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夏休みのことなど

ウォーキングしながら、横移動撮影のような景色をしだい眺めていると、子供のころの映像と空気に戻っていく。

今だと、実ってきた稲穂の匂いと、まだまだしつこく鳴いているセミの声が小学校時代に戻る、タイムスリップへの点火栓となる。

夏休みももう終わりだが、始まるころに戻ってみると、まず通知表を親に見せるのが憂鬱だった。 学校が火事になり、通知表も採点されたテストもみんな燃えてしまえば、と思ったものである。

家に帰って、親から、特に父親から「通知表は?」と言われたものなら、私の頭の上にはベートーベの「運命」の「ジャ・ジャ・ジャ・ジャーン」という音、あるいはバッハの「トッカータとフーガ・ニ短調」の「チャララーン・・・・チャララララー・・ラー」という過酷な音が鳴り、死刑判決にも値する瞬間を臨まなければならない。

なんとかその瞬間も無事過ぎ、翌日から夏休み生活となるのだが、ちょっと楽しみだったのが、終業日にもらった肝油、つまりビタミンC,Aなどが甘いゼリーなどにコーティングされた栄養剤を食べることだ。

あれの値段はいくらくらいのものだっただろうか。一つのケース(浅田飴の入ってるようなプラスチックのケースのもの、あるいは六角形の透明のケースに入っている)で100円くらいしたと思う。 

1箱に100個くらい入っていてゼリービーンズのような形でオレンジ色のもの、あるいは碁石をちいさくしたような白い錠剤がはいっていたものだが、一日2個食べるようになっていたものが、1週間で無くなってしまったものだ。

一日の始まりはというと、6時10分ごろ起床し、ラジオ体操に向う。体操の時間が始まるまでの友達との時間は楽しかったものだ。地面で三つ並べをしたり、陣取りゲームをしたり。 

ラジオ体操の第一というのは長調でメロディーが進んでいくのだが、第二はところどころ短調になっていて、この不思議で陰気な曲調は、私は何かしら今日一日の不安と、宿題がたまったまま夏休みが次第に終わっていくことへの絶望感をうっすらと感じたものである。

午前中は10時ごろまでなんとか学校のお仕着せの宿題、「夏の友」を2ページほどすませ、自由研究などの課題はほったらかしにしていた。

さあ、午前10時になるとテレビで面白いものが始まる。自由研究などやったるかい。

まず「トムとジェリー」を見る。もちろん再放送であるが、こいつは何度観ても面白い。 私の中部地方ではテックス・エィブリー物を3本立てにした「まんが宇宙船」というのもやっていた。これを観ずにおけるだろうか。

また「サンダーバード」や「キャプテン・スカーレット」もこの時間帯に再放送されていた。これも観なければ。

日曜日ともなれば、この時間帯はレギュラー番組の「兼高かおる・世界の旅」、「じゃじゃ馬億万長者」、「母さんは28年型ポーター」、「ブラボー火星人」などを放映していて、宿題はおろか外に遊びに行くことなど決してしなかった。

午後になると友達と遊んだり、プールに行ったりというところだが、北見けんいちの漫画の元気くんみたいに、朝から一日じゅう虫捕りや川遊びなどはしなかった。あの漫画は昭和40年代の当時の子供たちの遊びや生活スタイルとしては少し偏りずぎていると思う。あのころの子供とってテレビは重要なアイテムであり、外遊びは二の次ということもあった。

遊びやプールから帰って、親から10円の小遣いをもらうと、売店でイチゴ味シャーベット「みぞれ」や、2本の棒がくっついている青い「ソーダアイス」などを買い食いした。このソーダアイスは二つに分離するときにうまくいかないと、片方、四分の一くらいがポロッと地面に落ちてしまい、 少年は「ああ・・・」と嘆息したものである。

午後4時くらいになると、再びテレビジョンは子供たちをひきつける。友よ遊びはもう終わった。家へ帰ろう。

「宇宙家族ロビンソン」、「タイムトンネル」、「ナポレオン・ソロ」、「バットマン」、「原潜シービュー号」、「ウルトラマン」等々の再放送が始まるのだ。

さて、それも終わり、午後6時近くになると、民放コマーシャル嫌いのうるさいオヤジが帰宅する時間だ。いちおうNHKにチャンネルを換えて、「チーンコ・チーンコ・チンコチンコチンコ」というテーマ音楽の「みんなの歌」で石原慎太郎作詞の「夜明けだ夜が明けてくる」などをしおらしく聴く。

そのうち、「ひょっこりひょうたん島」や日曜日なら「宇宙人ピピ」などの子供向け番組を惰性で観て、各地のニュースや天気予報をつきあって、夜七時となって少年の夏休みの一日はぼちぼちと過ぎていった。

夜は時には花火をやった。 特別に50円くらいの小遣いをもらって買ってきたのかもしれない。

筒状になっていて、火の球を5メートルほど連続発射する「15連発」や、地面において導火線に着火すると円谷特撮の火山の噴火のようになる、単二乾電池くらいの大きさの「ドラゴン」、

やたらパチパチと明るい光を発するピストルの形をした「サーチライト」、手に持つものでは先が金・銀紙で巻きつけられた明るい光とこぼれる火花を発する花火、針金の廻りにキリタンポのような火薬が付いてるもの。

「マグマ大使」のロケット噴射のような、アセチレンバーナーのような炎を吹き出す花火などがあり、テレビの特撮もこんな仕掛けを使っているのかなと思ったものだ。

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コメント

私も肝油大好きでした!あっと言う間に食べてしまい、1週間も持たなかったです(笑)。食べ過ぎるとバセドウ病になると脅されていましたが、一気食いしてしまい、病気になるんじゃないかとビクビクしていました。

投稿: マーちゃん | 2008年9月 3日 (水) 20時36分

マーちゃん。おはようございます。
そうですね。あの肝油は夏休み中、もたなかったですね。
たしかに食べ過ぎると体によくない予感はありました。
あのケースはいまだにネジなどの部品入れに使っています。

投稿: スタンリー | 2008年9月 4日 (木) 08時54分

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