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バッハのプレリュード

バッハ:平均律クラヴィーア曲集 Music バッハ:平均律クラヴィーア曲集

アーティスト:グールド(グレン)
販売元:ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
発売日:2004/11/17
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ピアノを弾かなくなって久しいが、時々酔っ払うと鍵盤の前に座って音を鳴らすことがある。

ピアノという楽器は音が既に準備してあって、大変便利な楽器であり、ネコでも音を出すことができる。

というわけで、一応、私でも音は出せる。

最初ハノンの練習曲の中にある、ハ長調の音階のユニゾンを弾く。この音階の鍵盤はすべて白鍵だけだが、実はこれが一番弾くのが難しい。これはショバンも発言していることである。

弾くのが優しい音階は、黒鍵が多く含まれるもので、フラットが五つの変ニ長調やシャープが五つのロ長調などが、もっとも弾きやすい。親指をくぐらせ易いからだ。

音階の練習だけでなく、ハノン先生の作ったこの指のハードトレーニングの曲集は実にすばらしいもので、三日練習をサボッていても、1時間も弾けば、指は元通りになり、再びピアノと仲良しになれる。 ただし、子供にとっては、このレッスンはチェルニーとともに拷問に近く、せっかく買ってやったピアノがタケモトピアノに引き取られてしまう原因となっている。

つっかえながら10分も音階をさらった後は、必ずバッハのプレリュードの一番を弾く。

この曲は後に作曲家のグノーが「アベ・マリア」として編曲し直し、すばらしい効果をあげている。あれはまさに音楽の実用新案と言ってもいい。

この曲を正確に言うと、「程よく調律された鍵盤楽器のための曲集」の第一部・プレリュード1番というところか。日本では平均律クラヴィア曲集と言われているが、これは誤訳である。1オクターブを平均に12で割っても3度と6度の和音はどの調性でもちっとも平均に響いていない。

このやさしいプレリュードは、あらゆるピアニストの演奏で何度聞いても、また、私のヘタクソな演奏で何度弾いても飽きない。

それがたいへんドラマチックで、映画音楽みたいに聞こえる。いや映画そのものというか、まるで黒澤映画のように明快な起承転結がある。

途中、不協和音になる部分、22小節から23小節は、ドラマの転換部分であり、そこから27,28小節に至っては劇的終局、クライマックスとなる。

また、いろいろな弾き方を楽しめる曲で、グールドのようにスラーとスタッカートを併用して弾いたり、そのドラマチックな部分はフォルテにして、ペダルを踏まずに音のピントをはっきりさせたりして、表現を拡大させることが出来る。

ペダルの使い方もようようで、まったく踏まずにバス音を強調させてもいいし、一拍目で踏んで3拍目で踏みなおす、あるいは第一拍目ごとに踏みなおすという、いろいろな方法がある。

ちなみに私は23小節はペダルを放して右手の「シ」と「ド」の不協和を濁らないように弾いている。この部分はテンポを遅くし、フォルテで弾けば、音のフォーカスがはっきりし、次ぎのシーンへ期待をもたせることが出来る。

この曲集はフーガとセットで48曲あり、第2部と合わせれば、なんと96曲もあるのだが、この一番最初のプレリュード一曲だけで、既に銀河系・小宇宙といってよく、キャパシティーは無限だ。

後年の作曲家の巨匠たちも、どれだけこの曲でインスピレーションを受けたかわからない。

ショパンのエチュードの作品10の1番、ハ長調はこの曲を参考にしているが、彼はバッハに敬意を表しているのを感じる。

そんな、おおげさに言えば、「2001年宇宙の旅」のモノリスのようなこの曲が、ちょっとピアノをカジリ始めたオトーサンでも弾けてしまうのだ。

もし神さまからピアノは1曲しか弾いてはいけないと宣言されたら、私は迷わずこの曲を選ぶだろう。

---- ユーチューブ、デビット・エドワード・スミスの演奏 ----

http://jp.youtube.com/watch?v=DAZ8KNsZSCg

 

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コメント

ユーチューブでなつかしく再聴させて頂きました。
この曲は、はるかはるか昔、学校の音楽の時間に、
聴いた憶えがあります。
音楽の素養の無い私には、詳しい事は全くわかりませんが、
静かで澄んだ感じが良い曲ですね~。
これくらいしかボキャの無い私をお許し下さい。^^sweat02
それにしても、スタンリーさんの洞察は近藤正臣が足の指で
ピアノを演奏するくらいスゴイ!

投稿: ぱんだうさぎ | 2008年6月20日 (金) 11時08分

ぱんださん。まいど。
グノーの「アベ・マリア」はすばらしいですね。
多分学校で聞かれたのはこの曲だと思います。
私もオリジナルを聞きながら、歌の部分をハミングしてしまいます。
いえいえ。ぱんださんもラフマニノフの曲をご存知なので、かなり精通しておられます。
私の義兄はBACHを「バッチェ」と言ったことがあります。sweat01
足で弾くのはトムさんもやっていましたね。
近藤さんはモーツァルトのソナタを弾いておられました。
私は山下洋輔みたいに拳骨で引くこともあります。good

投稿: スタンリー | 2008年6月20日 (金) 11時58分

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