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2001年宇宙の旅 ワルツ

2001年宇宙の旅 DVD 2001年宇宙の旅

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
発売日:2006/12/08
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 骨から衛星になりますね。1979年のテアトル東京では、ここで、ちょっと歓声があがりました。私も含めて予備知識期待組の「まってました」コールでした。 ピアノ線でつるなど論外の、滑らかな動き。真空を感じさせる光と影のコントラスト。宇宙の描写のキューブリックの指示は、全く正しい。 

 ただ、地球の輪郭に、薄く大気を感じさせる描写があれば結構なのだが、1965年撮影当時ではしかたないか、それは「スターウォース゛」まで待たなければならない。 (ただし、実際に宇宙から地球を見たら、地球の輪郭部分で大気層がはっきり見えるわけではないので、念のため。 リンゴを地球だとすると、大気層は、リンゴの皮くらいの厚みだそうですからね。だからこの映画のほうが正確かもしれない)

 パンナムのシャトルが現れます。撮影模型は90センチで、決して大きくないのですが、ディテールの精密なこと。ミニチュア然としていない。 日本の特撮模型の宇宙船だと、表面がツルツルして、照明で光っていますがね。 滑らかな動きと、コントラストのよさ、宇宙ステーションやミニチュアのすべてにピントがあっているのは、レンズの絞りを深くし、1コマ1コマ長時間露光したため。ミニチュアをフレームに固定し、逆にカメラのほうを動かして撮影するテクニックが、滑らかな動きに寄与しています。あの当時、モーションコントロールカメラは無かったので、カメラをレールに乗っけ、シンクロされたギアードモーターで、コツコツ撮影したのでしょうね。 

 ステーションの模型の直径は1.8メートル。 カメラが二つの居住区の中を通過するので、シュノーケルカメラが無かった当時、カメラの大きさは模型の間隔とギリギリだったはずです。 現在の技術だと、MCカメラで何回も同じ動作のカメラ移動ができるので、2重露光などで、窓の光などの焼付けは簡単にできるのですが、当時はきわめて、ローテクの撮影です。

 「美しく青き・・・」のゆっくりしたイントロダクションの途中部分で宇宙ステーションが登場するのは、私にとっては、ちょっと疑問のカットである。 本演奏が始まった早い三拍子部分で登場すべきだ。 キューブリックに聞いてみたいが、すでに故人。残念。 また、配給におよび、ここでの宇宙シーンを一部カットしているそうで、これまた残念。ディレクターズカット版があればね。 残念。

 シャトル内、キャビンアテンダントのコスチュームはやはり1960年代ですね。ちょっとレナウン(知ってますか?)のデザインぽい。彼女の歩いている、左の壁部分見てください。ちょっと影がうごいていますね。無重力のペンを操作しているスタッフのアシスタントの影だと思います。

 宇宙ステーション内のセット。ぜいたくですね。スゲー金がかかっている。ただし、ヒルトンホテルとベル電話会社から多少広告料が入ったかもしれませんが。           

 ソファーのデザインと鮮やかな赤色が美しい。 「大阪万博」的、未来シーン。

 湾曲したステーションのフロアの描写は,1959年の東宝「宇宙大戦争」でもあります。キューブリックは映画の準備段階で、世界のあらゆるSF映画を調べています。日本の映画も観ています。でもまあ、参考にするほどでもありませんがね。人工重力ではこうなりますから。

 ところで、ロバート・マッコール氏描く、有名な見事なポスターがありますね。建設中の第二居住区で、明らかに無重力状態で作業している人と、宙に浮く建設資材が見えます。 つまり時々、ステーションの回転を停止しているのです。どうでもいいですか。

 アリエスのデザインもすばらしいですね。日本で計画している宇宙船「観光丸」に似ている。 キャプテンを演じるのは、エド・ビショップ。1980年代にシャドーの司令官をしていましたが、激務に耐え切れなかったか、あるいは宇宙人と和平が結ばれたかで、お役御免になり、2001年ではパイロットに転職したんですな。・・・・明るい顔している。

 キューブリック本人も言っていますが、完璧とみえるこの映画でも、いくつかのミスがあります。 フロイド博士が飲む流動食のストローの液面がさがるというのは、気圧の関係とかで説明できますな。 

 決定的ミスというのは・・・

 アリエスが月面基地着陸のファイナルアプローチで、コクピットの窓から月面基地が見える。 ということです。 アリエスは月面に向かって下向きに逆制動の噴射をし、コクピットを上にして降りているのです。 窓からは宇宙の星しか見えないはず。 もちろんキューブリックも認識済みのウソのカットですね。

 アリエス着陸の見事なこと。 着陸ギアのサスペンションの動きの見事なこと。 日本の特撮だと、噴射ノズルから弱々しい火薬の炎を出し、煙が上に昇って、ミニチュア撮影のボロを出すところですが、 あえて炎を出さなかったキューブリックの特撮の指示は正しい。 実際、強烈な太陽光の月では、ロケットの噴射ガスは、ほとんど見えないはず。

 口を開く月面ドームの動きと、当たった光と影のすばらしいこと。この月面の真空を思わせるクリアな描写は全く正しい。 強烈な太陽光と冷たい真空の過酷なロケーションの中で、月面基地の扉と誘導灯が暖かく迎えてくれる。 

 ただし地下のドッキングベイは、随分無駄な空間のようにみえますが。

参考資料: メイキング・オブ・キューブリック「2001年宇宙の旅」 

          ジェローム・アジェル編 山川コタチ 私訳

         未来映画術「2001年宇宙の旅」 

          ピアース・ビゾニー著 浜野保樹・門馬淳子 訳   

 

 

 

 

 

 

 

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