもないダメ男を演じているんですわ。一度ごらんください。
マーちゃんのお父さんは変人でしたか。おもしろそうなお父さんですね。私のオヤジは斎藤茂吉に感じが似ていますね。瞬間湯沸かし器タイプです。だからジェントルな山村聰さんは尊敬します。
「プロフェッショナル」は見逃しました。成田や羽田の管制官はストレスたまるでしょうね。でも富山空港なんてヒマそうですよ。笑

投稿: スタンリー | 2009年2月19日 (木) 20時31分

スタンリーさんの、バーチャル上映を鑑賞させて頂きました。
脳裏のスクリーンにモノクロ・スタンダード画面が映えるようでした。ありがとうございました。
なお、パラマウントが開発したビスタビジョンは私も一番気に入っていました。
なお当時、日本映画に、ビスタサイズの作品はありませんでした。東映が日本初のシネスコ作品「鳳城の花嫁」を公開して以来、各社は雪崩を打ってシネスコサイズに殺到していきました。

投稿: アスカパパ | 2009年2月19日 (木) 21時27分

アスカパパさん。こんばんは。
ビスタサイズ、お好きですか。私は写真でも横長のライカ判はあまり好きではありません。6×7判が好きです。
やはり日本映画全盛期にはビスタビション映画はなかったのですね。情報ありがとうございます。でもシネスコは当時取り入れていったのですね。やはりテレビジョンとの差別化でしょうか。
東映が初公開したのですか。
以前、東宝初のシネスコ映画「敵中横断三百里」を観たのですが、画面に歪があり、あの当時はまだまだ技術が未熟な段階だったようです。
「山の音」のラストシーンの公園は調べましたら、どうやら代々木公園のようですね。 けやき並木での原節子の明るい笑顔が印象的でした。あの構図もほんとうにビスタでした。

投稿: スタンリー | 2009年2月19日 (木) 22時49分

ご無沙汰してます。
最近は古い日本映画も続々とDVD化されて、とても嬉しい事です。
山村聡さん、私も大好きでした。確か帝大出だと母が言ってましたが、当時の俳優さんとしては珍しかったかも。
お上品な物言いがシャクにさわる、に大笑い。はい、私も分かります。

投稿: バルおばさん | 2009年2月21日 (土) 11時49分

パルさん。こんばんは。
山村聰さんは東大卒ですね。同じ東大(中退?)の森雅之さんと比較しても、もっとも会社の重役や大臣に似合っていると思います。
原節子さんは悪女を演じたことがあるのでしょうか。
「ウルセー・テメー」というようなセリフを言う役をひょっとして演じてみたかったかもしれませんね。

投稿: スタンリー | 2009年2月21日 (土) 20時52分

お詫び。
スタンリーさん、こんにちは。
実は、いま、レビューを作成中に、日本でもビスタビジョン作品が公開されていて、私がその1本を観ていたことを発見しました。
先日、スタンリーさんのご質問に「日本ではビスタビジョンはなかった」と、お答えしたのは誤りでした。お詫び申し上げます。
なお、私が観た1本とは、大映作品「女狐屋敷」です。リアルタイムで観た感想をレビューしていて、完全に忘れていました。(大汗)
私の名前に、その内容をリンクしてみました。もし、よければ、ご覧ください。
とりあえず、お詫びかたがた、発言の訂正まで。
アスカパパ拝

投稿: アスカパパ | 2009年2月23日 (月) 11時08分

アスカパパさん。こんばんは。
ご訂正のコメント、大変恐縮です。
大映にあったのですね。 レビュー、拝見させていただきました。やはり新しいものを他社よりいち早く導入する永田社長の方針でしょうか。その後、あまり採用されなかったのは残念ですね。
ビスタビジョンというのは撮影も映写も特別の仕掛けがいるみたいですね。でもシネスコはレンズだけの交換ですむようですから、そちらの方向に進んで行ったのでしょう。
溝口監督は毛嫌いしていたようですが。
話は変わりますが、図書館で川端の「山の音」をパラパラとめくって見ましたが、「ビスタうんぬん」の描写はありませんでした。やはりこの部分は水木さんのオリジナル脚色のようです。

投稿: スタンリー | 2009年2月23日 (月) 19時47分

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