カテゴリー「2001年宇宙の旅」の記事

「2001年宇宙の旅」のミス、再び

 映画「2001年宇宙の旅」における重大なミスについて、依然、気が付いておられない方々が大勢いるようなので、過去に指摘した事例を再び画像で説明します。

 この映像に物理的、ロケット工学的、重大なミスがあるのです。

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 つまり、機体の天井にあるアリエスのコクピットの窓から、今、まさに着陸しようとしている月面基地が見えてはいけないのです。

 本来なら、この高度ではアリエスはロケットエンジンを噴射して降下しているので、上を向いているコクピットのパイロットは漆黒の宇宙しか見えないはずです。

 ですから、この映像のままでは、いち早く、機体のコックピット側を月面に対して上12時方向に45度反転させねば、ロケットエンジンの制動が効かず、月面に激突してしまいます。(アポロ宇宙船では、この反転作業をピッチオーバーと言い、高度約8000フィートから始めています。)

 いや、多分、墜落を待つのみかもしれません。

 次のカットも変ですね。地球が上昇しています。

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 映画ではこのカット以前に、エンジンを下向きに、正常に物理的に正しい角度で下降しているカットがあるのにもかかわらずです。

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 キューブリックさん、そして技術顧問として監修したNASAの方、どうしたもんでしょうかね。

 それともアリエスのストレーカー・キャプテンが、お客さんのため、座席についたまま月面基地を見せようとワザと機体を水平に反転させた危険なパフォーマンスだったのでしょうか。危ない、危ない。これでは着陸に間に合いませんな。

追記:そもそも、月面ではVTOLとして機能する宇宙船のコクピットが、パイロットから地上が直接見られない場所にあること自体、設計ミスなのです。

 尚、フロイド博士が宇宙食として飲んでいるジュースが、無重力にもかかわらず口を離した瞬間、ストローの中で下降するというカットは、この映画の唯一のミスとして巷に流布されているようですが、これは気圧のいたずらとして説明できるのです。上の例のような重大なミスではありませんので念のため。

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 それにしても久しぶりにTFTの画面で観た真空の宇宙、光と影が美しいこと。何度観てもすばらしい。 

 

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2001年宇宙の旅 「シーハー」

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著者:和田 誠,星 新一
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 小説家の星新一はこの映画を見た後こう言ったそうである。

「シーハーの多い映画ですな」・・・シーハーとは呼吸の音のことである。

映画後半、休憩前にハルはアンテナ装置の不調を訴え、二人の船外活動が多くなる。 

それにキューブリックはヘルメット内の「シーハー」の呼吸の音と、「シュー」というエアの音を入れた。

しかし、映画製作当初、ここには音楽が入る予定だったのだ。作曲家(アレックス・ノース、「スパルタカス」)も決まっており、録音も終了していた。 どんな音楽か今となっては想像も出来ない。

あのシーハーの音を聴いていると、映画も後半で、そろそろ疲れがきて、正直言って眠くなってくる。

実は、この船外活動が2度もあることや、二人の演技にメリハリがないことで、このシーンが長すぎるとの批評はよく聞くことである。

ところで、あの宇宙服、イギリスの海上救助の器具を造るメーカーに依頼したそうだ。 ヘルメットは別会社であるが、息の曇りがつかない工夫がしてあるはずである。

スペースポッドは今見ても、現物として使えそうなくらい完璧な乗り物である。

小型宇宙艇というより、潜水艇としても実用的なデザインのように見える。  あれは同じくイギリスのホーカーシドレー社が内部まですみずみ担当した。 

戦闘機ハリアーの会社である。

映画では無線をディスコネクトするところとハッチの爆破シーケンスの装置ぐらいしか見られないが、どこにカメラを向けても、それらしく見える計器類が、ちゃんと文字を印刷され待機しているはずである。(内部撮影用ポッドは半分コになっている)

あの当時の日本映画では、SFなどに出でくる計器類に、秋葉原で売っているバーニアダイヤル、トグルスイッチ、パイロットランプ、電流計などがそのままセンス無く無造作に取り付けてあり、昔のラジオ少年が作った無線機みたいでがっかりする。 

せめてカメラのアップで写るところは、それらしい文字をパネルに印刷すべきだ。

ボーマンがポッドから出てくるところ、および、ポッドから緊急脱出しエアロックに進入するシーンはカメラを下から撮り、上から本人を吊り下げ、ワイヤーが見えないようにしてある。 同じく後のハルブロック進入でも同じ。

「2010」では、同じくハル内部のシーンでボブ・バラバンは、長い棒に乗っかっておりました。

プールがハルの暴走により、エアチューブがはずれ、もがくシーン。 回転して、ポッドにキャッチされるのもスタントマンを吊って下から撮影した。

でも、まあ、これは皆さん言われなくとも気が付いてますね。

回転のカットの実際は、ハイスピードカメラを使っているので、かなり早く廻っており、アームにぶっかった時はスタントマンは失神寸前だったそうである。

よーく見るとぶつかった際、なにか宇宙服から破片が飛び散っているのでかなりの衝撃である。

この映画での事故はハルのセットからスタッフが落ち、腰の骨を折ったのが1件のみであるが、プールが回転ブロックに居たとき、照明が落ちて危うく大怪我というハプニングもあった。 

彼はメシを食っているシーンで、天井に縛り付けられているが、俳優も楽じゃない。 この回転ブロックでの撮影は、いつケガ人が出てもおかしくない状態であった。 

おまけに残業、休日出勤は当たり前で、一昔前の日本の映画撮影と同等である。 あ 今でも日本の映画撮影は同じですかね。

 星新一は「2001」と同年公開の「猿の惑星」のほうを高くかっていたそうである。

 

参考資料: メイキング・オブ・キューブリック「2001年宇宙の旅」 

          ジェローム・アジェル編 山川コタチ 私訳

         未来映画術「2001年宇宙の旅」 

          ピアース・ビゾニー著 浜野保樹・門馬淳子 訳 

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2001年宇宙の旅  HAL

 回転する遠心ブロック(直径11.4メートル)には、当初、卓球台、ピアノ、シャワー室が設定されていましたが、撮影時削除されました。幅3メートルと狭いですが、ピアノキーボードは設置できそうである。

 いろいろなディスプレイのフラットな画面は、バックから映写機により投影している。 これは照明とともに、あの回転部分に大変な熱を発生させるため、撮影時は送風ダクトにより内部を冷却している。

 このフラットディスプレイは時代を予見した、センスのいいアイデアですね。 現在ならプラズマディスプレイなど使えますが、当時ではソニーなどに小型のCRT(ブラウン管)しかなく、それを使わずリアプロジェクションにしたのは、大正解です。 ところが映画「2010」では、CRTを使ってしまっています。直接コンピュータ画像を表示できるとはいえ、曲面のあるブラウン管では時代遅れに見え、周辺のソリッドな感じとマッチしない。 あれはスタッフのサボリであり、せめてフラットブラウン管を使用すべきであった。(当時ソニーが造っていたはず) 私はどうもあの映画のシドミード(レオーノフ号内部)のデザインも好きではない。

 HALはIBMの次のアルファベットにしたとよくいわれますが、真相は偶然の一致だそうです。 IBMは撮影に協力体制でしたが、後に自社のコンピューターの設定であるHALが反乱し、危害を加えると分かると、この映画への協力から全面撤退しています。 そのためIBMというロゴはパンナムシャトルのコクピットのデイスプレイ部分にしかない。 ほかにありましたっけ。

 HALの声を担当しているのはダグラスレインですが、マーチンバルサムも声の候補に上がっていました。 結局演技しずぎるということで、レインとなったようで、そのレインも予定ではカットされたナレーションが担当だったのです。

 カットされたといえば、重要なシークエンスが削除されました。プールがHALに質問するシーンです。次の会話

 プール 「この任務については、何か知らされていないものがある。我々以外の乗員(冬眠している3人)は知っているし、それに君も知っているはずだ。本当のことを知りたい。」

 HAL  「申し訳ないがフランク、その質問については、あなたが知っている以上のことは答えられそうにない」

 で、つまりボーマンもプールもこのミッションになにか秘匿性があることを感じていて、HALにもその重圧があることを匂わせています。

参考資料: メイキング・オブ・キューブリック「2001年宇宙の旅」 

          ジェローム・アジェル編 山川コタチ 私訳

         未来映画術「2001年宇宙の旅」 

          ピアース・ビゾニー著 浜野保樹・門馬淳子 訳 

 

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2001年宇宙の旅 The jupiter mission

ハチャトリアンのクールな弦楽器曲が流れるなか、ディスカバリー号が船首からゆっくり現れてきますね。私がこの映画の中でもっとも好きなシーンです。あの宇宙船の存在感といったら、もう匹敵するものはありません。ゴジラがシェーしている時分の映像ですよ。 この宇宙船の見せ方は、以後のSF映画に大きな影響を与えています。 この映画の予告編では、もうこのシーンを見せてしまっていて、もったいないですね。ヒチコック式に秘密にすればよかったと思います。たぶんキューブリックもこの予告編には反対したのではないか。

 この映画を野次馬的に観にきた入場者は、この部分からダレてきているはずです。 類人猿のとき現れた石柱が、進化した人類の前に再び出てくる。それは分かる。 そしてまた同じように石柱にタッチしたら、ノイズが発生し、いきなり宇宙船が現れる。 これはどういうことだ。 お客の頭の上にクエスチョンマークがでているのが感じられました。

 最終編集でカットされた、この部分のナレーションを抜粋すると。

「 しかしいま、深宇宙を監視する装置が何か奇妙なものを記録した---かすかな、だがまたたきなき乱調のさざなみが太陽系をよぎっている。 これまで観測された自然現象とは全く違う現象だ」

とあり、若干の納得させる要素があります。

 ディスカバリー号を分析してみましょう。 撮影に使用されたミニチュアは二つあり、この登場シーンでは、全長50フィート(約15.3メートル)、船首球形部分は6フィート(約1.8メートル)です。もうひとつは遠景撮影用の15フィート(約4.6メートル)です。 ジャイアントモデルは窓にコクピット内を投影するため、必然的にあのサイズになったとのこと。 撮影はやはり、ロングフォーカスのためカメラの絞りを深くし、1コマ数秒の露光とし、レールに置かれたカメラは、1時間数フィートという割合で動いています。したがって、このシーンの撮影には足掛け二日間ほどかかっているはず。 

 この宇宙船のデザインでは、当初クラークの意見により、原子力エンジンの放熱のため、後部機関部分に大きなフィンが2枚つけられていましたが、翼のように見えるという、キューブリックの指摘により、削除されました。 さらにモデルが完成した段階で、真ん中の骨のような推進剤・貨物モジュールの周りに、船首から、機関部にかけて10本以上のチューブが設置されていましたが、これも最終的に撤去されました。

 原子力エンジンは、すでに50年ほど前に実験でも成功している方式ですが、大気圏内での使用は言語道断であり、宇宙空間のみ有効の推進方法です。ただ推進剤だけは必要であり、ディスカバリー号は「骨」の部分に貯蔵されている設定ですが、木星到着時の制動と帰還時のロケット噴射のためにあの部分の容積で足りるとは疑わしい。 私だったら、外部に大きなタンクを設定します。事実、デザインのスケッチ段階では、推進剤タンクが付いているものがあります。

 指令船モジュールは内部に遠心居住区がありますが、よく指摘されていることは、ポッドのブロック、ハルのブロック、エアロックの構造を考慮すると、外から見た全体の容積の推察では、この遠心ブロックの存在は無理であるということです。 これもオオメニミテネということでしょう。

 さて遠心ブロックを回転させるのはいいが、当然物理的に回転のトルクを打ち消す構造が必要であり、もう一つ逆回転の遠心ブロックがあれば解決するが、なおさらあの大きさと容積では不可能ですね。 どこか別の場所にフライホイールがあるのかもしれません。 映画「2010」ではそのメカが恐らく機能停止しており、宇宙船全体が縦てに回転してしまっていましたが、あの回転方向はちょっとオカシイです。

 ボーマンが遠心ブロックでランニングしていますね。引き続きハチャトリアンの音楽が流れていますが、撮影時はショパンのワルツをかけたそうです。たぶん長調の明るい曲でしょうね。だいぶ雰囲気が変わってしまいます。 さてボーマンは居住区の回転のどちらの方向に走っているのでしょうか。もし同回転だったら、彼の体重は増し、逆だったら軽くなるはずです。映画を改めて観て見ると、どちらにも走っているようにみえます。どうやら方向転換しているようです。 でもあの回転数で1Gが再現できるだろうか。 少々遅いような気がするが。さらにあの回転直径では、足の部分と頭とには重力に差が発生し、頭に血が昇るのではないだろうか。

 重箱スミツツキはこれまでとし、さて、あの走るボーマンを下から仰ぐ撮影はどうやったか。 私は回転中心部分から、固定されたクレーンが下まで伸びており、そこにカメラが設置されているものだと思っておりました。

 違いました。なんと床の真ん中に狭いスリットがあり、薄い頑丈な鉄板をそこから突き出し、カメラを乗せて撮影したのです。よく見ると、たしかにあのシーンの床の中央に黒いスジがあります。 あの隙間の両側には鉄板が通った後すぐ閉じるゴムが接着されているのです。

 「なんということでしょう」。 遠心モジュールは、真ん中から真っ二つに分かれているのです。 ということは、かなり複雑な駆動方式であり、事実、二つの大きな車輪の隙間を保ち、回転速度をシンクロさせるのは、役者の安全にもかかわる大変な撮影だったそうです。

 

参考資料: メイキング・オブ・キューブリック「2001年宇宙の旅」 

          ジェローム・アジェル編 山川コタチ 私訳

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          ピアース・ビゾニー著 浜野保樹・門馬淳子 訳  

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2001年宇宙の旅 TMA-1

 フロイド博士の演説。 やはり会議室のテーブル、イスなどのデザインは大阪万博ですね。 コスチュームは少し英国的に感じる。 ま この映画はほとんどイギリスで造られましたので。 

 月の重力は地球の六分の一で、当然物理的な動きは変わってくるはずですが、会議室の人間の動きは完全に1Gですね。 これにはキューブリックも、如何ともできなかったわけで、下手にノロノロした動きでは逆に変なので、そのまま演技させたのでしょう。 オオメニミテネ ということ。

 カットされたシーンがあり、フロイド博士の娘(ブッシュベイビーがほしいといってた落ち着きのない子はキューブリックの娘)が月面基地内の広場で、みんなとお絵かきをしているところにフロイド博士がやってくるというのがあります。

 冷たい真空の月面を、リゲティ作曲の合唱にのってムーンバスが飛んでいきます。 青白い光とクールな女性の声の合唱曲。 なにかペパーミントのような清涼感。

 ところで月面を移動するのに、あのように宙を飛行する方法は有効であろうか。 真空なので、翼による揚力は使えず、水平飛行中でも、常に垂直方向にロケットを噴射しなければならないが、そうなると燃料は5分もつかどうかである。 バスの重量を仮に6トンとすると、ロケット推力は1.5トンもあればよいが、やはり燃料タンクは大きくなるはずで、あの構造では、とても30分や1時間は飛行できない。

 ムーンバスの撮影も露光時間1コマ数秒の正確なコントロールで行われています。窓内の人物の合成はフィルムを巻き戻し、窓以外のミニチュアを黒くし、映像を窓に投影して、同じ動きによる再撮影で焼付けます。

 フロイド博士一行がモノリスと立ち会うシーンは1965年の映画最初の撮影でおこなわれました。 手持ちカメラが使われていますね。 日本では「貧乏ゆすり」と呼ばれる撮影テクニックです。 撮影はキューブリック自身が行いました。小型カメラだと画質が劣化するため、ひとりではとても持てない、65ミリの大型カメラを使い、助手に支えられながら撮影したのです。 あの人は根本的にカメラマンですな。

参考資料: メイキング・オブ・キューブリック「2001年宇宙の旅」 

          ジェローム・アジェル編 山川コタチ 私訳

         未来映画術「2001年宇宙の旅」 

          ピアース・ビゾニー著 浜野保樹・門馬淳子 訳   

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2001年宇宙の旅 ワルツ

2001年宇宙の旅 DVD 2001年宇宙の旅

販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
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 骨から衛星になりますね。1979年のテアトル東京では、ここで、ちょっと歓声があがりました。私も含めて予備知識期待組の「まってました」コールでした。 ピアノ線でつるなど論外の、滑らかな動き。真空を感じさせる光と影のコントラスト。宇宙の描写のキューブリックの指示は、全く正しい。 

 ただ、地球の輪郭に、薄く大気を感じさせる描写があれば結構なのだが、1965年撮影当時ではしかたないか、それは「スターウォース゛」まで待たなければならない。 (ただし、実際に宇宙から地球を見たら、地球の輪郭部分で大気層がはっきり見えるわけではないので、念のため。 リンゴを地球だとすると、大気層は、リンゴの皮くらいの厚みだそうですからね。だからこの映画のほうが正確かもしれない)

 パンナムのシャトルが現れます。撮影模型は90センチで、決して大きくないのですが、ディテールの精密なこと。ミニチュア然としていない。 日本の特撮模型の宇宙船だと、表面がツルツルして、照明で光っていますがね。 滑らかな動きと、コントラストのよさ、宇宙ステーションやミニチュアのすべてにピントがあっているのは、レンズの絞りを深くし、1コマ1コマ長時間露光したため。ミニチュアをフレームに固定し、逆にカメラのほうを動かして撮影するテクニックが、滑らかな動きに寄与しています。あの当時、モーションコントロールカメラは無かったので、カメラをレールに乗っけ、シンクロされたギアードモーターで、コツコツ撮影したのでしょうね。 

 ステーションの模型の直径は1.8メートル。 カメラが二つの居住区の中を通過するので、シュノーケルカメラが無かった当時、カメラの大きさは模型の間隔とギリギリだったはずです。 現在の技術だと、MCカメラで何回も同じ動作のカメラ移動ができるので、2重露光などで、窓の光などの焼付けは簡単にできるのですが、当時はきわめて、ローテクの撮影です。

 「美しく青き・・・」のゆっくりしたイントロダクションの途中部分で宇宙ステーションが登場するのは、私にとっては、ちょっと疑問のカットである。 本演奏が始まった早い三拍子部分で登場すべきだ。 キューブリックに聞いてみたいが、すでに故人。残念。 また、配給におよび、ここでの宇宙シーンを一部カットしているそうで、これまた残念。ディレクターズカット版があればね。 残念。

 シャトル内、キャビンアテンダントのコスチュームはやはり1960年代ですね。ちょっとレナウン(知ってますか?)のデザインぽい。彼女の歩いている、左の壁部分見てください。ちょっと影がうごいていますね。無重力のペンを操作しているスタッフのアシスタントの影だと思います。

 宇宙ステーション内のセット。ぜいたくですね。スゲー金がかかっている。ただし、ヒルトンホテルとベル電話会社から多少広告料が入ったかもしれませんが。           

 ソファーのデザインと鮮やかな赤色が美しい。 「大阪万博」的、未来シーン。

 湾曲したステーションのフロアの描写は,1959年の東宝「宇宙大戦争」でもあります。キューブリックは映画の準備段階で、世界のあらゆるSF映画を調べています。日本の映画も観ています。でもまあ、参考にするほどでもありませんがね。人工重力ではこうなりますから。

 ところで、ロバート・マッコール氏描く、有名な見事なポスターがありますね。建設中の第二居住区で、明らかに無重力状態で作業している人と、宙に浮く建設資材が見えます。 つまり時々、ステーションの回転を停止しているのです。どうでもいいですか。

 アリエスのデザインもすばらしいですね。日本で計画している宇宙船「観光丸」に似ている。 キャプテンを演じるのは、エド・ビショップ。1980年代にシャドーの司令官をしていましたが、激務に耐え切れなかったか、あるいは宇宙人と和平が結ばれたかで、お役御免になり、2001年ではパイロットに転職したんですな。・・・・明るい顔している。

 キューブリック本人も言っていますが、完璧とみえるこの映画でも、いくつかのミスがあります。 フロイド博士が飲む流動食のストローの液面がさがるというのは、気圧の関係とかで説明できますな。 

 決定的ミスというのは・・・

 アリエスが月面基地着陸のファイナルアプローチで、コクピットの窓から月面基地が見える。 ということです。 アリエスは月面に向かって下向きに逆制動の噴射をし、コクピットを上にして降りているのです。 窓からは宇宙の星しか見えないはず。 もちろんキューブリックも認識済みのウソのカットですね。

 アリエス着陸の見事なこと。 着陸ギアのサスペンションの動きの見事なこと。 日本の特撮だと、噴射ノズルから弱々しい火薬の炎を出し、煙が上に昇って、ミニチュア撮影のボロを出すところですが、 あえて炎を出さなかったキューブリックの特撮の指示は正しい。 実際、強烈な太陽光の月では、ロケットの噴射ガスは、ほとんど見えないはず。

 口を開く月面ドームの動きと、当たった光と影のすばらしいこと。この月面の真空を思わせるクリアな描写は全く正しい。 強烈な太陽光と冷たい真空の過酷なロケーションの中で、月面基地の扉と誘導灯が暖かく迎えてくれる。 

 ただし地下のドッキングベイは、随分無駄な空間のようにみえますが。

参考資料: メイキング・オブ・キューブリック「2001年宇宙の旅」 

          ジェローム・アジェル編 山川コタチ 私訳

         未来映画術「2001年宇宙の旅」 

          ピアース・ビゾニー著 浜野保樹・門馬淳子 訳   

 

 

 

 

 

 

 

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2001年宇宙の旅 人類の夜明け

 地球、月、太陽が一直線に並びますね。月からの太陽の日の出。地球は夜の側で、暗くなっています。ちょっとガッカリでしたね。観る前の予想としては、地球はやはり、青いというイメージがあったので。

 でも太陽の逆光を捕らえるとなると、こうなりますか。実際は望遠レンズで捕らえても、月はあんなに近く見えないでしょうが雄大なカットですね。 なにせ今までのSF映画では、宇宙から見た地球や月というのは、たいていカキワリの安っぽい絵でしたから。 

 映画タイトルが大きくドンと出ますが。試写ではこの段階で、招待された観客や初めて観るMGMの幹部は、相当期待したでしょう。なにせ、家族一家で楽しめる、超大型娯楽SFのつもりで観に来ていたのですから。

 猿(原人直前)のシーンのはじまり。 アフリカのすばらしいスチル写真が使われています。キューブリックが写真家であることが良く分かりますね。(但し撮影したのは彼とは限らない)写真は数千枚撮影されたそうです。

 その一部はフロントプロジェクションに使用されていますが、これは大成功ですね。スチルだからうまくいったのです。ムービー映像だったら、カメラ固定の撮影で、ぜったいボロがでます。手前のセットに比べ、投影した映像は微妙にブルブル動いているはずです。キューブリックがそんな映像を許すわけありません。

 本格的にフロントプロジェクション(FP)が使われたのはこの映画が始めてとのことですが、1963年東宝「マタンゴ」にもFPが使われていました。ヨットの嵐のシーンです。でも一部、ヨットの帆などに光が薄く写りこんでしまい、成功とはいえません。 FPは以後たくさんの映画に使用されていますが、中には影が見えてしまった失敗もいくつか観ました

 それにしても、大きなスタジオに見えますが前知識のないマニアでない方は、ロケだと思ったでしょう。 そのパンフォーカスのショットでは、照明(2500個のライト)をガンガンに照らすので、猿の役者もつらかったと思います。 猿の中身は、バレエダンサーや、痩せてるパントマイムの役者です。 特殊メイクは「猿の惑星」と、どっこいですが、アカデミー賞はむこうにとられましたね。

 死んだシマウマと豹のカット。シマウマは死んだ馬にペイントで模様をしたそうですが悪臭がひどかったとのこと、豹の目が光っているのはFPのせいでしょう。

 モノリスが現れますが、今回DVDで観たら、スクリーンではそう思わなかったが、その表面と角の直線の美しいこと。 磨きあげた黒曜石という感じ。私の墓石にしたいね。 しかしそれを触るエイプたち(類人猿を猿というのは間違い)の手の動きはちょっとまずいのではないか。完全に人間の手である。エイプはあんなに器用に指がまっすぐにならない。

 モノリスを触ったエイプの一人(脚本では「月を見るもの」)が骨をもてあそび、そして道具の発見となりますが、 この映画の前知識を散々積み込み、そして初めて見る私は、このシーンで骨を投げ上げ、宇宙ステーションにいくものだとばっかり思っておりました。 おそらく、1979年の2001年初体験組みはそう予想したのではないでしょうか。 しかし、次の、骨を武器に使うシーンが必要なのですね。あわてることはなかったのです

 この映画が日本で初公開となったとき、この「人類の夜明け」部分がカットされていた上映があったそうです。今となっては信じられません。やはり、前知識の無い人にとっては、意味が分からないのでしょうか。 説明不足なのでしょうか。当初、キューブリックは、この部分を含め、かなり、節目の部分で説明のナレーションを準備していました。それを削除してしまったのは、逆にキューブリックの作戦だったのかもしれません。

参考資料: メイキング・オブ・キューブリック「2001年宇宙の旅」 

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2001年宇宙の旅 プロローグ2

 私がこの映画をはじめて観た場所はテアトル東京でした。1979年だったと思います。今はこの映画館はありません。

 映画館の前にはファンが造ったディスカバリー号の模型がありました。 あれ?こんなに長い宇宙船だったかと、少し驚いたのですが、映画へのワクワク度が増しました。

 映像がシネラマであることは、知っていましたが、これは初体験です。

 映画が始まって、シネラマの第一印象は良くなかったですね。専用レンズで引き伸ばされてるためか、画像が薄いのです。 この映画ではシネラマは合わないと思いました。 

 シネラマは、色合いを薄味の淡白な画像にし、さらに、歪んだ画面は、この映画の特徴である、曲線や、直線の美しさをそこないます。特にディスカバリー号の登場シーンでは、その影響が顕著でした。かなりガッカリしたシーンです。

 結局、この映画の映像記憶は、別の映画館で観た、70ミリ映画によるものとなります。

 ちっちゃい(DVDでは大きい)ライオンのマークとともに、暗闇の中で始まる、変拍子の「ツァラ・・」のオルガンの低音は、時空を超える世界への導入として、期待感を煽ってくれました。 (文才がないってのは悲しいね。要するにワクワクしたのです。)

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2001年宇宙の旅 プロローグ1

宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン 宇宙家族ロビンソン ファースト・シーズン

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
発売日:2004/04/23
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 私がこの映画を知ったのは1968年ごろの少年マガジンのグラビアにてでした。当時私はウルトラマンキャプテンウルトラなどの特撮やセットはアーウィンアレン物 (宇宙家族ロビンソン、原潜シービュー号) より随分チャチだなと感じていたさなかでした。

 ショックでした。ディスカバリー号、宇宙STの存在感、ディテール。 セット内、宇宙服のデザインとその質感。

 少年の心はもう真空の宇宙へと翔んでいました。 そしてジュピター2号は視界から離れていきました。

 結局、この映画に恋こがれて、ようやく観ることができたのは、その10年後のSF映画ブーム、SFXブーム到来により、SWやCEなどが公開された後だったのです。

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