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野良犬

野良犬 DVD 野良犬

販売元:東宝ビデオ
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 暑くなると観たくなるのが、黒澤監督の「野良犬」で、この映画も夏の暑い盛りの設定だからだ。 暑いときは「八甲田山」でも観るのが手だが、暑いときにカレーウドンを食うと暑気払いになるのと同じで、暑いときは暑そうな映画を観るのが一番である。

 とはいっても、この映画の撮影が、真夏に撮影されたかというと、そうとはいえない。 黒澤監督は夏のシーンを俳優さんにやってもらうには、冬に行ったほうが、いい演技をする。と言っていた。 事実、前前作「酔いどれ天使」では夏のシーンなのに吐く息が白く、冬に撮影したことが、バレてしまっていた。

 「なに、ピストルをスられた」の清水元(うまい)のセリフの後、同じ説明のナレーションで映画が始まるが、大方の意見のとおり、この説明はくどい。 その後のピストルをスラれるバスの中のシーンまでも解説してしまっている。 特にこの場面のナレーションは明らかに不要である。 黒澤監督初めてのサスペンス物で、まだ不器用さがある。

 ピストルの横流し屋に千石規子さんが出演している。この人は、昭和40年ごろから、おばあちゃんの役が定番となっているが、このころは案外かわいい人ですね。 髪に花を挿して(ピストル取引の合図)トマト食っていて、スネた女をうまく演技していました。 取調室で志村喬からタバコをもらい、うまそうに吸う場面が印象的です。

 スリ係りの刑事(川村黎吉)が犯人探しに協力しますが、この俳優さん、うまいですね。まるでアドリブのようにサラリとセリフをしゃべります。全然芝居くさくない。この映画で、私はすっかり彼に魅了されました。森繁久弥さんに、「かなわない」と言わしめた俳優さんです。 小津監督の「戸田家の兄弟」にもちょっと出演していますが、これまた演技とは思えない自然派です。 「三等重役」もいいですね。

 刑事の三船が 当時のヤミ市などを、手がかりを追って放浪するシーンがありますが、当時の流行歌が流れるなか、ちょっと長すぎる気配だけど、無言劇で進む、テンポのいいカットが続きます。これは助監督の本多猪四郎さんが撮ったものです。 黒澤監督と本多監督は同期入社のツーカーの仲で、本多さんは女房役といった間柄ですね。  黒澤監督は、なにかと助監督を怒鳴りつける人でしたが、さすが本多さんにはしなかったでしょう。

 犯人の恋人役のハルミ(淡路恵子)が告白するところは、黒澤監督の定番、滝のような大雨が降ってきます。 抑圧されていた心が解放したあとの、カタルシスですね。 いやこれは評論家の佐藤忠男氏の受け売りです。 とにかくこの監督はよく雨を降らせます。 黒澤の雨は世界の映画監督に影響を与えていますね。 タルコフスキーなど。  淡路恵子さんは映画出演が初めてで、最初イヤでたまらなかったけど、最後の撮影が終わってスタッフや俳優さんと別れるとき、泣いたそうです。 カワイイネ。 

 志村喬と三船が警察のビルの屋上で、捜査の展開を話し合うシーン。撮影監督の中井さんは、曇り空で露出が足らず、撮影中止を宣言しましたが、黒澤監督はGOを指示。ヤケクソで撮ったらうまく写っていたという話です。今度見るとき確認してください。

 黒澤監督の映像では、よくモノが画面に詰まった感じだといわれます。レビューの踊り子たちが、楽屋で暑さで倒れこんでいるところなどがそうですね。以後の映画でも、そういった場面がよくでできます。

 佐藤刑事(志村喬)の家の夏の夜のシーンいいですね。 私の子供のころは、夏休みの親の実家はああいうふうでした。縁側から外を観るとホタルが飛び交っていて、外に出で夜空を仰ぐと、降ってくるような天の川。

 ここで、アプレゲールという言葉がでてくる。戦後派という意味らしいが、この当時の映画にしばしばアプレという短縮形でセリフに出でくるので、覚えておいて損はない。

 ところで、犯人は遊佐という名であるが、英語字幕ではUSAであろうか。ちょっとむこうの人に誤解を与える。それともYUSAか、これもなんか引っかかるね。 私は黒澤の映画を英語字幕で観たいのです。 これはひとえに、彼の映画の録音が良くないというのが一因でもあります。 アメリカからソフトを取り寄せればいいですね。

 村上刑事が遊佐を追い詰め格闘する沼のシーン。私の最も好きなところです。 この場面を始めて観たのは、中学生のころ。テレビで黒澤特集のドキュメンタリーでの中です。 どろだらけで格闘するカットにはちょっとショックを受けました。 朝もやのなか、近くではだれかが、ピアノ(ピアノ学習者にはおなじみ、クーラウのピアノソナタ)を鳴らしている。 なにげない、誰も知らない空間で、ピアノの音だけが流れ、時間は止まってしまったかのようなのに、生きるか死ぬかのカタストロフ。 私はいつもここで涙が出てきました。

 遊佐が手錠をかけられてからの名場面、彼の慟哭は、評論家がたくさん解釈しているので、省略します。

 

 

 

 

 

 

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コメント

ご訪問有難うございました。
ぱんだうさぎさんのところでコメント拝見しましたが、
面白い切り口ですね。
余談ですが淡路恵子さんは、今年もドラマに出てましたが、
亡くなったのですか?気付きませんでした。

投稿: バルおばさん | 2007年8月11日 (土) 22時50分

パルおばさん(おねえさん)ようこそ。 淡路さんは確認せず、故人にしてしまいました。木暮実千代さんと混同しました。すみませんでした。ご本人にもおわびします。 私の記事、すこしシニカルで、お気に障ることもあるかもしれませんが、これからもよろしくどうぞ。

投稿: スタンリー | 2007年8月12日 (日) 08時21分

どうしても 「英語字幕」じゃなきゃ、ですか?
「日本語字幕」なら レンタルDVD にもついてますが・・・・・・。
それほど 「英語字幕」 にこだわる理由は?
テルミー プリーズ(^^)/

投稿: ゆめ子 | 2008年1月11日 (金) 07時48分

ゆめ子さん。ようこそ。
英語圏の人に、日本語のセリフ内容をどのように伝えているのか、知りたいというのがあります。
当然、長いセリフは、画面に収まるように短縮されてしまいますからね。
「七人の侍」では種子島は単なる「GUN」となります。
このような変換が、日本語字幕を見るより面白いですね。
また場面状況の英語が勉強できます。

投稿: スタンリー | 2008年1月11日 (金) 10時33分

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