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映画で知る戦争協定

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 戦争映画でのセリフに「ジェネーブ協定違反だ」というのが時々出てくる。 私がこの言葉を知ったのはTV「コンバット」からである。

 これは1929年に制定された、俘虜の扱いに関する協定違反だということだ。  映画では「戦場にかける橋」にて、アレックギネスが早川雪舟にむかって「将校の労働は協定によって禁じられている」と反抗する場面で遭遇する。

 雪舟(役名忘れました)はその申し出を拒否するが、日本は1943年にこの協定を条件付で概ね批准しており、それ以後で、条件外ならば、彼は協定違反したということで戦争犯罪人というわけである。  

 つまり、一兵卒と将校は敵軍につかまっても、俘虜としての扱いに差があったわけである。  「コンバット」を観ると、敵,味方関係なく、捕虜になった将校は、たいへん優遇されているシーンが時々ある。 言葉遣い(日本語吹き替えでは独軍将校にも敬語を使っている)、敬礼、食べ物は米軍、独軍ともゲスト扱いだ。

 だから「戦橋」で雪舟はギネス(役名忘れました)のことを日本語で「大佐どの」と呼んでいる。 呼称だけは協定遵守というわけだ。

 このジェネーブ協定は、将校だけでなく兵隊も、もちろん正当に扱うことを明記している。 虐待してはいけないということである。私はそれ以上詳しく調べていないが、「戦橋」では炎天下、長時間ギネスが立たせたままにされるし、「戦メリ」ではボウイを同じく炎天下、土に埋めて虐待している。 しかもどちらも将校である。 これも明らかに協定違反で、命じた者は戦争犯罪人である。 

 日本軍は戦後の東京裁判で、捕虜虐待のヤリ玉に挙げられたが、それは戦時中、「生きて虜囚の辱めをうけず」と、捕虜になるのは恥であり、捕まるなら死を選ぶことをマインドコントロールされていたので、敵軍の捕虜までにも「人に在らず」の態度となり、虐待行動をとったとされたことによる。

 余談だが、戦時中、日本の捕虜収容所の食糧係りが、アメリカ兵のために、食糧難のころ、日本人にもご馳走のゴボウを苦労して採取し与えたところ、木の根を食わせたということで、戦後、捕虜虐待の罪を受けた者がいたそうである。

 戦争協定には1899年制定のハーグ条約というのもある。 その中で、「兵に不必要な苦痛を与える武器を使ってはならない」というのがある。 これが問題である。 武器というのは、みんな痛い目に合うと思いますがね。 

 その痛い武器のなかで有名なのがダムダム弾というやつで、この協定で禁止されている。 この弾は別名ホローポイントというやつで、熊なんかし止めるのに使われる。 なんでも「ルパンⅢ世」に出てくるということだが、ずっと古い夏目漱石の「我輩は猫である」にも出てきますぞ。 

 なぜ痛くて残酷かというと、体内で弾が細かく分裂し、複雑な銃創となるからで、傷の手当も手がつけられないからだそうである。 ちなみに以前、警視庁長官だったかが打たれたが、その時の弾がこいつである。

 このハーグ条約は日露戦争では両軍とも遵守された。 なお条約とは関係ないかもしれないが、日本軍が行ったロシア兵の捕虜の丁重な扱いは各国から賞賛された。そこのところは東宝「日本海大海戦」や「バルトの楽園」でみることができる。 そのころはまだ太平洋戦争の狂気の沙汰はない。

 ハーグ条約の影響か、これも定かでないが、明治38年、日本軍は正式な小銃として、口径6.5ミリの38式歩兵銃を採用している。 他国の軍隊が、7.7ミリの銃なのに、何ゆえ6.5ミリと小径かといえば、7.7ミリは威力がありすぎ残酷であるという理由による。 ま どっちも当たれば痛いし死ぬし、もともと戦争は残酷なもんですがね。 

 現在の各国軍は5.5ミリのちっちゃい弾を使っている。 これも敵が倒れればそれでよしという考え方だが、小型の弾倉に30発入るという利便性による。 第二次大戦中の米軍の自動小銃は7.7ミリ口径だったが、弾は8発しか入らなかった。それを思うと30発打てるというのは断然有利である。

 7.7ミリで30発の弾倉の小銃というと中東ゲリラなどが使っているカラシニコフというやつだが、銃もでかいし、反動がすごく、弾倉もバナナ式のゴツイやつで戦場では扱いかねる銃である。

 尚、日本軍の38式歩兵銃は5発入りの弾倉である。しかも自動でなく、一発ごと弾込め・薬きょう排出の動作をガチャンコとやるタイプ。 これではアメリカに勝てないですわな。

 さて映画「プライベートライアン」でスピルバーグは、リアリズムで武器の威力や戦争条約を思わせる描写をしている。

 まず、ノルマンディー上陸で、ちぎれた自分の腕を捜す兵がいるが、ドイツ軍の小銃、および軽機関銃は7.7ミリ以上の口径弾で、まず、腕に当たるとその先が無くなる。だからああいうことは決してオーバーな表現ではない。 

 トムハンクスやサンダース軍曹の所持しているトミーガンは威力のない拳銃弾を使用しているので、当たって腕が飛ぶということはないであろうが、複数の敵を近距離でなぎたおすのに効果のあるマシンガンである。

 そのトミーガンで、手を上げ、塹壕の中からぞろぞろと降伏してきたドイツ兵を一斉射撃するアメリカ兵がいる。 あれは完全にジェネーブ協定違反であり。撃った本人は戦争犯罪人である。上官に知られたら、たぶん軍法会議物。

 そのドイツ兵も市街戦で、アメリカの歩兵にむけて、20ミリ機関砲らしきものを引っ張り出してきて射撃する。 これも「不必要に苦痛を与える兵器」ということで、ハーグ条約違反といいたいところだか、このへんは当時も曖昧で、ガンの口径は無視されたようである。 

 しかし20ミリというブットイ万年筆みたいな弾を体に食らうと、炸裂弾の場合、この映画のとおり、人間の体は膨らんだ風船がはじけるように、飛び散ってしまい、苦痛の瞬間もないであろう。 あるいは真っ二つになってしまうかだが、この場合は本当に残酷である。

 アメリカ兵もドイツ兵も戦闘になってしまったら、戦争協定も人道主義もクソもないということをスピルバーグは言いたかったのではないか。

 アメリカ軍の戦闘機に搭載されたガンカメラによる、日本での機銃掃射の実写フィルムを観ると、海岸で逃げまとう民間人への銃撃や、汽車が引っ張っている客車、あるいは学校・お寺までの銃撃が行われている。 これは明らかに民間人への殺傷を禁じたハーグ条約違反である。 無差別爆撃や原爆投下もそうであるが条約うんぬんよりそれ以前の人間としてのモラルの問題である。

 アメリカの当時の戦闘機は12.7ミリという大人の人差し指くらいの弾を使用しているが、これは戦闘機やトラックのエンジンなどを破壊する、炸裂弾を含む弾であり、人に当たると、足ならば飛んで無くなっていまう威力がある。 

 アメリカ軍よ、あれを撮影し、銃撃した搭乗員を軍法会議にかけたか。

と 興奮気味にかいてしまったが、米軍の軍法に戦争協定を遵守せよとの法律があるかは不明であり、また「勝てば官軍」で、戦勝国が自国の軍人の違反をいちいち処罰するかも疑わしい。

 

 

 

 

 

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コメント

スタンリーメタボリックさん こんばんは
しかし、武器に関する造詣に深さはすごいですね!感服ですm( _ _ )m
ルパンがダムダム弾に撃たれそうになるエピソードはありましたねぇ。
ルパンはそれに対抗して水銀体温計の水銀を使って水銀弾を作って敵に撃つと相手の体が粉みじんになりました。
そんな弾、実際にあるんですかね?笑

投稿: ぱんだうさぎ | 2007年8月20日 (月) 23時38分

映画「二百三高地」では「日没後の戦闘はしない・・」と言うようなルールがあって、日没後、敵であるロシア兵と日本兵が酒を酌み交わしたエピソードがあったのを思い出しました。その頃は敵対しながらも兵士は兵士としてのモラルと自尊心があった様におもいます・・

それを考えると、近代~現代の無差別に人を殺してしまう兵器の数々・・核兵器をはじめ・対人地雷・ベトナム枯葉剤・劣化ウラン弾など・・・は酷い物だ・・と思ってしまいます。

投稿: ぴろQ | 2007年8月21日 (火) 04時00分

ぱんだうさぎさん。コメントありがとうございます。私、戦争メカは興味あるのですが、戦争、軍隊、全体主義、いばりくさった軍人は大嫌い。昭和二桁に生まれた幸福と平和に感謝しています。 ルパンであった水銀爆弾というのは残念ながら知りません。 ご存知でしょうが、水銀は単体でも猛毒で、ルパンは爆弾制作中に水銀中毒になったかもしれませんね。

投稿: スタンリー | 2007年8月21日 (火) 20時05分

ぴろQさん。コメントありがとうございます。「二百三高地」は観た記憶があるのですが、そのシーンは覚えていません。情報ありがとうございます。 おっしゃるとおり、民間人を巻き込むような兵器はこりごりですね。 戦争するならロボットでも使って遠く離れた月でやってほしいですね。 これいいアイデアでしょう。

投稿: スタンリー | 2007年8月21日 (火) 20時13分

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