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2007年11月

ベーゼンドルファー

オーストリアのピアノメーカーであるベーゼンドルファーがヤマハに買収されるという。

1828年創業の老舗であり、完全に一台ずつ手作りの楽器であるから、大量生産で、流れ作業で作るピアノメーカーの傘下になるのは、さぞこの楽器のファンも楽器職人もショックであろう。

ただ、ヤマハ楽器も「ベーゼンドルファー アンド ヤマハ」などとピアノの鍵盤の上に名前のプレートを貼り付けるような愚直なことはしないと思う。

私は特にこのメーカーのピアノに思い入れはない。 台数が少ないこともあり、レコード録音もそれほど多くなく、ホールにも、必ずしも完璧なピアノがあるわけではないからだ。生演奏も一度だけ聴いただけである。

だから、この楽器の音については、スタインウェイやヤマハのように、聴きなれていないので、なんとも言えない。 よく「いぶし銀」の音と言われるが。

その、一度だけ聴いたのは、インペリアルという型番のもので、通常のピアノの鍵盤数88鍵より低音部分が9鍵多いタイプのものである。その増えた鍵盤の部分は弾き間違えないよう、白鍵の部分も黒くしてある。

低音弦ほど長くなるので、このピアノは20センチほど、他のコンサートグランドより奥行きが長く、見た印象は、はるかに大きく感じて、まるで小型トラックといってもいい。

増えた低音部分の利用効果は、ピアニストの裁量で行われるといってもよい。

グリークの有名なコンチェルトの最初、出だしのカデンツァで、最低音からアルペジォとなるところは、最低音に、通常のピアノには無い、オクターブ下の同音を同時に鳴らして、ど迫力の音を出すことが出来る。

私が生演奏で聴いたのは、野島稔氏の所有による、同氏のチャイコフスキーの一番だったが、音響効果の悪いホールで、おまけに最後部の席だったので、残念ながらこのピアノの音を味合うことも、重低音を利用したかも分からなかった。

一度でいいから、このピアノのそばにいって、しげしげとながめ、できれば重低音部の鍵盤を叩いてみたいものだ。

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陸軍残虐物語

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販売元:東映ビデオ
発売日:2005/12/09
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邦画メモ NO,12

1963年、東映、シネスコ、モノクロ、100分、画質・音良。

監督- 佐藤純弥、 撮影- 中沢半次郎、 音楽- 佐藤勝

出演- 三国連太郎、中村加津雄、西村晃、江原真二郎、加藤嘉、

沢村貞子、中山昭二、南道郎、岩崎加根子

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佐藤監督初作品。

軍隊内務班の不条理を描く。 おきまりのリンチ、制裁。

班長は西村晃、熱演。 あんなにセリフの多い演技を見るのは初めて。黄門様と違って悪いやつ。

内務班の意地悪上等兵に南道郎がいる。いじめ上官は定ポジション。声に凄みがある。ほんとうに元漫才師で、参議院議員までやったのだろうか。 今月に亡くなられていた。合掌。

三国がドジでノロマの新兵。 図体がでかいので、余計に滑稽。

江原が大卒エリート新兵。 要領よく班長に接近。軍隊映画のよくあるパターン。

中村加津雄が若い。萬屋にソックリ。熱演。

加藤嘉と沢村貞子が三国の親で好演。 ベテランはうまい。

三国の妻役で岩崎という女優さん。知らないがうまい人。

その妻が、班長と面会の後、密通。 理由わからず説明不足。

紛失した銃の部品探しのため、三国と中村が便所肥桶に入る。食べて観ている人には耐えがたきシーン。 東映のセットは貧弱だと言われるが、あのセットを作った美術部に脱帽。ただしカラーではないので、まだ楽だったかもしれない。 

江原、自分のひとさし指を切断する。故意に兵役が不能になるよう、自分の体に細工した場合の法律違反を西村が説明。

三国、自殺する。死んでいるのに、首に刺さった剣が動脈の振動でピクピク動いている。

中村、脱走の後、逮捕される。 軍法会議・懲役とならず、そのまま外地に出征。

内地で懲役するより、戦場のほうがもっと残酷であるというメッセージか。

追記:

夜中寝ているときに、ふと気がついたが、佐藤勝の音楽が、映画の内容をとはかけ離れ、たいへん暖かい、慈愛に満ちたテーマであることだ。丁度、ラジオ体操第一のモチーフに似ている。

あれはどういうことであろうか。

思えば、カメラアングルに、上から撮影した俯瞰の画面が結構あったようで、あれはつまり神さまの目ではないだろうか。

あの優しい音楽とともに、三国を見守っているのかもしれない。

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新幹線大爆破

新幹線大爆破 海外版 DVD 新幹線大爆破 海外版

販売元:東映ビデオ
発売日:2005/12/09
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私はオリジナル版を観た。

1975年公開の映画であるが、当時の景色がなつかしかった。ケンメリのスカイラインなどが走っている。

また東映映画であり、千葉真一や丹波哲郎などが出演し、その演出が「キイハンター」に似ていると感じたが、監督の佐藤純弥は実際にこの番組の演出をしていた。

乗客がパニックになるシーンは、相変わらず東映カラーの大げさな演出で、日本人が馬鹿に見える。 

名古屋駅を高速で通過している最中に、「降りる」と泣き叫んで大騒ぎする、覚せい剤患者のようなアホな人間がいるだろうか。

日本人は冷静な民族である。もう少し黒澤的リアリズムで人間を演出してほしい。

とはいえ、映画としてはよくできている。けっこう手に汗をにぎって終わりまで、時間を忘れて観た。

撮影にあたって、国鉄は完全に協力を拒否している。

なんでも、「新幹線危機一発」という題なら協力してもよい、ということだったらしい。 

ということで、撮影には作り物の車両を使い、窓外の景色もスクリーンプロセス(人物のエッジに影らしきものが写っているのでフロントプロジェクションかもしれない)が使われている。 その景色もゲリラ撮影のようで、安定していない。

宇津井健のいる、コントロールセンターはよくできているが、カメラのアップでは造りがお粗末である。

国鉄が協力したとしても、不可能なシーンはミニチュア特撮が使用されている。

その特撮に、日本で初めてシュノーケルカメラが使用された。当時、世界で3台しかなかったという。たぶん、レンタルであろう。

このカメラを使用する理由は、小さいミニチュアセットで、通常のカメラが入れない狭い場所の移動撮影ができる為である。

この映画では、運転席からの前方映像を得るミニチュア撮影で、新幹線の架線が邪魔となるため使用された。 通常のカメラを使用すると、かなり大きなセットを作らなければならないからだ。

下のレールと上の架線の間にシュノーケルカメラを突っ込んで、新幹線の運転席からのシーンを撮影した。

ただし、これはカメラのアーム部分の届く範囲か、架線の電柱の間しか移動できず、僅かなカットである。

(これは私の映像を見た上での推測であり、実際の撮影の様子は知らない)

もし、国鉄が協力していれば、コクピットの固定カメラで撮影でき、実写映像が得られた訳で、スタッフも苦労させられたものである。

このシーンは、オープンのミニチュアセットで撮影されていて、実写に近い効果をあげている。

また、ポイント切り替えで、車両が交差するシーンでも、通常のカメラが入りきれないところまでアップ、ローアングルの撮影がされ、このカメラをうまく使っていた。ミニチュアと分かるシーンであるが、その出来は良い。

新幹線が爆発する想像シーンのミニチュア撮影は、円谷のものと同等か、それ以下のレベルである。

また、新幹線のミニチュアは、客車の内部の作りこみや、乗客の描写が省略され、窓をスリガラス状で内部を見えなくし、ゴマカシとなっている。

であるから、夜間の走行シーンでも、内部にランプを点灯し、ただ窓のスリガラスから照らすという、「行燈方式」だ。

これは、東宝特撮のミニチュアビル群と同じで、私にはサボリに見えてならない。

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独立愚連隊

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販売元:東宝
発売日:2006/01/27
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邦画メモ NO,11

1959年公開、東宝、シネスコ、白黒、画質良・音声良

脚本- 岡本喜八、制作- 田中友幸、 監督- 岡本喜八

撮影- 逢沢譲、 音楽- 佐藤勝

出演- 佐藤允、雪村いづみ、中丸忠雄、中谷一郎、三船敏郎、

南道郎、鶴田浩二、上原美佐

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岡本、初監督作品。 映画化を熱望していたもの。

昭和40年代の作品と思うほどモダンな映画。早く出すぎた傑作。

昭和34年といえば、まだ若い軍隊経験者が沢山いた。当時は戦争映画というと、告発もの、反戦もの、厭戦もの、が主流であったが、そんなものおかまいなしで、豪快なストーリー。

最初、どこに向かっていくのか分からない映画だが、しだいに面白くなっていく。

よく西部劇にたとえられる。 馬に飛び乗る。

その中で、軍隊の現状をチクリと刺している。決して好戦映画ではない。

佐藤允はこの映画から、いつも笑い飛ばして、不死身のキャラクターを演ずるようになったのではないか。 愛人の雪村いづみが死んでも、涙ひとつ見せず、いたってドライ。

佐藤と中谷の会話はまるで漫才。 中谷はナゾの人物を好演。

三船敏郎の頭のイカレタ隊長も傑作。 血管が切れそうな演技。

三船敏郎は終戦の詔勅を訊いたとき「ザマーミヤガレ」と軍隊に向かって吐き捨てたそうだが、そんな感じの映画で、岡本と三船は意気が合うのだろう。 以後、よくお呼びがかかる。

中丸忠雄はいつも、一癖ある悪人を演ずる。「電送人間」の原型がある。

中国娘の上原美佐が、なぜか流暢な日本語を話す。この女優さん、「隠し砦の三悪人」のオーディションで映画界入りしたが、声が細く、役者に向いていないと思う。その後結婚して引退。

南道郎、悪い軍人をやったら右に出るものなし。

ミツキー・カーチスがチョイ役で出演。若い青二才兵士。

ゴキブリの大群のように湧いて出てくる大量の中国軍兵士の描写。圧巻。

いつものように、日本映画の銃火器の発砲の描写に迫力がない。

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日本誕生

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販売元:東宝
発売日:2007/02/23
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特撮メモ NO,10

1959年公開、東宝、シネスコ、カラー、約180分 、日本映画技術賞

制作- 藤本真澄、田中友幸  、監督- 稲垣浩

撮影- 山田一夫、 特技監督- 円谷英二、 音楽- 伊福部昭

出演- 三船敏郎、杉村春子、中村雁二郎、原節子、他東宝オールスター

東宝映画制作1000本記念で制作された。

円谷特撮で未見のものであった。大作で楽しみにしていたが、映画の出来は良くない。あくびが何度も出た。

伊福部の音楽も特に目立たない。

ドライアイスの煙の多用は、一種のゴマカシに見えてしまう。

稲垣監督の失敗作といってもよい。監督もやりたくてやったものでないだろう。

各俳優の芝居もなんだか素人の舞台劇のようで、古代の人物を演出する監督も、演技する俳優も戸惑っているように見える。

三船も例のドロドロした低い音程の声で吼えてばかりで、空廻りしている。

古代のコスチュームでは、三船の出始めた腹が目立ってしまった。

話が右、左に振り回され、どこに焦点を向ければよいか分からず。

ただ、俳優さんの意外な一面、かくし芸が見られた。

特に乙羽信子の、ブス顔メークの踊りは傑作であった。宝塚出身であることが確認できる。 原節子の厚化粧による天照の神、(草笛光子にソックリ)も意外なキャスティング。 左ト全はハレンチ学園の格好といってよい。

円谷の特撮はかなり力を入れている。合成でも以前より進化している。兵器や飛行機などでなく、すべて自然現象であることが、功を奏している。

      ◎特に良い特撮、合成

・冒頭、日本列島誕生の、ドロが渦を巻いているシーンは、ウルトラQのタイトルの原型といってよい。 なにかグリスのようなものをスクリューで回している。

◎ 三船がヤマタノオロチを退治するシーンは、ワイヤーワークとはいえ、八つの首を動かし、壷の酒を飲ます演技は、キングギドラの操演よりしっかりしており、ケチがつけられない佳作である。 ただし、ワイヤーは見える。

ハリーハウゼンはこの手をコマドリで行うが、私はどちらも甲乙つけがたい特撮だと思う。

◎ 手漕ぎ船のミニチュア撮影は円谷の特撮でも、最も成功したものである。モーター仕掛けで漕ぐ人形を動かしているが、櫂をもどす時は動きが遅く、凝った演出である。

かなりの時間を、この撮影にさいていると思われる。カット数が多い。

ハイスピート撮影による、海の波、風の演出は世界的レベルで標準的。 とくに感心するものでもない。 

・荒れた海を、女が飛び込んで鎮めるシーンは波の動きが演技をしていて、大変良い。

・湖の反乱、鉄砲水が襲うシーンはミニチュア撮影は普通の水準だが、逃げ惑う人との合成は当時の水準を考えると良くできている。 「ラドン」の合成より良い。 

合成は、初めてバーサタイル・プロセスを使用とのこと。シネスコ用合成マシン。

◎ 一部、走る猪を横移動で撮影しているのは、メカ駆動の人形で、実写に近い映像。「フランケンシュタイン対バラゴン」でも応用されている。

◎ 三船と司葉子が、原っぱで火炎に包まれる合成シーンは、今のレベルでも通用する。

・火山の噴火は「ラドン」からの技術。溶けた鉄を溶岩にみたて流す。 「ラドン」より良い。ただし、ミニチュア感が否めない。 もうすこしハイスピード撮影にしたほうが良い。

溶岩流の実写映像を見慣れた現代人には、この溶岩はサラサラしすぎ。しかし、セットに水分があれば、爆発する恐れのある危険な撮影で、スタッフの苦労がしのばれる。

撮影監督はラッシュを観て、この溶岩の色に不満だったのではないだろうか。もうすこし赤く写っていればよい。

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世界大戦争

特撮メモ NO,9   

1961年公開、 東宝、シネスコ、カラー、ステレオ録音、芸術祭参加作品

制作- 藤本真澄、田中友幸、ジェネラルプロデューサー森岩雄

脚本- 八住利雄、木村武  監督- 松林宗恵 

特技監督- 円谷英二、 特技撮影- 有川貞昌

撮影- 西垣六郎    音楽- 團伊玖磨

出演- フランキー堺、乙羽信子、星由里子、宝田明、笠智衆、白川由美

東宝のボス、森氏最後の作品で、思い入れの込められたもの。

映画の出だし。真っ暗闇で音楽のみ流れる。「2001」と同じ。

團の音楽、出来が良いが木琴の使用は避けるべき。チンケな音である。

  ◎は最良の特撮、 ★は特に良くない特撮

◎ソ連のバジャーのような爆撃機の下からの撮影はすばらしい。野外での撮影で空は本モノ。 横方向にワイヤーが見え、旋回しているのでUコンのような手法かもしれない。

潜水艦の移動は速すぎる。 巨大感・重量感がない。水中が明るすぎる。

プロペラ輸送機の着陸からタキシングは翼がカタカタ動き、重量感がない。カメラの回転が遅い。

輸送機からのミサイルの搬出。カメラの速度が遅い。ミサイルの重量感がない。サスペンション的動きが無い。 サンダバード2号コンテナから出る動力メカの動きが欲しい。

◎夜のミサイル基地の描写がすばらしい。まさに実写映像そのもの。

ところが、照明が当たった昼の描写では、スタジオ然としている。空気感が乏しい。

地下からのミサイルの上昇はギアードモーターの動きでスムーズ。 ああいうものはケチッテ手で動かすものではない。

ミサイル基地内の計器類は、比較的手間がかかっているが、相変わらずノブ、スイッチ類にファンクションの文字が印刷されていない。カメラのアップの部分だけでもいいから、それなりの印刷をすべきである。

ミサイルの発射スイッチが理科の実験で使うようなボタンで、美術、大道具の神経を疑う。

大陸で戦車が動いているが、円谷の苦手なシーン。カタカタ動いて情けない。小型ミサイルの爆発パイロは良い。

機械の故障で核ミサイルの秒読みが始まるが、そんなことがあってたまるかるか。何の故障か分からず、説明不足のシーン。 外国人アマチュア俳優の幼稚な演技とともに、白けるところである。

戦闘機の飛行シーンは、一部、噴射口から煙を吐いている戦闘機がスタジオ然としている。

なだれのシーンは普通。

核の破裂は炎の点火・燃焼を真上から撮影し、合成したもの。ユニークであるが、核爆発という効果は感じられない。

★各国の首都の破裂シーンはミニチュアをウェハースなどで造り、爆発させたもの。これもユニークな手法だが、撮影が良くない。スモークを全く焚かず、完全にミニチュア感があり、スタジオ然としている。 私は失敗と認める。

核爆発の炎が都市に襲うシーンは上下逆さで撮影。特筆すべきことでもないが、おそらく、円谷が世界で初めて行ったテクニックであろう。

キノコ雲を水中の塗料で作ったのも、円谷が最初ではないか。それなりの効果はある。

東京の町並み、国会議事堂のミニチュアなどを溶鉱炉の溶けた廃鉄にさらし、撮影。

これもユニークだが、核爆発は、建築物が溶けるようなエネルギーは無く、誇張しすぎる演出である。 だが、視覚的に効果があり、ショッキングで、成功している場面である。

◎水中の潜水艦からICBMが発射され、海面に飛び出すシーンはこの映画で最も成功した特撮。カメラの回転、照明、潜水艦の水中の様子、ミサイルの飛び出し、すばらしい。 

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世界大戦争

世界大戦争 DVD 世界大戦争

販売元:東宝ビデオ
発売日:2004/12/23
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「渚にて」の次ぐ、核戦争終末物映画である。

話は平凡な一家を中心に進められ、貧乏人の私としては親しみやすい。これが、小津の映画のように、企業の重役椅子に座っている主人公中心では、チト見づらい。

フランキー堺の娘として、星由里子が出演しているが、当時17歳ということで、驚いた。大変大人びていて、演技も堂々としている。今の同年のタレントにあれができるだろうか。

フランキーの家の間取りは玄関を開けると4畳半の茶の間で、横に台所。この台所は洗面もかねる。

茶の間の奥は6畳くらいの仏間と縁側、庭がある。木の階段を登ると4畳半の和室である。二階には物干しがある。

これが懐かしい。 昭和30年代半ばの話だが、私の幼児のころの家のまんまである。あのころは友達の家でもこんなふうだった。

茶の間には14インチの真空管テレビが、4本の足を生やし、カバーをかけられて偉そうに構えている。 カラータンスがある。

2階の和室は間借りさせていて、宝田明が下宿している。そして星由里子といい仲なのだ。

宝田は船の通信士をしていて、この下宿でも、アマ無線をしている。

この無線室のセットがよくできている。私の小学生のころ、友人の兄はハムであったが、昔の無線機は自分で組み立てたものであり、この映画のセットそのものであった。おそらく、スタッフか、その知人にハムがいて、そっくり無線機群を借りてセッティングしたのではないだろうか。

映画では星由里子も無線の免許を取得し、ラストシーンへのつながりとなる。

余談であるが、アマ無線は、あの当時から、簡単な試験の無線電話の資格があるにもかかわらず、星はいきなり難しいモールスの免許(当時、電信級といった)を受けており、しかも和文モールスまでマスターしているので、アマチュア無線家には意外なことである。

さて、この映画は、そのフランキーの一家と、父親のいない母子家庭一家の離別、無線通信士の船上での話し、という形で物語が進行し、一方、ミサイル基地での緊迫、日本政府のむなしい対応が進む。

これだけの話を一本の映画に盛り込むのは大変なことであり、脚本のすばらしさとともに、松林監督の手並みの良さが良く分かる作品である。

しかし、核戦争ものは、あまたあるが、あくまでも市井の家族をメインストーリーとし、核による世界戦争のむなしさを訴えたのは、この映画が最初ではないだろうか。

松林監督は僧籍でもあるが、映画には宗教の壁を超えたシーンがあり、これは私の考え方と同じで、考え深いものがあった。

なにげなくて衝撃のシーンがある。

子供たちが、学校から早退して家に帰ってきて言う。

「戦争がはじまったから、先生が家に帰りなさいって」。

フランキー夫婦は知らず、うろたえて、ラジオのスイッチをいれ、核戦争勃発のニュースを知るのだ。  

これは、本当に現在でもありうるシチュエーションであり、古い映画とはいえ、想像すると自分でも、うろたえ、茫然としてしまう。

フランキー一家による、最後の晩餐は泣けてくる。

ちゃぶだいの上には、いなりずし、海苔巻きずし、小さなオムレツがある。当時ではささやかな一般家庭のご馳走だ。そしてなんとメロンが用意してある。メロンなどというものは、当時入院しなければ食えなかったシロモノである。

「今日はごちそうだね」と、事が良く分かっていない子供たちは喜ぶが、これが最後の食事なのだ。

その子供たちも、しだいに状況が分かってきて、あきらめた顔つきとなる。しかし決して泣き叫んだりしない。

フランキーによる物干しでの慟哭シーンは、彼の一世一代の名シーンに数えられる。 何度見ても涙なしには見られない。

このシーンはフランキーの要望により、撮影は一番最後に行われた。

こぼれ話: 

「世界大戦争」と同時上映は、東宝の突撃隊長、古澤憲吾監督による「アワモリ君乾杯」で、なんと主演の坂本九が、悪漢を追いかけ東宝撮影所に乱入、「世界大戦争」のリハーサル現場に飛び込み、あっけにとられたフランキー堺や星由里子、松林監督を尻目に、東宝の倉庫に駆け込み、悪漢はモスラのキグルミに隠れるという、楽屋落ちの珍シーンがある。

・・・・このシーンをユーチューブで発見した。

http://jp.youtube.com/watch?v=GyNsyhjkaJI

神妙な映画を観たあとであり、観客も唖然としたであろう。東宝も粋なことをするものである。

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猿の惑星

猿の惑星 (ベストヒット・セレクション) DVD 猿の惑星 (ベストヒット・セレクション)

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2007/10/24
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NHKBSで久しぶりにこの映画を見た。

以前、テレビ放映で何度となく観ているが、画面のサイズに合わせ、両端が、トリミングされている上に、原版よりかなりカットされていたものである。

一番最初にテレビ放映されたのぱ、荻昌弘さんのロードショウだったと思う。

荻さんが、アメリカから呼んだ特殊メークのスタッフにより、あの格好をして解説していた。

今回、改めて観てみると、いかに民放ではフィルムがカットされていたかが分かった。

カットが著しいのは、宇宙船が不時着し、猿につかまるまでのシークエンスである。猿がなかなか画面に登場しないという、ジラシの効果があるところであり、やはり、その部分が短くなったのでは、その意味がなくなる。

シャフナー監督は、なかなかの作品を作る監督であることが、山本氏とNHK氏の解説で知った。 

他の作品では、「ブラジルから来た少年」、「パヒヨン」などがある。

さて、気が付いたことは撮影がすばらしいことだ。アメリカの国立公園でのロケーションもさることながら、人間の捕獲シーン。逃亡したヘストンへのカメラワークはカット数も多く、テンポもよく、つなぎもよく、画面に釘付けになり、時間を忘れてしまう。

獣が吼えているような、ゴールドスミスの音楽も、前衛的で雰囲気がある。この人はなにをやっても、間違いの無い音楽を作る。

特撮はL・B・アボットで、この映画での仕事は少ないが、宇宙船が沈んでいくシーンが彼の映像で、野外で撮影されたミニチュアワークは、特撮だと気づかない人が多いのではないだろうか。波の演出がすばらしい。

冒頭の宇宙船外の色彩豊かな光の乱舞の合成もすばらしい。このへんは、相対性物理学を参考にしていると思われる。

宇宙船が墜落するシーンの効果音は、同じ20世紀フォックスのテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」のジュピター2号の離着陸の音である。

やはり、アメリカの映画会社も、録音バンクからの音を使い廻しする。

なお、特殊メークのジョン・チェンバースは「ロビンソン」でも特殊メークを担当しているエピソードがある。

今回観て、気が付いたのは、ヘストンを聴聞するシーンで、オランウータンの議長(ジェームズ・ホイットモア)と、その両側に同席の議員が、ヘストンの証言を拒否する態度で、「見ざる、言わざる、聞かざる」のボディアクションをしていることで、この映画の唯一お笑いシーンである。

この言葉は日本の日光の彫刻だけでなく、

Three wise monkeysという言葉で世界でもおなじみだ。

自由の女神の見せ方のすばらしいこと。また、全体像のマット画も優れている。

もう40年前の映画であるが、この映画が撮影されていた当時の私は、いったい何をしていただろうか。

じつは意外に覚えているものである。

映画に写る風の動きや、水の波紋、立ち木の葉っぱの揺らぎ見るとき、その撮影している同時刻の自分は何をしていたかに、一瞬、思いを寄せることがある。

ヘストンが猿に追いかけられるアメリカの里山でそれを感じた。

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十三人の刺客

十三人の刺客
提供東映株式会社
提供:@niftyコンテンツ

工藤栄一監督のこの映画をNHKBSの録画にて拝見したが、なぜかシネマスコープサイズがトリミングされ、両サイドがチョンギレていた。

といって、4対3というものでもなく、ビスタサイズに近いカットである。

私は時間的にもサイズ的にもチョンギレた映画は評価しがたく、この映画の感想については保留ということにしたい。たぶんDVDでは正規のサイズだと思う。

この映画は、間違いなく、チャンバラ映画のベスト3の中に入る作品である。

ところで、日本映画のチャンバラについては3つの世代に分けることができるのではないか。

それは「七人の侍」以前。

「七人の侍」以後。

「用心棒」以後

である。

つまり、黒澤が起こした流れである。

黒澤は映画のチャバラシーンにおいて、歌舞伎の様式美から受け継がれた殺陣に疑問を持っていて、刃物を振り回して戦うということを、リアリズムで表現することに、いち早く取り入れた監督である。

「七人の侍」を見ると、刃物を振り回す動きは、即興に近く、実際の合戦でもあのようなものではなかったか。

ただし、「七人」以後も、時代劇の殺陣は、なんとか流をかざす、舞台の芝居のようなカッカイイものが続けられていて、市川雷蔵の映画などがそうであるが、それはそれ、これはこれということであろう。

江戸時代というのは、天下泰平で、武士が刀を抜くというのは、現代の日本のオマワリさんが定年になるまで、事件で拳銃を抜くかどうかに等しい一大事ではなかったろうか。

それを映画にしたのが、黒澤脚本、森一生監督の「決闘鍵屋の辻」で、刀で人を切ることが、どれほど人間を、とまどいと恐怖に見舞わせるか、よく表現している。 武士(加藤大介)といえども、有事では足が震えて動かず、刀を構えた姿はへっぴり腰である。

雷蔵のように刀をぐるぐる廻しているような、悠長なことではない。

さて、「用心棒」の映画では、人を切るときの「バサッ」という効果音が入れられた。日本映画初のことである。(「七人の侍」の完全版には人を切る音が入っているが、最近になってダビングされたものである)

また、血糊が吹き出たり、体の一部がチョンギレルのも、「用心棒」が初であった。

以後の映画では、すべてこれらの手法をとりいれている。

人を切る音は、実際ではしないであろうが、血が吹き出るのは、医学的にまんざらウソでもないだろう。 ただ動脈が切れた場合だと思うが、オーバーな表現ではあるとしても、ビジュアル的に効果がある。

しかし、斬られて、刀の当たった着物も裂けていないのに、倒れるのは不自然で、「血槍富士」などの殺陣は、全くそのとおりで、変に感じた。 これは日本の時代劇を見た外国人の声でも、良く聞かれることでもある。

「十三人の刺客」は1963年の映画であり、当然、「用心棒」や「椿三十郎」を横目で覗いていて、人を切る音が入っていたが、斬って血糊は出ず、多少もの足りなかった。 殺陣(というより斬り合い)は一対多人数であり、「七人の侍」に近い、大混乱の中の格闘で、即興的なものであった。

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バルトの楽園

バルトの楽園 DVD バルトの楽園

販売元:東映
発売日:2006/12/08
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「バルトのらくえん」と呼ぶのかと思っていたが、「がくえん」であった。

第一次大戦のドイツ軍捕虜の収容所での話しである。

日本は、当時はハーグ条約を遵守し、捕虜を丁重に扱ったので、世界的にも賞賛されたのだが、この映画での描写は概ね、このようであっただろう。

ブルーノ・ガンツをはじめ、ドイツのプロの役者さんを使ったので、安心して観ることができた。

日本での過去の映画における、外国人の出演シーンでは、在日のアマチュアによる、危うい演技が多く、観ているとヒヤヒヤしたものである。

今回、ガンツはヒトラーのような熱演ではなく、元気がないように見えた。

彼の自殺シーンがあるのだが、将校とはいえ、収容所でどうして拳銃を所持しているのだろうか。さらに頭を打ち抜いたはずなのだが、助かり、腕を負傷している。説明不足である。

感じたことは、いろいろな話を盛り込みすぎで、ドイツ青年の故郷の母への手紙の朗読を柱として、最後まで話の展開を通すべきであると思う。

もっともあれはタドタドしい日本語でなく、ドイツ語にするべきであった。

さらに、黒澤の「赤ひげ」を参考にしているようにも感じたが、話のどこにピントを合わせればよいか、戸惑った。

松平の所長が会津の悲劇や苦労をガンツに話すシーンも、ガンツの将校が本当に理解したのか不明で、モヤモヤとした終わり方である。

「赤ひげ」は異なるストーリーどうしの連結が見事であり、すべて気持ちよく解決していった映画である。 

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血槍富士

血槍富士 DVD 血槍富士

販売元:東映ビデオ
発売日:2006/08/04
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邦画メモ NO,4  NHKBS

1955年、東映、白黒、スタンダード、 画質・録音悪い。

監督- 内田吐夢、 撮影- 吉田貞夫、 音楽- 小杉太一郎

出演- 片岡千恵蔵、月形龍之介、喜多川千鶴、田代百合子、加藤大介、

島田照夫、新藤英太郎、 (植木基春、植木千恵)-千恵蔵の子、 渡辺篤、小川虎之介

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内田監督の戦後復帰第一作。 監督のお気に入り千恵蔵主演。 チャンバラ映画の5本の指に入る作品。

企画協力に伊藤大介、小津安二郎、清水宏が係っている。

音楽は豪快な雰囲気。千恵蔵に合っている。

娘の知恵は6歳くらいか、踊りがかわいい。千恵蔵もうれしそう。

息子も重要な役、10歳くらい。宮本武蔵の伊織のよう。

ロケーションの里山の景色がすばらしい。

主人の島田照夫という俳優は知らない。

新藤英太郎と月形龍之介がナゾの人物として登場。 サイドストーリーとして観客を引き付ける。

月形が悪役でない映画は初めて観る。

吉田義夫が人買いとして登場。 こういう役ばかり。好きな俳優さん。寅さんの夢の相手。

月形と娘の関係、その展開は涙をさそう。心が洗われる。

千恵蔵の槍の大太刀廻り、血相、こぶしに力が入る。泥だらけの殺陣は「七人の侍」の影響か。 逆に酒樽から酒が吹き出るのは「用心棒」が参考。

ラスト。主君の遺骨を胸に抱き、宿場を去る千恵蔵、「海ゆかば」の曲が流れる。

内田監督、従軍から復帰した思い入れがあるのか。

監督の予定したラストは、千恵蔵がそのまま映画スタジオから出て行くという、驚きのシーンだったらしい。 それではあんまりというので、変更された。・・・・ これは私の勘違いかもしれない。

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超絶技巧・リコーダー、レッド・プリースト楽団

NHKBSにて、レッド・プリースト楽団というアンサンブルのスタジオ演奏があった。

まったく、耳も目も釘付けになってしまった。

楽団員は4人で、リコーダー、バイオリン、チェロ、チェンバロの構成である。

4人とも年齢は若く、20代、30代というところであろう。

リコーダー奏者はリーダーのようで、俳優でいえば、サム・シェパードに似ている。

彼らはバロック音楽を演奏するにもかかわらず、その演奏スタイルはまったくポップで、堅ぐるしい燕尾服や、スーツなど無縁の格好で、アバンギャルドで、大道芸人的で、一昔前のヒッピーという感じである。

演目はビバルディの「四季」がメインであった。

このリーダーのリコーダーの演奏は、常識を超えた超絶技巧であった。

リコーダーは、われわれの小学生の時分に親しんだ、シンプルな楽器であるが、彼は、想像を絶するテクニックを駆使し、大変な効果をあげていた。

「四季」には、時には、速いテンポの16分音符のパッセージが展開されるが、ものともせず、ミスもなく弾きこなしていた。

また、この楽器は、子供にはハ長調か、それに近い調性の演奏しかできないが、かなり自由な演奏を、超絶のテクニックでこなしていた。おそらく、親指の押さえる穴の僅かな面積を調節していたのであろう。

時には、2本のリコーダーを同時に咥え、2重奏を演じてくれた。

アンサンブルは、格式ばったバロックのスタイルばかりではなく、即興のようで、時にはジャズィーであり、時にはバイオリンはカントリー的であったり、時には現代音楽的で、大変、粋であった。

かれらへのインタビューでは、我々は21世紀の楽団であるので、それにふさわしいバロックを演奏していきたい。と述べていた。

これから大いに期待できる楽団である。

「四季」といえば、私の高校生のころ、ギュンターノリストリオというグルーブがジャズに編曲してレコードを出しており、随分話題になった。

そのレコードのB面は正式な、オリジナルの演奏であり、ジャズとクラッシックと両方楽しめるという、粋な企画のレコードで、私は今でも、時々ターンテーブルにかけて楽しんでいる。

日本人の大好きな曲であるが、イタリアの四季の音楽であり、日本の季節感や自然の様子とはちょっと違うのが面白い。

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すばらしい「かぐや」の映像

本日、11月14日のNHKの午後8時からの特別番組で、「かぐや」からの月の表面の移動ハイビジョン映像、ならびに月からの地球の出、地球の入り映像をじっくり見せてくれて、まことにすばらしかった。

改めて感動した。ウルウルしてしまった。

私は小説家でないので、このような表現しかできぬ。

ゆっくりと現れては消える、カドのはっきりしたクレーターや、コントラストの強いその影。

中央の山、月のエッジで山と分かる輪郭。不思議な模様の溝。

これらの映像は私が就寝前に想像する、宇宙船の窓から見たビューそのものであった。

おそらく、宇宙の彼方の大気の無い天体のほとんどは、あのような景色であろう。

ようやく、自分の宇宙船は月に到達し、さらに宇宙のフロンティアの第一歩を踏み出した気分だ。

私の子供のころは、「2001年宇宙の旅」の映画や、アポロ計画などで、大人になったら、自分は月に行けなくとも、月に基地くらいは出来ていると想像していたが、その夢は完全に途中から消えてしまっていた。 これは技術的問題ではなく、経費の問題だけで凍結したままだったのだ。

だが、「かぐや」のおかげで、月に到達できた。月の上空を飛行できた。

もう夢が叶いました。いつまでも、いつまでも、コクピットの窓にへばりついて、月の空撮映像と美しい地球を見ていたい。

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ブレない映像

サウンド・オブ・ミュージック (ベストヒット・セレクション) DVD サウンド・オブ・ミュージック (ベストヒット・セレクション)

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「かぐや」のハイビジョンで撮影された月の俯瞰移動映像は実に気持ちのいいものであった。クレーターの影や溝、飛び散った隕石のかけらの跡など、順々に滑らかに現れ、一昔前のSFXで使用されていたモーションコントロールカメラの映像のようである。

私は、ああいう滑らかな、ブレない移動撮影が大好きである。

逆に嫌いな映像は、なによりもガタガタと揺れている映像だ。つまり手持ちカメラの映像である。

この手法を使った映画では、東映のヤクザ映画があり、映画界では「貧乏ユスリ」と呼ばれているが、私は生理的にヤクザも手持ちカメラ映像も苦手である。

落ち着かないのである。不安定な心理となってしまう。

それは、臨場感を増す撮影テクニックの手法の一つでもあるのだが、私には何かゴマカシの低予算映画に見えてしまう。

しかし、東映の場合はちょっと別な理由があったようで、要するに撮影時間を短縮するのが第一の目的であったらしい。撮影現場で、三脚や移動レールなどの設置が不要になるからだ。 もちろん、それは経費削減にも貢献するであろうが。

また、ときには無許可のゲリラ撮影もあり、オマワリさんが来る気配のときは、スタコラ退散できるというメリットがある。

その「貧乏ユスリ」も最近ではあまり使われなくなった。

ステディカムがあるからである。

こいつはカメラマン一人が歩きながら撮影するにもかかわらず、撮影された画像がまったくブレない、カドの取れた滑らかな映像とすることができる。

カメラは人の腰と腹に巻きつけられたギプスから、自由に動くスイングアームのようなサスペンションによって支えられていて、カメラマンの歩く振動を殺してしまう仕掛けになっている。 カメラはあたかも宙に浮いている状態になるのだ。

このカメラが初めて使われた映画はキューブリックの「シャイニング」であると聞いている。

子供を雪の迷路で追いかけるシーンがそうである。

観客は走って追いかけているというよりも、宙に浮いて飛んでいる浮遊感を味わうことができる。 つまり、ジャック・ニコルソンは人というよりも、フワフワ飛んで子供を追いかけているオバケというわけだ。

このステデイカムは、この映画以後、あらゆる映画で使われることとなった。

また、映画のみならず、イベントでもビデオカメラに取り付けられ、特にオリンピック会場でステディカムの映像を頻繁に観ることができる。

このカメラシステムはカメラマンの腰を痛めやすいということだが、ビデオカメラなら小型化が進んでおり、負担も少ないようで、最近のNHKの海外レポートにはよく使われている。

ステディカムのおかげで、ガタガタ映像を観ることもなくなり、私は実に気分がいい。 飛行機好きでもあるから、あの映像はコクピットから見た空中景色のようで、これまたうれしいのだ。

これとは別に、ヘリから撮影された空中映像も、昔のようにブレなくなった。

ジャイロカムが使われているからだ。形は目玉のオヤジみたいなカメラである。

これは飛行機の計器の水平儀と同じシカケがついているが、要するにヘリの傾き、振動を吸収してくれるメカである。テレビのニュース映像でもお馴染みである。

このジャイロカムシステムも「シャイニング」のオープニングのシーンで、初めて使われたのではないだろうか。空撮映像はブレていなかったと記憶している。

走る車を上空から追いかけていくという撮影は「シャイニング」以来沢山見かける。

余談だが、この「シャイニング」の空撮シーンで使われなかったフィルムは「ブレードランナー」の公開版ラストシーンに使用された。

最近はラジコンヘリにもジャイロカムが搭載され、映画でも、トンネルの中を抜けて飛行撮影されたものがあり、観客を「あっと」といわせてくれた。

もし、このラジコンヘリのジャイロカムがあれば、「サウンドオブミュージック」のオープニングは、カットなしで、空から寄って、そのままジュリー・アンドリュースのアップまで滑らかに接近して撮れるのである。

このカメラは、もしヒッチコックやキューブリックが生きていたら、さっそく喜んで使ったものと思う。

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「かぐや」の映像

日本が打ち上げた月を回る孫衛星「かぐや」が、月の表面を上空から移動撮影したビデオ映像を送ってきた。

ハイビジョンで撮影された画像は、実際に月の上空を飛んでいるような、すばらしい映像で、いつまでも観ていたいほどだ。

あれほど鮮明に写されたのでは、宇宙人も、さぞ月面基地を造りにくいであろう。

惜しいのはスーパーハイビジョンでないことだ。

普通のハイビジョンの4倍近い鮮明度なのだが、衛星に載せるほど小型ではないかもしれない。

月の表面の衛星による近接ビデオ映像は、恐らく世界初であり、もちろんハイビジョン撮影も世界初である。

今までの映像はすべてフィルム撮影であり、その映像も僅かで、この「かぐや」の快挙はもっと世界的ニュースになっていいはずだが、日本のメディアはさめた扱いであった。

私の地元の中部地方独占新聞でのこの記事は、たった5センチ四方くらいの紙面であり、話にならなかった。 

あの新聞社は、中部地方が航空宇宙のメッカであるにもかかわらず、こういうニュースはいつもこの程度の扱いであり、明らかに科学技術の進歩に興味がなく、自然物理が苦手である。

以前、日曜版でスペースシャトルの記事がめずらしく掲載されたが、シャトルの大気圏突入前の図解で、シャトルの制動姿勢が逆になっており、私は電話で間違いを指摘したことがある。

よく大学の文学部や社会学部系を出た人は、自分が数学や物理に弱いこと、科学技術に興味がないことを逆に誇らしげに語ることがある。

彼らは、あんなものは世の中に直接関係ない、利益追求の社会経済以外は興味がない、人や金や物を動かすことが重要である。という考え方である。

地球の表面という、二次元でしか頭が働かず、未知のもの、想像するものに無関心なのだ。

しかも、そういう人たちは、宇宙に夢見る人や自然科学、物理・工学好き人間を、クライだの、閉じこもっているだの、人付き合いが苦手だのと、社会の異端児のように見下す傾向にある。 

たぶんあの新聞社の記者や幹部は、恐らくそういう人物ばかりなのだろう。

寺田寅彦が現在にいたら、おおいに嘆くだろう。

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大菩薩峠

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邦画メモ NO,3  NHKBS

1966年、東宝、宝塚映画、シネスコ、白黒

制作- 藤本真澄、原作- 中里介山、脚本- 橋本 忍

監督- 岡本喜八、撮影-村井 博 、音楽- 佐藤 勝

出演- 仲代達也、三船敏郎、新珠三千代、内藤洋子、西村晃、中谷一郎、中丸忠雄、藤原鎌足、加山雄三、天本英夫、内藤洋子を引き取る女主人、佐藤慶、田中邦衛、香川良介

原作の映画化はこれが最後のもの。原作はムチャクチャ大長編。

内田吐夢の映画が一番傑作であるとの評判。

ただし、岡本版もファン多い、アメリカにもこの映画のファンがいるらしい。

冒頭で、仲代が、峠にて西村を「見かけないやつ」だと斬ろうとする。峠を歩いているような人はみんな見かけないやつだと思うが。

音楽が「用心棒」「椿三十郎」「蜘蛛巣城」を足して三つに分けた感じ。「カーン」の打楽器使用。佐藤は「三十郎」以来、この楽器が好きだ。

内藤洋子、ウイウイしいが、芝居はまだ下手。女主人、芝居うまいが名前分からず。

天本英世がたくさんセリフをしゃべる映画は初めて。40歳くらいだと思うが、歯並び悪く老けて見える。岡本組のレギュラー。

佐藤慶、セリフのかつぜつのうまい人。

撮影、カメラワーク、テキパキして気分がいい。

仲代の殺陣シーンで、霧の中の山道、俯瞰カメラ横移動撮影、かっこいい。

三船、雪の中で、暴漢大勢を切る、殺陣は久世、「椿三十郎」的シーン。ただし「椿」より迫力は劣る。

仲代、ラストシーンで50人くらい斬っている。幽霊に向かって暴れる場面は簾や襖が切れているので、真剣使用か。思わず手を握ってしまう。

しかし、酔っ払った状況で、大変危険。真剣でないとすれば、どうやったか不明。

酔っ払って錯乱状態で刀を振り回すのはサムライ版「酔拳」。 

手首が落ちたり、血が噴出すのは「用心棒」からのやり方。

この映画は仲代の渾身的演技。狂った演技のデニーロみたい。

仲代の殺陣中、顔のストップモーションで「終」マーク。 加山との決闘はお預けで、続編が企画されていたと思われる。

内田吐夢版も観たい。

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青い山脈

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邦画メモ NO,2

1949年、 東宝、スタンダード、白黒

監督- 今井 正、 撮影- 中井朝一

出演- 池部良、原節子、杉葉子、若山セツ子、龍崎一郎、木暮美千代、伊豆肇、藤原鎌足、高堂国典

日本国民で知らない人はいないと思うが、今回初めてまともに観た。ただし日活の吉永小百合編は見ている。

前・後編に分かれていることを知らなかった。

カメラのレンズは相変わらず渦を巻いている。

池部良と伊豆肇がちゃんと学校に通っているのか不明。

池部良、当時30歳を超えている。ちょっと不自然。

にせラブレターを企てる女子生徒、女優名分からず、悪女的ワイルドなフェィス。

杉葉子、さして美人と思わない。当時としては大柄な体つき。水着を通して乳首が分かる。

若山セツ子、ほとんど小学生的。青春物に出てくる三枚目女子生徒の元祖。明るいので、原節子の暗さをカバーしている。

島崎雪子という女優がいるが、この映画、小説から名前をもらったと思われる。

島崎先生の同僚の先生、シューマンの「謝肉祭」の「ドイツ風ワルツ」と「告白」弾く。

生徒の合唱で、シューベルトの歌曲唄う。

女子生徒が教室でワーワー大声をあげて泣くシーンは非現実的、昔でも無かったと思うが。 同様に仲直りのため、目をつむって頬をひっぱたくシーンは、今となってはバカバカしい。 大映テレビドラマシリーズのよう。

伊豆肇のガンちゃんおもしろい。案外芝居うまい。

理事会で中井のカメラ、360度回転。出席者全員写す。

木暮美千代の芸者、うまい。助演女優賞は彼女にあげたい。

高堂国典、大きな声で、録音技師もゲイン調整がたいへん。

体育の先生、「野良犬」に出ているが、あのキャラクターのまんま。

校長は本当に校長先生に見える。 うまい老いた役者さん。

服部の主題歌は有名だが、映画では冒頭でゆっくり歌われ、サイクリングシーンでは静かに流れる。 

今井監督がこの歌を嫌がっていたのを感じる。

舗装されてない路がなつかしい。

彼らの乗っている自転車の前輪に「光」というマークがはっきり写っていた。タイアップか。

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宇宙大戦争

特撮メモ NO,8

1959年、 東宝、 シネスコ、カラー

制作- 田中友幸、 脚本- 関沢新一、 監督- 本多猪四郎

特技監督- 円谷英二、 音楽- 伊福部昭 、撮影- 有川貞夫(特撮)

出演- 池部良、安西郷子、千田是也、土屋嘉男、村上冬樹、

伊藤久哉、高田稔、沢村いき雄、レオナルド・スタンフォード(声、黒澤良)

宇宙ステーションのデザインはなかなか良い。上のアンテナの回転方向がステーションと逆なのがいい。 ステーションの床の曲面の描写はこの映画が最初ではないだろうか、「2001」でもこのシーンがある。

円盤のひかり方がよい。

冒頭の模型電車による撮影、鉄道博物館のジオラマのレベル。スピードが速すぎるので、余計オモチャに見える。

鉄橋が浮き上がり、電車が河に転落、ハイスピート撮影は適切だが、模型が小さすぎて迫力がない。

宙に浮いた鉄橋が、トズンと着陸。 鉄骨の重量感がない。ゆっくり降し、着陸寸前でさらに速度を落とすべき。これは操演のセンスの問題。

各国の異常現象の写真?、全く下手な絵。東宝のマット画はダメ。

スピップ号のエンジンテストの描写はよい。発射場の合成のすばらしいこと。遠近感もすばらしい。 

ただし、昼の発射場合成シーンでは、画面に大きなホコリが三つ写ってしまっている。

撮影のウッカリミス。たいへん目立つ。担当者は監督から大目玉か。

ロケットの発射塔の造りこみは上々。櫓が後退する動きが堂々としていてすばらしい。

発射台の夜のシーン。照明、ランプ、上々。

発射台エレベーターの上昇カットはキャビンがゆれていて、ミニチュア然としている。

スピップ号のロケットエンジン炎、好きでない。強力な推力を感じない。円谷ものはみんなそう。

スピップ号の上昇カットは野外で撮影、橋の上から吊り上げた。太陽光の感じがよい。

国際会議場のセットがよくできている。演出もいい雰囲気。 ナタールの月基地が発見された説明がない。

池部良と安西郷子のラブシーンはちょっとギクシャクしている。池袋文芸座では池部良の「さー」で笑いが起きた。

土屋嘉男、「しっけい」という言葉を放つ。あの当時の映画ではよく耳にする。

土屋嘉男、のちほど「しまったー」というセリフを放つ、これもナンカヘン。

自衛隊の見送り栄誉礼の演奏は本物。

スピップ号のコクピットに窓がないデザインはメカニカルで良い。窓の景色との合成処理がいらないというのも理由であろう。

スピップ号のパネルにHITACHIの大きな文字あり。ミニチュアの看板にもあり。コンピュータのカットでも本モノのHIPAC使用。 タイアップ。

怪獣映画では森永やバヤリースであるが。

スピップ号の慣性飛行中、一人が天井に頭をぶつけ、「無重力だから気をつけろ」というセリフがあるのに、みんな地上のように、宇宙船内をスタコラ歩いている。

月面シーンで「重力コントロール」という言葉が発せられるので、なにか重力発生の装置があるのだろうか。だとするとメカが飛躍しすぎるし、説明不足でもある。

地球を離脱するシーンでは日本とアメリカ大陸の見える2カットがあり、アメリカ興行をねらった部分である。

スピップ号の反転、月面降下は伊福部の音楽と相まってゾグゾクするすばらしいシーンである。ただし、ジョージ・パル?の「月世界制服」にも同様のシーンがあった。だからあちらのほうが先。

月面降下のエンジン点火のうちの1カットはミニチュア然とした大失敗のシーンである。あれを編集に入れるとは信じがたい。

小松崎氏デザインの月面探検車は、古くは見えるが、なかなかアナログチックでよい。

しかし、キャタピラ走行でカタカタ動く様はどうも良くない。円谷本人も自覚しているのではないか。後年の戦車などでも相変わらずオモチャ然としている。

浮上走行シーンはなにかエアゾルのようなものを広く噴射しており、ユニークな手法である。

ナタールとのバトルシーンでは伊福部のフリゲートマーチが鳴り響く。我々の年代の人には血湧き肉踊るところ。 

あのマーチは地球防衛軍とのシーンでは、延々と続くので、オーケストラの管楽器の奏者が最後には貧血を起こしたという。

円盤の爆発シーンは宇宙空間での破片の落下も特に目立たず、上々である。

月面でのいろいろな爆発シーンはハイスピートも適切。

地球でのバトルシーンは最良のもの。円盤の撮影カメラワークすばらしい。

円盤をフィックスで捕らえ、星の流とともに滑らかに傾きをかける撮影がすばらしい。

破壊光線の処理がすばらしい。東宝の最高技術。当時の外国にマネできない。

母船の反重力光線による建物の吹き上げのシーンはユニークですばらしい。

圧縮空気を使い、発砲のミニチュアを使用。ただし、大きな看板などは吊り。

吹き飛ばされる看板の一部に「これがシネラマだ」があった。

小型宇宙艇が次々に発射されるシーンはテンポもよく上々。

大型パラボラ兵器も動きがギクシャクしておらず、上々の撮影。光線発射のテンポもよい。

ニューヨークの爆発カットは良くない。ビルが爆風で傾いてしまった。スタジオ然としている。

金門橋の倒壊シーンは上々。ただし照明が良くない。スタジオ然としている。

丁寧にパネルを張り合わせた格納庫が大爆発する。上々のシーン。ただし、こういうパイロはアボットやメディングスがもっとうまい。

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宇宙大戦争

宇宙大戦争 DVD 宇宙大戦争

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東宝特撮映画において、唯一怪獣、巨大生物、巨大ロボットの出てこない、純粋なSF物である。 その為、案外目だたない作品ではないだろうか。

しかし、私は好きだし、高く評価している。

私が子供のころ、正月のテレビ番組で、ほとんど毎年放送されていた。 そして、親父とともに、コタツに入りながら楽しんで見ていた。

私の親父は大正生まれのガンコ物だが、なぜか、SF物が好きであった。それに私も付き合って観ていたというわけ。 

東宝のSF物では「妖星ゴラス」もある。 ある時、親父と観ていたら、トドの怪獣が出現したところで、親父はチャンネルを切り替えてしまった。

親父の頭には、

怪獣が出てくる=子供向け=子供だまし=観るに耐えない、

という式が成り立っていたのである。 

であるから、テレビ放映の「モスラ」などは、一切観なかったし、見せなかった。

こういう精神構造は、私にも若干影響している。怪獣ものは正直言って、観たかったのだが、たとえ一人でも、やはり観たり、話したりするのは、なんとなく恥ずかしかったのである。こういうことだけは大人じみていた。

したがって、私の観るものはキグルミの出ない特撮SFがメインとなってしまった。

親父の好きな円谷プロのミニチュア特撮テレビ物は、唯一「マイティジャック」であり、これは一切怪獣が出てこなかった。 親父は私にも見せてくれた。

さて、この映画、月の描写などにバイロン・ハスキン、円盤のデザインにジョージ・パルの映画の影響がみられるが、逆に、多くのSF映画に影響を与えているのではないだろうか。

「スターウォーズ」のルーカスは若かりし頃、横須賀の映画館で、この映画を観ている。 「オレもいつか、こんな面白い映画をつくりたい」と語ったエピソードがある。 ただし、この映画は世界公開しており、英語名は「BATTLE IN OUTER SPACE」。 ルーカスがこの映画の邦題を知っていたかどうかは分からない。

円盤と防衛軍宇宙艇の、光線によるバトルは「スターウォーズ」に劣らないシーンである。

スタンリー・キュブリックは「2001年宇宙の旅」の準備段階に、世界のあらゆるSF映画を観て、制作の参考としているが、当然この映画も観ている。

この映画には月を移動する探検車が出てくるが、空中に浮上・移動することができる。 「2001」のムーンバスも同じ飛行方法である。同じタイプのものは、後年のアンダーソン夫妻の「UFO」でも登場する。

各国の科学者を前に、熱線砲の発射実験を行う場所は、白黒のまだら状のトンネルであり、これはアーウィン・アレンの「タイムトンネル」のデザインそのものだ。

また、コントロールルームの計器類のセットと、従事するオペーレータなどの描写は、デザインこそ違うが、同じくアレン物のSF物によくみられる。

というように、以後の映画のヒントがいくつも見つけられ、世界SF映画史上、忘れてはならない存在だと私は思う。

この映画の欠点を挙げるとすれば、物理的根拠が怪しいことで、重力の原理は原子の核振動であり、絶対零度になれば、重力がゼロになると、もっともらしく説明していることである。

「妖星ゴラス」脚本制作時のように、大学の先生に相談するべきである。

そのもっともらしく説明している科学者は池部良であるが、彼へのインタビューで、特撮映画の主人公を演じていることには、こう答えている。

-- ひどくみっともないんだよ。 はっきりいうと、要するに俳優の出番がないんだよ。あれだけ俳優がいるんだけどね。なんとか博士、なんとかパイロット、というだけの話であってね。その博士が「ああでもない、こうでもない」という気持ちをこねまわす類の映画じゃない。ストーリーの90%は特撮で、俳優じゃないから。」 --

池部良が最後に出演した特撮物というと、「スターウォーズ」公開前に拙速で制作された「惑星大戦争」ではないだろうか。

参考文献 : 

「映画俳優 池部良」 志村三代子、弓桁あや 編 ワイズ出版

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情婦

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洋画メモ NO,7   NHKBS

1957年 ユナイテッド・アーツ、白黒、スタンダード、114分

ベルリン国際映画祭主演女優賞

原作- アガサ・クリスティー、 脚本- ビリー・ワイルダー

制作- アーサー・ホーンプロー

監督- ビリー・ワイルダー

撮影- ラッセル・ハーラン

原題- WITNESS FOR THE PROSECUTION (起訴のための証言)

出演- マレーネ・ディートリヒ、タイロン・パワー、チャールズ・ロートン

オープニング、長いクレーンの寄りで法廷内撮影。十字架のアップとなる。

駅のパブの撮影、照明がいい。モノクロの美しさを感じる。

心臓病もちの弁護士、最初からジョークが粋。 奥さんを失くしているという設定か、看護師謙ヘルパーがいる。

イギリスの話なので、タイロン・パワー以外の発音はもっとクイーンズイングリッシュでよい。

ディートリヒの映画は初めて観る。 ドイツなまりの英語はしかたないなと思っていたら、それが映画のネタとして使われていた。

ディートリヒは私の好みでないが、戦時中、兵士の敵味方を超えたアイドルだったと思うと、幸せな人である。

変装があるが、ほんとうに本人であろうか。

最後の展開は意外で驚いたが、判決が出たとはいえ、弁護士の前でカラクリをベラベラとしゃべってしまうのは不自然。

結局、弁護士はディートリヒを弁護することになりそうなので、この事件は再審となるであろう。 

悪いことはできない。 と、匂わせているのか。

神に宣誓しながら、ウソはいけないということか。

エンドロールで、結末を人に話すなというナレーションあり、こういうことは映画では初めての経験。 ヒッチコックのように公開前の宣伝にしたほうが集客効果もありと思う。

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銀嶺の果て

銀嶺の果て DVD 銀嶺の果て

販売元:東宝
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谷口千吉氏が亡くなった。95歳であった。

特に好きな監督といものではないが、この映画は、シンプルな脚本で、気に入っていたものの一つである。

谷口氏、監督としてのデビュー作。

悪党3人が銀行強盗をし、身を隠すため、日本アルプスに逃走する話だ。

そこで、山小屋で九死を得、志村喬のみ人間性を取り戻す。

脚本は黒澤と谷口との共同で、やはり黒澤が好みそうな話だ。男くさいのだ。

北アルプスでロケをしており、昭和22年ごろの制作だから、撮影はたいへんであったろう。 俳優も荷物運びを行った。

三船敏郎もデビュー作で、悪役からのスタートである。やはり芝居にかたいところがあるが、もう、あのフテブテしさを発揮している。 「酔いどれ天使」のヤクザ、松永の原型が見られる。

志村喬とのコンビ?もこの映画が初だ。 二人とも悪党というのは、最初で最後だと思う。

三船はその後、国際的大スターとなるが、世界の大概の人はサムライのイメージであろう。 デビュー作のピストルを構え、ポマードを塗って前髪たらしたヘアスタイルを見るとビックリするのではないか。

三人組の悪党のうち、小杉義男がいる。鬼瓦みたいな顔をしている名バイプレイヤーだが、少々、セリフにナマリがある。「どうなってもしらないぞ」が「どうなってもしんねーぞ」になる。 「七人の侍」でもタケヤリもって戦っている。有名な日本画家の甥だそうだが、東宝では新人の演技指導の先生もやっていた。三船も授業を受けており、共演はやりにくかったのではないか。

山小屋のジイサンは高堂国典で、私の好きな俳優だ。腰の曲がった老人役が多いが、背広を着て社長役などすると、背筋が伸びて、シャキットしている。声が大きく、朗々と響く。みんなコクテンと呼ぶが、ほんとうはコウドウ・クニノリである。

紅一点、若山セツコが山小屋の娘で出演している。当時18歳であるが、原節子の18歳と比べると、てんで子供で、14歳くらいにしか見えない。 この映画の前に「四つの恋の物語」山本嘉二郎監督では、なんとエノケンの恋人役である。

どうみてもエノケンは50歳くらいであり、ロリコンといってもいい不自然さを感じた。尚、その後、17歳年上の谷口監督と結婚して、数年で離婚している。

この映画の音楽は伊福部昭氏で、映画音楽の仕事はこれまたデビュー作。 

スキーのシーンの音楽で監督とモメたことは有名だ。  黒澤が仲裁に入ったという。

雪原を、三船と志村がラッセルして進む途中、「オールド・ケンタッキー・ホーム」の曲が突如流れ出し、驚いたものだ。 アメリカ人はズッコケルだろうか、驚くだろうか、うれしいだろうか。

山岳ロケでは、ほんとうの絶壁で、人を背負い、ロープで降りるシーンがあり、もちろんプロのスタントであるが、ハラハラする撮影である。 あんなことが出来るとは、山男は凄いものだと感じた。

谷口氏は若山セツコと離婚したあと、八千草薫と結婚している。年齢差は20歳近い。 

どうも谷口監督は若い子好みのようだ。

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