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ブレない映像

サウンド・オブ・ミュージック (ベストヒット・セレクション) DVD サウンド・オブ・ミュージック (ベストヒット・セレクション)

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2007/10/24
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「かぐや」のハイビジョンで撮影された月の俯瞰移動映像は実に気持ちのいいものであった。クレーターの影や溝、飛び散った隕石のかけらの跡など、順々に滑らかに現れ、一昔前のSFXで使用されていたモーションコントロールカメラの映像のようである。

私は、ああいう滑らかな、ブレない移動撮影が大好きである。

逆に嫌いな映像は、なによりもガタガタと揺れている映像だ。つまり手持ちカメラの映像である。

この手法を使った映画では、東映のヤクザ映画があり、映画界では「貧乏ユスリ」と呼ばれているが、私は生理的にヤクザも手持ちカメラ映像も苦手である。

落ち着かないのである。不安定な心理となってしまう。

それは、臨場感を増す撮影テクニックの手法の一つでもあるのだが、私には何かゴマカシの低予算映画に見えてしまう。

しかし、東映の場合はちょっと別な理由があったようで、要するに撮影時間を短縮するのが第一の目的であったらしい。撮影現場で、三脚や移動レールなどの設置が不要になるからだ。 もちろん、それは経費削減にも貢献するであろうが。

また、ときには無許可のゲリラ撮影もあり、オマワリさんが来る気配のときは、スタコラ退散できるというメリットがある。

その「貧乏ユスリ」も最近ではあまり使われなくなった。

ステディカムがあるからである。

こいつはカメラマン一人が歩きながら撮影するにもかかわらず、撮影された画像がまったくブレない、カドの取れた滑らかな映像とすることができる。

カメラは人の腰と腹に巻きつけられたギプスから、自由に動くスイングアームのようなサスペンションによって支えられていて、カメラマンの歩く振動を殺してしまう仕掛けになっている。 カメラはあたかも宙に浮いている状態になるのだ。

このカメラが初めて使われた映画はキューブリックの「シャイニング」であると聞いている。

子供を雪の迷路で追いかけるシーンがそうである。

観客は走って追いかけているというよりも、宙に浮いて飛んでいる浮遊感を味わうことができる。 つまり、ジャック・ニコルソンは人というよりも、フワフワ飛んで子供を追いかけているオバケというわけだ。

このステデイカムは、この映画以後、あらゆる映画で使われることとなった。

また、映画のみならず、イベントでもビデオカメラに取り付けられ、特にオリンピック会場でステディカムの映像を頻繁に観ることができる。

このカメラシステムはカメラマンの腰を痛めやすいということだが、ビデオカメラなら小型化が進んでおり、負担も少ないようで、最近のNHKの海外レポートにはよく使われている。

ステディカムのおかげで、ガタガタ映像を観ることもなくなり、私は実に気分がいい。 飛行機好きでもあるから、あの映像はコクピットから見た空中景色のようで、これまたうれしいのだ。

これとは別に、ヘリから撮影された空中映像も、昔のようにブレなくなった。

ジャイロカムが使われているからだ。形は目玉のオヤジみたいなカメラである。

これは飛行機の計器の水平儀と同じシカケがついているが、要するにヘリの傾き、振動を吸収してくれるメカである。テレビのニュース映像でもお馴染みである。

このジャイロカムシステムも「シャイニング」のオープニングのシーンで、初めて使われたのではないだろうか。空撮映像はブレていなかったと記憶している。

走る車を上空から追いかけていくという撮影は「シャイニング」以来沢山見かける。

余談だが、この「シャイニング」の空撮シーンで使われなかったフィルムは「ブレードランナー」の公開版ラストシーンに使用された。

最近はラジコンヘリにもジャイロカムが搭載され、映画でも、トンネルの中を抜けて飛行撮影されたものがあり、観客を「あっと」といわせてくれた。

もし、このラジコンヘリのジャイロカムがあれば、「サウンドオブミュージック」のオープニングは、カットなしで、空から寄って、そのままジュリー・アンドリュースのアップまで滑らかに接近して撮れるのである。

このカメラは、もしヒッチコックやキューブリックが生きていたら、さっそく喜んで使ったものと思う。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

私もブレない映像が好きです。手持ちカメラの映像は目がチカチカしますもの。『シャイニング』は、いろいろな部分で画期的な映画なのですね。DVDで雪のシーンをチェックしました。浮遊感を味わうことができます!幻想的でもありますね。それにしても、ニコルソン様が恐いよ~。

投稿: マーちゃん | 2007年11月13日 (火) 16時45分

マーちゃん。こんばんは。
ニコルソンは迫力ありましたね。
原作のキングは、この映画に不満だったようですが、
私はあのクールな映像が好きです。
殿方としては、幽霊でも、あのバーテンダーの入れた
スコッチで1杯やりたいですね。
あのバーの照明と撮影がすばらしかったです。

投稿: スタンリー | 2007年11月13日 (火) 19時41分

私もキングの原作より、映画の方が断然好きな派です。
しかし、「ブレード・ランナー」の空撮が、「シャイニング」の
だったとは知りませんでした。こだわり派のリドリー・スコットが
借り物で済ますとは、よっぽど予算が無かったのか、
時間がなかったんですかね。笑
シャイニングの冒頭の空撮で、撮影隊のヘリコプターの
影がくっきり映ってて笑いましたが、普通の監督だと
ウッカリミスですが、キューブリックだとこれも計算か?と
勘ぐってしまいますね。

投稿: ぱんだうさぎ | 2007年11月14日 (水) 20時10分

ぱんだうさぎさん。こんばんは
またまたー。キューブリックのミスを発見しましたか。
flowing stones 流石。
撮影カメラやクレーンの影、プームマイクの影も
よく他の映画で見えてますよね。(笑)
ブレランのディレクターズカット版では、ラストの空撮シーンは無いので、スコット監督も不本意の公開版だったと思います。

投稿: スタンリー | 2007年11月14日 (水) 22時19分

さすがです。参考になり勉強しました。脱帽します。何しろ昭和44年以降まともに観ていない浦島太郎なんで。

投稿: ロンリー・マン | 2008年1月21日 (月) 04時15分

ロンリー・マンさん。ありがとうございます。
貴方は団塊の世代にあたる方でしょうか。
これからドンドン映画を観れますね。うらやましいです。
私は日本映画黄金期の昭和20年代に学生時代をすごしたかったです。

投稿: スタンリー | 2008年1月21日 (月) 11時15分

団塊の世代って何歳から何歳まででしたっけ?。私、今年62の老人暴走族で何でもこだわり・凝り性人間。PCだけは、はまるのが怖いからやるまいと思いきや、はまってしまい今はうまい具合に不調で助かっています。ですからこれは携帯でやっていますが遅いの何のでまいります。

投稿: ロンリー・マン | 2008年1月21日 (月) 14時39分

スタンリーさんの趣旨からやや脱線しますが「ブレない映像」でコメントします。ここ数年デジカメやムービーにおいて「手ブレ補正」なるものが多いですね。それがないと時代遅れがごとく。ひとつには「ディスプレイを見ながら腕を真っ直ぐにして」撮る訳ですから本体は体から遠く離れ、極論すれば距離が長くなるほどブレ易くなるのは自明の理です。昔のカメラは値段に関係なく「ファインダーを覗いて撮る」のが基本です。顔にぴったり密着し両肘を両脇に締めれば望遠の200ミリ位までなら手ブレなんて余りありませんでした(但し息をこらして・・笑)。
デジタルになりディスプレイには様々なアイコンを表示しなければならないし、薄さ競争でファインダーを装備するスペースがなかったりコストの問題でファインダーは割愛されている・・。そんな訳で平成の初めに「目のつけどころが・・」の会社が弁当箱の大きさのムーヒーを発売し、その手を伸ばして撮る異様なスタイルを見てびっくりしました。
結論! 人生もカメラも脇が甘いといけません!(笑) (本当はゴルフも脇が甘いと上達しませんね)
追伸
某サイトに、あるメーカーの名機のフルスペック・ハイビジョンのムービーがあり「確かに綺麗だけどブレがひどい」の投稿多数。どうやら補正が余り効いていないのでしょう。けれど言わせてもらいたいのですが「こんなマニッアック」な名機を素人に使ってもらいたくないのです。ろくにパンの基本も知らないくせに。免許取り立てにポルシェがどうだこうだ言ってもらいたくないのと同じで。カメラも車もヘタクソなくせに、この頃能書き多いと思いませんか?。メカの進歩に人のセンスが伴わない?。

投稿: ロンリー・マン | 2008年1月24日 (木) 12時26分

ロンリー・マンさん。こんばんは。
ファインダーを覗くのが、やっぱり基本だと私も思います。
ブレない為に、アマ用のステディカムもありますが、まだまだ高価ですね。ただし、それを使ってもやっぱりディスプレイを見ることになります。
ヘルメットみたいに、頭にとりつけて、ブレずにファインダーを覗けるモノがあればいいのですが、だけか作ってくれませんかね。
「ステディヘッドカム」という名前で。

投稿: スタンリー | 2008年1月24日 (木) 19時39分

ステディカムの情報をあさっていてたどり着きました。ガタつき映像も効果をねらったものなら良いとおもうのですけど、東映ヤクザのころのは違う理由からだったようですね。

ところで、ステディカムの映画への利用は76年の「ロッキー」がその嚆矢とされるみたいですよ。製作予算が削減をねらって導入したそうです。

投稿: ケロタリ | 2008年6月 7日 (土) 21時23分

ケロタリさん。ようこそ。
そうですか。76年「ロッキー」が最初ですか。
たぶんレンタルだと思いますが、料金は予算削減に貢献したのですね。
家庭用のものもあるみたいですが、まだまだ高額のようですね。

投稿: スタンリー | 2008年6月 7日 (土) 23時15分

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