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ローレライ

ローレライ スタンダード・エディション DVD ローレライ スタンダード・エディション

販売元:ポニーキャニオン
発売日:2005/08/19
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邦画メモ、NO,33、レンタルDVD

2005年、配給東宝、シネスコサイズ、128分

珍しく横長シネスコ調の画面。最近はDVD化するためビスタサイズにするのが普通だが、潜水艦の長さを強調する為にこのサイズにしたのだろうか。

監督- 樋口真嗣、 脚本- 亀山千広、 撮影- 佐光朗、

音楽- 佐藤直紀

出演- 役所広司、妻夫木聡、柳葉敏郎、香椎由宇、石黒賢、

堤真一

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樋口監督は平成ガメラの特撮を担当して、旧態依然の東宝・円谷特撮の流れを翻し、特撮ファンの希望に答える新しい光を発した人だが、今回の映画はどうしたものだろうか、実写特撮をいっさい廃し、コンピューターによるVFX映像の採用に徹している。

思うに、樋口監督は本編の監督・演出に力をいれるべく、特撮はVFXの専門家にゆだねたのだろうか。

それにしては、この映画のVFXはプアーで、その映像は、しょせん、どんなにがんばったところで、「U・ボート」や「U-571」などのラージスケール・ミニチュア特撮の質感にはとうてい及ばず、そのプレイステーション的映像は、「本モノと思って観てください」という円谷特撮のレベルとたいして変わらないものになってしまった。

とはいえ、この映画のストーリーは大変面白く、よくこんな話を考えたものだと関心した。 内容は、もうSFといってよく、私のオヤジの年代では「荒唐無稽」と一括される話である。 そう、大昔の軍国少年向け小説、例えば海野十三などのものに見られる話といってもいい。

原作は小説のようだが、原作者、あるいは脚本家は太平洋戦争について十分取材したのだろうか。あるいは軍事・戦略のオーソリティに監修してもらっていただろうか。たいして詳しくない私でさえも、どうも不十分だと思われるシーンが多々あった。

それは

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●潜水艦の艦長役の役所広司、特攻乗組員、あるいは堤真一のアシスタントの兵隊が長髪であること。 ・・・・・ これはもう日本兵としてはありえないヘアスタイルではなかろうか。

監督が丸坊主になることを要求しても、俳優の所属事務所がOKしないことは十分考えられるが、私が監督だったらこういうことは絶対許さないことだ。丸坊主頭になることをいとわない俳優さんに出演していただく。

●敬礼の仕方が海軍的でない。・・・・ どういう敬礼が海軍のやり方なのかは小津監督の「秋刀魚の味」を観ていただきたい。

●その長髪の特攻青年が帝国軍人らしくない、凛々しくない。・・・・ たとえ上官に不満があったとしても、一兵卒が敬礼もせず、グダグタと艦長に直訴するなど当時では考えられないことであり、とうていありえないことである。 

●アメリカ政府がテロリストというべき一日本軍将校と交渉し、ローレライと引き換えに東京に原爆を投下するという、マンガチックな設定。 ・・・・ 戦略的にも政治的にも、皇居と日本政府とアメリカ大使館とアメリカ兵捕虜収容所がある東京に、アメリカ政府が原爆投下を命令するという無意味なことは、天地が逆さまになってもありえないことであり、原作者・脚本家の幼児的センスにあきれてしまう。 所詮、大人の鑑賞に堪えられない話。

●戦闘行動としても、ありえない設定があった。米駆逐艦を、イ号潜水艦武装の砲塔で撃沈させてしまうが、仮に口径127ミリ程度の砲弾2発を命中させても、駆逐艦はビクともしないはずである。

●同じく戦闘態勢として、テニアン沖に、米駆逐艦が何十隻もひしめきあっていたが、これも軍事行動としてありえない、マンガチックなシチュエーションではないだろうか。 

●その他、脚本の不備。

・米駆逐艦が味方駆逐艦2隻が撃沈されても、残存兵の救助に行かないこと。 ・・・・ 駆逐艦というのは味方兵の救助が第一任務ではなかろうか、特に人命重視のアメリカ軍においては。

その任務を捨てても敵潜水艦を追うのは、もう艦長のパラノイアと言ってもよく、「駆逐艦ベットフォード作戦」の艦長のような強烈な異常心理がなければ説明できない行動だ。部下が救助の意見上申しないのもおかしい。そういう状況のシーンを追加すべきだ。

・ローレライの存在は口外するなと、艦長が命令していたが、いつのまにか乗組員が彼女の存在を知っていた。・・・・ 間の説明を飛ばしてしまっている。

・ローレライの娘の存在がバレるまで、石黒賢が彼女に食事を運んでいたのだろう。とうてい彼女を隠しきれるものではない。 それとも人工透析機のようなもので栄養を補給していたのだろうか。

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コメント

スタンリーさん、こんにちは。いつもコメントを頂き有難う御座います。
スタンリーさんのレビューを拝読していますと、映画の専門的な技術などに詳しくない私にとっては、良い勉強になっております。
旧いことにも精通されており、非常に詳しく鑑賞されておることにも驚嘆しています。
ビスタサイズの訳も初めて知りました。海野十三、懐かしいなぁ。以下に、私が劇場で観た「ローレライ」の感想文を記させて頂きコメントとさせていただきます。
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潜水艦伊507艦長の絹見真一(役所広司)が、N式潜航挺の折笠征人(妻夫木聡)と謎の美少女バウラ・アツコ・エブナー(香椎由宇)に言う。「大人の起こした戦争に、君たち子供を巻き込んで悪かった」と。
60年という歳月の変化を痛切に感じた。これは太平洋戦争が背景ながら戦争映画ではない。これは劇画だ。これはアニメだ。

広島・長崎に次ぐ三番目の原爆が東京を狙っている。軍規に背きそれを阻止する。日独混血女性が乗り込む潜水艦で。伊507は不死身。四面楚歌の中、原爆搭載機を打ち落とす。不思議に原爆は破裂もせず、そして艦艇は海底に沈みもせず。超好感度水中探索装置ローレライ・システムの威力は予想通りだった。

これから歳月の風化は更に進んでいく。でもこの映画を見て次のことを想ったことは事実である。20世紀を震撼させた太平洋戦争は確かに存在していた。その上に今の日本が在る。国の石杖となられた犠牲者の霊は今、天国でこの映画を見られてどのように想って居られるだろうか?と。

ヘンリー歌姫の「モーツァルトの子守歌」がレクイエムになればよいが。

投稿: アスカパパ | 2008年8月30日 (土) 12時11分

アスカパパさん。こんにちは。
私の書くことはいつも映画制作側で観ていますので、率直に感じた内容をあまり書きません。
実はこの映画、けっこう感動したものであります。
アスカパパさんの批評を読み、さらにシンミリといたしました。
転写、ありがとうございます。
この映画はおっしゃるとおり、劇画、マンガですね。架空戦記ものというものでしょうか。最近ではゲームソフトでもこういう話はお馴染みです。
樋口監督があえてコンピューター映像にしたのは、架空だからかもしれませんね。別の次元の話です。ボヤーッとした一抹の夢の映像なんですね。
アスカパパさんの仰るように、子守唄の透き通った歌声が、海中に響き、太平洋で散った日米の若い兵士や民間人の鎮魂になればと私も思います。

投稿: スタンリー | 2008年8月30日 (土) 14時32分

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