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昔の日本映画の会話

 昭和20年代の映画を観ると、時々会話の展開に驚くことがある。 それは、しばし、肉親の間であっても、非常にばか丁寧な言葉を使っているからだ。そういうセリフが多いのは、日常のさりげない営みを表現したドラマである。

 例えば、成瀬巳喜男監督の映画。 「山の音」 川端康成原作  水木洋子脚本での 嫁と義父の会話。

嫁(原節子) : 「お父様 お帰りなさいませ」

          「何をご覧になすってますの」

 この映画では原節子が夫(上原謙)に対しての会話でもこの調子である。

同じ成瀬監督の「めし」 では実家に帰った娘が父親から説教を受ける場面

          「お父さま なぜ怒ってらっしゃるの」

          「お父さまが お怒りになるのこわい」

 さて、昔の人は一般家族でも、こういうしゃべり方をしていたのであろうか。 日本映画全般には疎くて、特定の監督のものしか知らないが、小津監督と、成瀬監督のものに、こういうしゃべり方が多いような気がする。 このしゃべり方を、山の手言葉というのかどうかは知らないが、裕福な家庭というイメージである。 事実「山の音」の一家の長(山村聡)は銀行の幹部で経済的にめぐまれているらしい。夕食にイセエビとサザエが出るくらいだ。 

 しかし 「めし」では長屋住まいの安月給のサラリーマンの夫婦(やっぱり上原謙、原節子)であっても、妻の夫へのセリフはこうである。

    「あなた食事をするときぐらい、新聞をお止めになったらどう」、とくる

現在だったら

    「あんた、食事しながら新聞やめて」 が普通ではないか。

 女性だけだと思ったら、息子が親に向かっても、こんな具合である。これがあの当時の一般家庭の言葉使いだとすれば、現在、いや私の子供の頃から、日本の家庭というのは、随分がさつになったものである。 少なくとも私の家庭では、恥ずかしくてあんな会話はできない。 昭和の昔、あれは現実だったのでしょうか。 それとも原節子出演のイメージを保つためなのか。

 さらに、あのころの映画では、「おビール」、「お紅茶」という言い方も良く聞く。 キャバレーなどの話ではなく、家庭内でのことだ。 それなら、オムスビやお茶漬けやオシンコはなんと言うのだ。 

 ま、それは冗談だが、巨匠の作品には、和室のセットでも、高級な骨董や調度品を配置して、上品さをかもしだしているが、「巨人の星」の一家のような貧乏育ちの私としては、言葉といい、清楚な画面といい、どうしてもひがみっぽくなってしまう。 また、ああいう家庭の存在が信じられない。

 あなた、お家族に向かって、ああいうお言葉を、おはなしになりますか。

 

 

  

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コメント

昔の日活映画とかみていても、若者の言葉遣いが今とあまりにも違うのでびっくりします。あれは、ああいうキャラを演じさせられているのか、それとも当時の若者は本当にあんなしゃべり方だったんでしょうか。

投稿: ogat | 2007年8月 5日 (日) 21時21分

ogatさん。こんばんは。 先週BSで、そのての日活物の放送がありましたね。 今、ぼちぼち観ているところです。 石原慎太郎の小説は読んだことがないのですが、あのあたりから、慎太郎流、裕次郎流の変な言葉が発生しているのかもしれませんね。 例えば「イカスぜ」など。 その前だと石坂洋次郎なのか、これも定かではありませんが。

投稿: スタンリー | 2007年8月 5日 (日) 22時06分

あの時代の丁寧語を使う家庭には次のような共通点がある。1.父親に社会的地位がある(あった)2.年収が多い。3.いわゆる持ち家である。賃貸住宅ではない。4.父親には兄弟が比較的多く長男である。
データ的にこんな感じでした。でしたは過去形。

投稿: ロンリー・マン | 2008年1月21日 (月) 05時04分

ロンリー・マンさん。ありがとうございます。
ご指摘。なるほどとおもいました。
小津の晩年の戦後作品はそんな感じですね。
彼の映画は好きですが、そういうところがなんとなく抵抗を感じます。
小津の反対に行ったのは今村昌平でしょうか。

投稿: スタンリー | 2008年1月21日 (月) 11時30分

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