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天国と地獄

天国と地獄 DVD 天国と地獄

販売元:東宝ビデオ
発売日:2003/02/21
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 黒澤の映画がテレビドラマでリメークされる。

たぶんビデオ録画であろうが、やはりフィルム撮影で緊迫した雰囲気を味わいたいものだ。

リメーク物を観る楽しみは、本家オリジナルにどれだけ接近できているかである。

なにしろ黒澤の映画は、すくなくとも、演技・カメラワークの完成度が高いので、リメークする側もやっかいなことだ。 黒澤のマネをするわけにはいかないからだ。

失敗すると、オリジナルと比べられ、それみたことかとけなされる。

だから、私が監督だったらリメークはイヤだね。 まして黒澤の映画は。

この映画を劇場で観たのは、黒澤ブームの頃で、私も含めて若い人でいっぱいであった。 当時、ビデオソフトは出でおらず、伝説の映画を垣間見たわけである。

権藤邸のリビングでのシーンはマルチカメラにより、長廻しが多い。 そのため室内での緊迫した空気を感じる。 面白いのは舞台の演劇に見えることだ。

つまり、俳優もワンカットだけの出番ではなく、大勢の俳優との連続芝居となり、観いてるこちらも、生芝居のような緊張感を感じる。

その場面で、木村功は、長い芝居のあと、一番最後にチョコット自分が現れるシーンでは、NGを出せば、前の部分が全部だめになるので、たいへん緊張したと述べている。

列車のシーンでは東宝のカメラをほとんど使い切って撮影された。 列車も撮影用のチャーター便のようで、なんとなく一発勝負の撮影であることが分かっているので、観ているこちらも大変な緊張感である。 現場はもっとすごかったであろう。

このシーンが終わった後、劇場では「あー」「おー」とか、「ふー」などの感嘆の音声が聞かれた。

なお、私の見解だが、列車と新一を迎えにいく車に、父親の青木が乗っていないのはちょっと変である。

横浜署(伊勢崎署?)での刑事合同ミーティングのシーンは黒澤の「圧縮された画面」として有名である。 多くの映画監督がお手本としている。 黒澤監督は夏の描写がうまいが、暑さとともに刑事の熱気が、詰まった画面から伝わってくる。

ところでこの映画、黒澤物としては外国では不人気だという。その理由の一つに日本の警察が、あんなに科学的に組織的に犯罪を捜査できるはずがないというのだ。 私は刑事でないので、なんともいえないが、日本人には不自然ではありませんがね。

逆に外国人にはヘンだと思われるシーンは、戸倉警部が「犯人は竹内と断定して間違いない」(セリフに記憶違いがあるかもしれません)と言ったあと、刑事全員が兵隊のように一糸乱れずスクット立ち上がるところだ。

 西洋のゲージン(外人)は、まずああいう行動はしない。

画面が詰まったシーンでは横浜の場末の食堂のところもそうだ。

あれは完全に再現されたな巨大セットであるが、エキストラが飲み食いしている酒や食べ物は全部本物ということだ。 黒澤は妥協を許さない。

戸倉警部の判断と予測が、新たな殺人を招いてしまい、よく評論家から非難されるところだが、「しまった」と失敗を認めるシーンがあるので、私はそう思わない。たしかにモルモットにされた女の人は気の毒であるが。

権藤と竹内が面会する、ガラス越しに相手の顔が反射している刑務所のシーンは以後の多くの映画にマネされている。

あの対峙シーンはこの映画の一番最初に撮影された。

当初ではこのシーンのあと、権藤と戸倉警部との会話シーンがある予定であったが、編集でカットし、シャッターが閉じて映画を終わらせている。 

こうしたのは、山崎勉の要望だということだ。 彼はこの映画の熱演により、以後注目されることとなる。

この緊迫した、重い映画でもちゃんと笑わせるカットを黒澤は準備している。

重いテーマの「生きる」でもそうだが、黒澤はサービスを忘れない。

この映画では木村功がコメディーリリーフの役だが、私が最も好きなのは藤原釜足の焼却場のオッサンだ。

軍手にタバコを挟んで 「燃えねーもの持ってきやがって・・・ブツブツ」

「ブリキは燃えねーってんだよ!」  ガンガラ、ガンガンガン

何度観ても笑ってしまう。 いやあの藤原さんの演技に感嘆してしまう。

竹内が逮捕されるシーンでは、夜なのにサングラスをかけていて、花畑では彼がまるで毒虫のように見える。 これは淀川長治さんの言葉。

ここで「オーソレミーオ」が流れているが、黒澤監督はプレスリーの歌を流したかったらしい。 しかし版権の問題で出来なかったそうだ。

追記 : 

テレビドラマのほうを観たが、こどもを誘拐し、預かっている間どうだったかの描写があり、私も前から気になっていたところで、いいアプローチだと思う。

でも、みんな、芝居よくないですね。もう一度発声訓練でもしたらどうか、早口になり、語尾が曖昧になる俳優が多かった。

早口の俳優では過去には加藤大介などそうであったが、それが彼の持ち味であった。 

中途半端なカツゼツと演技ではボロが出てしまう。

          

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コメント

今日は。今晩のテレビでリメーク版が放送されますね。
どうなんでしょうか?佐藤浩市、阿部寛…、妻夫木ですか。
「私は貝になりたい」がスマップの中居で製作されるそうだけど、
それよりはいいと思います。
ビッグネームでなくとも演技力のある俳優はいるのにねぇ。

投稿: バルおばさん | 2007年9月 8日 (土) 12時56分

パルさん。こんにちは。 佐藤浩市ならば、なんとかなるでしょうが、「私は貝・・・」に中居はねえ。 兵隊時分のシーンもあるでしょうが、あの当時のヘアスタイルは丸刈りですから、あのまま長髪だったら絶対ヘンです。

投稿: スタンリー | 2007年9月 8日 (土) 16時27分

先日、映画館で「トランスフォーマー」を観終わってロビーに出ると、「椿三十郎」のリメイク版のポスターがありました。主役は織田裕二...。

投稿: 雷おやじ | 2007年9月 9日 (日) 08時00分

雷おやじさん。おはようございます。リメーク「天国・・」、
やはりというか、オリジナルよりみんな芝居下手ですね。
セリフのカツゼツが悪いのです。 
「椿・・・」はどうなるか、織田で素浪人の薄汚い感じが
出せますかね。

投稿: スタンリー | 2007年9月 9日 (日) 08時17分

ゴールデン洋画劇場で黒澤作品よくやってました。
「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」は、ゴールデンで観ました。

モノクロ映画なのに唯一カラーのついた重要なシーンは、おおっと思いました。
高島忠夫が「お見逃し無く!」と随分念を押していましたので。

当時は途中のヤク中の共犯者の死に方とかよくわからなかったです。カットもあったのかも。

今回、その辺はスッキリしました。

投稿: つのきち | 2007年9月10日 (月) 18時08分

つのきちさん。こんばんは。煙突の煙りは色がつけてありますが、私が劇場で見た版は、あのシーンのみ全体がカラーフィルムでした。
パートカラーと言いました。
テレビ放映ではカットがあったかもしれませんね。今では映画でも、同じ場面をCMをはさんでクドクド流すのに。

投稿: スタンリー | 2007年9月10日 (月) 20時41分

私も、この映画に出てくるような、刑事たちの熱気に包まれた
合同捜査会議シーンって大好きなんですよね♪
まさに日本映画の真髄ですよね。。(^∀^)
確かに、その後の刑事ドラマや「砂の器」などでも
よく出てきましたねぇ。。
しかし、アメちゃんだけには、組織的じゃないとか
言われたくないような。。。笑

投稿: ぱんだうさぎ | 2007年9月11日 (火) 22時24分

ぱんだうさぎさん。 おはようございます。 この映画も
スコセッシ監督でリメークの話があったようですが、
実現したら、捜査会議などはどうなるか、興味深深
ですね。
戸倉警部はデニーロかな、犯人はデカプリオかな

投稿: スタンリー | 2007年9月12日 (水) 07時41分

47年位前に観たんで違っていたら悪いですが1ヶ所ミス?があったような。列車からバッグを落とすシーンで警察が先頭車両から撮影し記録するのは良いのですがあそこはどうせなら高速度撮影(スローモーション)で撮影していれば以後細かく犯人の顔とか状況が把握出来るのに、と中学生の私は疑問に感じました。フィルム代がかかるし警察の捜査予算に限度があったのでしょうか(笑)。

投稿: ロンリー・マン | 2008年1月20日 (日) 23時49分

ロンリー・マンさん。ありがとうございます。
なるほど。その手もありますね。
フィルムマガジンというのは24コマで10分くらい撮影できますか。
それは映画用のカメラだと思いますが。
5倍くらいまで高速撮影できるのでしょうか。そうすると2分間は廻せますね。
「新幹線大爆破」では爆弾の位置を調べるため高速度カメラを使っていました。「天国と地獄」の逆ですね。

投稿: スタンリー | 2008年1月21日 (月) 10時25分

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