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十三人の刺客

十三人の刺客
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工藤栄一監督のこの映画をNHKBSの録画にて拝見したが、なぜかシネマスコープサイズがトリミングされ、両サイドがチョンギレていた。

といって、4対3というものでもなく、ビスタサイズに近いカットである。

私は時間的にもサイズ的にもチョンギレた映画は評価しがたく、この映画の感想については保留ということにしたい。たぶんDVDでは正規のサイズだと思う。

この映画は、間違いなく、チャンバラ映画のベスト3の中に入る作品である。

ところで、日本映画のチャンバラについては3つの世代に分けることができるのではないか。

それは「七人の侍」以前。

「七人の侍」以後。

「用心棒」以後

である。

つまり、黒澤が起こした流れである。

黒澤は映画のチャバラシーンにおいて、歌舞伎の様式美から受け継がれた殺陣に疑問を持っていて、刃物を振り回して戦うということを、リアリズムで表現することに、いち早く取り入れた監督である。

「七人の侍」を見ると、刃物を振り回す動きは、即興に近く、実際の合戦でもあのようなものではなかったか。

ただし、「七人」以後も、時代劇の殺陣は、なんとか流をかざす、舞台の芝居のようなカッカイイものが続けられていて、市川雷蔵の映画などがそうであるが、それはそれ、これはこれということであろう。

江戸時代というのは、天下泰平で、武士が刀を抜くというのは、現代の日本のオマワリさんが定年になるまで、事件で拳銃を抜くかどうかに等しい一大事ではなかったろうか。

それを映画にしたのが、黒澤脚本、森一生監督の「決闘鍵屋の辻」で、刀で人を切ることが、どれほど人間を、とまどいと恐怖に見舞わせるか、よく表現している。 武士(加藤大介)といえども、有事では足が震えて動かず、刀を構えた姿はへっぴり腰である。

雷蔵のように刀をぐるぐる廻しているような、悠長なことではない。

さて、「用心棒」の映画では、人を切るときの「バサッ」という効果音が入れられた。日本映画初のことである。(「七人の侍」の完全版には人を切る音が入っているが、最近になってダビングされたものである)

また、血糊が吹き出たり、体の一部がチョンギレルのも、「用心棒」が初であった。

以後の映画では、すべてこれらの手法をとりいれている。

人を切る音は、実際ではしないであろうが、血が吹き出るのは、医学的にまんざらウソでもないだろう。 ただ動脈が切れた場合だと思うが、オーバーな表現ではあるとしても、ビジュアル的に効果がある。

しかし、斬られて、刀の当たった着物も裂けていないのに、倒れるのは不自然で、「血槍富士」などの殺陣は、全くそのとおりで、変に感じた。 これは日本の時代劇を見た外国人の声でも、良く聞かれることでもある。

「十三人の刺客」は1963年の映画であり、当然、「用心棒」や「椿三十郎」を横目で覗いていて、人を切る音が入っていたが、斬って血糊は出ず、多少もの足りなかった。 殺陣(というより斬り合い)は一対多人数であり、「七人の侍」に近い、大混乱の中の格闘で、即興的なものであった。

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コメント

江戸時代の武士が刀を抜くのは、警官が発砲するより珍しかったでしょうねぇ。わかりやすい喩えです!刀で切られて人は死ぬのかしら?という疑問も持っています。たしかに、着物が裂けないのも不思議ですね。刀で切られたときの音もそうですが、人が殴られたときの音も?です。用心棒では、ピューって血糊が吹き出ていましたねー。

投稿: マーちゃん | 2007年11月17日 (土) 22時10分

マーちゃん。おはようございます。
日本刀は案外強く、一刀断ちで、首が飛んじゃいますね。
恐ろしいー。
血糊ドバーの日本初は「用心棒」で、清兵衛の子分でしたね。加藤大介に切れたときです。あれは清水元という俳優です。
私もマニアックですね。

投稿: スタンリー | 2007年11月18日 (日) 06時26分

確かに、「用心棒」はいまのチャンバラに大きな影響を
与えていましたね~。
そういえば、ちょん切れで思い出すのは、中村錦之助の
宮本武蔵の般若坂だったか一乗寺だったか?の決闘を
あまりの迫力に身震いして観たのを思い出します。
昔のチャンバラはすごかったですね~。

投稿: ぱんだうさぎ | 2007年11月18日 (日) 19時05分

ぱんだうさぎさん。こんばんは
おおー、内田監督の「宮本武蔵」。
数年前の武蔵ブームのころBSで放映されましたが、
録画しておくべきでした。私の町のレンタル店には
ソフトがありません。
でも、記憶にあります。田圃の中の泥だらけの決闘は鮮烈な記憶として残っています。
錦之助の武蔵と浪速千栄子のお婆は適役ですね。
だけと、お通さんは稲垣監督の八千草薫が一番です。笑

投稿: スタンリー | 2007年11月18日 (日) 20時54分

まあー私も左右が切れていると腹が立ちますね。西部劇で大物スター二人がワイドで向き合い対峙するシーンがあるんですがDVDでは別々に。ディスプレイが何であれオリジナルの画面でやるべきです。上下が黒くなっても良いのに。過日、テレビ東京で「大いなる西部」をやっていました。ハッピー・エンドで最後にグレゴリー・ペックとジーン・シモンズが新しい地に向けて出発するシーンだけが砂漠越しに遥かかなたの山々を見せつつ「突如として」ワイドになる・・。そんなアホな!。そこだけが「大いなる」ではないのに。
もう一つ時代劇への疑問。一人対複数の切り合いで「せーの!」で一人に切り込めば勝てると思うのですがどう言う訳か順番を待っているのって多いと思いませんか?。人を切った経験のない者同士の一人対複数は確率から言っても複数に歩があるのでは。誰かが腕を狙い、別の誰かが足を狙う・・。確か「蝉しぐれ」も多勢組が勝てない?。

投稿: ロンリー・マン | 2008年2月 2日 (土) 19時17分

ロンリー・マンさん。こんばんは。
上下黒くてもいいんですよね。
なぜテレビの画面に合わすのか疑問です。
殺陣のシーンでは仰るとおり、大勢で切りつければいいんですが。何か武士道のルールでもあるのでしょうか。
だったらヤクザ同士は関係ないし・・・映画のウソですね。

投稿: スタンリー | 2008年2月 2日 (土) 23時07分

スタンリーさん こんばんは。

子供の頃、生家に本物の刀があり内緒で持った経験があるんです。驚くほどえらく重いのです。あの重さでチャンチャンバラバラで振り回せるのでしょうか、当時の侍に聞いてみたいです。
先程の「蝉しぐれ」で思い出しましたが唯一感心したのは主人公は剣術優れていても人を切った事はない。追い詰められる直前に屋敷内の刀を集める。戦い、刄が柔くなる度に刀を取り替える。ぼろぼろになるから、あれには現実的で信憑性があり納得しました。

投稿: ロンリー・マン | 2008年2月 3日 (日) 00時34分

ロンリー・マンさん。こんにちは
真剣を使った竹割りでも、重そうに振り回していますね。
チャンバラはマキノさんのサイレントのころからウソが多いと思います。
刀は一回斬っただけでも刃こぼれがあるかもしれませんね。
「蝉しぐれ」とおなじようなことは「七人」の菊千代もやっていますね。一本の刀では5人と切れないとか言っていたようです。

投稿: スタンリー | 2008年2月 3日 (日) 10時47分

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